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ニコラの距離

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そういえばこんなことがあったな。


義母の主催する茶会…と言っても4人で集まるだけだけど、私はメイドと一緒に立たされた。

義母のドレスはオーダーメイド。サイズアップをさせることはあまりできない。身長は同じなのだけど同じ体型ではない。

義母の方がウエストが太く胴が長い。それを元にお直しを入れるとドレスの丈が不恰好になってしまうが仕方ない。

そして慎ましい胸囲の義母のドレスに詰め込もうと胸を圧迫しなくてはならない。
故に、途中で苦しくて倒れていた。

『孕まない上に軟弱で困るわぁ』
と義母は夫人方に笑いながら話していた。


今はお祖父様の庇護下に入って、お腹いっぱい食べても辛くならないドレスを着ることができる。

「倒れなくて済むって幸せね」

心の呟きが声に出ていたのを聞き逃さなかった過保護な二人は説明を求めてきた。

拷問ドレスの話をするとアルバートとマリアはハンカチを取り出して目頭を押さえ、お祖父様は青筋を立てていた。

「エリスに二度とそんな思いはさせない」

「ニコラ。大丈夫よ。あの屋敷でのことは普通あり得ないことだらけだから」

「探し出して八つ裂きにしようか」

「お爺ちゃま。第一容疑者は満場一致で私だから止めて」




数日後。

「お爺ちゃま。誰か誕生日だった?」

豪華な昼食とホールのケーキまでテーブルに乗っていた。

「エリスが儂の養子になった。
エリス・フィルドナと正式に名乗ることを許されたんだ」

「おめでとう、エリス」

「お爺ちゃま、ニコラ。ありがとう」

無事ローランド子爵家から除籍され、フィルドナ侯爵家の籍に入ったらしい。
ローランド家にとっては不名誉だろう。





その後数ヶ月間、お祖父様やニコラと遊び回っていた。
そうして年が明け、春がやってきた。


「ニコラ。今日は衣装の仕上げなんだって?」

「まあね」

「ニコラがついにお嫁さんを迎えるのね」

「そうだよ。長かったぁ。途中変な虫がつかないか気が気じゃ無かったけど、何とかなりそうだ」

「ニコラに愛されているのね」

「本人は気付いていないようだけど」

「ちゃんと言葉にして伝えないと」

「愛してる。ずっと愛してる」

「ニコラ。私じゃなくて婚約者に言わないと」


ニコラの距離感がおかしい。
いくら家族とはいえ、同い歳の男性だ。
私とは顔も似ていないしちょっと困る。

朝は頭を撫でながら起こされ、お祖父様と3人で朝食をとり、ニコラの予定が無いときは3人で買い物に行ったり観劇などをしたり、知り合いの茶会に参加したり。

婚約者を誘えばいいのにニコラの友人の茶会や夜会まで連れ回された。
ダンスもやけに近いし何度も踊らさせるし、寝るときは額にキスをする。

不謹慎だがドキドキすることもある。
ニコラは妹ができたみたいで嬉しいんだろう。勘違いしてはダメだと自分に言い聞かせていた。









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