【完結】見染められた令嬢

ユユ

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亀裂骨折

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今日はレオナールのエスコートで第二王子殿下の誕生日パーティーに来ている。

勿論馬車の中は沈黙だ。
ミュージックプレイヤーが必須な状況だ。スマホがあれば映画とかドラマとか見ていたい。すぐ着くけどね。

挨拶を終えると暇だ。誰か見つけてお喋りに行こうかな。

「ダンス迄は時間がありますので友人とお話しております。レオナール様もご友人の所へ行かれては」

いつもの通り。早く行っちゃって!

「……嫌だ」

「では後で……えっ!?」

嫌だって聞こえたような。

「友人に紹介してくれ」

ええっ!どうしちゃったの!

『熱でもあるんじゃないの?』

「……私の友人にも…挨拶だけ」

「あ、はい」

それぞれの友人に紹介していくが愛想笑いもしないから令嬢達が怖がっちゃってるじゃないの!

しかもレオナール様の友人の紹介は

「レオナール…隠してたら紹介にならないだろう」

そう言われてもレオナール様は私を半分隠した状態だ。

「レイナ・シャルムと申します」

「可愛いなぁ」

「離れろ」

「瞳がキラキラしてるよ」

「見るな」

「頬が柔らかそう」

「下がれ」

「お兄さんと遊ぼうか」

「お前ら」

『眉毛全部抜くぞ』

「………っ」

「レイナちゃん何て言ったの?」

「緊張しますって言いました」

「初々しいなぁ。デートしよう」

「ドレス買いに行こうか」

「人気の観劇のチケットあるよ」

「うちの夜会においでよ」

「俺の婚約者だぞ!」『人形でも連れて行け』

「………っ」

「レオナールと被っただろう。
レイナちゃん、何て言ったの?」

「人気の観劇いいですねって言いました」

「はぁ!?」

「レオナール、煩いよ」

「やった!来週末だけど大丈夫?」

「レニー!!」

「はい。楽しみにしていますわ。
ヴィアンカ様にもお声をかけておきますわ」

「えっ、ヴィアンカを知ってるの!?」

「はい。この間昼食をご一緒いたしましたわ」

「…ヴィアンカには内緒にしてほしいなぁ」

「何故ですか」

「それは……」

「ヴィアンカ様が行きたいと話していたので手に入れていたチケットを他の女の子と行く為に使うなんてことはありませんよね?」

「っ!!」

「どっちにも失礼ですもの。パドウェル侯爵令息がその様なことはなさらないですわね」

「も、勿論だよ」

「有難いのですがお邪魔をしてはヴィアンカ様ががっかりなさいますので遠慮いたしますわ。

そろそろダンスが始まりますからパートナーをお探しになってはいかがでしょう」

「そうだな。失礼するよ」

「私達も失礼するよ」

紹介する友達選ぼうよ。…って、何で見つめてるのよ。

「何か?」

「……プッ」

プ? 

「ダンスが始まる」

そう言って私の手を引いたレオナールの耳は赤い。 

笑った?

婚約してから能面しか見たことが無かった。
顔を逸らすから奇跡の瞬間が見れなかったわ。

ダンスを踊り出したレオナール様はちょっとだけ表情が柔らかい気がする。

『笑顔みてみたいな』

「っ!」

「痛っ!」

「すまない!」

足を踏まれてしまって物凄く痛い!

「ひゃっ!」

レオナール様は私を抱き上げると会場を出るとメイドに事情を話して部屋を借りた。

ソファに私を下ろすと跪き私の足を掴んだ。

「ちょっと」

脱がされて踏んだ箇所を確認しているようだ。

「あの、大丈夫ですから」

「大丈夫じゃない」

「爪も無事ですし」

「赤くなってる……本当にすまない」

そんなこの世の終わりみたいな顔色にならなくても。

「このくらい大丈夫ですから」

「医者を呼ばせる」

「待って!」

「!!」

立ちあがろうとしたレオナール様が蛇の時の様に固まってしまった。

ヤバイ!

「動いていいけど医者は大袈裟です」

静止されて動こうともがいていたのだろう。
解けたと同時に前のめりに倒れた。

私の方に。

「ギャアアアアアー!」

バン!

「大丈夫ですか!!」

騎士が叫び声を聞いて飛び込んできた。

私は泣きながらレオナール様を叩いていた。
跪いた体勢から私の太腿に倒れ下腹部に顔を埋めているし、膝が踏まれた足の甲の上に乗ってるのだ。

レオナール様は慌てて飛び退き、私は足を手で押さえる。痛い!痛い!痛い!

「医者!医者!!」

「レイナ!見えてる!」

『痛いの!』

「脚を上げるな!

すまない。脚を怪我してる。医者を呼んでくれ」

「かしこまりました!」

『痛い~!また踏まれた~!』

「ごめん!」

『ごめんじゃ済まないやつだよ!』

「ああ、神様」

『腹立つから神様呼ぶな!』

「ごめん」




その後は医師が来て、見てもらったら骨にヒビが入っているらしい。

この人は透視のスキル持ちなのだとか。
しかもちょっとしか透視出来ないから医師にしか向かないスキルだと笑っていた。

そして馬車に乗って着いたのは…

「レオナール様、ここは私の家じゃないです」

「伯爵家には連絡を入れた」

「そうじゃなくて」

「まぁまぁ!早く運んであげなさい」

「公爵夫人、すぐ帰りますので」

「駄目よ。レオナールが怪我をさせたのでしょう。うちで面倒を見るわ」

どんどん運ばれて行っちゃう。




「レオナール様、こちらでよろしいのですか?他のお部屋も用意しておりますが」

「ここの方が便利だ」

メイドが扉を開けるといかにも誰かの部屋という感じの部屋だった。

「どなたのお部屋ですか」

「私の部屋だ」

「何考えてるんですか!」

「ここの方が便利だからいいんだ」

「レオナール様は別の部屋に行かれるのですね?」

「看病があるからソファで寝る」

「無理ですよ!看病はありません!」

「トイレにひとりで行けないだろう」

「松葉杖があれば大丈夫です!」

「危ない」

「レオナール様!」

「傷に響くから大人しくしてくれ。
食事を用意させる。まずは着替えだな」

『変態』


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