23 / 35
【リリー】孤独
しおりを挟む
【 リリーの視点 】
待合室を一室貸してもらって両家の話し合いになった。
父「娘が申し訳ないことをしました。心よりお詫び申し上げます」
ロ「幻覚剤を使う前に時を戻してくださるなら許します。それ以外で許す気はありません。
ユリナは俺の最愛の女なのに…そちらの狡賢くて執拗に獲物を追いかけ回す邪蛇のような公女のせいで俺の人生はめちゃくちゃですよ!」
父「申し訳ありません」
侯「ロジェ、そちらの女性はもう公女ではない。
先程平民になったばかりだ。公女と呼んではいけない」
ロ「そうでした」
侯「リリーさんをエンヴェル邸に連れて行きます」
ロ「父上!?」
侯「妊娠が事実ということならば仕方ないだろう」
ロ「この女を娶るなんて嫌です!」
侯「娶るとは言っていない。
彼女は平民だ。娶ったところで社交を禁じられてしまってはな。妻として役に立たないし 子供の付き添いもできない。
何が産まれるのか見届けないとな」
ロ「妾ということですか」
侯「5ヶ月後に胎から出てきた子がエンヴェル家の子だと認められたらな」
まずい!妊娠時期を偽ったから出産時期がズレているのに!
お父様と侯爵が合意をして、そのままエンヴェル邸に連れてこられた。同じ馬車に乗せてもらえず、公爵家の馬車で送ってもらった。
到着して馬車から降ろされた。侯爵を出迎えた夫人が一瞥すると使用人に指示を出していた。
夫人達が屋敷の中に入ると使用人が近寄った。
「エンヴェル邸のメイドの管理をしているハンナと言います。リリーさんは妊婦ということですのでトイレ付きの客室へ案内します。
お世話を付けますが妊娠した平民の居候という扱いをします。
私達はエンヴェル家の使用人であってリリーさんの使用人ではありません。
この屋敷の者も領地の使用人達もユリナ様をお慕いしております。優しくて気さくで慎ましくエンヴェルに有益な方でした。
知っていますか?エンヴェルカットのおかげで使用人達は全員半年に一度 特別に慰労金としてお金を支給していただいておりました。今後も続くはずでしたのにリリーさんによって失くなりましたので、印象は良くありません。使用人達に期待をしないようお願いします」
「……」
「お返事をしてください」
「分かりました」
質素な客室に通された。
一人用のテーブルと椅子が一脚、小さなベッド、小さなチェスト。
それだけなのに部屋に余裕は無い。
内扉はクローゼットではなく小さな空間にトイレがあるだけ。
「収納はこれだけ?」
「はい。出産が終わるまで敷地から出ることは叶いません。妊婦用のワンピースと寝巻きをそれぞれ3着、後は下着と靴下をご実家の使用人が用意して届けてくださるそうです。平民向けですから そちらのチェストで十分です。
入浴は3日に一度、共同風呂になります。
食事は用意して持ってきます。その他のことに関してはご自身でお願いします。悪阻の酷い期間と臨月は私どもがお手伝いします」
「具体的にどういうこと?」
「水を汲むのも洗濯もご自身で行ってください。シーツやカバー類だけはこちらで洗います。
部屋の中の掃除もお任せします」
「そんな…」
「坊ちゃまの愛する婚約者を傷付けて追い払い、エンヴェルに大損害を与えて、平民に落とされてもなお お嬢様でいられると思っているだなんて、本当に頭がおかしいのか。…おかしくないと幻覚剤など使わないわね」
「っ!」
「平民になったのも犯罪者だからでしょう?
この屋敷には 図々しい頭のおかしな女の味方をする馬鹿はいないの」
メイドは私を睨みつけて退室した。
その日のうちに公爵家の使用人が粗末なワンピースと寝巻きと下着や靴下や靴を買ってきた。
そして別の袋の中にはクシなどの日常の身支度に使っていた道具が入っていた。
数日過ごすうちに本気だと分かった。
説明の通りの待遇だった。洗濯がきつい。それに使用人達と共同風呂を使う話はあったけど、私が入っている時に使用人達も使うとは思わなかった。
“やっぱり本当だったのね”
“幻覚剤でも使わなきゃ、大したことない身体に欲情しないわよ”
“そうよ、坊ちゃまはユリナ様に夢中だもの。ユリナ様以外の身体に興味を示すなんて有り得ないわ”
“顔だってエンヴェルカットを手放す代償を払ってまで拘るレベルじゃないもの”
“あ~あ。前回は2ヶ月分の慰労金をいただけたのに次はゼロだなんて。短い夢だったわぁ”
“場合によっては減給や解雇も有り得るわよ”
冷たい視線に殺気が混じった瞬間だった。
1ヶ月以上経ったけど話し相手がいなくて辛い。
起きて自分で身支度をして部屋に閉じ籠り、食事と排泄、掃除と洗濯、睡眠と数日に一度の入浴。
メイドが必要なことだけ口を開く。
エンヴェル家の者は誰一人顔を合わせることもない。実家からの音沙汰もない。
赤ちゃんが産まれたら変わるのか…。
待合室を一室貸してもらって両家の話し合いになった。
父「娘が申し訳ないことをしました。心よりお詫び申し上げます」
ロ「幻覚剤を使う前に時を戻してくださるなら許します。それ以外で許す気はありません。
ユリナは俺の最愛の女なのに…そちらの狡賢くて執拗に獲物を追いかけ回す邪蛇のような公女のせいで俺の人生はめちゃくちゃですよ!」
父「申し訳ありません」
侯「ロジェ、そちらの女性はもう公女ではない。
先程平民になったばかりだ。公女と呼んではいけない」
ロ「そうでした」
侯「リリーさんをエンヴェル邸に連れて行きます」
ロ「父上!?」
侯「妊娠が事実ということならば仕方ないだろう」
ロ「この女を娶るなんて嫌です!」
侯「娶るとは言っていない。
彼女は平民だ。娶ったところで社交を禁じられてしまってはな。妻として役に立たないし 子供の付き添いもできない。
何が産まれるのか見届けないとな」
ロ「妾ということですか」
侯「5ヶ月後に胎から出てきた子がエンヴェル家の子だと認められたらな」
まずい!妊娠時期を偽ったから出産時期がズレているのに!
お父様と侯爵が合意をして、そのままエンヴェル邸に連れてこられた。同じ馬車に乗せてもらえず、公爵家の馬車で送ってもらった。
到着して馬車から降ろされた。侯爵を出迎えた夫人が一瞥すると使用人に指示を出していた。
夫人達が屋敷の中に入ると使用人が近寄った。
「エンヴェル邸のメイドの管理をしているハンナと言います。リリーさんは妊婦ということですのでトイレ付きの客室へ案内します。
お世話を付けますが妊娠した平民の居候という扱いをします。
私達はエンヴェル家の使用人であってリリーさんの使用人ではありません。
この屋敷の者も領地の使用人達もユリナ様をお慕いしております。優しくて気さくで慎ましくエンヴェルに有益な方でした。
知っていますか?エンヴェルカットのおかげで使用人達は全員半年に一度 特別に慰労金としてお金を支給していただいておりました。今後も続くはずでしたのにリリーさんによって失くなりましたので、印象は良くありません。使用人達に期待をしないようお願いします」
「……」
「お返事をしてください」
「分かりました」
質素な客室に通された。
一人用のテーブルと椅子が一脚、小さなベッド、小さなチェスト。
それだけなのに部屋に余裕は無い。
内扉はクローゼットではなく小さな空間にトイレがあるだけ。
「収納はこれだけ?」
「はい。出産が終わるまで敷地から出ることは叶いません。妊婦用のワンピースと寝巻きをそれぞれ3着、後は下着と靴下をご実家の使用人が用意して届けてくださるそうです。平民向けですから そちらのチェストで十分です。
入浴は3日に一度、共同風呂になります。
食事は用意して持ってきます。その他のことに関してはご自身でお願いします。悪阻の酷い期間と臨月は私どもがお手伝いします」
「具体的にどういうこと?」
「水を汲むのも洗濯もご自身で行ってください。シーツやカバー類だけはこちらで洗います。
部屋の中の掃除もお任せします」
「そんな…」
「坊ちゃまの愛する婚約者を傷付けて追い払い、エンヴェルに大損害を与えて、平民に落とされてもなお お嬢様でいられると思っているだなんて、本当に頭がおかしいのか。…おかしくないと幻覚剤など使わないわね」
「っ!」
「平民になったのも犯罪者だからでしょう?
この屋敷には 図々しい頭のおかしな女の味方をする馬鹿はいないの」
メイドは私を睨みつけて退室した。
その日のうちに公爵家の使用人が粗末なワンピースと寝巻きと下着や靴下や靴を買ってきた。
そして別の袋の中にはクシなどの日常の身支度に使っていた道具が入っていた。
数日過ごすうちに本気だと分かった。
説明の通りの待遇だった。洗濯がきつい。それに使用人達と共同風呂を使う話はあったけど、私が入っている時に使用人達も使うとは思わなかった。
“やっぱり本当だったのね”
“幻覚剤でも使わなきゃ、大したことない身体に欲情しないわよ”
“そうよ、坊ちゃまはユリナ様に夢中だもの。ユリナ様以外の身体に興味を示すなんて有り得ないわ”
“顔だってエンヴェルカットを手放す代償を払ってまで拘るレベルじゃないもの”
“あ~あ。前回は2ヶ月分の慰労金をいただけたのに次はゼロだなんて。短い夢だったわぁ”
“場合によっては減給や解雇も有り得るわよ”
冷たい視線に殺気が混じった瞬間だった。
1ヶ月以上経ったけど話し相手がいなくて辛い。
起きて自分で身支度をして部屋に閉じ籠り、食事と排泄、掃除と洗濯、睡眠と数日に一度の入浴。
メイドが必要なことだけ口を開く。
エンヴェル家の者は誰一人顔を合わせることもない。実家からの音沙汰もない。
赤ちゃんが産まれたら変わるのか…。
2,126
お気に入りに追加
3,097
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~
tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。
ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】初恋の人も婚約者も妹に奪われました
紫崎 藍華
恋愛
ジュリアナは婚約者のマーキースから妹のマリアンことが好きだと打ち明けられた。
幼い頃、初恋の相手を妹に奪われ、そして今、婚約者まで奪われたのだ。
ジュリアナはマーキースからの婚約破棄を受け入れた。
奪うほうも奪われるほうも幸せになれるはずがないと考えれば未練なんてあるはずもなかった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~
ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。
長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。
心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。
そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。
そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。
レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。
毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。
レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく――
これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。
※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王子様、あなたの不貞を私は知っております
岡暁舟
恋愛
第一王子アンソニーの婚約者、正妻として名高い公爵令嬢のクレアは、アンソニーが自分のことをそこまで本気に愛していないことを知っている。彼が夢中になっているのは、同じ公爵令嬢だが、自分よりも大部下品なソーニャだった。
「私は知っております。王子様の不貞を……」
場合によっては離縁……様々な危険をはらんでいたが、クレアはなぜか余裕で?
本編終了しました。明日以降、続編を新たに書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる