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毛色の違う第四王子
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「はぁ…はぁ…」
汗と土まみれの身体は今日も限界を超えていた。
「立てよ、レミ」
茶色の髪に茶色の瞳の男が模造剣を持ちながら僕を見下ろしている。第二王子ディミトリーだ。
「何で上達しないんだ?
筋肉もまるでつかないし
本当は女なんだろう」
「さっさと立て」
「なあ、脱がして付いているか確認しようぜ」
ディミトリーと同じ顔 同じ色をした第三王子ベルトランが地面に倒れ込む僕のベルトに手を掛けた。
「止めて!」
「ベルトラン、余計なことをするなよ。
まだ終わってないんだぞ」
「嫌だ!止めて!」
「止めろ、ベルトラン」
止めに入った声にホッとした。
「兄上」
「ベルトラン、いつまでも子供みたいなことをするな。
ディミトリー、双子とはいえ兄だろう。弟に馬鹿な真似を許すな。それにレミを戦士にしろと言ったわけではない。最低限 自己防衛出来るように鍛えてくれと言ったんだ。
レミ、立てるか?」
「ごめんなさい」
「オラス、レミを運んで メイドに湯浴みをさせてくれ」
「かしこまりました。レミ殿下、失礼します」
「ありがとう オラス卿」
動けなくなった僕を、僕の専属護衛騎士オラスが運んでくれた。
湯浴みで汗と泥を洗い流し、医務官が来て傷の確認をして手当をする。
「終わりました。打ち身だけですので、また寝る前にメイドに塗り薬を塗ってもらってください」
「いつもありがとう」
「辛かったらお申し付けください。では、失礼します」
パタン
「ふぅ」
ベッドに両手脚を広げて横になった。
僕の名前はレミ。継承権を持たない第四王子だ。
普通母親に似ても息子なら男の顔になるはずなのに、僕は本当に母そっくりで女だと勘違いされる。身体も同じだ。骨も細く華奢で筋肉などつかない。だがもちろん男の体だ。
さっき僕に剣の稽古をつけていたのは双子の兄で第二王子のディミトリー。
僕の服を脱がそうとしていたのは双子の弟で第三王子のベルトラン。
2人とも王妃様似で目も瞳も茶色だ。
止めに入ってくれたのは長兄で王太子のラファエル。こんな僕に剣を使った稽古をさせる厳しい人だけど双子のように罵ったり意地悪はしない。
国王陛下に似て、銀髪に紫色の目をしている。
王太子の実母である王妃は彼を産んだときに亡くなった。今の王妃は彼の継母となる。
「レミ殿下、今夜は王太子殿下がこちらへいらっしゃるとのことです」
「分かった。今日の母上はお元気でしたか?」
「カトリーヌ妃はお変わりございません」
「そうか。ありがとう」
レミの母は側妃。異例の婚姻だった。
母カトリーヌは隣国ノーヴァの伯爵令嬢で、ノーヴァに留学していたこの国の公爵家次男に口説かれて嫁いだ。
パーティで、初めて国王陛下の前に立ち、公爵家次男の妻として挨拶をした。
この時、国王陛下はカトリーヌに一目惚れをしていた。
息子レミが10歳の時、父が病死。カトリーヌは息子を連れて母国ノーヴァに帰ろうとしたが、陛下が引き留め求婚した。
母カトリーヌは一度は断ったが、息子レミも養子にして王子として迎えると言われ承諾した。
こうして第四王子となったが、血の繋がりが無いため、継承権を持たない。
当然3人の兄王子や嫁に出た王女達とも血の繋がりは無い。
王は無関心、母は慣れない異国の王宮暮らしと再婚後に産まれた王女のことで精一杯。
双子の王子達がレミを虐めるので、仕える者達からもぞんざいに扱われてしまう。
去年、王太子ラファエルの前でそれをやった兵士がいて、彼はクビになった。
そしてラファエルはレミに聞き取り調査をして、特に酷かった者達6人を解雇した。
レミ担当のメイドと護衛騎士を総入れ替えした。
入れ替え後の担当メイドと護衛騎士は、レミを王族として対応するが、それ以外の者達はラファエルを恐れて大人しくなっただけ。
就寝前、ラファエル兄上が部屋まで来た。
ドサッ
ソファに座り背もたれに身を預けて首元を緩めた。
今夜は王太子妃とその両親との食事会があると聞いていた。毎日のようにその日の報告を夜にするのだけど、食事会の夜くらいしなくていいと思う。
僕の1日なんていつも同じで、よく連夜同じ報告を聞けるなと関心するほどだ。もしかして兄上にとって僕のつまらない報告が子守唄代わりなのかもしれない。
酒の臭いが少し強い。
「ラファエル兄上、お水をお持ちしますか?」
「頼む」
水を注ぎ兄上に手渡すと一気に飲み干した。
「もう一杯注ぎますね」
「いや、いい。こっちに来て座れ」
隣の1人掛けソファに座ろうとすると、兄上の座っている2人掛けソファの座面をたたいた。
「こっちに座れ」
「…はい」
隣に座ると兄上が僕の髪に触れた。
「今日はどうだった」
「いつも通りの生活です。授業も受けましたし、剣も習っています」
「怪我は?」
「打ち身が少し」
「見せてみろ」
「でも」
「早く」
仕方なく上半身裸になった。
「薬を塗ってやる」
「もう塗ってもらいました」
「いいから」
薬缶を取って渡すと優しく塗ってもらえた。
「下は?」
「え?」
「痣は上半身だけか?」
「背中以外は自分で塗れますから」
「確認をしているんだ」
仕方なく下着一枚になった。
兄上は薬入れの蓋を開けて指に付けて優しく塗りだした。
「骨に異常は無いのだな?」
「はい…うわっ」
兄上が僕の下着を下ろしてしまい、兄上の顔の近くでアレを露出させてしまった。
「ほら、ここにも痣があるだろう。手を退けなさい、邪魔だ」
「……」
股間を隠していた手を退けた。恥ずかしい…。
腰の横の部分に塗り始めてくれたが、何故か兄上の視線が股間に向けられている気がする。
「レミ」
「は、はい」
兄上が僕の両手を握り 見上げた。
「うちは王子として生まれたら一度は必ず戦場に立たされる。王太子の私でも養子のレミでもだ。
お前に戦いなど不向きなことは分かっているが避けては通れない。だからせめて防御だけでもと習わせているんだ。分かってくれ」
「…はい、兄上」
「レミ」
「あ、兄上!?」
兄上が僕の腰に腕を回して抱きしめた。兄上の顔は僕の腹に、そして僕のアレは兄上の胸元に押し付けられている。
「レミが召集されるときは私も行けるように計らうから心配するな」
びっくりしたけど、ラファエル兄上は弟として大事にしようとしてくれているのだと知った。
変な警戒をして恥ずかしい。
「兄上、いつもありがとうございます」
その後 僕の下着を履かせた兄上はすぐに退室した。
汗と土まみれの身体は今日も限界を超えていた。
「立てよ、レミ」
茶色の髪に茶色の瞳の男が模造剣を持ちながら僕を見下ろしている。第二王子ディミトリーだ。
「何で上達しないんだ?
筋肉もまるでつかないし
本当は女なんだろう」
「さっさと立て」
「なあ、脱がして付いているか確認しようぜ」
ディミトリーと同じ顔 同じ色をした第三王子ベルトランが地面に倒れ込む僕のベルトに手を掛けた。
「止めて!」
「ベルトラン、余計なことをするなよ。
まだ終わってないんだぞ」
「嫌だ!止めて!」
「止めろ、ベルトラン」
止めに入った声にホッとした。
「兄上」
「ベルトラン、いつまでも子供みたいなことをするな。
ディミトリー、双子とはいえ兄だろう。弟に馬鹿な真似を許すな。それにレミを戦士にしろと言ったわけではない。最低限 自己防衛出来るように鍛えてくれと言ったんだ。
レミ、立てるか?」
「ごめんなさい」
「オラス、レミを運んで メイドに湯浴みをさせてくれ」
「かしこまりました。レミ殿下、失礼します」
「ありがとう オラス卿」
動けなくなった僕を、僕の専属護衛騎士オラスが運んでくれた。
湯浴みで汗と泥を洗い流し、医務官が来て傷の確認をして手当をする。
「終わりました。打ち身だけですので、また寝る前にメイドに塗り薬を塗ってもらってください」
「いつもありがとう」
「辛かったらお申し付けください。では、失礼します」
パタン
「ふぅ」
ベッドに両手脚を広げて横になった。
僕の名前はレミ。継承権を持たない第四王子だ。
普通母親に似ても息子なら男の顔になるはずなのに、僕は本当に母そっくりで女だと勘違いされる。身体も同じだ。骨も細く華奢で筋肉などつかない。だがもちろん男の体だ。
さっき僕に剣の稽古をつけていたのは双子の兄で第二王子のディミトリー。
僕の服を脱がそうとしていたのは双子の弟で第三王子のベルトラン。
2人とも王妃様似で目も瞳も茶色だ。
止めに入ってくれたのは長兄で王太子のラファエル。こんな僕に剣を使った稽古をさせる厳しい人だけど双子のように罵ったり意地悪はしない。
国王陛下に似て、銀髪に紫色の目をしている。
王太子の実母である王妃は彼を産んだときに亡くなった。今の王妃は彼の継母となる。
「レミ殿下、今夜は王太子殿下がこちらへいらっしゃるとのことです」
「分かった。今日の母上はお元気でしたか?」
「カトリーヌ妃はお変わりございません」
「そうか。ありがとう」
レミの母は側妃。異例の婚姻だった。
母カトリーヌは隣国ノーヴァの伯爵令嬢で、ノーヴァに留学していたこの国の公爵家次男に口説かれて嫁いだ。
パーティで、初めて国王陛下の前に立ち、公爵家次男の妻として挨拶をした。
この時、国王陛下はカトリーヌに一目惚れをしていた。
息子レミが10歳の時、父が病死。カトリーヌは息子を連れて母国ノーヴァに帰ろうとしたが、陛下が引き留め求婚した。
母カトリーヌは一度は断ったが、息子レミも養子にして王子として迎えると言われ承諾した。
こうして第四王子となったが、血の繋がりが無いため、継承権を持たない。
当然3人の兄王子や嫁に出た王女達とも血の繋がりは無い。
王は無関心、母は慣れない異国の王宮暮らしと再婚後に産まれた王女のことで精一杯。
双子の王子達がレミを虐めるので、仕える者達からもぞんざいに扱われてしまう。
去年、王太子ラファエルの前でそれをやった兵士がいて、彼はクビになった。
そしてラファエルはレミに聞き取り調査をして、特に酷かった者達6人を解雇した。
レミ担当のメイドと護衛騎士を総入れ替えした。
入れ替え後の担当メイドと護衛騎士は、レミを王族として対応するが、それ以外の者達はラファエルを恐れて大人しくなっただけ。
就寝前、ラファエル兄上が部屋まで来た。
ドサッ
ソファに座り背もたれに身を預けて首元を緩めた。
今夜は王太子妃とその両親との食事会があると聞いていた。毎日のようにその日の報告を夜にするのだけど、食事会の夜くらいしなくていいと思う。
僕の1日なんていつも同じで、よく連夜同じ報告を聞けるなと関心するほどだ。もしかして兄上にとって僕のつまらない報告が子守唄代わりなのかもしれない。
酒の臭いが少し強い。
「ラファエル兄上、お水をお持ちしますか?」
「頼む」
水を注ぎ兄上に手渡すと一気に飲み干した。
「もう一杯注ぎますね」
「いや、いい。こっちに来て座れ」
隣の1人掛けソファに座ろうとすると、兄上の座っている2人掛けソファの座面をたたいた。
「こっちに座れ」
「…はい」
隣に座ると兄上が僕の髪に触れた。
「今日はどうだった」
「いつも通りの生活です。授業も受けましたし、剣も習っています」
「怪我は?」
「打ち身が少し」
「見せてみろ」
「でも」
「早く」
仕方なく上半身裸になった。
「薬を塗ってやる」
「もう塗ってもらいました」
「いいから」
薬缶を取って渡すと優しく塗ってもらえた。
「下は?」
「え?」
「痣は上半身だけか?」
「背中以外は自分で塗れますから」
「確認をしているんだ」
仕方なく下着一枚になった。
兄上は薬入れの蓋を開けて指に付けて優しく塗りだした。
「骨に異常は無いのだな?」
「はい…うわっ」
兄上が僕の下着を下ろしてしまい、兄上の顔の近くでアレを露出させてしまった。
「ほら、ここにも痣があるだろう。手を退けなさい、邪魔だ」
「……」
股間を隠していた手を退けた。恥ずかしい…。
腰の横の部分に塗り始めてくれたが、何故か兄上の視線が股間に向けられている気がする。
「レミ」
「は、はい」
兄上が僕の両手を握り 見上げた。
「うちは王子として生まれたら一度は必ず戦場に立たされる。王太子の私でも養子のレミでもだ。
お前に戦いなど不向きなことは分かっているが避けては通れない。だからせめて防御だけでもと習わせているんだ。分かってくれ」
「…はい、兄上」
「レミ」
「あ、兄上!?」
兄上が僕の腰に腕を回して抱きしめた。兄上の顔は僕の腹に、そして僕のアレは兄上の胸元に押し付けられている。
「レミが召集されるときは私も行けるように計らうから心配するな」
びっくりしたけど、ラファエル兄上は弟として大事にしようとしてくれているのだと知った。
変な警戒をして恥ずかしい。
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