10 / 15
両親
しおりを挟む
数日後、両親がフィルドナ侯爵家にやってきた。
私を見るなり抱きしめようとした母をお祖父様が制した。
「先ずは座れ」
私、お祖父様、ニコラで3人掛けソファに。父と母で対面したソファに座った。
メイド長のマリアがお茶を淹れた後、見届け人としてアルバートと一緒にマリアが端に立つ。
爺「で?用件は何だ」
父「それはお義父様が分かっておられますよね」
爺「はて。何かな」
母「お父様、エリスは私達の子です」
爺「そりゃそうだろう。そんなことを言いに来たなら今すぐ帰れ」
母「っ!」
お母様に甘いお祖父様が冷たいわ。こんなの初めて…。
父「娘を惑わし、陛下を利用し、私達の親としての権利を踏み躙っているではありませんか!」
爺「ジュエルを惑わし、エリスにお前の愚かさの代償を払わせ、親の義務と当主の義務まで放棄したクズが何を言うんだ」
父「お義父様!いくらなんでも、」
バン!!
お祖父様がテーブルを叩いた。
爺「何だと言うのだ?お前に何が出来る」
父「っ!」
爺「僅かな数分の間にお前はかなりの失言をした。
先ず、侯爵であり義父への言いがかりと無礼。そして国王陛下への不敬だ」
父「そんなつもりは、」
爺「こんなことに利用される程国王陛下は愚か者だとお前はその口で言ったのだ。“陛下を利用する”という言葉はそういうことだ。
権利というのは義務との抱き合わせだ。義務が成されていないのに権利だけ主張するのは幼児のすることだ。
儂は二つ忠告した。
あの粗末な婚姻式はおかしいからサヴォワ家を監視しろと。
そして抜き打ちで会いに行けと。
お前はその二つともやらなかっただろう」
父「監視なんて…サヴォワ家は慎ましいだけで、それに格上の伯爵家に抜き打ち訪問などできません」
爺「お前を酔わせて婚約させるサヴォワ家が慎ましい?格上?ふざけるでないわ!」
母「お父様!」
爺「マクシム。お前は儂の着古した服や下着をサイズ直しして着るか?
閨の1時間前に性交の予行練習を儂の前でさせるが文句言わないな?勿論体位も儂が決める。
翌日の朝食の場で、どう注いだのか確認するが、かまわないな?」
父「正気ですか!気持ち悪い!!」
母「お父様!馬鹿なことを言わないでください!」
爺「嫁いでからずっと、サヴォワ家でエリスがされていた仕打ちの内容だと言ってもか?」
父母「え!?」
爺「そんな訳だから、エリスは婚家で使うものはほぼ全て自分の金で買った。下着も薬もな。
奴等からは結婚指輪さえ与えてもらえず、ウエディングドレスも、ベールも義母のお古だ。
その後もドレスやナイトドレスも義母のお古だ。
閨の話もそのままだ。
夫のジョゼフは不能を隠して言いなりになり、結果、3年経った時に赤い離縁届を義母から突きつけられた。石女と呼ばれてな。
既に新たな妻が決まっているからすぐに出て行けとエリスを追い出した。サヴォワ家で買ったものは置いていけと言ってな。買ったこともないのにだぞ?
そんなクソと婚姻させたお前の元に帰るわけがないし、気にもかけない無情なお前達に頼りたくないと思うのは自然なことだろう」
父「エリス…知らなかったんだ」
母「エリス…ごめんなさい」
爺「一度でも訪ねれば簡単に発覚したはずだ。
エリスが古いドレスを着て出迎えるのだから。
マクシム。お前はどうしたらエリスをそんな目に遭わせられる?
ジュエル。お前はどうして腹を痛めて産んだ子に無関心でいられる?
私も陛下も、こんな酷い両親の元には帰せないと判断した。間違っているか?」
父「っ!!」
母「いつもエリスを思っていたわ!知らなかったのよ!エリス、許してちょうだい!」
私「戻ってもまたお父様の犠牲になるだけです。
持参金は戻ったのだから私のことは忘れてください。悪いと思うなら関わらないでください」
母「そんなことを言う子じゃなかったのに…」
ニ「叔母上。いい加減になさってください。今度はエリスを言葉で傷付けるのですか?
恐ろしい人だ。
叔父上も家長として子を守る義務があったでしょう。貴方の尻拭いで嫁がされたエリスが可哀想ですよ」
父「ニコラ殿はもうすぐ婚姻する。エリスが居辛くなるのは目に見えている。お義父様も若くない。
素直に戻って、新たな縁談を探すのがエリスの為なんだよ。
女は一人で生きていくのは大変なことなんだ」
この言葉にお祖父様は大きな溜息を吐いた。
私を見るなり抱きしめようとした母をお祖父様が制した。
「先ずは座れ」
私、お祖父様、ニコラで3人掛けソファに。父と母で対面したソファに座った。
メイド長のマリアがお茶を淹れた後、見届け人としてアルバートと一緒にマリアが端に立つ。
爺「で?用件は何だ」
父「それはお義父様が分かっておられますよね」
爺「はて。何かな」
母「お父様、エリスは私達の子です」
爺「そりゃそうだろう。そんなことを言いに来たなら今すぐ帰れ」
母「っ!」
お母様に甘いお祖父様が冷たいわ。こんなの初めて…。
父「娘を惑わし、陛下を利用し、私達の親としての権利を踏み躙っているではありませんか!」
爺「ジュエルを惑わし、エリスにお前の愚かさの代償を払わせ、親の義務と当主の義務まで放棄したクズが何を言うんだ」
父「お義父様!いくらなんでも、」
バン!!
お祖父様がテーブルを叩いた。
爺「何だと言うのだ?お前に何が出来る」
父「っ!」
爺「僅かな数分の間にお前はかなりの失言をした。
先ず、侯爵であり義父への言いがかりと無礼。そして国王陛下への不敬だ」
父「そんなつもりは、」
爺「こんなことに利用される程国王陛下は愚か者だとお前はその口で言ったのだ。“陛下を利用する”という言葉はそういうことだ。
権利というのは義務との抱き合わせだ。義務が成されていないのに権利だけ主張するのは幼児のすることだ。
儂は二つ忠告した。
あの粗末な婚姻式はおかしいからサヴォワ家を監視しろと。
そして抜き打ちで会いに行けと。
お前はその二つともやらなかっただろう」
父「監視なんて…サヴォワ家は慎ましいだけで、それに格上の伯爵家に抜き打ち訪問などできません」
爺「お前を酔わせて婚約させるサヴォワ家が慎ましい?格上?ふざけるでないわ!」
母「お父様!」
爺「マクシム。お前は儂の着古した服や下着をサイズ直しして着るか?
閨の1時間前に性交の予行練習を儂の前でさせるが文句言わないな?勿論体位も儂が決める。
翌日の朝食の場で、どう注いだのか確認するが、かまわないな?」
父「正気ですか!気持ち悪い!!」
母「お父様!馬鹿なことを言わないでください!」
爺「嫁いでからずっと、サヴォワ家でエリスがされていた仕打ちの内容だと言ってもか?」
父母「え!?」
爺「そんな訳だから、エリスは婚家で使うものはほぼ全て自分の金で買った。下着も薬もな。
奴等からは結婚指輪さえ与えてもらえず、ウエディングドレスも、ベールも義母のお古だ。
その後もドレスやナイトドレスも義母のお古だ。
閨の話もそのままだ。
夫のジョゼフは不能を隠して言いなりになり、結果、3年経った時に赤い離縁届を義母から突きつけられた。石女と呼ばれてな。
既に新たな妻が決まっているからすぐに出て行けとエリスを追い出した。サヴォワ家で買ったものは置いていけと言ってな。買ったこともないのにだぞ?
そんなクソと婚姻させたお前の元に帰るわけがないし、気にもかけない無情なお前達に頼りたくないと思うのは自然なことだろう」
父「エリス…知らなかったんだ」
母「エリス…ごめんなさい」
爺「一度でも訪ねれば簡単に発覚したはずだ。
エリスが古いドレスを着て出迎えるのだから。
マクシム。お前はどうしたらエリスをそんな目に遭わせられる?
ジュエル。お前はどうして腹を痛めて産んだ子に無関心でいられる?
私も陛下も、こんな酷い両親の元には帰せないと判断した。間違っているか?」
父「っ!!」
母「いつもエリスを思っていたわ!知らなかったのよ!エリス、許してちょうだい!」
私「戻ってもまたお父様の犠牲になるだけです。
持参金は戻ったのだから私のことは忘れてください。悪いと思うなら関わらないでください」
母「そんなことを言う子じゃなかったのに…」
ニ「叔母上。いい加減になさってください。今度はエリスを言葉で傷付けるのですか?
恐ろしい人だ。
叔父上も家長として子を守る義務があったでしょう。貴方の尻拭いで嫁がされたエリスが可哀想ですよ」
父「ニコラ殿はもうすぐ婚姻する。エリスが居辛くなるのは目に見えている。お義父様も若くない。
素直に戻って、新たな縁談を探すのがエリスの為なんだよ。
女は一人で生きていくのは大変なことなんだ」
この言葉にお祖父様は大きな溜息を吐いた。
469
お気に入りに追加
3,369
あなたにおすすめの小説

元婚約者が愛おしい
碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。
留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。
フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。
リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。
フラン王子目線の物語です。

婚約者を解放してあげてくださいと言われましたが、わたくしに婚約者はおりません
碧桜 汐香
恋愛
見ず知らずの子爵令嬢が、突然家に訪れてきて、婚約者と別れろと言ってきました。夫はいるけれども、婚約者はいませんわ。
この国では、不倫は大罪。国教の教義に反するため、むち打ちの上、国外追放になります。
話を擦り合わせていると、夫が帰ってきて……。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

【完結】正妃に裏切られて、どんな気持ちですか?
かとるり
恋愛
両国の繁栄のために嫁ぐことになった王女スカーレット。
しかし彼女を待ち受けていたのは王太子ディランからの信じられない言葉だった。
「スカーレット、俺はシェイラを正妃にすることに決めた」

【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで
雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。
※王国は滅びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる