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意地悪な双子

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「それでも男か!
男なら剣を持て!」

もう無理だ…こんなの練習じゃない、虐めだ!

「しっかり握れ!」

カーン

ドスッ

ディミトリーは僕の模造剣を弾き、脛を打った。

「痛い!!」

痛みのあまり、泣きながら脛を押さえていると

「女みたいに泣くな!気持ち悪い!
まだ終わっていないぞ!」

ベルトランが僕の尻を何度も蹴った。

助けて!誰か!

「お止めください」

オラスが止めに入ろうとするが、

「私達に逆らうことは許されているのか?
そこで見ていろ。別にこいつを殺すわけじゃない。
弱々しい根性をどうにかしてやろうとしているだけだ」

今日はラファエル兄上は会議があると言っていた。
つまり止める者は誰もいない。

オラスが止めに入ってから30分以上も蹴られ続けて我慢できなかった。

「こんなの練習でもなんでもない!単に僕が気に入らないだけじゃないか!そんなに不満なら国王陛下に直訴すれば良かっただろう!僕を養子にして第四王子にしたのは陛下だろう!僕には断る権利も無かったんだ!
陛下が怖くて何も言えない弱虫のくせに、自分より力の弱い者に当たるしか出来ない卑怯者が!お前達の方がよっぽど恥ずかしいだろう!!」

「貴様!!」

ディミトリーが僕の胸を踏みつけ、ベルトランが僕の頭に模造剣を振り下ろそうとした。

られる!!

カーン

その時、ベルトランの振り下ろした模造剣をオラスの剣が受け止めた。

「ディミトリー!!ベルトラン!!」

「「兄上!?」」

ラファエル兄上は双子の頬に平手打ちをした。

「あ、兄上っ」

「私達は本当の兄弟じゃないですかっ」

「お前達のやっていることは何だ?
王子の品格は川に落として流されてしまったか?
明らかに体格差がある歳下の子を2人がかりで?」

「私達は、」

「私は実兄として恥ずかしいよ」

「「っ!!」」

「しかもお前、何をしようとしていた」

ラファエル兄上は腰の真剣を抜きベルトランの首に当てた。

「や、止めてくださいっ」

「何故だ?お前達は何度言っても止めなかったのに私が止めなくてはならないのはおかしいだろう?」

「真剣なんて 死んでしまいます!」

「お前が頭上に振り上げてからレミの頭部に目掛けて振り下ろしかけたのは模造剣だが、死んでいたか重症を負ったかどちらかだぞ?同じことじゃないか」

「私達とこいつでは同じではありません!」

「同じではないが、レミは第四王子だ。国王陛下がお決めになったことだろう。
レミが重症を負えばお前は何年も兵役を科せられて最前線で生き残ることを願う日々となるだろう。
もし殺していたらどうなったか?
私は弟王子を殺そうとした王子を止めに入り斬ってしまっても 大した咎めは受けないが、お前は確実に王族籍から外されて、軍部の雑用をさせられて死ぬまで戦地に送られる。
王子同士の争いを禁じているのは上辺だけかどうか試してみたいなら、国王陛下に第三王子が第二王子と結託して 第四王子を殺そうとしていたところを間一髪止めたと報告して確かめさせようか?」

「も、申し訳ございません」

「二度といたしません」

「レミの身体中にある痣もかなりの数だ。
同じ数だけ付けられたくなかったら 言われたことを真面目にやれ。出来ないならそう言え。他の兵士に頼んで 代わりにお前達に兵士の仕事をさせるだけだ。
お前達の実力はそこそこだ。打ち合いの相手をしてくれている兵士達は手加減しているのだぞ。全員とは言わないが、隊長クラスは間違いなく手を抜いてるし、レミにつけたオラスはお前達など足元にも及ばないほどの実力者だ。あまり舐めた態度をとるなよ。オラスは私の命令でレミを守っているんだ。次にレミに暴力を振るったら オラスは王太子命令を優先してお前達を倒すことになる。分かったらレミに危害を加えるな」

「兄上は何故レミを贔屓なさるのですか!」

「僕達は実の弟なのですよ!?」

「お前達の心が汚れているからだ。弱い者虐めなどをする王子を誰が支持する?
お前達の言動が他の者達に影響を与え、その結果解雇された者も異動の上で減給された者も複数人出たのだぞ?お前達に便乗する馬鹿だが、便乗するものがなければ何も起こさない奴らだった。
私はお前達の兄の立場より王太子の立場を優先して行動しなくてはならない。国王陛下が父親としての立場より国王の立場を優先するようにな。

オラス、レミを連れて行ってくれ。手当が必要だ」

「かしこまりました」

ラオスは僕を抱えてくれた。

「ありがとう ラオス」

「お止めするのが遅くなり申し訳ございません」

「兄上のところに人を走らせてくれてありがとう」


その日の夜、ラファエル兄様の部屋に行き報告をした。

「大事な会議だったのに僕のせいで抜けることになってごめんなさい」

「レミは悪くない」

「僕、我慢できなくて言い返してしまって、逆撫でしてしまいました」

「ずっと我慢していたのだから気にするな」

「はい」

「レミ。オネスティアのことは習ったか?」

「はい。オネスティア王国は 好戦的な武力国で、東西南北それぞれに将軍がいて軍を統率しています。我が国ベルゼア王国を担当する将軍はアラン・ロプレストです」

「将軍はどんな男だ?」

「ロプレスト将軍は、ロプレスト侯爵家の私兵として採用されました。かなりの実力があり、直ぐに王宮騎士団からスカウトがありました。侯爵の勧めで騎士団入りし、さらに頭角を現して出世していきました。27歳でロプレスト侯爵家の養子になり同時に将軍に任命されました。それが1年前です」

「何故彼は将軍になれた?」

「オネスティアにサボア王国が攻め入ったときの防衛戦で武勲を立てたからです」

「偉いぞ。よく勉強しているな。

実はうちとオネスティアの国境で揉め事が起きて、収まる気配どころか悪化している」

「何故ですか?」

兄上は僕を隣に座らせて説明を続けた。



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