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二日酔いと大人の体
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身体が怠くて胃も不快感がある…
目を開けると知らない部屋にいる…
カーテンから陽の光が漏れている…
朝なのか昼なのか…
「おはよう ユリナ」
聞き慣れた声だけど その近さに驚いた。
「なっ!」
横を見ると肘をついて横になり 私を見下ろすロジェがいた。
「身体は大丈夫か」
「え?」
自分を見てロジェを見て、
「え!? え!??」
2人とも裸で同じベッドに寝ていたことに気付いた。
なになになに!?どうして!?
「落ち着け ユリナ。 身体は大丈夫か?」
「だ、怠い。それに胃がスッキリしない」
「分かった」
「ちょっと!」
ロジェはベッドから出て歩き始めたが全裸だった。
股間についているモノがブラブラと揺れている。
み、見ちゃった!!
ロジェは棚からガウンを取って羽織りメイドを呼んで指示を出した。
戻ってきたメイドは果実水と薬などを持ってきて、ベッド脇のテーブルに置いた。
他のメイド達は湯浴みの準備をしていく。
「ユリナ、二日酔いの薬だ。飲めるか?」
「…ありがとう」
湯浴みの準備が整う頃には胃がスッキリして頭の重さも改善してきた。
その後 湯浴みをして性器の洗浄をされたことで断片的な記憶が本物だと思い知った。
安易だった。
“欲情したらいい”だなんて。
結果 大事な親友を違うものに変えてしまった。
本当に馬鹿だ。
「ドレスを着るのを手伝ってもらえる?」
「先に朝食をご用意しますのでお待ちください」
「食欲は無いから要らないわ」
「少しでも召し上がってからの方がよろしいかと思います」
「何が?」
「避妊薬です」
「…分かったわ」
少ししてロジェが濡れた髪のまま戻って、机の上の紙とペンとインクを手にして私に渡した。
「ユリナ、署名しろ」
「……」
渡されたのは婚姻契約書だった。
「本気なの!?」
「本気じゃないのにユリナの初めてを奪う男だとでも?」
「ロジェも酔って、」
「俺は一滴も酒を飲んでいない」
「え!?」
「ユリナを愛しているんだ。
俺が、エンヴェル家が、義務や恩や能力で求婚していると信じて疑わないユリナと先に進むには既成事実しかないと思った。
“欲情したら”と言っただろう?もう既に欲情していたよ。
俺のことが嫌いで拒否しているわけじゃないと感じたからユリナを抱いたんだ」
「でも」
ロジェは後ろから抱きしめながら私の下腹部を撫でた。
「俺も初めてだったけど、理性の限り 優しく丁寧にしたつもりだ。ユリナは痛がって少し泣いていたけど 俺には最高のプレゼントだった。ありがとうユリナ」
「……私、」
「俺にとっては恋愛結婚になる。今のユリナは混乱しているかもしれないが、ユリナに俺のことを愛してもらいたい。毎日俺だけを見つめてもらいたい。婚姻もできるだけ早くしたい。離れて暮らしたくないんだ」
「本気なの?」
「もう一度 分からせよう」
「えっ!!」
せっかく支度を整えたのに ロジェはまた私を組み敷いた。
今度は明るい部屋で意識がしっかりしていて すごく恥ずかしかった。
ロジェの真剣で熱い眼差しも快楽を得た瞳も、温かくすべすべの肌も筋肉も、傷付けないように優しく触れる指も逃がさないように引き寄せる腕も、私のナカをかき分ける異物感も奥を押し上げる圧迫感も、果てる脈動も抜き去った後の喪失感も、私を抱きしめ耳や頬にかかる彼の息も注がれたものがこぼれ伝う感覚も、ロジェの愛の言葉も満足そうな微笑みも、彼から与えられた快楽も事後の疲れも、もう否定することも目を逸らすことも不可能だった。
ロジェはゲルズベル伯爵邸に私を送り届け、伯爵に既成事実を告げ謝罪した。
そして私を連れて領地のリシュー邸へ行き、膝を付いて謝罪し、婚約したいと告げた。
お父様もお母様も最初は怒りに満ちた顔をしていたが、“ユリナを愛しているのです”という言葉と、既に殴られた顔の傷を見て、冷静に話を聞いた後に私の気持ちも聞いて婚約に了承した。
意外だったのはアラン様がロジェを殴ったことだ。一度で止める気配のないアラン様を伯爵達が羽交締めにして引き剥がした。止めなければとんでもないことになっていた。ロジェは抵抗せずアラン様の怒りを受け止めたのだ。
拳を冷やすアラン様にお礼を言った。
『アラン様、ありがとうございます。すごく嬉しかったです』
『ユリナは妹だからな』
『すごくカッコ良かったです。私は幸せ者です』
『嫌なら婚約破棄でも離婚でもしていいし、私が隠してやる。だから絶対に一人で悩むなよ』
『はい、アラン様』
エンヴェル侯爵夫妻からは改めて謝罪と求婚を受けて、私達は婚約した。婚姻は1年後。ロジェは長すぎると騒いだけど両親が譲らなかった。
加えて条件を出した。私の提供した技術やデザインの権利は私のまま。無償貸し出しにして、破婚したら貸し出さないという内容だった。
エンヴェル家はそれをのんだ。
婚約以降 ロジェは私を側に置きたがった。
だけど私はゲルズベル領とエンヴェル領を往復して仕事をする日々が続いた。
そして事は起こる。
婚約して半年が経った頃、久しぶりに会ったロジェが余所余所しかったのだ。
疑問には思ったけど忙しくて何も聞かずに1週間の王都滞在を終えてまたゲルズベル領へ向かおうとした前日、クラスが同じだった令嬢に偶然会い 聞いてしまった。
「ユリナ様はお忙しくてご存じないのかしら」
「何をでしょう」
「フォンヌ公爵家の次女リリー様とロジェ・エンヴェル様が一晩過ごされたという噂でもちきりですわ」
「え?」
カチャン
カップが滑りソーサーの上に音を立てて落ちた。
目を開けると知らない部屋にいる…
カーテンから陽の光が漏れている…
朝なのか昼なのか…
「おはよう ユリナ」
聞き慣れた声だけど その近さに驚いた。
「なっ!」
横を見ると肘をついて横になり 私を見下ろすロジェがいた。
「身体は大丈夫か」
「え?」
自分を見てロジェを見て、
「え!? え!??」
2人とも裸で同じベッドに寝ていたことに気付いた。
なになになに!?どうして!?
「落ち着け ユリナ。 身体は大丈夫か?」
「だ、怠い。それに胃がスッキリしない」
「分かった」
「ちょっと!」
ロジェはベッドから出て歩き始めたが全裸だった。
股間についているモノがブラブラと揺れている。
み、見ちゃった!!
ロジェは棚からガウンを取って羽織りメイドを呼んで指示を出した。
戻ってきたメイドは果実水と薬などを持ってきて、ベッド脇のテーブルに置いた。
他のメイド達は湯浴みの準備をしていく。
「ユリナ、二日酔いの薬だ。飲めるか?」
「…ありがとう」
湯浴みの準備が整う頃には胃がスッキリして頭の重さも改善してきた。
その後 湯浴みをして性器の洗浄をされたことで断片的な記憶が本物だと思い知った。
安易だった。
“欲情したらいい”だなんて。
結果 大事な親友を違うものに変えてしまった。
本当に馬鹿だ。
「ドレスを着るのを手伝ってもらえる?」
「先に朝食をご用意しますのでお待ちください」
「食欲は無いから要らないわ」
「少しでも召し上がってからの方がよろしいかと思います」
「何が?」
「避妊薬です」
「…分かったわ」
少ししてロジェが濡れた髪のまま戻って、机の上の紙とペンとインクを手にして私に渡した。
「ユリナ、署名しろ」
「……」
渡されたのは婚姻契約書だった。
「本気なの!?」
「本気じゃないのにユリナの初めてを奪う男だとでも?」
「ロジェも酔って、」
「俺は一滴も酒を飲んでいない」
「え!?」
「ユリナを愛しているんだ。
俺が、エンヴェル家が、義務や恩や能力で求婚していると信じて疑わないユリナと先に進むには既成事実しかないと思った。
“欲情したら”と言っただろう?もう既に欲情していたよ。
俺のことが嫌いで拒否しているわけじゃないと感じたからユリナを抱いたんだ」
「でも」
ロジェは後ろから抱きしめながら私の下腹部を撫でた。
「俺も初めてだったけど、理性の限り 優しく丁寧にしたつもりだ。ユリナは痛がって少し泣いていたけど 俺には最高のプレゼントだった。ありがとうユリナ」
「……私、」
「俺にとっては恋愛結婚になる。今のユリナは混乱しているかもしれないが、ユリナに俺のことを愛してもらいたい。毎日俺だけを見つめてもらいたい。婚姻もできるだけ早くしたい。離れて暮らしたくないんだ」
「本気なの?」
「もう一度 分からせよう」
「えっ!!」
せっかく支度を整えたのに ロジェはまた私を組み敷いた。
今度は明るい部屋で意識がしっかりしていて すごく恥ずかしかった。
ロジェの真剣で熱い眼差しも快楽を得た瞳も、温かくすべすべの肌も筋肉も、傷付けないように優しく触れる指も逃がさないように引き寄せる腕も、私のナカをかき分ける異物感も奥を押し上げる圧迫感も、果てる脈動も抜き去った後の喪失感も、私を抱きしめ耳や頬にかかる彼の息も注がれたものがこぼれ伝う感覚も、ロジェの愛の言葉も満足そうな微笑みも、彼から与えられた快楽も事後の疲れも、もう否定することも目を逸らすことも不可能だった。
ロジェはゲルズベル伯爵邸に私を送り届け、伯爵に既成事実を告げ謝罪した。
そして私を連れて領地のリシュー邸へ行き、膝を付いて謝罪し、婚約したいと告げた。
お父様もお母様も最初は怒りに満ちた顔をしていたが、“ユリナを愛しているのです”という言葉と、既に殴られた顔の傷を見て、冷静に話を聞いた後に私の気持ちも聞いて婚約に了承した。
意外だったのはアラン様がロジェを殴ったことだ。一度で止める気配のないアラン様を伯爵達が羽交締めにして引き剥がした。止めなければとんでもないことになっていた。ロジェは抵抗せずアラン様の怒りを受け止めたのだ。
拳を冷やすアラン様にお礼を言った。
『アラン様、ありがとうございます。すごく嬉しかったです』
『ユリナは妹だからな』
『すごくカッコ良かったです。私は幸せ者です』
『嫌なら婚約破棄でも離婚でもしていいし、私が隠してやる。だから絶対に一人で悩むなよ』
『はい、アラン様』
エンヴェル侯爵夫妻からは改めて謝罪と求婚を受けて、私達は婚約した。婚姻は1年後。ロジェは長すぎると騒いだけど両親が譲らなかった。
加えて条件を出した。私の提供した技術やデザインの権利は私のまま。無償貸し出しにして、破婚したら貸し出さないという内容だった。
エンヴェル家はそれをのんだ。
婚約以降 ロジェは私を側に置きたがった。
だけど私はゲルズベル領とエンヴェル領を往復して仕事をする日々が続いた。
そして事は起こる。
婚約して半年が経った頃、久しぶりに会ったロジェが余所余所しかったのだ。
疑問には思ったけど忙しくて何も聞かずに1週間の王都滞在を終えてまたゲルズベル領へ向かおうとした前日、クラスが同じだった令嬢に偶然会い 聞いてしまった。
「ユリナ様はお忙しくてご存じないのかしら」
「何をでしょう」
「フォンヌ公爵家の次女リリー様とロジェ・エンヴェル様が一晩過ごされたという噂でもちきりですわ」
「え?」
カチャン
カップが滑りソーサーの上に音を立てて落ちた。
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