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ニコラの片思い
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【 ニコラの視点 】
エリスが去ると、祖父のプロスペールと孫のニコラは白百合認定証を見つめていた。
「こんな扱いをすると知っていたら諦めなかった」
「ニコラ。過ぎたことだ。
まさかあいつが相談もなくエリスの婚約を決めてしまうと思わなかったしな」
先代のサヴォワ伯爵は、重大な瑕疵がない限り婚約解消はできないような契約書を作りローランド子爵に署名させていた。
エリスの婚約を知ったとき自分の気持ちを知った。
年の半分は一緒に過ごしていた少女はとても愛らしい顔をしていた。
大きな瞳は垂れ気味で、笑顔がとても可愛かった。
デビュータントもパートナーを務めた。
ある日お祖父様がエリスの父親であるローランド子爵に激怒していた。ドアから漏れ出た怒鳴り声に心臓が止まりかけた。
『エリスをサヴォワ伯爵家と婚約させるなど、何を考えているんだ!!』
部屋に戻りエリスから貰ったプレゼントを眺めた。
エリスが他の男と結婚…
あの大きな瞳に別の男を映し、微笑みかけるのか?
別の男との子を産むのか?
激しい怒りと後悔が身体中を支配した。
何故今 気が付くんだ!
もっと早く気付いていてお祖父様に相談していれば!
翌日、お祖父様に相談した。
『やっと気が付いたのです。お祖父様、エリスと結婚させてください!』
『サヴォワ伯爵は賢かった。
あの契約書の内容では婚約解消は無理だ』
『そんな…』
重大な瑕疵。それは結婚式前日まで調査を入れたが見つからなかった。
エリスの花嫁姿を参列席から見ることになるだなんて。
エリスが結婚して一年後、婚約をした。
父の知り合いの娘だった。
彼女の卒業後に婚姻する予定だ。
可もなく不可もなく。
どうやら共通の知人の茶会で私を見かけて、親である公爵に私と結婚したいとお強請りしたようだ。
エリスでなければ、誰であろうと一緒だった。
だから婚約した。
だけど今、白百合の証明を持ったエリスが同じ屋根の下にいる。
それは婚姻相手にも、他の男にも、誰にも抱かれたことがないという証明だ。
つまり、今この瞬間もエリスは処女なのだ。
教会では処女膜の有無を確認してもらった。
近日中に離縁は叶う。
「クソ!」
なのに私は婚約してしまった。
エリスが結婚したことに傷心していないで、上手くいっているかどうか踏み込んで聞けばよかった。
手を繋いだのはデビュータント以来だ。
柔らかくて小さな手。私を見上げる瞳は以前と変わらず澄みきっている。
お強請りすれば何でもお祖父様に買ってもらえるのに、いつも遠慮している。
店でもそうだ。だから私とお祖父様が次々と選んだ。
エリスに義母のお古を直して着せるだなんて…しかもナイトドレスまで!
到底許せるものではなかった。
ジョゼフ・サヴォワ。あの男も許せない。
エリスに三年間も辛く恥ずかしい思いをさせて!
赤い離縁届、それは妻の不妊による離縁届だ。
貴族は跡継ぎを残さなくてはならないから、その場合は致し方無い。
務めが果たせなかったということで契約終了ということになる。そして慰謝料や財産分与は発生しない。ただし、身寄りがない場合は最低限の援助をしなくてはならない。
エリスは無一文で追い出されたことになる。
エリスがフィルドナ邸に来て10日後に手紙が届いた。
ローランド子爵からだった。
内容を読むと、赤い離縁届に署名したから帰って来いというものだった。
だからお祖父様が代わりに返信した。
“エリスを渡す気はない。
一生フィルドナ侯爵家で面倒を見る。
争えばジュエルと一緒に返してもらい、ローランドの籍から二人をフィルドナの籍に移す”
私は次期フィルドナ侯爵。
つまりエリスは私の庇護下に置くことになる。
エリスを守るためにお祖父様にもっと教えを乞わなければ。
エリスが去ると、祖父のプロスペールと孫のニコラは白百合認定証を見つめていた。
「こんな扱いをすると知っていたら諦めなかった」
「ニコラ。過ぎたことだ。
まさかあいつが相談もなくエリスの婚約を決めてしまうと思わなかったしな」
先代のサヴォワ伯爵は、重大な瑕疵がない限り婚約解消はできないような契約書を作りローランド子爵に署名させていた。
エリスの婚約を知ったとき自分の気持ちを知った。
年の半分は一緒に過ごしていた少女はとても愛らしい顔をしていた。
大きな瞳は垂れ気味で、笑顔がとても可愛かった。
デビュータントもパートナーを務めた。
ある日お祖父様がエリスの父親であるローランド子爵に激怒していた。ドアから漏れ出た怒鳴り声に心臓が止まりかけた。
『エリスをサヴォワ伯爵家と婚約させるなど、何を考えているんだ!!』
部屋に戻りエリスから貰ったプレゼントを眺めた。
エリスが他の男と結婚…
あの大きな瞳に別の男を映し、微笑みかけるのか?
別の男との子を産むのか?
激しい怒りと後悔が身体中を支配した。
何故今 気が付くんだ!
もっと早く気付いていてお祖父様に相談していれば!
翌日、お祖父様に相談した。
『やっと気が付いたのです。お祖父様、エリスと結婚させてください!』
『サヴォワ伯爵は賢かった。
あの契約書の内容では婚約解消は無理だ』
『そんな…』
重大な瑕疵。それは結婚式前日まで調査を入れたが見つからなかった。
エリスの花嫁姿を参列席から見ることになるだなんて。
エリスが結婚して一年後、婚約をした。
父の知り合いの娘だった。
彼女の卒業後に婚姻する予定だ。
可もなく不可もなく。
どうやら共通の知人の茶会で私を見かけて、親である公爵に私と結婚したいとお強請りしたようだ。
エリスでなければ、誰であろうと一緒だった。
だから婚約した。
だけど今、白百合の証明を持ったエリスが同じ屋根の下にいる。
それは婚姻相手にも、他の男にも、誰にも抱かれたことがないという証明だ。
つまり、今この瞬間もエリスは処女なのだ。
教会では処女膜の有無を確認してもらった。
近日中に離縁は叶う。
「クソ!」
なのに私は婚約してしまった。
エリスが結婚したことに傷心していないで、上手くいっているかどうか踏み込んで聞けばよかった。
手を繋いだのはデビュータント以来だ。
柔らかくて小さな手。私を見上げる瞳は以前と変わらず澄みきっている。
お強請りすれば何でもお祖父様に買ってもらえるのに、いつも遠慮している。
店でもそうだ。だから私とお祖父様が次々と選んだ。
エリスに義母のお古を直して着せるだなんて…しかもナイトドレスまで!
到底許せるものではなかった。
ジョゼフ・サヴォワ。あの男も許せない。
エリスに三年間も辛く恥ずかしい思いをさせて!
赤い離縁届、それは妻の不妊による離縁届だ。
貴族は跡継ぎを残さなくてはならないから、その場合は致し方無い。
務めが果たせなかったということで契約終了ということになる。そして慰謝料や財産分与は発生しない。ただし、身寄りがない場合は最低限の援助をしなくてはならない。
エリスは無一文で追い出されたことになる。
エリスがフィルドナ邸に来て10日後に手紙が届いた。
ローランド子爵からだった。
内容を読むと、赤い離縁届に署名したから帰って来いというものだった。
だからお祖父様が代わりに返信した。
“エリスを渡す気はない。
一生フィルドナ侯爵家で面倒を見る。
争えばジュエルと一緒に返してもらい、ローランドの籍から二人をフィルドナの籍に移す”
私は次期フィルドナ侯爵。
つまりエリスは私の庇護下に置くことになる。
エリスを守るためにお祖父様にもっと教えを乞わなければ。
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