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トリシア王女殿下はシルヴェストル様とマチアス様を伴って王都のお店を巡るらしい。
私とエミリアン様とグラシアン王子殿下は王都の端を一周してから中心部へ戻るように観光する予定だ。
私はニッコリ微笑み、エミリアン様は少し緊張気味のようだ。
乗車前にエミリアン様には“テムスカリン家の更なる発展のチャンスかもしれませんよ”と耳打ちすると、“面倒だから押し付ける気だろう”と返して来た。だから馬車に乗ってニッコリしている。
だって後はガイド・エミリアンにお任せだから。
「静かだね」
「あまり出かける機会が無くて、王都も不慣れなのです。今は屋敷を拠点に親しい方々のお屋敷を往復するとか、学園の往復とか、お店も宝飾品の店とドレスの店それぞれ一軒ずつしか通いません」
「うちの店を利用してくれよ」
「それってオルデン様にも影響しそうだから遠慮します」
エミリアンは侯爵家の私にももう遠慮がない。
「何か買ってやろうか」
あ~きっと困窮した侯爵家の話を聞いたのね。
殿下が機嫌を伺うように提案してきた。
「後妻と折り合いが悪くて、自由も手持ちも無かっただけですわ。領地に送り込んだらタウンハウスでやる事がいっぱいでしたし、交友関係も密になったりして余り出かける時間が無くなってしまいましたの。それにドレスの店も、宝飾店も私のお気に入りを絞って取り引きしているだけですから、そこまで貧乏ではありませんわ」
「まあ、そのネックレスを見れば良い品を付けているのが分かるが、そこはハイと言った方が得だぞ」
「見返りや影響が怖くてハイなどと言えませんわ」
「酷いな」
「私などよりトリシア王女殿下に買って差し上げてください」
「エミリアン。子爵家ではレディの下着は扱っているのか?」
「はい。ございます」
「最後にそこに寄ろう。アリスに贈りたい」
「嫌ですよ!私のサイズがアイツにバレちゃうじゃないですか!」
「ハハッ」
「わざとですか。
エミリアン様。殿下の下着を買いに行きましょう。私が心を込めて刺繍をして差し上げます」
「嬉しいなぁ。半周にしてすぐに行こう」
こうして殿下用の下着を5枚買って戻ってきた。
また王族とゲストとマチアス様と私達姉妹で夕食を食べ終わると、殿下がニヤニヤしながら話し出した。
グ「今日、アリスに下着を買ってもらったんだ」
全「「はあ!?」」
グ「私のために刺繍を施してくれるらしいんだ」
コイツ!
マ「アリス」
ス「お姉様!?」
シ「……」
グ「楽しみだなぁ。仕上がったら履いて見せて回りたいよ」
ア「まあ嬉しいですわ!グラシアン王子殿下が実際に5枚履いて見せて回ってくださるのですね!」
グ「え?」
ア「王子に二言はありませんわよね?」
グ「ア、アリス!?」
察した陛下は笑顔で加勢してくれた。
陛下「確かに聞いた。早く仕上げてあげなさい。5枚なら5日間披露してもらえるのだな。アリスも光栄だろう」
ア「はい。子孫に語り継げますわ」
グ「ア、アリス。やっぱり指輪でも買ってやろうか」
ア「結構です。では、私は刺繍に取り掛かりますのでお先に失礼いたします」
グ「アリス!」
王妃「刺繍を手伝う者を向かわせるわ」
私はカーテシーをして部屋に下がった。
あ~アイロンプリントできたら楽なんだけどなぁ。
1日目は簡単に刺繍をした。
朝食後、応接間に集まる中、グラシアン殿下に手渡した。
「今日の1枚目です。履いて戻って来て見せてください」
「え?」
「見せて回るのでしょう?」
「本気か!?」
「王妃殿下、もし見たくなければ扇子をお使いください」
「大丈夫よ。見届けたいわ」
「っ!!」
しばらくしてグラシアン殿下が戻ってきた。
皆が見つめる中、狼狽えていた。
「アリス…」
「さあ、見せてください。心を込めて刺繍をしたのですから」
「いや…でも」
「時間をかけると人が増えますわよ」
「っ! クソっ!!」
殿下はトラウザーズを下ろし、シャツを上げた。
白い下着には赤い糸で大きなハートにして、中には“僕は王子だ!”と文字を入れていた。
皆、一斉に目を逸らして目を泳がせると肩を震わせている。
「お似合いですわ。後も向いてください」
後ろを向くと大きく“グラシアン!”と文字が入っていた。
「素敵!」
「何処が素敵なんだ!センスがイカれてる!」
「ひどぉ~い」
「変な演技は止めろ!」
真っ赤な顔をしてトラウザーズを上げて身なりを整えた。
「まだ後4枚ありますから、楽しみにしていてくださいね。1枚の図案は決まっているのですが、ちょっと時間がかかりそうですので帰国前日にお渡しします。残りの3枚の図案を考えないと…」
「私、お姉様に刺繍は頼めませんわ」
スーザン。わざとだからね。
私とエミリアン様とグラシアン王子殿下は王都の端を一周してから中心部へ戻るように観光する予定だ。
私はニッコリ微笑み、エミリアン様は少し緊張気味のようだ。
乗車前にエミリアン様には“テムスカリン家の更なる発展のチャンスかもしれませんよ”と耳打ちすると、“面倒だから押し付ける気だろう”と返して来た。だから馬車に乗ってニッコリしている。
だって後はガイド・エミリアンにお任せだから。
「静かだね」
「あまり出かける機会が無くて、王都も不慣れなのです。今は屋敷を拠点に親しい方々のお屋敷を往復するとか、学園の往復とか、お店も宝飾品の店とドレスの店それぞれ一軒ずつしか通いません」
「うちの店を利用してくれよ」
「それってオルデン様にも影響しそうだから遠慮します」
エミリアンは侯爵家の私にももう遠慮がない。
「何か買ってやろうか」
あ~きっと困窮した侯爵家の話を聞いたのね。
殿下が機嫌を伺うように提案してきた。
「後妻と折り合いが悪くて、自由も手持ちも無かっただけですわ。領地に送り込んだらタウンハウスでやる事がいっぱいでしたし、交友関係も密になったりして余り出かける時間が無くなってしまいましたの。それにドレスの店も、宝飾店も私のお気に入りを絞って取り引きしているだけですから、そこまで貧乏ではありませんわ」
「まあ、そのネックレスを見れば良い品を付けているのが分かるが、そこはハイと言った方が得だぞ」
「見返りや影響が怖くてハイなどと言えませんわ」
「酷いな」
「私などよりトリシア王女殿下に買って差し上げてください」
「エミリアン。子爵家ではレディの下着は扱っているのか?」
「はい。ございます」
「最後にそこに寄ろう。アリスに贈りたい」
「嫌ですよ!私のサイズがアイツにバレちゃうじゃないですか!」
「ハハッ」
「わざとですか。
エミリアン様。殿下の下着を買いに行きましょう。私が心を込めて刺繍をして差し上げます」
「嬉しいなぁ。半周にしてすぐに行こう」
こうして殿下用の下着を5枚買って戻ってきた。
また王族とゲストとマチアス様と私達姉妹で夕食を食べ終わると、殿下がニヤニヤしながら話し出した。
グ「今日、アリスに下着を買ってもらったんだ」
全「「はあ!?」」
グ「私のために刺繍を施してくれるらしいんだ」
コイツ!
マ「アリス」
ス「お姉様!?」
シ「……」
グ「楽しみだなぁ。仕上がったら履いて見せて回りたいよ」
ア「まあ嬉しいですわ!グラシアン王子殿下が実際に5枚履いて見せて回ってくださるのですね!」
グ「え?」
ア「王子に二言はありませんわよね?」
グ「ア、アリス!?」
察した陛下は笑顔で加勢してくれた。
陛下「確かに聞いた。早く仕上げてあげなさい。5枚なら5日間披露してもらえるのだな。アリスも光栄だろう」
ア「はい。子孫に語り継げますわ」
グ「ア、アリス。やっぱり指輪でも買ってやろうか」
ア「結構です。では、私は刺繍に取り掛かりますのでお先に失礼いたします」
グ「アリス!」
王妃「刺繍を手伝う者を向かわせるわ」
私はカーテシーをして部屋に下がった。
あ~アイロンプリントできたら楽なんだけどなぁ。
1日目は簡単に刺繍をした。
朝食後、応接間に集まる中、グラシアン殿下に手渡した。
「今日の1枚目です。履いて戻って来て見せてください」
「え?」
「見せて回るのでしょう?」
「本気か!?」
「王妃殿下、もし見たくなければ扇子をお使いください」
「大丈夫よ。見届けたいわ」
「っ!!」
しばらくしてグラシアン殿下が戻ってきた。
皆が見つめる中、狼狽えていた。
「アリス…」
「さあ、見せてください。心を込めて刺繍をしたのですから」
「いや…でも」
「時間をかけると人が増えますわよ」
「っ! クソっ!!」
殿下はトラウザーズを下ろし、シャツを上げた。
白い下着には赤い糸で大きなハートにして、中には“僕は王子だ!”と文字を入れていた。
皆、一斉に目を逸らして目を泳がせると肩を震わせている。
「お似合いですわ。後も向いてください」
後ろを向くと大きく“グラシアン!”と文字が入っていた。
「素敵!」
「何処が素敵なんだ!センスがイカれてる!」
「ひどぉ~い」
「変な演技は止めろ!」
真っ赤な顔をしてトラウザーズを上げて身なりを整えた。
「まだ後4枚ありますから、楽しみにしていてくださいね。1枚の図案は決まっているのですが、ちょっと時間がかかりそうですので帰国前日にお渡しします。残りの3枚の図案を考えないと…」
「私、お姉様に刺繍は頼めませんわ」
スーザン。わざとだからね。
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