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【リリー】孤独
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【 リリーの視点 】
待合室を一室貸してもらって両家の話し合いになった。
父「娘が申し訳ないことをしました。心よりお詫び申し上げます」
ロ「幻覚剤を使う前に時を戻してくださるなら許します。それ以外で許す気はありません。
ユリナは俺の最愛の女なのに…そちらの狡賢くて執拗に獲物を追いかけ回す邪蛇のような公女のせいで俺の人生はめちゃくちゃですよ!」
父「申し訳ありません」
侯「ロジェ、そちらの女性はもう公女ではない。
先程平民になったばかりだ。公女と呼んではいけない」
ロ「そうでした」
侯「リリーさんをエンヴェル邸に連れて行きます」
ロ「父上!?」
侯「妊娠が事実ということならば仕方ないだろう」
ロ「この女を娶るなんて嫌です!」
侯「娶るとは言っていない。
彼女は平民だ。娶ったところで社交を禁じられてしまってはな。妻として役に立たないし 子供の付き添いもできない。
何が産まれるのか見届けないとな」
ロ「妾ということですか」
侯「5ヶ月後に胎から出てきた子がエンヴェル家の子だと認められたらな」
まずい!妊娠時期を偽ったから出産時期がズレているのに!
お父様と侯爵が合意をして、そのままエンヴェル邸に連れてこられた。同じ馬車に乗せてもらえず、公爵家の馬車で送ってもらった。
到着して馬車から降ろされた。侯爵を出迎えた夫人が一瞥すると使用人に指示を出していた。
夫人達が屋敷の中に入ると使用人が近寄った。
「エンヴェル邸のメイドの管理をしているハンナと言います。リリーさんは妊婦ということですのでトイレ付きの客室へ案内します。
お世話を付けますが妊娠した平民の居候という扱いをします。
私達はエンヴェル家の使用人であってリリーさんの使用人ではありません。
この屋敷の者も領地の使用人達もユリナ様をお慕いしております。優しくて気さくで慎ましくエンヴェルに有益な方でした。
知っていますか?エンヴェルカットのおかげで使用人達は全員半年に一度 特別に慰労金としてお金を支給していただいておりました。今後も続くはずでしたのにリリーさんによって失くなりましたので、印象は良くありません。使用人達に期待をしないようお願いします」
「……」
「お返事をしてください」
「分かりました」
質素な客室に通された。
一人用のテーブルと椅子が一脚、小さなベッド、小さなチェスト。
それだけなのに部屋に余裕は無い。
内扉はクローゼットではなく小さな空間にトイレがあるだけ。
「収納はこれだけ?」
「はい。出産が終わるまで敷地から出ることは叶いません。妊婦用のワンピースと寝巻きをそれぞれ3着、後は下着と靴下をご実家の使用人が用意して届けてくださるそうです。平民向けですから そちらのチェストで十分です。
入浴は3日に一度、共同風呂になります。
食事は用意して持ってきます。その他のことに関してはご自身でお願いします。悪阻の酷い期間と臨月は私どもがお手伝いします」
「具体的にどういうこと?」
「水を汲むのも洗濯もご自身で行ってください。シーツやカバー類だけはこちらで洗います。
部屋の中の掃除もお任せします」
「そんな…」
「坊ちゃまの愛する婚約者を傷付けて追い払い、エンヴェルに大損害を与えて、平民に落とされてもなお お嬢様でいられると思っているだなんて、本当に頭がおかしいのか。…おかしくないと幻覚剤など使わないわね」
「っ!」
「平民になったのも犯罪者だからでしょう?
この屋敷には 図々しい頭のおかしな女の味方をする馬鹿はいないの」
メイドは私を睨みつけて退室した。
その日のうちに公爵家の使用人が粗末なワンピースと寝巻きと下着や靴下や靴を買ってきた。
そして別の袋の中にはクシなどの日常の身支度に使っていた道具が入っていた。
数日過ごすうちに本気だと分かった。
説明の通りの待遇だった。洗濯がきつい。それに使用人達と共同風呂を使う話はあったけど、私が入っている時に使用人達も使うとは思わなかった。
“やっぱり本当だったのね”
“幻覚剤でも使わなきゃ、大したことない身体に欲情しないわよ”
“そうよ、坊ちゃまはユリナ様に夢中だもの。ユリナ様以外の身体に興味を示すなんて有り得ないわ”
“顔だってエンヴェルカットを手放す代償を払ってまで拘るレベルじゃないもの”
“あ~あ。前回は2ヶ月分の慰労金をいただけたのに次はゼロだなんて。短い夢だったわぁ”
“場合によっては減給や解雇も有り得るわよ”
冷たい視線に殺気が混じった瞬間だった。
1ヶ月以上経ったけど話し相手がいなくて辛い。
起きて自分で身支度をして部屋に閉じ籠り、食事と排泄、掃除と洗濯、睡眠と数日に一度の入浴。
メイドが必要なことだけ口を開く。
エンヴェル家の者は誰一人顔を合わせることもない。実家からの音沙汰もない。
赤ちゃんが産まれたら変わるのか…。
待合室を一室貸してもらって両家の話し合いになった。
父「娘が申し訳ないことをしました。心よりお詫び申し上げます」
ロ「幻覚剤を使う前に時を戻してくださるなら許します。それ以外で許す気はありません。
ユリナは俺の最愛の女なのに…そちらの狡賢くて執拗に獲物を追いかけ回す邪蛇のような公女のせいで俺の人生はめちゃくちゃですよ!」
父「申し訳ありません」
侯「ロジェ、そちらの女性はもう公女ではない。
先程平民になったばかりだ。公女と呼んではいけない」
ロ「そうでした」
侯「リリーさんをエンヴェル邸に連れて行きます」
ロ「父上!?」
侯「妊娠が事実ということならば仕方ないだろう」
ロ「この女を娶るなんて嫌です!」
侯「娶るとは言っていない。
彼女は平民だ。娶ったところで社交を禁じられてしまってはな。妻として役に立たないし 子供の付き添いもできない。
何が産まれるのか見届けないとな」
ロ「妾ということですか」
侯「5ヶ月後に胎から出てきた子がエンヴェル家の子だと認められたらな」
まずい!妊娠時期を偽ったから出産時期がズレているのに!
お父様と侯爵が合意をして、そのままエンヴェル邸に連れてこられた。同じ馬車に乗せてもらえず、公爵家の馬車で送ってもらった。
到着して馬車から降ろされた。侯爵を出迎えた夫人が一瞥すると使用人に指示を出していた。
夫人達が屋敷の中に入ると使用人が近寄った。
「エンヴェル邸のメイドの管理をしているハンナと言います。リリーさんは妊婦ということですのでトイレ付きの客室へ案内します。
お世話を付けますが妊娠した平民の居候という扱いをします。
私達はエンヴェル家の使用人であってリリーさんの使用人ではありません。
この屋敷の者も領地の使用人達もユリナ様をお慕いしております。優しくて気さくで慎ましくエンヴェルに有益な方でした。
知っていますか?エンヴェルカットのおかげで使用人達は全員半年に一度 特別に慰労金としてお金を支給していただいておりました。今後も続くはずでしたのにリリーさんによって失くなりましたので、印象は良くありません。使用人達に期待をしないようお願いします」
「……」
「お返事をしてください」
「分かりました」
質素な客室に通された。
一人用のテーブルと椅子が一脚、小さなベッド、小さなチェスト。
それだけなのに部屋に余裕は無い。
内扉はクローゼットではなく小さな空間にトイレがあるだけ。
「収納はこれだけ?」
「はい。出産が終わるまで敷地から出ることは叶いません。妊婦用のワンピースと寝巻きをそれぞれ3着、後は下着と靴下をご実家の使用人が用意して届けてくださるそうです。平民向けですから そちらのチェストで十分です。
入浴は3日に一度、共同風呂になります。
食事は用意して持ってきます。その他のことに関してはご自身でお願いします。悪阻の酷い期間と臨月は私どもがお手伝いします」
「具体的にどういうこと?」
「水を汲むのも洗濯もご自身で行ってください。シーツやカバー類だけはこちらで洗います。
部屋の中の掃除もお任せします」
「そんな…」
「坊ちゃまの愛する婚約者を傷付けて追い払い、エンヴェルに大損害を与えて、平民に落とされてもなお お嬢様でいられると思っているだなんて、本当に頭がおかしいのか。…おかしくないと幻覚剤など使わないわね」
「っ!」
「平民になったのも犯罪者だからでしょう?
この屋敷には 図々しい頭のおかしな女の味方をする馬鹿はいないの」
メイドは私を睨みつけて退室した。
その日のうちに公爵家の使用人が粗末なワンピースと寝巻きと下着や靴下や靴を買ってきた。
そして別の袋の中にはクシなどの日常の身支度に使っていた道具が入っていた。
数日過ごすうちに本気だと分かった。
説明の通りの待遇だった。洗濯がきつい。それに使用人達と共同風呂を使う話はあったけど、私が入っている時に使用人達も使うとは思わなかった。
“やっぱり本当だったのね”
“幻覚剤でも使わなきゃ、大したことない身体に欲情しないわよ”
“そうよ、坊ちゃまはユリナ様に夢中だもの。ユリナ様以外の身体に興味を示すなんて有り得ないわ”
“顔だってエンヴェルカットを手放す代償を払ってまで拘るレベルじゃないもの”
“あ~あ。前回は2ヶ月分の慰労金をいただけたのに次はゼロだなんて。短い夢だったわぁ”
“場合によっては減給や解雇も有り得るわよ”
冷たい視線に殺気が混じった瞬間だった。
1ヶ月以上経ったけど話し相手がいなくて辛い。
起きて自分で身支度をして部屋に閉じ籠り、食事と排泄、掃除と洗濯、睡眠と数日に一度の入浴。
メイドが必要なことだけ口を開く。
エンヴェル家の者は誰一人顔を合わせることもない。実家からの音沙汰もない。
赤ちゃんが産まれたら変わるのか…。
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