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未来を変えた者
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翌日には部屋を移されると聞いて荷物を纏めた。逃げるなら今しかチャンスはない。移動先の部屋は警備の厳しいエリアだから。
殿下の夕食の時間に出て行こうと荷物を持ってドアを開けると、腕を組み、廊下の壁にもたれ掛かっているミカエル殿下がいた。
「ひっ!」
「やっぱり逃げるつもりか」
「あ、殿下っ」
殿下は私の荷物を取り上げて室内に戻し、私をベッドに放り投げた。
「仕方ないよな?唾を付けた証を他の男に奪われるなんて許せないんだ」
「殿下?」
殿下は上着を脱ぎシャツを脱ぎ、トラウザーズを脱ぎ灯りを消した。
ギシッ
「殿下、」
ベッドに乗り私の服を脱がせていく。
「いけません!」
「いけないのはセシルだ。僕は傷付いた。散々僕を可愛いと言って見つめて撫でて抱きしめておきながら、今更拒否とかあり得ないんだけど」
「それは、まだ殿下が子供で、」
「精通済みの僕の顔を胸の谷間に押し付けたり、朝勃ちしていても平気で本日の予定はとかいってるし、時々オシッコしている時も側にいたじゃないか」
「それは、健康状態の確認でっ」
「大人の性器になったかの確認じゃなくて?」
「違っ!」
「ほら、これだけ育てば満足だろう?」
「っ!!」
私の手を導いて殿下は自身の性器を握らせた。
熱く硬く、私の手の中でビクンと動いていた。
「逃げなければ痛くないように秘薬を使ってあげようと思ったけど、仕方ない」
「殿下っ!」
翌朝
「ほら、薬を塗ってあげるから」
「魔法で治します」
「ソレ禁止。痛みも治る過程も含めて罰なんだから」
「……」
もの凄く痛かった。
痛みと恐怖に泣いて抵抗して、それでもミカエル殿下は止めてはくれなかった。涙を舐めながら美しい微笑みを浮かべ、目の奥に支配する悦びをしっかり滲ませていた。
「もう初夜は済んだから、セシルは僕と同じ部屋で暮らすんだよ?その代わり、ノーラを飼っていいから」
「本当ですか!」
「だけど僕から逃れようとしたり他の男と親しくしたらノーラは僕の属性の実験にするから」
「っ!!」
「返事は?」
「はい…」
「よろしい。今日は学園を休むよ。先ずは父上に叱られてこなくては。その後ノーラを連れて来るからそのまま安静にして。寝ていなかったら今夜も、」
「絶対に部屋から出ません」
「少し残念だけど、偉いね。チュッ」
昼食どきに戻って来たミカエル殿下の手には野良猫ノーラが抱かれていた。
「はい、ご褒美」
「ノーラちゃん!」
殿下は私に猫を手渡した。
「ミニャーッ」
毛がふわふわで、お腹に顔を埋めると良い匂いがする。
チラッと見ると殿下の手は引っ掻き傷と噛み傷まであった。
「で、殿下自らノーラをお風呂に入れたのですか!?」
「ダニ避けの薬草風呂に入れたよ」
「殿下っ」
殿下の手に触れて傷を治した。
「ありがとう、セシル」
「こちらこそありがとうございます、殿下」
「あと、父上からめちゃくちゃ叱られたけど、何で兄上が悔しそうな顔をしていたんだ?セシルと兄上は何かあった?」
「いえ。一度ダンスを踊ったことがあるのと呪いを解いたくらいで特にはありません」
「ふ~ん」
「本当です」
「あっちは違うみたいだけど」
「気のせいです」
「セシルが僕のものだと見せつけないとな」
後日の婚約式はお揃いの衣装でミカエル殿下が私にべったり。お兄様は笑ってるしリオネル殿下は確かに悔しそうな顔をしていた。
「他所見しない」
「していません」
「兄上を見ていただろう」
「隣にいるアレクセイ兄様を見たのです」
「浮気だ」
「違いますっ」
こんなやり取りをしながらミカエル殿下が私の腰に手を回して離さないので、歳の差恋愛婚と噂が立った。
その内 殿下が学園を卒業すると本当に直ぐ妊娠した。男児を産み、2年後に女児を産み、後は作らなかった。
長男は4属性持ち。長女も4属性持ちだが一つは時魔法だった。だから内緒にさせた。表向きは3属性。最初は兄と比べられると嫌がったが、以前の結婚でハミエルにどんな悪戯をしたか話した。
「面白そう。お母様の元夫は小さな呪いに掛かったと勘違いしていたのですね」
「そうよ。神殿に相談したくても出禁で相談出来ず、お医者様を呼んだらしいわ。
こんな楽しみ方ができるのは貴女と私だけなのよ?」
「内緒にします」
「元夫の話はお父様には内緒ね」
「お、お母様…」
「へえ。夫の僕に内緒事か」
「ミっ!ミカエル様っ!」
「まだまだ躾け足りないとは知らなかったよ」
「ち、違いますっ!」
またあの目をして微笑んだ。
終
【 離縁したてのハミエルの視点 】
セシルが屋敷を去った。直ぐに貴族法執行官が屋敷を訪れ使用人に話を聞いてまわり、最後は執務補佐と話し帳簿を見て帰っていった。
1週間後、父上に呼び出され、今回は仕方なく領地に向かった。
「お前は一体何てことをしてくれたんだ!!」
「セシルは出来損ないじゃありませんか!エルローズは土属性で俺の子を妊娠しているのです!」
「子だけ引き取ればいいものを!
仕事ができないお前の代わりを誰がやるのだ!」
「できないんじゃありません、しないんです」
「なら引き継ぎが終わるまで王都に戻るな。引き継ぎが終わったら儂らは財産と住まいを移す。後はお前次第だ。一年経たずに没落しそうだがな」
「そんな、領地の仕事なんて」
「お前は本当に愚かだ。領地運営をしなければ終わりだ。没落か追い出されるか殺される」
「は?誰にです」
「領民だよ」
「まさか」
「歴史でも習ったはずだが?」
「ハミエル、貴方ずっと閨事を拒否していたのですね」
「っ!」
「何も知らずにずっと“孫はまだか”と催促してしまったわ。跡継ぎ作りも貴方の義務じゃないの!」
「……」
本当に帰してもらえなかった。
仕事内容が難し過ぎる。
離縁から3週間後、父上が車椅子で執務室を訪れた。
「この馬鹿者が!!」
「父上?」
「執行官の調査報告書と慰謝料の支払命令が届いたぞ!お前の堕落した当主ぶりと不誠実で妻を虐待する夫ぶりが記されておるわ!!」
「虐待だなんてしていません!」
「婚約中からの仕打ち、初夜も拒否、婚姻後も妻を侮辱し他所の女と関係を持ち、自分は妻の予算まで奪って女に貢いで自分の贅沢に使い、執務を丸投げした挙句、執務中の妻を殴るなんてクズだ!こんなに酷いクズだと分かっていたら、お前を廃嫡して追放し、養子を取って爵位を継がせていた!
これは公式文書だ!貴族裁判の記録と同じで閲覧可能なのだぞ!」
「は? し、知りませんよ」
「セシルの兄は魔術研究所のナンバー3だぞ!魔道具で肖像画などよりも鮮明な証拠を出されては言い訳もできん!
セヴリッジ家の財産の4割を払えと書いてある!執務放棄 閨事の放棄 浮気の数々 日頃の言葉の暴力と殴った証拠、妻以外の令嬢を妊娠させ離縁を迫ったなど 次々と加算されてしまった!
男爵家の娘とは籍を入れて誓いをたてるだけしかできん!今後は買い物も許さん!」
「伯爵はもう俺なのですよ!」
「…そうか。病に伏した老いぼれは去れということか」
失言だった
「ち、父上」
「遅くにできた一人息子だからと大事にし過ぎたのだな。
分かった。今から其方を伯爵と呼ぼう。儂はやることがあるのでな」
そう言って執務室を出て行った。
4日後、
食堂には母上しかいなかった。
「父上は部屋食ですか」
「あの人は全使用人に紹介状を書いてセヴリッジから籍を抜いて個人資産と希望者を連れて出て行きました」
「は?」
「お父様に向かって自分が伯爵なのだから老いぼれは黙っていろと言ったそうね」
「そこまでは言っていません」
「私も今週中には実家の領地へ引っ越すわ。私も籍を抜いておいた方が良さそうね」
「母上?」
母上が去る間にも次々と使用人が辞めてしまった。
執務補佐が全員辞めて去ったことは大きな痛手だった。
母上が去った後、現実逃避にタウンハウスに戻ると、ほぼ空き家の状態の屋敷に数人の使用人とアルバートが待っていた。
「若旦那様、我々の辞表です。他には誰も残っておりません」
「何故」
「こちらの土地と建物は売りに出されております」
「は!?」
「今のセヴリッジ家では維持ができないのです。執行官の勧めで大旦那様がお決めになりました」
「伯爵は俺だぞ!」
「はい。ですが、執行官は若旦那様の執務放棄を重く見て話を大旦那様へ持っていきました。では、長い間お世話になりました」
「待て!待ってくれ!」
「失礼、こちらはお手紙です。
ビズモンド男爵家から頻繁に遣いが来ています。
ご対応をお願いいたします」
「セ、セシルは何処に」
「ハーゼル様は第二王子殿下の侍女になったそうです。新聞に掲載されておりました」
「王族の?何かの間違いだろう」
「書類選考の他に面接と魔法実技がございます。
つまりハーゼル様は魔法が使えたということです」
信じられない。
話がしたくて城に問い合わせても、
“ハーゼル様はミカエル第二王子殿下の唯一の近侍です。多忙を極めますので近しい親族以外の面会は受け付けておりません。伝言はお預かりします”
セシル・ハーゼルは魔法が使えるのかと聞くと受付は鼻で笑った。
“当然です。さすがハーゼル家。見事な火魔法だったと聞き及んでおります”
おかしい!神殿の記録は“無し”だったはずなのに!
神殿に行くと、離縁した他人には教えられないと言われたが、“何事も異例はございます”と言われた。
つまりかなり遅く覚醒したことになる。
クソ!
知っていたらセシルに仕事をさせながら子を産ませたのに!!
1年後。
「おぎゃ~!おぎゃ~!」
「ハミエル、キャシーが泣いているじゃない」
「…はい」
タウンハウスは売りに出し、セシルが引き継いでいた仕事はセシルが消え補佐も消えたため、放置状態になり違約金が発生する事態になった。
領地は父上も補佐達も消え、母上も消え、茫然とした。数ヶ月すると城から監査人がやって来た。
何処かの貴族がセヴリッジ伯爵家が機能していないと通報があったらしい。
結果、
爵位と全財産を剥奪され、エルローズの実家で世話になることになってしまった。
肉体労働は嫌だと言ったが書類仕事が出来ず、流石に屋敷内の使用人としては使えないので 庭師か馬の世話全般のどちらかを選べと言われた。しかし先に居た庭師と合わず、馬の世話も馬が嫌がると言われ クビになった。
外の掃除や水汲みをし、子が産まれたら 子の世話を全て任された。
ちなみに本当に俺の子だった。
おしめを初めて変えたときは嘔吐した。慣れるまで吐き続けた。
続く夜泣きに乳母を雇って欲しいと言ったが、“出て行く?独りで生きていけるの?”と言われて耐えた。幻覚が見え、死にたいと思うこともあった。
その内、子供は大きくなり、よく遊んでやれば夜はぐっすり眠ることに気が付いた。後はオネショに気を付けるだけ。
家庭教師が就く頃には楽になってきた。
そしてある日、衝撃を受けた。
「ハミエル。貴方の元奥様はミカエル第二王子殿下のお妃様になるみたいよ」
「え?」
「婚約の記事が出ているもの。
本当に貴方とは白い結婚だったのね。
なかなかの歳の差なのに殿下のお心をつかむなんて流石ね。
かたや平民となったハミエルを引き取り、かたや王子妃だなんて、天と地の差よね」
エルローズが新聞を手渡した。文字を目で追った。
“ミカエル第二王子殿下を献身的に支え続けたハーゼル家の魔法使いは、殿下に溺愛され異例の婚約に至る”
“セシル・ハーゼルは子爵家の長女。白い結婚をしたこともあるが婚姻中には執務を引き受けるほどの才女だった。夫からの暴力に耐え伯爵家を支えたが、夫は別の令嬢と子を成した挙句 妻に離縁を求めた。
彼女は応じて離縁し、ミカエル第二王子殿下の侍女に採用された。
セシル・ハーゼルは異例の測定不可能者と判明した。自身が魔力量が多く火魔法が使えると知ったのは最初の婚姻をしてからだった。
彼女は10歳 12歳のときに判定で発現無しと言われ婚約者から毛嫌いされてしまった。そして学園に入学すると生徒達から酷い差別と虐めを受けた過去を涙ながらに語った。
彼女はその経験から、第二王子殿下の実母と叔父の事件で差別を受けていたミカエル第二王子殿下の心の支えになる決意をして侍女に応募をした 強くて優しい女性である。
ミカエル第二王子殿下はそんは彼女を愛さずにはいられなかったのだろう。彼女との歳の差はあれどリードしているのも 自身の側から離さずに溺愛しているのもミカエル第二王子殿下だと城内の使用人達は証言した。彼女がこっそり可愛がっている野良猫を、噛みつかれ引っ掻かれながらも殿下自ら風呂に入れてやり、飼い猫としてプレゼントした。愛する女性が夢中で可愛がる猫のノーラに嫉妬しながらも仲睦まじく暮らしているようだ。
婚約したばかりではあるが、既に妃と同等の待遇を受け、ミカエル第二王子殿下の卒業の翌日に婚姻予定だと広報は語った”
“対談の中で、呪いの一族と口にする者達をどう思うか尋ねると、「呪いが感染するとか血縁に受け継がれるとか仰る方が多いことは存じております。
どちらも頭の弱い方の発想です。このような無知な方々が貴族を名乗るのですからシャルム王国の未来が心配ですね。学園も差別や虐めを放置せず、しっかりと人として魔法使いとしての常識を教えていただきたいですね。こんな話が周辺諸国に知られたら、移住したくない国1位 旅行先に選びたくない国1位 嫁ぎ先に選びたくない国1位 留学したくない学園1位など、様々な不名誉な1位を獲得してしまいそうですわね」と答えた。
辛辣な言葉ではあるが、留学経験のある私も同感だ。留学先の学園では魔力が無い者への差別を厳しく取り締まっていて、警告に従わなかったり実害を与えると退学となるほど厳しく対応をしていた。
もし呪いが感染するなら、今頃王族も城内で働く者やリオネル第一王子殿下とお会いした貴族達も全員呪いに苦しんでいたはずだ。だが苦しんだのはたった独りなのは周知の事実である。そして本気で呪いの術者の能力を受け継いでいると思うのならミカエル第二王子殿下を侮辱するような発言はしないはずだ。呪われてしまうのだから”
判定道具に反応しない魔法使いがセシル…しかも魔力量が多い……そうか。
確かに学園生はセシルを無視するか虐めていた。
俺を含めてこの記事を見た セシルと同時期に学園に通っていた卒業生は真っ青だろうな。
“リオネル王太子殿下は、セシル・ハーゼルを全面的に支持すると声明を出した”
“魔術研究所も、セシル・ハーゼルを全面的に支持すると声明を出した”
“神殿はセシル・ハーゼルへの支持と、当時の彼女の境遇に心を痛めていると声明を出した”
次期国王がセシルを認めて支持をすると言っているし、魔術研究所も神殿も後ろ盾になったも同然だ。
“はたしてセシル・ハーゼルの属性は1つなのか。本人に尋ねても微笑むだけ。彼女の兄は魔力量の多い3属性の魔法使い。彼女の魔力量は兄を上回るという。そして複数属性である可能性は十分に考えられる。だとしたら セシル・ハーゼルという一番強い後ろ盾を得たのはミカエル第二王子殿下の可能性もあると私は考える”
俺は馬鹿だな。
「お父様~」
「キャシー、授業は終わったのか?」
「はい」
「分からないときは素直に分からないと言うんだぞ。今なら分からなくても恥ずかしくないからな」
「はい!」
「じゃあ、おやつを食べようか」
「やった!」
完結
殿下の夕食の時間に出て行こうと荷物を持ってドアを開けると、腕を組み、廊下の壁にもたれ掛かっているミカエル殿下がいた。
「ひっ!」
「やっぱり逃げるつもりか」
「あ、殿下っ」
殿下は私の荷物を取り上げて室内に戻し、私をベッドに放り投げた。
「仕方ないよな?唾を付けた証を他の男に奪われるなんて許せないんだ」
「殿下?」
殿下は上着を脱ぎシャツを脱ぎ、トラウザーズを脱ぎ灯りを消した。
ギシッ
「殿下、」
ベッドに乗り私の服を脱がせていく。
「いけません!」
「いけないのはセシルだ。僕は傷付いた。散々僕を可愛いと言って見つめて撫でて抱きしめておきながら、今更拒否とかあり得ないんだけど」
「それは、まだ殿下が子供で、」
「精通済みの僕の顔を胸の谷間に押し付けたり、朝勃ちしていても平気で本日の予定はとかいってるし、時々オシッコしている時も側にいたじゃないか」
「それは、健康状態の確認でっ」
「大人の性器になったかの確認じゃなくて?」
「違っ!」
「ほら、これだけ育てば満足だろう?」
「っ!!」
私の手を導いて殿下は自身の性器を握らせた。
熱く硬く、私の手の中でビクンと動いていた。
「逃げなければ痛くないように秘薬を使ってあげようと思ったけど、仕方ない」
「殿下っ!」
翌朝
「ほら、薬を塗ってあげるから」
「魔法で治します」
「ソレ禁止。痛みも治る過程も含めて罰なんだから」
「……」
もの凄く痛かった。
痛みと恐怖に泣いて抵抗して、それでもミカエル殿下は止めてはくれなかった。涙を舐めながら美しい微笑みを浮かべ、目の奥に支配する悦びをしっかり滲ませていた。
「もう初夜は済んだから、セシルは僕と同じ部屋で暮らすんだよ?その代わり、ノーラを飼っていいから」
「本当ですか!」
「だけど僕から逃れようとしたり他の男と親しくしたらノーラは僕の属性の実験にするから」
「っ!!」
「返事は?」
「はい…」
「よろしい。今日は学園を休むよ。先ずは父上に叱られてこなくては。その後ノーラを連れて来るからそのまま安静にして。寝ていなかったら今夜も、」
「絶対に部屋から出ません」
「少し残念だけど、偉いね。チュッ」
昼食どきに戻って来たミカエル殿下の手には野良猫ノーラが抱かれていた。
「はい、ご褒美」
「ノーラちゃん!」
殿下は私に猫を手渡した。
「ミニャーッ」
毛がふわふわで、お腹に顔を埋めると良い匂いがする。
チラッと見ると殿下の手は引っ掻き傷と噛み傷まであった。
「で、殿下自らノーラをお風呂に入れたのですか!?」
「ダニ避けの薬草風呂に入れたよ」
「殿下っ」
殿下の手に触れて傷を治した。
「ありがとう、セシル」
「こちらこそありがとうございます、殿下」
「あと、父上からめちゃくちゃ叱られたけど、何で兄上が悔しそうな顔をしていたんだ?セシルと兄上は何かあった?」
「いえ。一度ダンスを踊ったことがあるのと呪いを解いたくらいで特にはありません」
「ふ~ん」
「本当です」
「あっちは違うみたいだけど」
「気のせいです」
「セシルが僕のものだと見せつけないとな」
後日の婚約式はお揃いの衣装でミカエル殿下が私にべったり。お兄様は笑ってるしリオネル殿下は確かに悔しそうな顔をしていた。
「他所見しない」
「していません」
「兄上を見ていただろう」
「隣にいるアレクセイ兄様を見たのです」
「浮気だ」
「違いますっ」
こんなやり取りをしながらミカエル殿下が私の腰に手を回して離さないので、歳の差恋愛婚と噂が立った。
その内 殿下が学園を卒業すると本当に直ぐ妊娠した。男児を産み、2年後に女児を産み、後は作らなかった。
長男は4属性持ち。長女も4属性持ちだが一つは時魔法だった。だから内緒にさせた。表向きは3属性。最初は兄と比べられると嫌がったが、以前の結婚でハミエルにどんな悪戯をしたか話した。
「面白そう。お母様の元夫は小さな呪いに掛かったと勘違いしていたのですね」
「そうよ。神殿に相談したくても出禁で相談出来ず、お医者様を呼んだらしいわ。
こんな楽しみ方ができるのは貴女と私だけなのよ?」
「内緒にします」
「元夫の話はお父様には内緒ね」
「お、お母様…」
「へえ。夫の僕に内緒事か」
「ミっ!ミカエル様っ!」
「まだまだ躾け足りないとは知らなかったよ」
「ち、違いますっ!」
またあの目をして微笑んだ。
終
【 離縁したてのハミエルの視点 】
セシルが屋敷を去った。直ぐに貴族法執行官が屋敷を訪れ使用人に話を聞いてまわり、最後は執務補佐と話し帳簿を見て帰っていった。
1週間後、父上に呼び出され、今回は仕方なく領地に向かった。
「お前は一体何てことをしてくれたんだ!!」
「セシルは出来損ないじゃありませんか!エルローズは土属性で俺の子を妊娠しているのです!」
「子だけ引き取ればいいものを!
仕事ができないお前の代わりを誰がやるのだ!」
「できないんじゃありません、しないんです」
「なら引き継ぎが終わるまで王都に戻るな。引き継ぎが終わったら儂らは財産と住まいを移す。後はお前次第だ。一年経たずに没落しそうだがな」
「そんな、領地の仕事なんて」
「お前は本当に愚かだ。領地運営をしなければ終わりだ。没落か追い出されるか殺される」
「は?誰にです」
「領民だよ」
「まさか」
「歴史でも習ったはずだが?」
「ハミエル、貴方ずっと閨事を拒否していたのですね」
「っ!」
「何も知らずにずっと“孫はまだか”と催促してしまったわ。跡継ぎ作りも貴方の義務じゃないの!」
「……」
本当に帰してもらえなかった。
仕事内容が難し過ぎる。
離縁から3週間後、父上が車椅子で執務室を訪れた。
「この馬鹿者が!!」
「父上?」
「執行官の調査報告書と慰謝料の支払命令が届いたぞ!お前の堕落した当主ぶりと不誠実で妻を虐待する夫ぶりが記されておるわ!!」
「虐待だなんてしていません!」
「婚約中からの仕打ち、初夜も拒否、婚姻後も妻を侮辱し他所の女と関係を持ち、自分は妻の予算まで奪って女に貢いで自分の贅沢に使い、執務を丸投げした挙句、執務中の妻を殴るなんてクズだ!こんなに酷いクズだと分かっていたら、お前を廃嫡して追放し、養子を取って爵位を継がせていた!
これは公式文書だ!貴族裁判の記録と同じで閲覧可能なのだぞ!」
「は? し、知りませんよ」
「セシルの兄は魔術研究所のナンバー3だぞ!魔道具で肖像画などよりも鮮明な証拠を出されては言い訳もできん!
セヴリッジ家の財産の4割を払えと書いてある!執務放棄 閨事の放棄 浮気の数々 日頃の言葉の暴力と殴った証拠、妻以外の令嬢を妊娠させ離縁を迫ったなど 次々と加算されてしまった!
男爵家の娘とは籍を入れて誓いをたてるだけしかできん!今後は買い物も許さん!」
「伯爵はもう俺なのですよ!」
「…そうか。病に伏した老いぼれは去れということか」
失言だった
「ち、父上」
「遅くにできた一人息子だからと大事にし過ぎたのだな。
分かった。今から其方を伯爵と呼ぼう。儂はやることがあるのでな」
そう言って執務室を出て行った。
4日後、
食堂には母上しかいなかった。
「父上は部屋食ですか」
「あの人は全使用人に紹介状を書いてセヴリッジから籍を抜いて個人資産と希望者を連れて出て行きました」
「は?」
「お父様に向かって自分が伯爵なのだから老いぼれは黙っていろと言ったそうね」
「そこまでは言っていません」
「私も今週中には実家の領地へ引っ越すわ。私も籍を抜いておいた方が良さそうね」
「母上?」
母上が去る間にも次々と使用人が辞めてしまった。
執務補佐が全員辞めて去ったことは大きな痛手だった。
母上が去った後、現実逃避にタウンハウスに戻ると、ほぼ空き家の状態の屋敷に数人の使用人とアルバートが待っていた。
「若旦那様、我々の辞表です。他には誰も残っておりません」
「何故」
「こちらの土地と建物は売りに出されております」
「は!?」
「今のセヴリッジ家では維持ができないのです。執行官の勧めで大旦那様がお決めになりました」
「伯爵は俺だぞ!」
「はい。ですが、執行官は若旦那様の執務放棄を重く見て話を大旦那様へ持っていきました。では、長い間お世話になりました」
「待て!待ってくれ!」
「失礼、こちらはお手紙です。
ビズモンド男爵家から頻繁に遣いが来ています。
ご対応をお願いいたします」
「セ、セシルは何処に」
「ハーゼル様は第二王子殿下の侍女になったそうです。新聞に掲載されておりました」
「王族の?何かの間違いだろう」
「書類選考の他に面接と魔法実技がございます。
つまりハーゼル様は魔法が使えたということです」
信じられない。
話がしたくて城に問い合わせても、
“ハーゼル様はミカエル第二王子殿下の唯一の近侍です。多忙を極めますので近しい親族以外の面会は受け付けておりません。伝言はお預かりします”
セシル・ハーゼルは魔法が使えるのかと聞くと受付は鼻で笑った。
“当然です。さすがハーゼル家。見事な火魔法だったと聞き及んでおります”
おかしい!神殿の記録は“無し”だったはずなのに!
神殿に行くと、離縁した他人には教えられないと言われたが、“何事も異例はございます”と言われた。
つまりかなり遅く覚醒したことになる。
クソ!
知っていたらセシルに仕事をさせながら子を産ませたのに!!
1年後。
「おぎゃ~!おぎゃ~!」
「ハミエル、キャシーが泣いているじゃない」
「…はい」
タウンハウスは売りに出し、セシルが引き継いでいた仕事はセシルが消え補佐も消えたため、放置状態になり違約金が発生する事態になった。
領地は父上も補佐達も消え、母上も消え、茫然とした。数ヶ月すると城から監査人がやって来た。
何処かの貴族がセヴリッジ伯爵家が機能していないと通報があったらしい。
結果、
爵位と全財産を剥奪され、エルローズの実家で世話になることになってしまった。
肉体労働は嫌だと言ったが書類仕事が出来ず、流石に屋敷内の使用人としては使えないので 庭師か馬の世話全般のどちらかを選べと言われた。しかし先に居た庭師と合わず、馬の世話も馬が嫌がると言われ クビになった。
外の掃除や水汲みをし、子が産まれたら 子の世話を全て任された。
ちなみに本当に俺の子だった。
おしめを初めて変えたときは嘔吐した。慣れるまで吐き続けた。
続く夜泣きに乳母を雇って欲しいと言ったが、“出て行く?独りで生きていけるの?”と言われて耐えた。幻覚が見え、死にたいと思うこともあった。
その内、子供は大きくなり、よく遊んでやれば夜はぐっすり眠ることに気が付いた。後はオネショに気を付けるだけ。
家庭教師が就く頃には楽になってきた。
そしてある日、衝撃を受けた。
「ハミエル。貴方の元奥様はミカエル第二王子殿下のお妃様になるみたいよ」
「え?」
「婚約の記事が出ているもの。
本当に貴方とは白い結婚だったのね。
なかなかの歳の差なのに殿下のお心をつかむなんて流石ね。
かたや平民となったハミエルを引き取り、かたや王子妃だなんて、天と地の差よね」
エルローズが新聞を手渡した。文字を目で追った。
“ミカエル第二王子殿下を献身的に支え続けたハーゼル家の魔法使いは、殿下に溺愛され異例の婚約に至る”
“セシル・ハーゼルは子爵家の長女。白い結婚をしたこともあるが婚姻中には執務を引き受けるほどの才女だった。夫からの暴力に耐え伯爵家を支えたが、夫は別の令嬢と子を成した挙句 妻に離縁を求めた。
彼女は応じて離縁し、ミカエル第二王子殿下の侍女に採用された。
セシル・ハーゼルは異例の測定不可能者と判明した。自身が魔力量が多く火魔法が使えると知ったのは最初の婚姻をしてからだった。
彼女は10歳 12歳のときに判定で発現無しと言われ婚約者から毛嫌いされてしまった。そして学園に入学すると生徒達から酷い差別と虐めを受けた過去を涙ながらに語った。
彼女はその経験から、第二王子殿下の実母と叔父の事件で差別を受けていたミカエル第二王子殿下の心の支えになる決意をして侍女に応募をした 強くて優しい女性である。
ミカエル第二王子殿下はそんは彼女を愛さずにはいられなかったのだろう。彼女との歳の差はあれどリードしているのも 自身の側から離さずに溺愛しているのもミカエル第二王子殿下だと城内の使用人達は証言した。彼女がこっそり可愛がっている野良猫を、噛みつかれ引っ掻かれながらも殿下自ら風呂に入れてやり、飼い猫としてプレゼントした。愛する女性が夢中で可愛がる猫のノーラに嫉妬しながらも仲睦まじく暮らしているようだ。
婚約したばかりではあるが、既に妃と同等の待遇を受け、ミカエル第二王子殿下の卒業の翌日に婚姻予定だと広報は語った”
“対談の中で、呪いの一族と口にする者達をどう思うか尋ねると、「呪いが感染するとか血縁に受け継がれるとか仰る方が多いことは存じております。
どちらも頭の弱い方の発想です。このような無知な方々が貴族を名乗るのですからシャルム王国の未来が心配ですね。学園も差別や虐めを放置せず、しっかりと人として魔法使いとしての常識を教えていただきたいですね。こんな話が周辺諸国に知られたら、移住したくない国1位 旅行先に選びたくない国1位 嫁ぎ先に選びたくない国1位 留学したくない学園1位など、様々な不名誉な1位を獲得してしまいそうですわね」と答えた。
辛辣な言葉ではあるが、留学経験のある私も同感だ。留学先の学園では魔力が無い者への差別を厳しく取り締まっていて、警告に従わなかったり実害を与えると退学となるほど厳しく対応をしていた。
もし呪いが感染するなら、今頃王族も城内で働く者やリオネル第一王子殿下とお会いした貴族達も全員呪いに苦しんでいたはずだ。だが苦しんだのはたった独りなのは周知の事実である。そして本気で呪いの術者の能力を受け継いでいると思うのならミカエル第二王子殿下を侮辱するような発言はしないはずだ。呪われてしまうのだから”
判定道具に反応しない魔法使いがセシル…しかも魔力量が多い……そうか。
確かに学園生はセシルを無視するか虐めていた。
俺を含めてこの記事を見た セシルと同時期に学園に通っていた卒業生は真っ青だろうな。
“リオネル王太子殿下は、セシル・ハーゼルを全面的に支持すると声明を出した”
“魔術研究所も、セシル・ハーゼルを全面的に支持すると声明を出した”
“神殿はセシル・ハーゼルへの支持と、当時の彼女の境遇に心を痛めていると声明を出した”
次期国王がセシルを認めて支持をすると言っているし、魔術研究所も神殿も後ろ盾になったも同然だ。
“はたしてセシル・ハーゼルの属性は1つなのか。本人に尋ねても微笑むだけ。彼女の兄は魔力量の多い3属性の魔法使い。彼女の魔力量は兄を上回るという。そして複数属性である可能性は十分に考えられる。だとしたら セシル・ハーゼルという一番強い後ろ盾を得たのはミカエル第二王子殿下の可能性もあると私は考える”
俺は馬鹿だな。
「お父様~」
「キャシー、授業は終わったのか?」
「はい」
「分からないときは素直に分からないと言うんだぞ。今なら分からなくても恥ずかしくないからな」
「はい!」
「じゃあ、おやつを食べようか」
「やった!」
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