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リオナード/謁見

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【 リオナードの視点 】


パーティを終えて帰ろうとした時に陛下の側近が話しかけてきた。

「ベルナード侯爵。王家の知らない契約があるのなら、明日の謁見の時に陛下にお渡しできるように契約内容を書いて持参願います。原本があるようでしたらそちらをお願いします」

「かしこまりました」



屋敷に戻り、父が契約内容を思い出しながら紙に書いた。原本は領地の金庫にしまってある。

「こうなったら正直に話すしかないわね」

「そうですね」

「しかし、ガーランド子爵夫人ねえ」

「すみません」

「どんな付き合いだったの?」

「お互い独身で、数ヶ月 大人の関係になっただけです」

「体だけ? 気持ちは?」

「ありません」

「耳にはしていたが、どのくらいいるんだ」

「大人の交際のような関係になったのは6人で、その場限りも……それなりに」

「「 はぁ 」」

「すみません」

「夫人のような方が現れるかもしれないってことだな」

「そうね。矛先はエステルになってしまうのね」

「……」




翌日 登城し、謁見の間に通されたが、先にいたのは伯爵夫妻だけだった。

「伯爵夫人、エステルは、」

「屋敷に残してきましたわ。傷がありますから」

「そうですね。
申し訳ございません」

「聞くのが怖いのですが、ガーランド夫人のような方は今後も現れますの?」

「可能性は……あります」

「娘は真っ新ですのよ」

「申し訳ございません」

「ヴァネッサなら扇子で弾いてお終いでしょうけど…エステルには酷かもしれないわね」

「私は過去は戻せませんが、エステルを愛しているんです」

「そうは言っても、」

話の途中で陛下が入室なさった。



国王「契約書を読んだ。これは誰の要望だ」

私「私とヴァネッサ嬢で相談をして作成しました」

国王「そこまで仲が悪かったのか」

私「相性は悪かったと思います」

国王「確かに、婚姻して両家の縁を繋げとしか書かなかったが、これでは縁を繋いだことにはならないじゃないか。

これをエステルにも適用させているのだな?」

父「はい。新婦の入れ替わりが急でしたのでそのままに」

国王「で、エステルもこの内容を知っているから妾の話を口にしたのだな?」

父「はい、陛下」

国王「エステルは別棟で生活しているのだな?」

父「はい、陛下。ただし、食事を一緒にとったり、お茶をしたり、時には領地を観光に連れて行ったり買い物をしたり。

急に嫁がざるを得なかったエステルがゆっくり馴染むように心を配ったつもりです」

伯爵「確かにエステルからもそう聞いていて、リオナード殿がベルナード邸に泊まりにきたこともあります」

国王「だが、エステルはお飾りの妻を受け入れているではないか。
年齢的に初夜や出産は慌てる必要は無いが、最初から妾に産ませるのが前提なのは問題だ。

妻が孕まないから妾に子を産ませたか、愛人を作り妾に迎えて子を産ませたかという目で見られる。
ヴァネッサ嬢はそれでも構わなかったかもしれないが、エステルにそんな視線を受け止めろと?」

私「エステルとの婚姻当時から妾を探すことを止めております。

私はエステルを愛してしまいました。
妾など迎えるつもりはありません」

国王「エステルはそう思っていないではないか。彼女の中では条件は生きているぞ?」

私「怖かったんです。
条件を無効にして欲しいと言って、拒絶されたらと怖くて言い出せませんでした。

ゆっくり私を知ってもらい、ソワールに馴染んでもらえたらと」

国王「まるで初恋のようだな」

私「……」

国王「何人も女と遊んでも、心を奪うものはいなかったのだな。

ちゃんとエステルと話し合いなさい」

私「はい、陛下」


国王「それと、ガーランド子爵は夫人と離縁を決めたそうだ」

そう言い残して退席なさった。


伯爵「リオナード殿。娘は一旦領地に連れ帰り休ませることにした」

私「伯爵、」

伯爵「エステルは気が立っている。今 戻してもいい方向に話が進む気はしない」

父「エステルに謝っておいでください」

私「父上!?」

伯爵「分かりました。では」

伯爵夫妻は立ち去ってしまった。





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