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変化 E

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【 エリアスの視点 】


「シャルロット、機嫌を直してくれ」

「イヤ!」

婚姻10年を迎えようとしている時に夫婦は揉めていた。エリアスが娼館に行ったと聞いたからだ。

「うちの商品を使っているから確認しに行っただけだ」

「孕まないかどうかの確認を自ら試したのね」

「聞き取りをしただけだ。仕事なんだよ」

「じゃあ、私も個人資産で婦人向けの娼館を作ろうかしら。可愛くて若い男の子や 逞しくい若い男を雇って、与えた物の使い心地を聞いて回らなくちゃ」

「シャルロット!」

「仕事ならいいって言ったばかりじゃない」

俺が歩み寄らなかった結果、シャルロットは侯爵家から補佐を借り、婦人向けデートクラブの事業計画を少しずつ進めていた。

それに根を上げたのは やっぱりエリアスだった。


「次からは他の者を行かせるから許してくれ!頼む!」

「今、面接中だから後にしてもらえるかしら」

今日は成人したての可愛らしい外見の男の子と、20歳の逞しい男が面接に来ていた。

「悪かったね。これで帰ってくれないか」

2人にお詫びの金を支払い帰ってもらった。

「私 驚いたの。婚姻して10年経つと“仕事なんだよ”って言うのよ?」

「悪かった」

「20年後はもう止めもせず、勝手にやればって態度を取りそうだということも分かったわ。
今まで極力エリアス様が一緒ではない外出は控えて来たけど、それは止めるわね」

「シャルロット」

「私の生活はほとんどエリアス様を軸にしたものだけど、本来エリアス様の望むレベルは過剰なの。私だけ制限だらけなんておかしいのよ。貴方が変わったように私も変わることにするわ」

「男と女じゃ違うこともあるんだ」

「逆を言えば女だからこそ許せないこともあるということよ。男と女じゃ違うんでしょう?」

ここで俺は 重ねて3つ目の失言をしてしまう。

「シャルロット、疲れてるんだ。揚げ足をいちいち取らないでくれ」

「そうですわね」

シャルロットは笑顔で返し、応接間を出た。
そしてルイーズに耳打ちをした。



1時間後、使用人から知らせを受けて駆けつけ、馬車に乗り終えたシャルロットを止めた。

「双子を連れて何処へ行くんだ!」

「跡継ぎのミリアンは連れて行けませんが双子は違いますもの。実家に戻りますわ」

「そんなこと、許すわけないだろう!」

「貴方の許可は必要ありません」

「シャルロット!」

「これ以上 私に構うとまた疲れますわよ。貴方の仰る通り、私は貴方の疲れの元だと自覚して離れて差し上げるだけです。
お忙しい身なのですから押し掛けないでくださいね。更に疲れてしまいますから」

シャルロットは御者に合図を送り馬車を出発させてしまった。


娼館へは潤滑剤の使い心地の聞き取りに出向いた。
娼婦からこんな物があったらいいとか、こうなっていたらいいなど、新商品や改善のアイディアを貰おうとしていた。娼館で使うなら夫婦や恋人との閨事でも使う可能性は高い。

事前にシャルロットにその話をしておけば良かったのに多忙故、省いてしまった。

そして3重の失言。

シャルロットによく似た双子を連れて行かれてしまった。

侯爵家は近いからいつでも迎えに行けると思っていたのがまずかった。翌日の昼間に訪ねると、シャルロット達は領地へ向かったと返答された。
とても侯爵家の領地に迎えに行く余裕がない。

手紙を出したが、双子が書いた簡単な言葉だけが返事となって帰ってきた。
“ともだち”“たのしい”しか読み取れなかった。

シャルロットはたった一度、“ご多忙のエリアス様には手紙などお手間でしょうから今後は結構です。ご自愛くださいませ”と返事を寄越した後は届かなかった。

時々、義母上から手紙が届いた。
“3人とも元気”“心配ない”

だけど嫌な一文が含まれていた。
“シャルロットは自由にさせる”

双子連れで他の男と再婚しようというのか。


長男から溜息を吐かれた。

「母上は美人です。3人子がいるとは思えないほど若く見えます。友人の母親と比べてもうちが断トツです」

母上からも溜息を吐かれた。

「シャルロットは貴方の希望をずっと聞いてきたわ。
きっとやりたいことはたくさんあったでしょう。
社交に出て友人と会ったり、増やしたりしたかったはずよ」

父上は険しい顔をしていた。

「変わったのはお前だ。忙しいのは補佐達を正しく使えていないからだ。自分で確認したいと現場に出過ぎてしまっている。何故任せない。自分がやりたいようにやって多忙にしてしまったツケを妻に払わせるな。

お前がシャルロットの心を求めていた頃に同じ言葉を選んだか?選ばないだろう。嫌われると知っているからだ。だがその言葉を10年後の今使った。
シャルロットの言う通り、20年後はもっと悪くなっているだろうと思うのは当然だ。私でも思うからな。

シャルロットの実家はしっかりとした家門だし、元々シャルロットを尊重するご両親だ。
お前の妻は我慢して泣かなくていい身分だということを忘れたようだな。

そんなに多忙にして妻を蔑ろにするなら離縁すればいいじゃないか。まあ、放っておいてもそうなるだろうな」

あの頃にそんなことを言ったら嫌われるし、言おうとも思わなかった。確かに変わったのは俺だ。
このまま忙しくし続けたらもっと余裕もなくなる。


翌日、補佐達と話し合った。


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