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新婚

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結婚から三ヶ月。
まだまだ冷めぬ新婚ホヤホヤ。湯気で前が見えません的な状態を作り出しているのはセイン様だった。

時折、父伯爵改め父公爵に怒られているが、なんだかんだで仲良しだ。

セイン様はすっかりバカっぽくなってしまった。私がバカにさせていると母夫人が言う。

「パパ、旅行先は決まった?」

「悩んでいるよ」

「候補があるならクジを作ってママに引いてもらったら?」

「そうするか」



聞き耳を立てていたセイン様は、父公爵がいなくなると嬉しそうに私の隣にピッタリくっついて座り、ニコニコしていた。

「二人っきりになるね!」

「これ以上!?」

「ティアが大好きなのに」

くうっ!すっかり私の操縦を心得てしまったセイン様に私は分かっていても翻弄されてしまう。

「三十分で」

「時間制限なんておかしいよ!三十分なんて前戯で終わっちゃうじゃないか!」

「ちょっと!声が大きい!!」

「三時間の間違いだよね?」

「じゃあ、不在中の一日だけにして三時間」

「愛の温度差が激しい」

「私もついて行こうかな」

「ついて行けないほど愛してあげるね」


宣言通り、両親の旅の出発前夜、抱き潰された。起きたら既に旅立っていた。

「酷い!」

「夫婦の邪魔をしようとするティアの方が酷いよ。昼食にしようか」

むうっ!


そして両親の旅行中の3週間で私は痩せた。




私はもう一店舗小さな店を出していた。
髪留めとタイやスカーフ留めの店だ。

特に髪留めはヘアピン大小、バレッタ四サイズ、バンスクリップ五サイズ、テールクリップ三サイズ、コーム、カンザシ、マジェステなど様々な種類とデザインを揃えた。

光り物がついている場合はガラスだが、注文があれば本物の宝石を付けて納品した。

この店の商品も売れに売れた。

髪留めの店 “天使の微笑み” はベレニスが、天使の匙はジョルジーヌが店長になり、それぞれ従業員を2人ずつ雇い入れた。

ベレニスは結婚して、引っ越した。
ジョルジーヌは恋人はできたが籍は入れていない。

子持ちの騎士で妻に先立たれた人だった。
元娼婦なので、連れ子に影響があると困ると考えたようだった。


数年後の話ではあるが、騎士の息子は成人するとジョルジーヌに会いに来た。
別れろと言われるのかと思ったら、入籍の勧めだった。

店舗の上を見て、

「ここに父と住めば?
僕も結婚するまでここに住むから。
避妊はしなくていいからね。出来れば妹がいい。父似じゃない事を祈ってるよ義母上」

「でも、」

「義母上は保護すべき親戚が財産を奪って娼館に売ったと聞いた。13歳の力のない被害者だったと。

義母上のことは婚約者も婚約者の両親も承知の上だ。

結婚したからと言って男爵夫人として無理をしなくていい。この店の方が大事だから。

父上は騎士のくせにウジウジしてるから僕が言いに来た。責任をとってくれ」

「責任ですか?」

「義母上に振られたら父上の魂が抜けてしまう」

そんな話をしているとは知らずに閉店後の店の前を通りかかったティーティアが現れた。

「え?義理の息子!?」

「はい。シグマと申します」

「まあ!なかなかハンサムね。お母様似なのね」

「父をご存知なのですか?」

「たまに皆で食事をするのよ。お父様はワイルドな感じよね。そこが魅力的なのだけど」

「ティーティア様!セイン殿下に叱られます」

「ジョルジーヌ、今度うちに来てセイン様を叱って。私だと泣き落としを使われちゃうの」

「分かりました。お任せください」

「義母上、まさかセイン殿下に説教をしているのですか!?」

「シグマくん、ジョルジーヌはセイン殿下のアドバイザーなのよ!私も姉のつもりで甘えているの」

「知りませんでした。ティーティア様、義母上と父上を結婚させたいのです。お力添えをお願いできませんか。どうも拗らせて、結婚を申し込んだら振られると父は思っているようなのです」

「いいわよ!任せて!」


二人は直ぐに結婚した。

ティーティアが騎士団まで説得に出向いた挙句、今後も説得しに通うと宣言したら、セインが騎士団に出向き、説得した。

“ティアに虫が付いたら恨みますよ”






「そろそろ、ヴェリテ公爵を引き継ぐか?」

父公爵かセイン達に尋ねた。

「第二子が5歳になったら考えます」

「セイン、まだ初子も未だなのに。
何年後を想定しているんだ」

「まだ新婚なので避妊してます」

「もうすぐニ年だろう」

「たったニ年ですよ」

「ティーティア、産むのが嫌か?」

「それはないですけど」

「よし、一度避妊を止めてみたらどうだ」

「一度でいいなら」

「その一度じゃないが仕方ない」

「次の結婚記念日に決行しますので、私達は翌日完全休暇にしますので宜しくお願いします」

「そこまで頑張れとは言ってない!」

「じゃあ、止めようかなぁ」

「くっ! 無理はさせるなよ」

「ティア、いいよね?」

「う、うん」




そして結婚記念日から四ヶ月後。

「おめでとうございます。ご懐妊です」

「すごいな」

「たった一晩で」

「頑張りましたから」

「……」




第一子誕生の後はまた三年避妊し、試しに結婚記念日の一晩だけ避妊を止めてセインは頑張った。


第二子も一晩で妊娠した。

5年後の妊娠も一晩避妊を止めた日の子だった。

セインは三人目の懐妊が分かると避妊手術を受けた。



第一子フィロはセインに似ていた。第二子は国王に似ていた。第三子の娘はティーティアにそっくりだった。

中身が誰に似てるかは外見とはまた別だった。


三店舗目は下着の店だった。その斬新さに賛否両論だったが、爆発的に売れた。
ブランドとして認知された為、似た物を出す店も出てきたが、貴族や金持ちは本物思考が強く必ずティーティアの店で購入したし、外国からも買い付けに来るほどだった。

こうしてヴェリテ公爵家は富豪の仲間入りを果たしていった。


セインは領地経営を引き継いだ。最初にやったのは警備隊、孤児院、教会、診療所、町長、村長、役場などに視察面会に行った。

同行者は3人で帳簿などを調べる者、設備や指揮系統の確認をする者、書類の確認をする者に別れた。

同時に小さな店や、農家、民家に気まぐれに訪問して、話が大きく噛み合わないところから梃入れをした。

警備隊には後日、王宮騎士団から数名借りて心身ともに鍛え直してもらった。

町長や村長には年に一度でもいいので全戸訪問と記録を課した。

建物の改修をして設備を整え、備品の補充をした後に役場に行き教師の募集をした。

文字の読み書きと算数を教える者と、裁縫や編物や刺繍を教える者、自然に生えている食べられる草やキノコや木の実を選別でき、魚を釣ったり解体調理できる者を二箇所の孤児院にそれぞれ一名ずつ。

学力、生活力の底上げはティーティアの希望の一つだった。


様々な改革を行い、生きやすい領地として有名になった。移住希望者が殺到したが今いる住民を第一に考えた結果、審査を行った。

教師になり得る者、既存の店とライバルにならない商いが出来る者、資産がある者、人気のない求人に応募する者。

その場で誤魔化しても数ヶ月後に抜き打ちで追跡調査を行い、移住条件を満たせていない者は退去をさせるという厳しいものだった。

だがこれが犯罪率を上げることもなく領地の向上に役立ち納税額が上がることになったのだから不満に思う領民はいなかった。


次第にセインはティーティアから敬意を得ることとなる。













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