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求婚

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パーティも終盤。新郎新婦は既に退場している。次々と出席客は減ってリシュー家とゲルズベル家だけになっていた。

「もうお開きですよ」

「まだもう少し、あと35分待ってくれ」

「片付けもあるのよ?それにおじ様達は明日も大変なの」

「いいのよ、ユリナ」

「そうだぞ。ジーン王子殿下がわざわざ息子のためにこの日を選んで来てくださった。ゲルズベル家の子孫に語り継げるような有難い出来事なんだ。もっと一緒に過ごしたい。ユリナもそうだろう?」

「はい、おじ様 おば様」

ジーンくんはまた自分がやらかした問題行動などを話しては両親やおじ様達を苦笑いさせている。
笑いたくても笑えないに決まっているじゃないの。


そして日付けが変わる鐘が鳴った。

ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ……

鳴り終わるとジーンくんは私の手を取り立ち上がらせると跪きポケットから箱を取り出した。

「ユリナ・リシュー子爵令嬢。貴女を愛しています。
私と結婚をしてください」

「…はい?」

「これは契約書だ。
俺がしてはならないことは61項あるが、君は
浮気しないこと、側にいること、無視しないこと、黙って出かけないこと、行き先次第では俺を同伴すること、同じベッドで眠ること。これだけだ」

「…しっかりありますね」

「俺は61項からさらに枝分かれして罰則まである。付け足してもいい」

「友人を失くしたくありません」

「失くさない。鉄壁を約束しよう」

「私の結婚相手の条件を思い出してください」

「身分が低くて、普通の貴族の暮らしができる程度で、穏やかな男だろう?」

「全部真逆じゃないですか」

「金は調節すればいい。そんなに要らないと言えば済む。ユリナが浮気しなければ穏やかな男でいよう」

「王子じゃないですか」

「そうだがちょっと違う」

「また何かやらかしたのですか!?」

「そうだ。ついさっき、本日から俺の名前はゼルベス王国のジーン・リシュー子爵になった」

「はい??」

「父上とエドワード兄上に相談したら、領地無しでリシュー子爵という身分を作ってもらった。兄上の仕事を手伝うことで給金をもらう。
そして継承権放棄をして分与金をもらい、ユリナと婚姻して祝い金をもらう」

「えっと…リシュー?」

「同じ名前だからいいだろう?爵位も一緒だ。何の変化もない」

「……あれ?」

「さあ、指輪を」

私の薬指に豪華な婚約指輪がはめられた。

「こ、これ、高価過ぎます!」

「気になるのは値段だけか。良かった。
これは父上からもらったんだ。曽祖母の肩身らしい」

「だ、駄目じゃないですか!!」

「父上がユリナの婚約指輪にと渡してくれたんだ。断る方が不敬じゃないか?」

「っ!」

「もうユリナのご両親とゲルズベル伯爵夫妻にはお許しをいただいている。後はユリナの返事だけだったが良かった」

「え、ジーンくん!?」

「呼び方、戻ったな」

「私は、」

「ということで、たった今、ユリナと私ジーンは婚約しました。後は署名だけです」

「良かったわ。ユリナ。早く署名してしまいなさい」

「おば様…」

「思い切りがいい男だ。ユリナ、署名しなさい」

「おじ様…」

「どっちで式を挙げるのかしら?」

「お母様…」

「ゼルベスでもこちらでもユリナと神に誓いをたてます。」

「ユリナを連れて里帰りしてくれるのですね?」

「もちろんです。ユリナを抱えてでも引きずってでも里帰りします」

「決まりだな、ユリナ」

「お父様…」

「ユリナ、俺がこの国に来ても良かったが そうなると元婚約者が黙っていないかもしれない。
君を何処かに連れ去って、もう一つの既成事実を成すかもしれない。だから君をゼルベスに連れて行くことにした。住まいも王宮なら尋ねても来られない。諦めがつくはずだ。これはロジェ・エンヴェルが前を向くためのものでもある」

もう一つの既成事実…つまり妊娠。

「本当にそれでいいのですか?王子様から子爵になって継承権も手放して私なんかと…」

「ユリナを愛しているから本望だ。まだ気持ちが切り替えられないだろうが、元婚約者よりもユリナに好きになってもらえるように努力する」

長い沈黙の後に

「ジーンくん。よろしくお願いします」

「ユリナっ!!」

きつく抱きしめられた後は、ペンを握らされて署名しろと煽られてしまった。


翌日の昼食時にはアラン様と奥様からお祝いの言葉をいただいた。


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