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リオナード/婚約

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【 ベルナードの視点 】


幼少の頃に王命により決められた婚約者がいた。

『よりによってベルナードの娘をソワールに迎えねばならないとは!』

『ベルナードの血を混ぜるなんて嫌ですわ』

『王命は婚姻だ。子を作れとは書いていない』

『では恋人を作らせましょう』

『そうだな。うちは侯爵家だ。妾がいても不思議ではない。白い結婚にしよう。孕まなかったことにして妾に産ませよう』

父や母達が話し合っていたが、その時は何のことか分からなかった。


契約の時に顔合わせをしたが、弟扱いされた。
私よりも大きくて直ぐに嫌いになった。


それ以来 会わなかったのに歳が同じだから学園で顔を合わせるようになった。

向こうは男を侍らせていたし、私にも令嬢がいつも周りにいた。

“恋愛” という気持ちにはならなかったが、付き合ってみた。

だけど、全く分からない。
ベタベタ絡んで鬱陶しい。

何人か取り替えたが、面倒なだけだった。
その時は体の関係は無かった。


卒業間近、友人が夜会で女を紹介してきた。
歳上の令嬢だった。

ベタベタすることもなく、会話も学園の令嬢とは違う。

誘いのままに体を重ねた。
初めての経験だったが 令嬢がリードした。

その後も何度か令嬢を抱いたが飽きてきた。

興味本位と、友人達のノリに合わせただけだった。
心は全く動かない。


卒業後 領地に戻り父の仕事を手伝いながら、たまに出席する夜会で女と体の関係を持った。
学園時代に夜会で遊んでいたメンバーの中に従兄弟がいて、彼もソワールに戻っていたからが続いていた。


20歳になり、婚姻を1年後に控えて再度話し合いの席が持たれた。

互いの条件を出し合い、契約書にして署名し、別棟の改装が始まった。


『まだ妾を選んでないのか?』

私の肩に腕を回すのは、従兄弟だ。

『両親が探してくるだろう』

『でもさ、孕ますための女ならが良い方が得じゃん』

『まぁな』

適当な相槌で返した。

『言い寄って来る令嬢がいっぱいいるだろう。
片っ端から試してみろよ』

『“責任”を問われたくない。言い寄って来る女は侯爵夫人の座を夢見ているのが分かるし、鬱陶しい。
それに妾にも条件があるからな』

『ふ~ん。

そういえば リオナードの婚約者、また別の男をパートナーにしてパーティに出ていたぞ』

『契約内だからいいんだ』


そう。私とヴァネッサには婚姻生活の上で契約を交わした。

“ヴァネッサは別棟に住み、そこではヴァネッサルールを適用する。

片方だけの友人や親族の行事などに付き合わせない。王宮主催のものか、両家共通のもののみパートナーとして参加する。

白い結婚で、子は望まない。

互いに恋人を作ってもいいが、屋敷には連れ込まない。
外泊も安全上、居場所さえ告げれば問題無し。

跡継ぎ問題があるから妾を迎える。
離れに住まわせるので、妾とヴァネッサの交流はしない。

ヴァネッサも恋人との子を産んでも構わないが、生まれた子はベルナード籍とする。

共通の予定だけ互いに把握して自由に過ごし干渉しない。

爵位を継げば侯爵夫人としての対外的な務めを求めるが、その代わり生活にかかる費用全てをベルナードが持つ。持参金も不要。

時が経ち、爵位を次世代に継いで隠居をする時に離縁も可能”


私とヴァネッサは真っ白な仮面夫婦の契約書に満足していた。










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