【完結】私を好きで略奪した夫に捨てられたのでお腹の子は渡しません

ユユ

文字の大きさ
11 / 21

ランドールの後悔

しおりを挟む
【 ランドールの視点 】

翌日、10時頃 宿の従業員がエメール侯爵令息が来ていると報せに来た。

父上とロビーを降りていくとエリカも一緒だった。
アリエスは連れてきていないようだった。

「フェルス伯爵、お久しぶりです」

「エメール侯爵令息、お久しぶりです。
こちらは息子のランドールと申します」

「お見かけしたことがありますよ。
それで、何用でしょう」

「私どもはエリカに話があってこちらまで参りました」

「どうぞ、話してください」

「エリカと我々の3人で話をしたいのです」

「それは許可できません」

「失礼ですが、エリカとは他人ではありませんか」

「エリカはエメール侯爵家が保護しているレディーです。絶対に彼女を1人にしませんよ」

「仕方ありませんね。このままお話ししましょう。
エリカ、フェルス家に戻って来なさい」

「嫌です」

「アリエスはランドールの子だろう」

「違います」

「ランドールに似ているから間違いない」

「フェルス家にアリエスを望む権利はございません」

「エリカ。戻って来てくれ。先日母上の侍女から避妊薬の件を聞き出した。悪かった。意地を張らずに戻って来てくれ」

「絶対に嫌です」

「どうしてだ」

「価値がないからです。
婚約を無理矢理解消させて口説いて結婚したくせに3年子ができなかったからと、行き場のない私を捨てるクズ男。
執拗にいびり、避妊薬を飲ませ続けた頭のおかしな母親。
卑怯な息子の犯罪紛いの非道を知っていて3年の条件を付け、頭のおかしな妻が醜い醜態を晒しても無関心をきめこむ名ばかり当主の父親。
そこに戻れと?何の拷問ですか」

「なっ!」

「エリカ!」

「無理矢理連れ戻したら犯罪ですからね。
恨みを持った人間を側に置くことがどんなことか身をもって分からせましょうか?」

「ならばアリエスだけ返してもらおう」

「エリカ、君らしくないぞ。どうしてしまったんだ」

「お陰様で無力な女でいるのを止めました。
それにアリエスはフェルス家と血の繋がりがあろうとも私だけの子です。何故なら、フェルス家は自ら親権を放棄したからです」

「何を言っているんだ」

「婚姻中の妊娠でも、離縁した時点で胎児を放棄したとみなすと法律で定められています。産んだ母親だけが親権を持つのです。
普通はもう少し様子を見て医師の診察を受けさせるらしいですね。ですが一刻も早く私を追い出したかったフェルス家は、それをすることもなく私を平民におとしました。
明確な意思表示です。誰に泣き付いてもどうにもなりませんよ。
私を殺しても親権はフェルス家に移りません。もう私の死後のアリエスの受け入れ先は決まっていますから無駄ですよ」

「考え直してくれ。あの2人は追い出すから」

「あの2人?夫人と新しい妻ですか?
私には関係ありません。伯爵夫妻とランドールとその妻と子がフェルス家の籍から抜けるなら、私とアリエスが戻ってもいいですよ?
まあ、その後解体しますけど」

「フェルス伯爵。
エリカに非は1つもありませんが、あなた方にはあります。嫁と胎の子を捨てたことは覆りません。
エリカとアリエスを守るためならエメール家は何でもやりますよ。
二度とエリカとアリエスの前に現れないでください。
エリカ、行こう」

「はい、リュカ様」

エリカは侯爵令息に手を繋がれ去っていった。


私と父上はフェルス邸に戻るまで無言だった。


フェルス邸に戻り、エリカと結婚したときの肖像画を眺めていた。

金色の髪 私と同じ濃い青の瞳 小さな手。
パパと呼ばれているのは私のはずだった。

母上を呼んで父上が事の顛末を話した。

「エリカがランドールの息子を産んでいた!?」

「そうだ。最後の避妊に失敗したらしい。ランドールの幼少期によく似ていた」

「連れ帰らなかったのですか!」

「確認したが、追い出した時点で胎児に関する権利を放棄したことになっている」

「放棄などしていません!」

「妊婦を追い出した時点で放棄になると法律が定めているんだ」

「そんな!うちの唯一の跡取りになる孫なのですよ!」

「おまえが画策して男児を産める嫁を追い出して、息子に似ない女児しか産まない女を連れて来たのだろう」

「っ!」

「エメール侯爵家がエリカを守っていて手が出せん。
さっさとキシリナにランドールに似た男児を産ませろ!」


それ以来フェルス家はおかしくなった。
父上は母上とキシリナに私に似た男児を産めと毎日催促するし、母上は追い出されるのを恐れて男児が産まれる迷信を信じて馬鹿みたいなことをして祈っている。
そして私は、

ギシッギシッギシッギシッ

「エリカっ!エリカっ!愛してるよ」

「ううっ…」

「エリカ、今度は私に似た女の子を産んでくれ」

「ううっ…」

「エリカ!!」

キシリナをエリカに見立てて抱くようになり、その間中キシリナは泣いているがどうでもいい。


その後キシリナはまた妊娠して女児を産み、母上とキシリナと娘3人をまとめて実家へ帰した。

離縁後、父上は後妻を娶り私も三度目の結婚をした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

わたしの婚約者なんですけどね!

キムラましゅろう
恋愛
わたしの婚約者は王宮精霊騎士団所属の精霊騎士。 この度、第二王女殿下付きの騎士を拝命して誉れ高き近衛騎士に 昇進した。 でもそれにより、婚約期間の延長を彼の家から 告げられて……! どうせ待つなら彼の側でとわたしは内緒で精霊魔術師団に 入団した。 そんなわたしが日々目にするのは彼を含めたイケメン騎士たちを 我がもの顔で侍らかす王女殿下の姿ばかり……。 彼はわたしの婚約者なんですけどね! いつもながらの完全ご都合主義、 ノーリアリティのお話です。 少々(?)イライラ事例が発生します。血圧の上昇が心配な方は回れ右をお願いいたします。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします

天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。 側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。 それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

処理中です...