【完結】そろそろ浮気夫に見切りをつけさせていただきます

ユユ

文字の大きさ
上 下
9 / 19

夜会

しおりを挟む
会場で挨拶を受けるのだが、何故か公爵が私の腕を離してくれず、一緒に挨拶をさせられている。斜め後ろのユーグ様を見るも微笑み返されるだけ。

「久しぶりです公爵」

「お元気でしたか、ナセリ伯爵、伯爵夫人」

「お陰様で元気に過ごしております。お隣の淑女は、」

「彼女はエレナ・セブレスターです」

「セブレスター…あの異色の領法のセブレスター子爵家の!?」

「セブレスターです。領法は私が変えました」

「こ、公爵。グラソンの領法は現状維持でお願いします」

「ハハッ 安心してくれ」

おっ。公爵が笑うと無邪気な感じになるのね。



5組目は

「カリフォン夫人、子爵はその後良くなったか?」

「はい。ゆっくりですが快方に向かっております。
ところでお隣の夫人はどなたでしょう」

「彼女はエレナ・セブレスターといって、私の側近の一人だ」

「では、次期公爵夫人ではないのですね?」

「私の大事な女性ひとだ」

言い方が変だけど、確かに側近は公爵にとって大事な人間よね。

「公爵様、娘のティファーナです。21歳のですわ」

ええ!?こんなところで“乙女”とか言うの!?こっちの世界では処女って意味よね。“うちの娘は処女です”って?恥ずかしくないのかな。
ホルスタインみたいな乳をしてるわね。肩凝りそう。私には無縁の苦労だなぁ。

「ティファーナが公爵様にご挨拶を申し上げます」

「良き縁談に恵まれるといいな」

「っ! グラソンの生活に順応できる女性をお求めのはずですわ。私は領内で生きてきましたもの。逃げ出したりしません。
それに子を産んで差し上げられます」

何でこっち見るの?

「私に乙女も子も必要ない。既に男児を2人産ませているのだから充分だ。子もいて婚歴もあるいい歳をした私に乙女の妻など意味を成さない。若いことが価値ではない。公爵家や公爵領に有益かどうかで選ぶつもりだ」

「私だって、お役に立ってみせますわ」

「なら、領内のエヴリー男爵家に嫁いでくれ」

「え?」

「まだ嫁が見つかっていないし、初婚だ。
誰か、エヴリー男爵達を呼んでくれ」

「そ、そんな」

現れたエヴリー男爵夫妻と息子は性格が良さそうだった。ちょっとおデブだけど可愛いと思う。

「エヴリー男爵、子息のレオはまだ嫁探しの最中だな?」

「はい、公爵様」

「歳はいくつだったかな?」

「29歳になりました」

「こちらのティファーナ・カリフォンは21歳で乙女らしい。レオとティファーナの婚姻を命じよう」

「ありがとうございます」

「嫌です!私は公爵様と結ばれたいのです!」

「私は必要としていない。役に立ってみせると言っただろう」

「いくらなんでもデブは嫌です!」

あ~。男爵令息が悲しそうな顔をしちゃったじゃない。

「私なら喜んでお嫁さんになるのに」

「は?」

つい口に出した言葉に反応したのは公爵だった。

「失礼。…だって、ご令息は可愛らしいお顔をしていますし、生まれる子だって可愛いと思うのです。それに、ご両親もご子息もとても人柄が良さそうですし、穏やかな幸せを与えてくれそうですもの」

「ありがとうございます、セグレスター様」

「ううっ…」

子息は頬を染めてるけど、夫人は泣き出してしまった。

「年齢も釣り合いませんし、跡継ぎをお望みでしょうから、お若いご令嬢の方がよろしいですわね」

「エレナ、君はレオが好みなのか」

「好みというか、可愛いなって」

「可愛い男がいいのか」

「可愛いから選ぶとかそうではありません。ただ初対面の印象としては性格の良さそうな可愛い方だなと思ったのです」

「ぼ、僕はエレナ様さえよろしければ、」

「よし、決まりだ。封鎖前にティファーナ・カリフォンはエヴリー邸に引っ越して妻としての務めを果たせ。雪解け後に追って婚姻の儀をすればいい。レオもいい歳だ。早く子を作りたいだろう?
国には私から届けを出しておこう」

「公爵様!」

「異論は認めない」


結局 話は保留になりそうだが、小娘から睨まれる変な役割になってしまった。

そして公爵の機嫌が悪い。

「エレナは再婚の意思があるのか?」

「良縁があれば無くはないです」

「……男爵家の方がいいのか」

「はい?」

「エレナにエヴリー家では物足りないはずだ」

「私がエヴリー家に嫁ぐことはありません。跡継ぎを必要としていましたでしょう?私は選ばれません。
それに物足りないとは何ですか。
私の父は“当主に従え”“男に従え”という典型的な時代遅れの愚かな男でした。だから無能なマルクを婿に迎えることになってしまいました。そしてマルクは女を性の道具にしか見ていないくせに、その女に仕事も何もかもさせるカス。
そういうの、もううんざりなんですよ。

もし嫁ぐなら相手と相手の家族の人格を重視します。借金もなく、お金に困っていなければ平民でもかまいません。残りの人生は人として敬われて生きたいのです。それが叶わぬ婚姻をするくらいなら仕事をしながら一人で生きていきます」

「……私の人柄はどう思う」

「分かりません。仕事面では真面目だと思いますが、私的な部分は分かりません」

「分からない?」

「丁寧に扱ってくださる一方で、女性を下に見た行動をなさったので、“分かりません”」

「下になど、」

「先日の夜のことをお忘れですか?」

「あ、あれは」

「例え公爵の妻の座を求めて来たとしても、何の話し合いも説明もなく、閨の支度をさせて 寝ている女性の身体を勝手に弄る権利は公爵にはありません。
ですが、公爵であるあなたなら、それが許されると思ってそうした。違いますか?」

「お互い婚歴もあって経験もあるし いい大人だからそういう始め方も有りだと思ってしまった」

「同意が無ければ強姦というのです」

「反省している。悪かった」

「今夜だけで3名の女性が言い寄ったではありませんか。彼女達の中から選んではいかがですか」

「今度ゆっくり話そう」

話したくないんだけどな。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

二度目の恋

豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。 王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。 満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。 ※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

処理中です...