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兄だった人(サリオン)
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【 サリオンの視点 】
登城すると、聴取ではなかった。まあ、兵士と一緒だったからな。
陛下達の他に居たのは実兄だった。
「久しぶりだな、サリオン」
「会話は久しぶりですね、マゾン侯爵」
「……」
陛「さて、昨夜問題を起こしたとされる男はハリス・マゾン。エリック・マゾン侯爵の次男だ。
彼は同意の上だったと主張している」
私「ならば靴は廊下に転がっていません。
酔った女の口にハンカチを詰めて抱え上げて無理矢理部屋に連れ込み押さえ付けて事を成そうとするのが同意?」
侯「…多少強引だったとしても睾丸を潰すのはやり過ぎだ。もうハリスは子を望めないんだぞ」
私「その方がいいだろう。
これ以上被害者が増えたり強姦魔の子孫を残すよりマシだ。
酔った女に忍び寄り介抱を装うところや いきなりハンカチを口に押し込むところからすると、何度かやらかしているのだろう。
ウィンストン製の自白剤を飲ませてもいいんだぞ?」
陛「だが、未遂だと聞いた」
私「私が潰したから未遂で済んだんです」
侯「生娘でもあるまいし」
私「陛下はどうお考えですか?」
陛「……」
私「あ~なるほど。貴族籍の女性でも生娘でなければ犯されても構わないと?制裁もできないと?
それを陛下がお認めになるなら、触れ回らないとなりませんね」
陛「伯爵?」
私「陛下のお気に入りの孫娘が婚姻したばかりですね?初夜も終えたでしょうから生娘ではないでしょう。公爵家の次男と恋に落ちたんでしたっけ?
これからは犯しても無罪放免と分かれば多くの男達が喜ぶでしょうね。
とても可愛らしいと社交界で人気だとか。
男達が行列を作って順番待ちをするでしょうね。
貴族だけじゃなく平民も混じる日が来ますよ。
兵士も御者も執事も代わる代わる楽しむことでしょう」
陛「なっ!」
私「他人事じゃありませんよ 陛下。
昨日エステルが飲んだのはたった一杯。
婚家で虐げられ、婚家のために必死で働き、10年以上まともな社交にも出られず酒も口にする余裕が無かった女性が、緊張して眠れず、不安の中でたった一杯飲んで酔ってしまった。その彼女を誰が責めるでしょうか。
陛下の孫娘も体調によっては酔いが回ることもあるでしょう。そこに後ろから忍び寄り、口にハンカチを突っ込んで抱え上げて、」
陛「もういい。分かった。失言だった。
せめてウィンストン製の薬を使わせてやってくれないか?」
私「ウィンストンの一人娘を襲っておいてですか?
被害者の家の商品を使いたいと?」
侯「息子が死んでしまう!」
私「侯爵。女は犯されたら自害する者も少なくないんだよ。
陛下。自白剤で過去の犯罪を全部打ち明けさせて、全てに立件し公にして処罰するなら構いません。好きなだけお使いください。必要な薬を届けさせます」
陛「どうする?侯爵」
侯「釈放は」
陛「示談が成立しないと無理だ。
相手は成人女性だから、伯爵が代理人として任命されない限り被害者との直接交渉が必要だが、性被害に遭った女性にすぐ示談の相談に行くのは常識ではあり得ない。数日かかる場合もあれば何年とかかることもある」
侯「サリオン、兄弟じゃないか」
伯「こんな時だけ兄弟?
侯爵家にいた時も私のことなど無視をしただろう。
養子になってからだって、一度でも手紙を送ったか?会いに来たか?
息子を信じてるなら挑戦すればいいじゃないか。他家の薬とは違って2日もあれば元通りになる。
そうですよね?陛下」
陛「試したらどうだ。一番早く救えるぞ」
侯「……」
伯「これで証明できましたね。
侯爵は息子が何人か女性を犯してきたが、示談にするなり圧力をかけるなりして揉み消してきたということです。
矯正出来ていない野獣が本来参加できるはずのないパーティにどうやって潜り込めたのでしょう。
侯爵が出席していたなら息子は来れないはずです」
陛「どうなっている」
侯「…息子が来たいと言って…特別に…」
陛「誰が命じて通した」
侯「私です」
陛「侯爵としてか?城勤めで人事に携わる部署にいる者としてか?」
侯「……」
陛「よく分かった」
陛下は兄の息子を運ばせて自白剤を飲ませた。
“15歳のとき入りたてのメイドを殴ってヤった”
“3人くらい続けると、年増のメイドしか就かなくなった”
“成人前に領内の男爵家の娘をヤった”
“学園では適当に口説いたり、騙して倉庫に連れ込みヤった”
“パーティや夜会に出るようになると……”
余罪が思ってたよりも多かった。
ハ「昨日は歳上だが美人を見つけた。いい女だった。
会場から出るところを追いかけた。ふらついていたからチャンスだと思った」
陛「抵抗はしなかったのか?」
ハ「酔った女の抵抗など大したことはない。口にハンカチを突っ込んで持ち上げて運べばいい」
陛「何故そのような事を続けるんだ?犯罪だろう」
ハ「父上が勝手に無かったことにしてくらるから。
父上だってやっているし」
陛「は?」
侯「何を馬鹿な!」
ハ「子供の頃に見たんだ。父上が滞在先の屋敷の娘を犯しているのを」
侯「アレは合意で、」
ハ「娘は泣いていた。父上は“没落させるぞ”と脅していた。
泊まりに来た父上の部下の妻を犯していた時もあった。“夫が職を失ってもいいのか”と言いながら、犬のように犯していた。
パーティで、」
侯「止めてくれ!!」
私「あ~ 強姦の英才教育だったんですね。
それなら少し温情を見せましょう。
構いませんよ。ウィンストンの薬を使わせてあげてください」
陛「侯爵、解雇だ」
侯「へ、陛下っ」
陛「そして爵位は父君に戻す」
侯「陛下?」
陛「其方と其方の子が侯爵位を継ぐことは許さない。其方は二度と いかなる爵位も授かれない。
マゾン籍から抜けろ」
侯「陛下!それだけは!」
陛「息子共々終身労働刑がいいか?」
侯「まさか」
陛「ハリスはマゾン家から抜けて終身労働刑を言い渡す。エリックもマゾンから抜けて平民として生きていけ。
この後、執行官がマゾン侯爵邸に向かい詳細を説明する」
侯「そんな、どうか内密に、」
陛「それは無理だろう。其方の妻も長男も何故夫が父が平民になったか、何故息子が自分が次期侯爵になれないのか、何故息子が弟が重罪人として刑罰を受けるのか知らねば。
長男の婚姻はもうすぐ。急いで先方に説明しないと」
侯「説明…」
陛「普通は破談だ」
侯「何でもします!何でもしますから、どうか長男に継がせてやってください!」
私「別に弟の子でもいいじゃないか」
侯「サリオン!お前のせいだ!お前とあの出戻りの、」
私「陛下、失礼してもよろしいでしょうか。
刑は決まったので、私もマゾン領への薬などの出荷を止めに行かないといけませんので。
近隣の領地も必要最低限の分しか卸さないようにします」
侯「なっ!サリオン!!」
私「エステルを侮辱することは許せない。
何故薬の供給が止まるのか、制限がかかるのか通達を出します」
侯「サリオン!」
私「ウィンストン領に立ち入りを禁じます。王都の屋敷にも近寄らないでください。
ウィンストン家の者への接触も禁じます」
陛「すまなかったな」
私「こちらこそ失礼いたしました」
屋敷に戻ると隠れたエステルを探すところから始まった。
登城すると、聴取ではなかった。まあ、兵士と一緒だったからな。
陛下達の他に居たのは実兄だった。
「久しぶりだな、サリオン」
「会話は久しぶりですね、マゾン侯爵」
「……」
陛「さて、昨夜問題を起こしたとされる男はハリス・マゾン。エリック・マゾン侯爵の次男だ。
彼は同意の上だったと主張している」
私「ならば靴は廊下に転がっていません。
酔った女の口にハンカチを詰めて抱え上げて無理矢理部屋に連れ込み押さえ付けて事を成そうとするのが同意?」
侯「…多少強引だったとしても睾丸を潰すのはやり過ぎだ。もうハリスは子を望めないんだぞ」
私「その方がいいだろう。
これ以上被害者が増えたり強姦魔の子孫を残すよりマシだ。
酔った女に忍び寄り介抱を装うところや いきなりハンカチを口に押し込むところからすると、何度かやらかしているのだろう。
ウィンストン製の自白剤を飲ませてもいいんだぞ?」
陛「だが、未遂だと聞いた」
私「私が潰したから未遂で済んだんです」
侯「生娘でもあるまいし」
私「陛下はどうお考えですか?」
陛「……」
私「あ~なるほど。貴族籍の女性でも生娘でなければ犯されても構わないと?制裁もできないと?
それを陛下がお認めになるなら、触れ回らないとなりませんね」
陛「伯爵?」
私「陛下のお気に入りの孫娘が婚姻したばかりですね?初夜も終えたでしょうから生娘ではないでしょう。公爵家の次男と恋に落ちたんでしたっけ?
これからは犯しても無罪放免と分かれば多くの男達が喜ぶでしょうね。
とても可愛らしいと社交界で人気だとか。
男達が行列を作って順番待ちをするでしょうね。
貴族だけじゃなく平民も混じる日が来ますよ。
兵士も御者も執事も代わる代わる楽しむことでしょう」
陛「なっ!」
私「他人事じゃありませんよ 陛下。
昨日エステルが飲んだのはたった一杯。
婚家で虐げられ、婚家のために必死で働き、10年以上まともな社交にも出られず酒も口にする余裕が無かった女性が、緊張して眠れず、不安の中でたった一杯飲んで酔ってしまった。その彼女を誰が責めるでしょうか。
陛下の孫娘も体調によっては酔いが回ることもあるでしょう。そこに後ろから忍び寄り、口にハンカチを突っ込んで抱え上げて、」
陛「もういい。分かった。失言だった。
せめてウィンストン製の薬を使わせてやってくれないか?」
私「ウィンストンの一人娘を襲っておいてですか?
被害者の家の商品を使いたいと?」
侯「息子が死んでしまう!」
私「侯爵。女は犯されたら自害する者も少なくないんだよ。
陛下。自白剤で過去の犯罪を全部打ち明けさせて、全てに立件し公にして処罰するなら構いません。好きなだけお使いください。必要な薬を届けさせます」
陛「どうする?侯爵」
侯「釈放は」
陛「示談が成立しないと無理だ。
相手は成人女性だから、伯爵が代理人として任命されない限り被害者との直接交渉が必要だが、性被害に遭った女性にすぐ示談の相談に行くのは常識ではあり得ない。数日かかる場合もあれば何年とかかることもある」
侯「サリオン、兄弟じゃないか」
伯「こんな時だけ兄弟?
侯爵家にいた時も私のことなど無視をしただろう。
養子になってからだって、一度でも手紙を送ったか?会いに来たか?
息子を信じてるなら挑戦すればいいじゃないか。他家の薬とは違って2日もあれば元通りになる。
そうですよね?陛下」
陛「試したらどうだ。一番早く救えるぞ」
侯「……」
伯「これで証明できましたね。
侯爵は息子が何人か女性を犯してきたが、示談にするなり圧力をかけるなりして揉み消してきたということです。
矯正出来ていない野獣が本来参加できるはずのないパーティにどうやって潜り込めたのでしょう。
侯爵が出席していたなら息子は来れないはずです」
陛「どうなっている」
侯「…息子が来たいと言って…特別に…」
陛「誰が命じて通した」
侯「私です」
陛「侯爵としてか?城勤めで人事に携わる部署にいる者としてか?」
侯「……」
陛「よく分かった」
陛下は兄の息子を運ばせて自白剤を飲ませた。
“15歳のとき入りたてのメイドを殴ってヤった”
“3人くらい続けると、年増のメイドしか就かなくなった”
“成人前に領内の男爵家の娘をヤった”
“学園では適当に口説いたり、騙して倉庫に連れ込みヤった”
“パーティや夜会に出るようになると……”
余罪が思ってたよりも多かった。
ハ「昨日は歳上だが美人を見つけた。いい女だった。
会場から出るところを追いかけた。ふらついていたからチャンスだと思った」
陛「抵抗はしなかったのか?」
ハ「酔った女の抵抗など大したことはない。口にハンカチを突っ込んで持ち上げて運べばいい」
陛「何故そのような事を続けるんだ?犯罪だろう」
ハ「父上が勝手に無かったことにしてくらるから。
父上だってやっているし」
陛「は?」
侯「何を馬鹿な!」
ハ「子供の頃に見たんだ。父上が滞在先の屋敷の娘を犯しているのを」
侯「アレは合意で、」
ハ「娘は泣いていた。父上は“没落させるぞ”と脅していた。
泊まりに来た父上の部下の妻を犯していた時もあった。“夫が職を失ってもいいのか”と言いながら、犬のように犯していた。
パーティで、」
侯「止めてくれ!!」
私「あ~ 強姦の英才教育だったんですね。
それなら少し温情を見せましょう。
構いませんよ。ウィンストンの薬を使わせてあげてください」
陛「侯爵、解雇だ」
侯「へ、陛下っ」
陛「そして爵位は父君に戻す」
侯「陛下?」
陛「其方と其方の子が侯爵位を継ぐことは許さない。其方は二度と いかなる爵位も授かれない。
マゾン籍から抜けろ」
侯「陛下!それだけは!」
陛「息子共々終身労働刑がいいか?」
侯「まさか」
陛「ハリスはマゾン家から抜けて終身労働刑を言い渡す。エリックもマゾンから抜けて平民として生きていけ。
この後、執行官がマゾン侯爵邸に向かい詳細を説明する」
侯「そんな、どうか内密に、」
陛「それは無理だろう。其方の妻も長男も何故夫が父が平民になったか、何故息子が自分が次期侯爵になれないのか、何故息子が弟が重罪人として刑罰を受けるのか知らねば。
長男の婚姻はもうすぐ。急いで先方に説明しないと」
侯「説明…」
陛「普通は破談だ」
侯「何でもします!何でもしますから、どうか長男に継がせてやってください!」
私「別に弟の子でもいいじゃないか」
侯「サリオン!お前のせいだ!お前とあの出戻りの、」
私「陛下、失礼してもよろしいでしょうか。
刑は決まったので、私もマゾン領への薬などの出荷を止めに行かないといけませんので。
近隣の領地も必要最低限の分しか卸さないようにします」
侯「なっ!サリオン!!」
私「エステルを侮辱することは許せない。
何故薬の供給が止まるのか、制限がかかるのか通達を出します」
侯「サリオン!」
私「ウィンストン領に立ち入りを禁じます。王都の屋敷にも近寄らないでください。
ウィンストン家の者への接触も禁じます」
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