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結構です。
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刃物研磨の仕事をお手伝いしている。
叔母様は領地へ帰り、私はイオス副団長の屋敷に下宿することになった。
あくまでお手伝いであって就職ではない。
何日なのか何ヶ月なのか分からないので、お城の部屋は借りたくなかった。
ホテルの安い部屋から通うつもりだったけど、イオス副団長が許してくれなかった。
伯母様と副団長が話し合った結果 下宿が決まった。
「なんでだよ。部屋なんか俺の部屋の近くに用意してやったのに」
はい?
「嫌な予感がするので遠慮します」
「嫌な予感ってなんだよ」
「プライベートが侵害される予感です」
承諾しないで伯母様と帰れば良かったのかも。
「俺達の仲だろう?」
「ジーンくん。何しに来たのですか?」
「あ、そうだ。兄上が会いたいって」
「浮気している第二王子殿下ですか?」
「エドワード兄上だよ」
王太子殿下じゃない!
「いつですか」
「今」
「呼んで来いと言われて呼びに来たのに かれこれ30分以上も無駄話をしていたということですか」
「無駄話じゃないぞ」
「はぁ~」
第四王子のジーンくんに連れてこられたのは王太子宮の裏だった。
え…なんだか怖いんですけど。
「こちらでお待ち下さい」
第一王子で王太子エドワード殿下は藁人形に向けて剣を振り下ろした。
ザシュッ
王太子宮の入り口から案内役をしていた王太子殿下の侍従が彼に近寄った。
何か言葉を交わすと王太子殿下に手招きされた。
「いくぞ」
「はい」
ジーンくんに引っ張られて王太子殿下の側に行くと持っていた長剣を差し出された。
「ユリナでいいな」
「え?」
「ユリナ、長剣は駄目か?あの切れ味の悪さを見ただろう。何とかしてくれたら褒美を出そう」
「兄上、ユリナは、」
「私はユリナに聞いているのだ」
「私が男であれば叶うはずですが、私の力では長剣は持てないのです。しかも片手で難なく扱えるくらいでないと作業に支障が出るどころか怪我をしたり剣を落としてしまいます。中剣でも無理なものもございます。どうかご容赦ください」
「持ってみろ」
「あの、」
「片手で持ってみろ」
「剣先を地につけていただけますか」
王太子殿下は剣先を地面に刺した。私が柄を握ると 王太子殿下は手を離した。
「危ないので下がっていただけますか」
王太子殿下とジーンくんが離れたのを確認してから持ち上げよとするも 僅かに剣先が動いた程度で地面から離れることはなかった。
「ふむ。女はこれほど非力なのか。女剣士もいるからユリナが大袈裟に言っているのかと思った」
そう言いながら長剣を取り上げて付き添いの兵士に渡した。
「君のおかげでセドリックの仮面が剥がれてジーンが前を向き出したのだな?
それで、何を褒美に臨む?」
「私は何もしておりません。褒美など身に余ることでございます」
「ジーンの妻の座を狙っているのだろう?」
「兄上!?」
「私は子爵家の娘にすぎません。王子妃など望むわけがございません」
「だがユリナは普通の子爵令嬢ではない。剣を最高の切れ味に変えてしまう腕を持つ。それに 今は使用禁止となった隣国の宝石のカットもユリナのものだと聞いたが、違うのか?」
「そうです」
「ジーンは第四王子だから価値を証明した子爵令嬢なら十分狙えるぞ」
「狙いません」
「…そうか。
剣は見事だ。引き続き携わってくれると嬉しい。セドリックとジーンの件、ありがとう。
呼び立てて悪かった。
ドバルド、彼女を職場まで送ってくれ。
ジーンは残れ」
「俺がユリナを送ってから戻ってきます」
「いいから お前は残れ」
「っ!」
「私はこれで失礼いたします」
正直、無駄な時間だったなと思った。
それに王子妃を狙ってるだなんてあり得ないのに。そんな風に見せてしまったのかしら。気を付けなくちゃ…というか、私は何もしていないのに…。
【 第四王子ジーンの視点 】
エドワード兄上は一体何を言い出すんだ!?ユリナに俺の妻の座を狙っているのかなどと聞いて。
「座れ」
「失礼します」
外に置かれた椅子に座るとメイドが果実水をテーブルに置いて離れた。
「おまえ、うかうかしていると掻っ攫われるぞ」
「はい?」
「あの娘が好きなんだろう」
「なっ、彼女は…友人です」
「なあ、ジーン。 おまえを王子としてではなく 人として見てくれる女は滅多に現れないぞ。しかも出来の良いとは言えず 問題児だったおまえに真っ直ぐ接してくれる女だ。分かっているから付き纏っているんだろう?
ユリナの元婚約者は公爵令嬢と寝て妊娠させたらしい。ユリナ側は婚約破棄をして侯爵家側に罰を与えた。侯爵家側は維持を望んだようだがユリナは拒んだ。
さっきの感じだと 彼女が求めるものは誠実さだろう。元婚約者は彼女へ 公女との一夜について説明をしなくてはならなかったのに後回しにしてしまった。何も知らなかったユリナに公女が別れろと迫ったらしい。彼女には不誠実に映ったのだろうな。
私もジーンには誠実な男であってもらいたいと思っている。
私はおまえを城に残すつもりだ。それにはユリナは適任だと思う。おまえが変わるきっかけを作っているのはユリナだということを城の者たちが認識しているからな」
「ユリナを調べたのですか!?」
「当然だろう。いくら凄腕でも武器部門に他国の令嬢を採用するならば調査は必須だ」
「確かにそうですね」
「セドリックに婚約を壊されて以来 一人でいるおまえに ユリナは天からの恵みだ。
さっきの顔 見たか?ジーンの妻の座を狙っているのかと聞いたら、こいつ何言っているんだ?って顔していたぞ。王子とこれだけ距離が縮まったにも関わらず全くその気が無い。今頃、この無駄な時間を取っていないで剣の一本でも仕上げたかったな などと思いながら職場に向かっているだろうな。
いいか、ジーン。元婚約は既成事実でユリナを手に入れた男だ。侯爵家は胎の子を別の男との子だろうと期待している。公女は既に平民落ちしたから、胎の子が自分の子だとしても正妻にはしない。
ユリナを諦めてはいないだろう。帰国したら話し合いの場が持たれるかもしれない。
公女は幻覚剤を用いて事を成したらしい。だから浮気というより被害者だ。さらに胎の子が別の男との子だという話になれば復縁も有り得る。
だが、おまえと婚約したらユリナは絶対に裏切らないはずだ。
どうしたいのか自分の気持ちと向き合って早めに答えを出せ」
「…はい」
兄上に大事な事を言われているのに、俺は ユリナの婚約するきっかけが既成事実だったことに驚いていた。男を知っているようには見えなかったからだ。
叔母様は領地へ帰り、私はイオス副団長の屋敷に下宿することになった。
あくまでお手伝いであって就職ではない。
何日なのか何ヶ月なのか分からないので、お城の部屋は借りたくなかった。
ホテルの安い部屋から通うつもりだったけど、イオス副団長が許してくれなかった。
伯母様と副団長が話し合った結果 下宿が決まった。
「なんでだよ。部屋なんか俺の部屋の近くに用意してやったのに」
はい?
「嫌な予感がするので遠慮します」
「嫌な予感ってなんだよ」
「プライベートが侵害される予感です」
承諾しないで伯母様と帰れば良かったのかも。
「俺達の仲だろう?」
「ジーンくん。何しに来たのですか?」
「あ、そうだ。兄上が会いたいって」
「浮気している第二王子殿下ですか?」
「エドワード兄上だよ」
王太子殿下じゃない!
「いつですか」
「今」
「呼んで来いと言われて呼びに来たのに かれこれ30分以上も無駄話をしていたということですか」
「無駄話じゃないぞ」
「はぁ~」
第四王子のジーンくんに連れてこられたのは王太子宮の裏だった。
え…なんだか怖いんですけど。
「こちらでお待ち下さい」
第一王子で王太子エドワード殿下は藁人形に向けて剣を振り下ろした。
ザシュッ
王太子宮の入り口から案内役をしていた王太子殿下の侍従が彼に近寄った。
何か言葉を交わすと王太子殿下に手招きされた。
「いくぞ」
「はい」
ジーンくんに引っ張られて王太子殿下の側に行くと持っていた長剣を差し出された。
「ユリナでいいな」
「え?」
「ユリナ、長剣は駄目か?あの切れ味の悪さを見ただろう。何とかしてくれたら褒美を出そう」
「兄上、ユリナは、」
「私はユリナに聞いているのだ」
「私が男であれば叶うはずですが、私の力では長剣は持てないのです。しかも片手で難なく扱えるくらいでないと作業に支障が出るどころか怪我をしたり剣を落としてしまいます。中剣でも無理なものもございます。どうかご容赦ください」
「持ってみろ」
「あの、」
「片手で持ってみろ」
「剣先を地につけていただけますか」
王太子殿下は剣先を地面に刺した。私が柄を握ると 王太子殿下は手を離した。
「危ないので下がっていただけますか」
王太子殿下とジーンくんが離れたのを確認してから持ち上げよとするも 僅かに剣先が動いた程度で地面から離れることはなかった。
「ふむ。女はこれほど非力なのか。女剣士もいるからユリナが大袈裟に言っているのかと思った」
そう言いながら長剣を取り上げて付き添いの兵士に渡した。
「君のおかげでセドリックの仮面が剥がれてジーンが前を向き出したのだな?
それで、何を褒美に臨む?」
「私は何もしておりません。褒美など身に余ることでございます」
「ジーンの妻の座を狙っているのだろう?」
「兄上!?」
「私は子爵家の娘にすぎません。王子妃など望むわけがございません」
「だがユリナは普通の子爵令嬢ではない。剣を最高の切れ味に変えてしまう腕を持つ。それに 今は使用禁止となった隣国の宝石のカットもユリナのものだと聞いたが、違うのか?」
「そうです」
「ジーンは第四王子だから価値を証明した子爵令嬢なら十分狙えるぞ」
「狙いません」
「…そうか。
剣は見事だ。引き続き携わってくれると嬉しい。セドリックとジーンの件、ありがとう。
呼び立てて悪かった。
ドバルド、彼女を職場まで送ってくれ。
ジーンは残れ」
「俺がユリナを送ってから戻ってきます」
「いいから お前は残れ」
「っ!」
「私はこれで失礼いたします」
正直、無駄な時間だったなと思った。
それに王子妃を狙ってるだなんてあり得ないのに。そんな風に見せてしまったのかしら。気を付けなくちゃ…というか、私は何もしていないのに…。
【 第四王子ジーンの視点 】
エドワード兄上は一体何を言い出すんだ!?ユリナに俺の妻の座を狙っているのかなどと聞いて。
「座れ」
「失礼します」
外に置かれた椅子に座るとメイドが果実水をテーブルに置いて離れた。
「おまえ、うかうかしていると掻っ攫われるぞ」
「はい?」
「あの娘が好きなんだろう」
「なっ、彼女は…友人です」
「なあ、ジーン。 おまえを王子としてではなく 人として見てくれる女は滅多に現れないぞ。しかも出来の良いとは言えず 問題児だったおまえに真っ直ぐ接してくれる女だ。分かっているから付き纏っているんだろう?
ユリナの元婚約者は公爵令嬢と寝て妊娠させたらしい。ユリナ側は婚約破棄をして侯爵家側に罰を与えた。侯爵家側は維持を望んだようだがユリナは拒んだ。
さっきの感じだと 彼女が求めるものは誠実さだろう。元婚約者は彼女へ 公女との一夜について説明をしなくてはならなかったのに後回しにしてしまった。何も知らなかったユリナに公女が別れろと迫ったらしい。彼女には不誠実に映ったのだろうな。
私もジーンには誠実な男であってもらいたいと思っている。
私はおまえを城に残すつもりだ。それにはユリナは適任だと思う。おまえが変わるきっかけを作っているのはユリナだということを城の者たちが認識しているからな」
「ユリナを調べたのですか!?」
「当然だろう。いくら凄腕でも武器部門に他国の令嬢を採用するならば調査は必須だ」
「確かにそうですね」
「セドリックに婚約を壊されて以来 一人でいるおまえに ユリナは天からの恵みだ。
さっきの顔 見たか?ジーンの妻の座を狙っているのかと聞いたら、こいつ何言っているんだ?って顔していたぞ。王子とこれだけ距離が縮まったにも関わらず全くその気が無い。今頃、この無駄な時間を取っていないで剣の一本でも仕上げたかったな などと思いながら職場に向かっているだろうな。
いいか、ジーン。元婚約は既成事実でユリナを手に入れた男だ。侯爵家は胎の子を別の男との子だろうと期待している。公女は既に平民落ちしたから、胎の子が自分の子だとしても正妻にはしない。
ユリナを諦めてはいないだろう。帰国したら話し合いの場が持たれるかもしれない。
公女は幻覚剤を用いて事を成したらしい。だから浮気というより被害者だ。さらに胎の子が別の男との子だという話になれば復縁も有り得る。
だが、おまえと婚約したらユリナは絶対に裏切らないはずだ。
どうしたいのか自分の気持ちと向き合って早めに答えを出せ」
「…はい」
兄上に大事な事を言われているのに、俺は ユリナの婚約するきっかけが既成事実だったことに驚いていた。男を知っているようには見えなかったからだ。
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