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裏切られる
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鞄が無いので学園を休み、シャルム邸に帰ってきた。
父もいないからお忍びでも行こうかな。
逃げ出して平民に紛れないといけないかも。
体格の似たメイドに大銀貨を与えて服を買い取った。
「お嬢様、服だけでは隠せていません」
「フードとメガネもあるわ」
「護衛は絶対です!」
「一人だけ。平民服を着せて」
「すぐ支度させます」
メイドが連れてきたのはセイリアンだった。
彼は私が孤児院から連れてきた5歳歳上の男の子だ。すっかり大人になってしまった。
「お嬢様、何処行くのですか」
「生活の調査をしに行くの。セイ、お嬢様なんて呼ばないで。お忍びじゃなくなるじゃない」
「忍べていませんよ」
「いいから行くわよ」
「かしこまりました」
私は知らないが、実際は他に3人離れたところから警護していたようだ。
「地図を見ながら歩いたら獲物にされますよ」
「敬語もダメ」
「何処に行きたいんだ?」
「う~ん……市場?」
「俺から離れないように」
「セイが離れなければいいのよ」
「そうですか」
セイリアンは鞄から細紐を取り出した。
「何するつもり!?」
「危ないので紐で繋ぎます」
「私は犬じゃない!」
「ジャジャ猫ですね」
「離れなければいいんでしょ」
「レイナ。理解が早いな。行こうか。
あっちが入り口だ」
そして早々にカフェで休んでいる。
「何がしたかったんだ?」
転生前も混雑が苦手だった私は市場の人混みに根を上げてしまった。
「いい経験になったわ。私には田舎暮しが向いているのかも」
「虫、駄目だろう」
「うっ」
「何もできない令嬢が生きて行くには相当金がかかるぞ」
「何もできないって失礼じゃない」
「田舎のどんな場所に暮らすんだ。
誰と?」
「町から馬車で30分くらい?
一人かな」
「虫は自分で何とかしなくてはならない。
朝起きると、窓や軒下には蜘蛛の巣がびっちりだ。家の中にも入り込んできて、天井から落ちてくるぞ。
水回りには得体の知れない虫がいるし、爬虫類も出る。獣もな。
自分で水を汲み、火をおこし、湯を沸かす。風呂など贅沢はできない。
夏は川で水浴びだ。それ以外は拭うだけ。冬は湯を沸かすところから始まる。
洗濯も冷たい水だ。
馬車?馬の面倒はみれるのか?馬車の手入れは?馬が怪我したり病気になったら?
盗まれることだってあるんだ。
馬がいくらするか知ってるか?
自分の食糧も馬の餌も手に入れなければならない。自給自足は無理だろう?
家の整備もある。重い物も自分で動かさなくてはならない。
怪我や病気の時は?月のモノは?」
「セイ!」
「見知らぬ男達に襲われることだってある。戦うか、体を差し出すかだ。
その容姿が逆に足枷となるだろう」
セイリアンが頭を撫でながら私を覗き込んだ。
「何があった。お兄ちゃんに話してみろ」
「昨日私が何処にいたか知ってる?」
「ああ」
「そこの三男坊に気に入られて困ってるの」
「……なるほど。それで逃げようと?」
「うん」
「もう一人の方とはどうだ」
「いい人なのは分かった」
「すぐに嫁いでも構わないか?」
「いずれはとは思っているけど」
「すぐに相談しに行け」
「セイ」
「無理なら俺が連れて逃げてやるから」
「追われるわ」
「レイナに拾ってもらった命だ。かまわない。
但し、早く決断しろ」
「ありがとう」
「調査終了でいいか?」
「うん」
シャルム邸に戻り、ドレスに着替えて先触れを出し、夜にレオナールに会いに行った。
「まだ帰っていないのよ」
「パトリシア・バリス様の夜会ですか?」
「パトリシア嬢の婚約者がレオナールと友人なんだ」
「パトリシア嬢の妹と友人なので行ってみます」
「そんなに急ぐの?」
「はい」
「気を付けてね」
夜9時を過ぎていて申し訳なかったが、バリス家に行くと中に入れてもらえた。
妹の方は夜会に参加していなかった。
「今、探させているわ。それにしても意外だわ。ここまで追いかけてくるほど仲が良かったのね」
「ま、まあ、そうね」
「お嬢様、令息は少し酔われて楓の間で休まれております」
「分かったわ。案内してあげて」
「かしこまりました」
「ありがとう。おやすみなさい」
「おやすみ、また学園でね」
2階の奥に行くと案内してくれた使用人が足を止めた。
「どうかなさいましたか?」
「お嬢様、お会いになるのは婚約者で間違いありませんか?」
「はい」
「部屋を聞き間違えたかもしれません」
「あの部屋?入れば分かりますわ」
「人違いだった時に問題になりますから」
その時、独特の声が聞こえた。
この声は……。
私は使用人の静止を振り切り、扉を開けた。
「あっ! いい! もっと奥まで!」
「くっ……出る」
テーブルに突っ伏した女のドレスの裾を捲り上げ、ズボンと下着を足首まで下ろしたレオナールが、女に挿入して激しく突き動かしていた。
パン!
肌と肌がぶつかり合う音が大きくなってすぐに動きが止まった。
吐きそうだ。
「うぐっ……」
「ドクドクしてる。気持ち良かった?」
「すごくいい」
「まだ萎えないの?」
「もう一度」
「また? 今度はベッドにして」
「愛してる」
私はそっと部屋から出て使用人に言伝をお願いしてシャルム邸に戻った。
それから誰が来ようと面会拒否をした。
父もいないからお忍びでも行こうかな。
逃げ出して平民に紛れないといけないかも。
体格の似たメイドに大銀貨を与えて服を買い取った。
「お嬢様、服だけでは隠せていません」
「フードとメガネもあるわ」
「護衛は絶対です!」
「一人だけ。平民服を着せて」
「すぐ支度させます」
メイドが連れてきたのはセイリアンだった。
彼は私が孤児院から連れてきた5歳歳上の男の子だ。すっかり大人になってしまった。
「お嬢様、何処行くのですか」
「生活の調査をしに行くの。セイ、お嬢様なんて呼ばないで。お忍びじゃなくなるじゃない」
「忍べていませんよ」
「いいから行くわよ」
「かしこまりました」
私は知らないが、実際は他に3人離れたところから警護していたようだ。
「地図を見ながら歩いたら獲物にされますよ」
「敬語もダメ」
「何処に行きたいんだ?」
「う~ん……市場?」
「俺から離れないように」
「セイが離れなければいいのよ」
「そうですか」
セイリアンは鞄から細紐を取り出した。
「何するつもり!?」
「危ないので紐で繋ぎます」
「私は犬じゃない!」
「ジャジャ猫ですね」
「離れなければいいんでしょ」
「レイナ。理解が早いな。行こうか。
あっちが入り口だ」
そして早々にカフェで休んでいる。
「何がしたかったんだ?」
転生前も混雑が苦手だった私は市場の人混みに根を上げてしまった。
「いい経験になったわ。私には田舎暮しが向いているのかも」
「虫、駄目だろう」
「うっ」
「何もできない令嬢が生きて行くには相当金がかかるぞ」
「何もできないって失礼じゃない」
「田舎のどんな場所に暮らすんだ。
誰と?」
「町から馬車で30分くらい?
一人かな」
「虫は自分で何とかしなくてはならない。
朝起きると、窓や軒下には蜘蛛の巣がびっちりだ。家の中にも入り込んできて、天井から落ちてくるぞ。
水回りには得体の知れない虫がいるし、爬虫類も出る。獣もな。
自分で水を汲み、火をおこし、湯を沸かす。風呂など贅沢はできない。
夏は川で水浴びだ。それ以外は拭うだけ。冬は湯を沸かすところから始まる。
洗濯も冷たい水だ。
馬車?馬の面倒はみれるのか?馬車の手入れは?馬が怪我したり病気になったら?
盗まれることだってあるんだ。
馬がいくらするか知ってるか?
自分の食糧も馬の餌も手に入れなければならない。自給自足は無理だろう?
家の整備もある。重い物も自分で動かさなくてはならない。
怪我や病気の時は?月のモノは?」
「セイ!」
「見知らぬ男達に襲われることだってある。戦うか、体を差し出すかだ。
その容姿が逆に足枷となるだろう」
セイリアンが頭を撫でながら私を覗き込んだ。
「何があった。お兄ちゃんに話してみろ」
「昨日私が何処にいたか知ってる?」
「ああ」
「そこの三男坊に気に入られて困ってるの」
「……なるほど。それで逃げようと?」
「うん」
「もう一人の方とはどうだ」
「いい人なのは分かった」
「すぐに嫁いでも構わないか?」
「いずれはとは思っているけど」
「すぐに相談しに行け」
「セイ」
「無理なら俺が連れて逃げてやるから」
「追われるわ」
「レイナに拾ってもらった命だ。かまわない。
但し、早く決断しろ」
「ありがとう」
「調査終了でいいか?」
「うん」
シャルム邸に戻り、ドレスに着替えて先触れを出し、夜にレオナールに会いに行った。
「まだ帰っていないのよ」
「パトリシア・バリス様の夜会ですか?」
「パトリシア嬢の婚約者がレオナールと友人なんだ」
「パトリシア嬢の妹と友人なので行ってみます」
「そんなに急ぐの?」
「はい」
「気を付けてね」
夜9時を過ぎていて申し訳なかったが、バリス家に行くと中に入れてもらえた。
妹の方は夜会に参加していなかった。
「今、探させているわ。それにしても意外だわ。ここまで追いかけてくるほど仲が良かったのね」
「ま、まあ、そうね」
「お嬢様、令息は少し酔われて楓の間で休まれております」
「分かったわ。案内してあげて」
「かしこまりました」
「ありがとう。おやすみなさい」
「おやすみ、また学園でね」
2階の奥に行くと案内してくれた使用人が足を止めた。
「どうかなさいましたか?」
「お嬢様、お会いになるのは婚約者で間違いありませんか?」
「はい」
「部屋を聞き間違えたかもしれません」
「あの部屋?入れば分かりますわ」
「人違いだった時に問題になりますから」
その時、独特の声が聞こえた。
この声は……。
私は使用人の静止を振り切り、扉を開けた。
「あっ! いい! もっと奥まで!」
「くっ……出る」
テーブルに突っ伏した女のドレスの裾を捲り上げ、ズボンと下着を足首まで下ろしたレオナールが、女に挿入して激しく突き動かしていた。
パン!
肌と肌がぶつかり合う音が大きくなってすぐに動きが止まった。
吐きそうだ。
「うぐっ……」
「ドクドクしてる。気持ち良かった?」
「すごくいい」
「まだ萎えないの?」
「もう一度」
「また? 今度はベッドにして」
「愛してる」
私はそっと部屋から出て使用人に言伝をお願いしてシャルム邸に戻った。
それから誰が来ようと面会拒否をした。
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