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キレる
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起きたのは王宮の豪華な客間だった。
呼び鈴を鳴らすとメイドとエルネスト殿下がやってきた。
お前は呼んでない!
「レイナおはよう」
「おはようございますレイナ様」
「おはようございます。お水ありがとう」
メイドにだけ返事をした。
「……朝のお支度をして、朝食にいたしましょう」
「私が着替えさせよう」
「バカ言うな。出口はうしろ!」
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ。
昨夜着替えさせたのは私だ」
静かに立ち上がり、置物に手を掛けると振り上げた。
「お待ちください!着替えは私共メイドで行いました!」
コトッ
置物を戻しておいた。
「危険なものは置かないように」
「かしこまりました」
「客間に泊まったのは事故のようなもの。撤去の必要はありません」
「レイナ様、こちらはエルネスト殿下の主寝室で、続き部屋でございます」
「へ?」
「エルネスト殿下の妻の部屋でございます」
「ちょっと!エルネスト!なんて部屋に寝かせるのよ!」
「一晩共に明かすと話し方も自然になったね。嬉しいよ」
「共にとか言うな!」
「暫く添い寝したんだよ?」
『コロス』
「なんか怖い響きだね……額と頭と手にしか口付けてないよ。ガッカリしたなら学校を休んで、」
バスッ
私は枕を殿下に投げつけたが華麗に避けられた。
「やっぱり既成事実を作れば良かった」
ゴンッ
今度は置物を投げたが届かなかった。
「エルネスト殿下、どうかお外へ」
「分かったよ。隣の部屋で待ってるよ」
メイドに促されて出て行った。
「申し訳ございません」
「貴女のせいではないわ。
そうね、脱がせたら胸がペチャンコだったとか腹が出ていたとか、適当に言っておいてくださるかしら」
「レイナ様は私に死ねと?」
「すみません。何でもないです」
「さあ、お顔を洗いましょう」
「はい……」
朝食は私とエルネスト殿下の二人きり…ではなく王太子夫妻が一緒。
父は早朝に帰ったらしい。人と会う予定があるのだとか。
年頃の娘を獣の棲家に残して行くなんて!!
「本当に可愛らしいご令嬢ね」
「エルネストが惚れるのもわかる」
「レイナ、他に食べたいものがあれば言ってくれ」
「ありがとうございます。
二度とない機会で胸がいっぱいですわ」
「刺激的な朝だった」
「は!?」
「もう結ばれたのですね!」
「エルネスト、いくら何でもまずいだろう」
「式は早めないと。授かっていたら大変ですわ!」
「そうだな。嬉しいことだが順番が違うと叱られる」
「誤解です!」
「確認はさせたの?」
「確認?」
「乙女の証の確認よ」
「そうだな、医師を呼ぼう。メイドにも証の確保をさせないと」
「待ってください!
いいですか!私はエルネストとは何の関係もありません!勿論肉体関係もありません!今後もあり得ません!!
私にはレオナールという婚約者がいるのです!
エルネスト、いい加減にして」
「ごめんなさい。てっきり」
「すまなかった」
「私は諦める気はない。レイナが諦めればいいだろう」
『暴君の卵!何でも思い通りになると思うなよ!』
エルネスト殿下はクイックイッと指で側に立つ男を呼んだ。
「訳してくれ」
「暴君の卵、何でも思い通りになると思うなよ」
「ありがとう」
男は下がった。
「彼も翻訳のギフト持ちなんだよ。不敬罪でレイナを絶対妻にしてみせる」
「意味が分かんない!」
「分かるようにしてやる」
エルネストが立ち上がった。
「エルネスト。私という器の玩具で遊びたいの?
貴方が王族の力で得られるのはせいぜい身体だけ。私の心はどんどん貴方の手の届かないところへ行くけど、構わないというなら、私を性奴隷にするといいわ。
その代わり、妻とか愛とかクソみたいなことは言わないで。
長生きしたければ寝姿は見せない方がいいわよ。尊厳を踏み躙られた女が何をするかわからないもの。気がふれれば、どちらかが命を落とすかもよ?
それに、本当に思い通りに出来るかしら。
学校で話しかけないでね。次からは徹底的に無視するし、力付くなら私も力を使うわよ」
私は立ち上がり、二人に挨拶をした。
「王太子殿下、王太子妃殿下、失礼いたします」
メイドに近寄り、
「鞄はどこ?」
「あ、その…」
「はぁ。捨てておいて」
「レイナ!」
「さよなら」
「動くなエルネスト!」
「兄上!!」
「レイナ嬢の言う通りだ」
バタン
レイナの去った食堂では、
「お前はレイナ嬢の身体だけが欲しいのか?」
「違います」
「口説くのはいい。だが王族の力を使って無理矢理妻にするのは駄目だ」
「……はい」
「嫌われたぞ」
「っ!!」
「はぁ~」
「意志が強過ぎて折れる令嬢ではありませんわね」
「嫌われた後では王命という切り札も無意味になってしまった」
「初恋なのです……なのに他の男と婚約しているなんて」
「仕方ないだろう。
レイナ嬢が不義の子だと勘違いされていて、妾の妹の名で返事をもらってしまった。
お前も自分の妻となる者に真摯にならなかった結果だ。
取っ掛かりは一目惚れなのだろう?
最初から全員と面談していれば良かったんだ」
「兄上……」
「まずは謝るしかない」
「はい」
呼び鈴を鳴らすとメイドとエルネスト殿下がやってきた。
お前は呼んでない!
「レイナおはよう」
「おはようございますレイナ様」
「おはようございます。お水ありがとう」
メイドにだけ返事をした。
「……朝のお支度をして、朝食にいたしましょう」
「私が着替えさせよう」
「バカ言うな。出口はうしろ!」
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ。
昨夜着替えさせたのは私だ」
静かに立ち上がり、置物に手を掛けると振り上げた。
「お待ちください!着替えは私共メイドで行いました!」
コトッ
置物を戻しておいた。
「危険なものは置かないように」
「かしこまりました」
「客間に泊まったのは事故のようなもの。撤去の必要はありません」
「レイナ様、こちらはエルネスト殿下の主寝室で、続き部屋でございます」
「へ?」
「エルネスト殿下の妻の部屋でございます」
「ちょっと!エルネスト!なんて部屋に寝かせるのよ!」
「一晩共に明かすと話し方も自然になったね。嬉しいよ」
「共にとか言うな!」
「暫く添い寝したんだよ?」
『コロス』
「なんか怖い響きだね……額と頭と手にしか口付けてないよ。ガッカリしたなら学校を休んで、」
バスッ
私は枕を殿下に投げつけたが華麗に避けられた。
「やっぱり既成事実を作れば良かった」
ゴンッ
今度は置物を投げたが届かなかった。
「エルネスト殿下、どうかお外へ」
「分かったよ。隣の部屋で待ってるよ」
メイドに促されて出て行った。
「申し訳ございません」
「貴女のせいではないわ。
そうね、脱がせたら胸がペチャンコだったとか腹が出ていたとか、適当に言っておいてくださるかしら」
「レイナ様は私に死ねと?」
「すみません。何でもないです」
「さあ、お顔を洗いましょう」
「はい……」
朝食は私とエルネスト殿下の二人きり…ではなく王太子夫妻が一緒。
父は早朝に帰ったらしい。人と会う予定があるのだとか。
年頃の娘を獣の棲家に残して行くなんて!!
「本当に可愛らしいご令嬢ね」
「エルネストが惚れるのもわかる」
「レイナ、他に食べたいものがあれば言ってくれ」
「ありがとうございます。
二度とない機会で胸がいっぱいですわ」
「刺激的な朝だった」
「は!?」
「もう結ばれたのですね!」
「エルネスト、いくら何でもまずいだろう」
「式は早めないと。授かっていたら大変ですわ!」
「そうだな。嬉しいことだが順番が違うと叱られる」
「誤解です!」
「確認はさせたの?」
「確認?」
「乙女の証の確認よ」
「そうだな、医師を呼ぼう。メイドにも証の確保をさせないと」
「待ってください!
いいですか!私はエルネストとは何の関係もありません!勿論肉体関係もありません!今後もあり得ません!!
私にはレオナールという婚約者がいるのです!
エルネスト、いい加減にして」
「ごめんなさい。てっきり」
「すまなかった」
「私は諦める気はない。レイナが諦めればいいだろう」
『暴君の卵!何でも思い通りになると思うなよ!』
エルネスト殿下はクイックイッと指で側に立つ男を呼んだ。
「訳してくれ」
「暴君の卵、何でも思い通りになると思うなよ」
「ありがとう」
男は下がった。
「彼も翻訳のギフト持ちなんだよ。不敬罪でレイナを絶対妻にしてみせる」
「意味が分かんない!」
「分かるようにしてやる」
エルネストが立ち上がった。
「エルネスト。私という器の玩具で遊びたいの?
貴方が王族の力で得られるのはせいぜい身体だけ。私の心はどんどん貴方の手の届かないところへ行くけど、構わないというなら、私を性奴隷にするといいわ。
その代わり、妻とか愛とかクソみたいなことは言わないで。
長生きしたければ寝姿は見せない方がいいわよ。尊厳を踏み躙られた女が何をするかわからないもの。気がふれれば、どちらかが命を落とすかもよ?
それに、本当に思い通りに出来るかしら。
学校で話しかけないでね。次からは徹底的に無視するし、力付くなら私も力を使うわよ」
私は立ち上がり、二人に挨拶をした。
「王太子殿下、王太子妃殿下、失礼いたします」
メイドに近寄り、
「鞄はどこ?」
「あ、その…」
「はぁ。捨てておいて」
「レイナ!」
「さよなら」
「動くなエルネスト!」
「兄上!!」
「レイナ嬢の言う通りだ」
バタン
レイナの去った食堂では、
「お前はレイナ嬢の身体だけが欲しいのか?」
「違います」
「口説くのはいい。だが王族の力を使って無理矢理妻にするのは駄目だ」
「……はい」
「嫌われたぞ」
「っ!!」
「はぁ~」
「意志が強過ぎて折れる令嬢ではありませんわね」
「嫌われた後では王命という切り札も無意味になってしまった」
「初恋なのです……なのに他の男と婚約しているなんて」
「仕方ないだろう。
レイナ嬢が不義の子だと勘違いされていて、妾の妹の名で返事をもらってしまった。
お前も自分の妻となる者に真摯にならなかった結果だ。
取っ掛かりは一目惚れなのだろう?
最初から全員と面談していれば良かったんだ」
「兄上……」
「まずは謝るしかない」
「はい」
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