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お礼
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祖国の南側に隣接する国は暖かい。日中はじっとしていないと汗ばむ。
夜は風で肌寒くなる。
「伯母様、終わりました」
「良く出来ているわ。助かったわ」
エリーゼ伯母様の宝飾品を磨く仕事を請け負って、数日かけて終わらせた。
仕事といってもお金を貰うわけではない。居候のお礼をしているだけ。
やはりメイド達が磨くのと本職?が磨くのとでは仕上がりが違うと自負している。
「お母様、ユリナを連れて行っていい?」
「何処へ」
「町によ。引きこもっていたら腐っちゃうわ」
エリーズ伯母様の娘ローズ様は私の1歳上でもうすぐ嫁いでしまう方だ。
「ユリナ、支度をして行きましょう」
本当はゆっくり部屋で休みたいけど居候の身だから仕方ないわね。
着替えてローズ様と町へ出た。
「最近、新作を出したケーキ屋さんがあるの。混んでいなかったら食べましょう。少しくらいは並ぶわよ」
日傘をさして並びテラス席に案内された。店内もあるけど空いたテーブルはテラス席だった。少し暑い。
「そろそろ白状しなさいよ。何があったの?」
「そんなに知りたいのですか?」
「だって婚約したからこっちに来れないって手紙を寄越したのに、こうやって国境を越えて来たじゃない。お母様は何も言わないし」
「…実はね」
起きたことをローズに説明した。
「何それ」
「だから後のことはお父様達に任せて伯母様を頼って来たの」
「酷いわ…酷過ぎる」
涙を浮かべるローズに微笑んだ。
「大丈夫よ。お陰でほんの少しお金持ちになれるから」
「……」
おかしい。少し吐き気がする。
背中にどっと汗が流れ出した。
視界がおかしい。
「ユリナ?」
「ごめんなさい…気分が…」
「ユリナ!!」
苦しい……気持ち悪い……
“大丈夫、水を飲んで”
身体が重い
“飲まないと死んでしまうぞ”
いいの。死ねるのなら死なせて……
喉に冷たい液体が通っていく
水の中に浮かんでいるみたい
“ユリナ、戻ってこい”
知らない男の人の声
“ユリナ”
夢を見た。学園2年生で ただのクラスメイトとして5人で楽しく勉強を教え合っていた頃の夢を。
「ユリナ?」
ローズ様
「ユリナ!」
知らないお爺さんが私の目や口内や体温を確認した。
「大丈夫そうですね。暫く体が怠いと思います。
安静にして水分や栄養を良く摂ってください」
「先生、ありがとうございました」
伯母様もいたのね。
「私、どうしてしまったのですか」
「店のテラスでケーキを食べていたら、急に倒れたの。熱中症で少し危なかったのよ」
「ユリナ。おかしいと思ったら我慢せずに言わないと駄目よ」
「ご迷惑をお掛けしました」
「ゆっくり休みなさい。ローズ、行くわよ」
だいぶ楽にはなったけど、2週間経っても全快とはいかず、
「重症度や個々にもよるけど、直ぐに全快する人もいれば何年も後遺症みたいに残る人もいるからね」
お医者様の往診が終わると、
「ごめんなさい。涼しい国から来たユリナに長々と並ばせて、テラス席になんて座って。しかも陽避けから少しはみ出して背中や首に陽が当たり続けていたなんて気が付かなくて」
不調が続く私に責任を感じたローズ様が謝った。
「暑いと言わなかった私のせいですから」
何年も後遺症のようなものが残って怠さなどが残る可能性があると知って ローズ様は気に病んでしまった。
「お礼に行けるようになったら連れて行きたかったのだけど」
「はい?」
「ユリナが倒れたとき、近くを通りかかった方が屋敷まで運んでくださって応急処置をしてくださったのよ」
「そうでしたか。ぜひお礼に伺いたいです」
「だけど王都にいらっしゃるのよ」
「どのくらい離れているのですか?」
「馬車で2泊3日から3泊4日かしら」
「もう少し療養してから行きます」
「では1ヶ月後に行けるように手配させるわね。簡単にはお会い出来ない方だから」
「そうなのですね」
詳しく聞きたかったけど、ちょっと調子が悪くなってきた。
「もちろん、体調次第で延期するから遠慮しないでね」
「はい」
結局王都に行くことができたのは3ヶ月後だった。
ローズは予定があって来ることが叶わず悔しがっていた。
王都のホテルに泊まり、2日後に連れてこられたのは、お城だった。
「お、伯母様。もしかして」
「なに?ユリナ」
「次の方」
「あ、面会の予約をしております、ランデ伯爵家の者です」
「お待ちください」
門番が名簿を確認をした。
「南側の内門で再度お名前を告げていただけますか。そちらから案内が付きますので宜しくお願いします」
「分かりましたわ。ありがとうございます」
「通して良し!」
ゴトゴトゴトゴト
馬車が動き出し、伯母様に聞いた。
「南側には何が?」
「軍部よ。一般兵団と騎士団と王族親衛隊の詰所や宿舎や演習場などがあるのよ」
「えっと、恩人様は軍部の偉い方でしょうか」
「そうよ。副騎士団長なの。ランデ領の隣に副騎士団長のご実家があってね、その帰りにお土産を買いに立ち寄ったところだったらしいわ」
「そうですか。お忙しい方なのにご迷惑をおかけしてしまったのですね」
「心配してくださったのよ。2度ほどお手紙をいただいて、貴女が大人しく療養しているかという内容だったわ」
「お返事は…」
「私宛の手紙だったから、私が返事を出したわ。大人しくしています。回復は順調ですって書いたわ」
「ありがとうございます」
夜は風で肌寒くなる。
「伯母様、終わりました」
「良く出来ているわ。助かったわ」
エリーゼ伯母様の宝飾品を磨く仕事を請け負って、数日かけて終わらせた。
仕事といってもお金を貰うわけではない。居候のお礼をしているだけ。
やはりメイド達が磨くのと本職?が磨くのとでは仕上がりが違うと自負している。
「お母様、ユリナを連れて行っていい?」
「何処へ」
「町によ。引きこもっていたら腐っちゃうわ」
エリーズ伯母様の娘ローズ様は私の1歳上でもうすぐ嫁いでしまう方だ。
「ユリナ、支度をして行きましょう」
本当はゆっくり部屋で休みたいけど居候の身だから仕方ないわね。
着替えてローズ様と町へ出た。
「最近、新作を出したケーキ屋さんがあるの。混んでいなかったら食べましょう。少しくらいは並ぶわよ」
日傘をさして並びテラス席に案内された。店内もあるけど空いたテーブルはテラス席だった。少し暑い。
「そろそろ白状しなさいよ。何があったの?」
「そんなに知りたいのですか?」
「だって婚約したからこっちに来れないって手紙を寄越したのに、こうやって国境を越えて来たじゃない。お母様は何も言わないし」
「…実はね」
起きたことをローズに説明した。
「何それ」
「だから後のことはお父様達に任せて伯母様を頼って来たの」
「酷いわ…酷過ぎる」
涙を浮かべるローズに微笑んだ。
「大丈夫よ。お陰でほんの少しお金持ちになれるから」
「……」
おかしい。少し吐き気がする。
背中にどっと汗が流れ出した。
視界がおかしい。
「ユリナ?」
「ごめんなさい…気分が…」
「ユリナ!!」
苦しい……気持ち悪い……
“大丈夫、水を飲んで”
身体が重い
“飲まないと死んでしまうぞ”
いいの。死ねるのなら死なせて……
喉に冷たい液体が通っていく
水の中に浮かんでいるみたい
“ユリナ、戻ってこい”
知らない男の人の声
“ユリナ”
夢を見た。学園2年生で ただのクラスメイトとして5人で楽しく勉強を教え合っていた頃の夢を。
「ユリナ?」
ローズ様
「ユリナ!」
知らないお爺さんが私の目や口内や体温を確認した。
「大丈夫そうですね。暫く体が怠いと思います。
安静にして水分や栄養を良く摂ってください」
「先生、ありがとうございました」
伯母様もいたのね。
「私、どうしてしまったのですか」
「店のテラスでケーキを食べていたら、急に倒れたの。熱中症で少し危なかったのよ」
「ユリナ。おかしいと思ったら我慢せずに言わないと駄目よ」
「ご迷惑をお掛けしました」
「ゆっくり休みなさい。ローズ、行くわよ」
だいぶ楽にはなったけど、2週間経っても全快とはいかず、
「重症度や個々にもよるけど、直ぐに全快する人もいれば何年も後遺症みたいに残る人もいるからね」
お医者様の往診が終わると、
「ごめんなさい。涼しい国から来たユリナに長々と並ばせて、テラス席になんて座って。しかも陽避けから少しはみ出して背中や首に陽が当たり続けていたなんて気が付かなくて」
不調が続く私に責任を感じたローズ様が謝った。
「暑いと言わなかった私のせいですから」
何年も後遺症のようなものが残って怠さなどが残る可能性があると知って ローズ様は気に病んでしまった。
「お礼に行けるようになったら連れて行きたかったのだけど」
「はい?」
「ユリナが倒れたとき、近くを通りかかった方が屋敷まで運んでくださって応急処置をしてくださったのよ」
「そうでしたか。ぜひお礼に伺いたいです」
「だけど王都にいらっしゃるのよ」
「どのくらい離れているのですか?」
「馬車で2泊3日から3泊4日かしら」
「もう少し療養してから行きます」
「では1ヶ月後に行けるように手配させるわね。簡単にはお会い出来ない方だから」
「そうなのですね」
詳しく聞きたかったけど、ちょっと調子が悪くなってきた。
「もちろん、体調次第で延期するから遠慮しないでね」
「はい」
結局王都に行くことができたのは3ヶ月後だった。
ローズは予定があって来ることが叶わず悔しがっていた。
王都のホテルに泊まり、2日後に連れてこられたのは、お城だった。
「お、伯母様。もしかして」
「なに?ユリナ」
「次の方」
「あ、面会の予約をしております、ランデ伯爵家の者です」
「お待ちください」
門番が名簿を確認をした。
「南側の内門で再度お名前を告げていただけますか。そちらから案内が付きますので宜しくお願いします」
「分かりましたわ。ありがとうございます」
「通して良し!」
ゴトゴトゴトゴト
馬車が動き出し、伯母様に聞いた。
「南側には何が?」
「軍部よ。一般兵団と騎士団と王族親衛隊の詰所や宿舎や演習場などがあるのよ」
「えっと、恩人様は軍部の偉い方でしょうか」
「そうよ。副騎士団長なの。ランデ領の隣に副騎士団長のご実家があってね、その帰りにお土産を買いに立ち寄ったところだったらしいわ」
「そうですか。お忙しい方なのにご迷惑をおかけしてしまったのですね」
「心配してくださったのよ。2度ほどお手紙をいただいて、貴女が大人しく療養しているかという内容だったわ」
「お返事は…」
「私宛の手紙だったから、私が返事を出したわ。大人しくしています。回復は順調ですって書いたわ」
「ありがとうございます」
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