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動き出す公爵家(マチアス)
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【 マチアスの視点 】
1ヶ月後には調査結果を聞くために家族4人か集まった。
「先ず、オルデン・テムスカリンについて。
奴の素行は知ってるな。詳しく調べさせたら13歳の時にメイドを孕ませて息子を産ませている。
子爵は堕胎や養子などを許さなかったようだ。
平民が済む家や金を与えて面倒を見ている。女と息子の様子を時々見るように何度か注意を受けている。
現在、オルデンは女達と縁を切り、教育係を付けて貴族の振る舞いと勉強を教わっている。どうやらアリスに本気になったようだ。今更執着を見せていて、アリスを追い回している。
次にトリシア王女の国コルシック王国では数年にかけて困窮が顕著だ。
慰謝料代わりの支援金を渡すことで解消の同意を得た。2、3ヶ月も経てば、シルヴェストル殿下との縁談を申し込むことになる。
計画ではこうだ。婚約者との交流のために我が国に訪れたトリシア王女は滞在先の王宮で、シルヴェストル殿下に一目惚れをしてしまう。
王女はマチアスとは破婚し、陛下にシルヴェストル殿下との婚姻を願い出る。
現在、アリスは婚約者持ち、シルヴェストル殿下はフリーだ。断らないだろう」
「アリスは…傷付かないかしら」
「一時的なショックはあるだろうがマチアスが立ち直らせるし、エリアーナもいるから大丈夫だ。そうだろう?」
「アリスを支えますわ」
「もう一つ、ジオニトロ家の血縁を調べさせたら、マーカス・ジオニトロ侯爵の父の弟の娘が産んだ男児で優秀な令息がいる。しかも三男だ。
ジオニトロ侯爵に会いに行こうと思う」
「私も連れて行ってください」
週末はエリアーナ姉上にアリスを任せてジオニトロ侯爵領へ向かった。私がいない間に虫が付かないか心配だが父親を味方に付けたかった。
「バンフィールド公爵、バンフィールド公爵令息。態々ジオニトロ領までお越しくださり光栄に存じます。当主のマーカスでございます。こちらは妻のメイベルと申します」
「ようこそお越しくださいました」
「歓迎をありがとう。クロヴィス・バンフィールドと申します。この子は長男のマチアスです。アリス嬢のクラスメイトであり友人です」
「アリスの…」
「まあ、アリスは元気でしょうか」
「ええ。アリス嬢は元気ですし非常に優秀です。続きは中でもよろしいでしょうか」
「失礼いたしました。どうぞ中へ」
アリスを虐げていた後妻は最初の調査とは違い落ち着いた夫人となっていた。
実子スーザンよりもアリスの心配を先に口にして、元気だと伝えるとホッとした顔をした。
明朝には出発しなくてはならない。
父上は後妻を外すことなく、既に知っている侯爵の近況を尋ねた。
侯爵「お恥ずかしいことですが、娘に叱責されて領地経営を真面目に取り組んでいるところです。隅々まで領地を巡り領民と顔を合わせました。領民に要らぬ苦労をさせてしまいました。
アリスの犠牲の上で成り立つ侯爵家を何とかせねばと思ってはおりますが、今はアリスが用立てる資金に救われています」
アリスが用立てる金!?
父「そうですか」
夫人「あのアリスとスーザンは仲良くやっているでしょうか」
私「スーザン嬢もすっかり見違えました。同じトップクラスで真面目に勉強し、王子妃教育に取り組み、アリス嬢を姉と慕いアリス嬢もスーザン嬢を守っています。スーザン嬢を虐めていた王子妃教育の夫人を一人 アリス嬢が追い出したそうです。リオネル殿下がアリス嬢を敵に回したくないと仰っていました」
夫人「私はアリスに酷いことをしたのにスーザンを守ってくれたのですね」
父「……こちらの報告書に目を通していただけますか」
父の渡したオルデンの調査報告書を読む侯爵の顔がみるみると険しくなった。
婚約して以来 オルデンのアリスへの冷遇と、素行の悪さが記された調査報告書だった。
侯爵「オルデンに隠し子がいるというのは」
父「彼によく似た息子です。記載の通り、13歳の時にメイドに手を付けました。
最近は危機感を覚えたのか、女関係の整理をして屋敷で教育を受けています」
夫人「アリスの婚約者に隠し子!?あんまりですわ!アリスは侯爵家の血族なのですよ!」
侯爵「メイベル、落ち着きなさい。
バンフィールド公爵。目的は何でしょうか」
父「縁戚にガエルという令息がおりますね?」
侯爵「はい」
父「調査結果ではガエル殿は非常に優秀な三男だとか」
侯爵「まさか」
父「バンフィールド公爵家はアリス・ジオニトロ嬢を次期公爵であるマチアスの妻に迎えたく、縁談を申し込みます」
侯爵「……」
父「オルデン・テムスカリンとの婚姻はアリス嬢にとっては屈辱であり嫌悪の毎日となるでしょう。それに彼は侯爵の器ではありません。先日もテムスカリン子爵夫人のパーティに出席した貴族達の前で相応しい振る舞いが出来ずにアリス嬢に窘められました。婚姻したらまた女遊びを始めるでしょう。
その時アリス嬢はどんな扱いを受けることか。
隠し子を理由に婚約破棄をして慰謝料をいただきましょう。これまでの支援金はバンフィールド公爵家がテムスカリン家に返します。
ガエル殿を養子にして跡を継がせ、アリス嬢がマチアスへ嫁げはバンフィールド公爵家がジオニトロ侯爵家とアリス嬢とスーザン嬢の後ろ盾となりましょう」
侯爵「公子は王女と婚約をしていたのでは?」
父「話し合いは済んでおります。解消の準備は整いました」
侯爵「アリスの気持ちは」
父「マチアスに嫁ぐよりオルデンの方がいいと?」
侯爵「そうは思いませんが、アリス自身の幸せを願っているだけです」
父「うちにはノッティング家に嫁いだエリアーナという娘がおります。ひどく気難しくて側に人を置きたがりません。バンフィールドの娘となると幼い頃から利用しようとする輩で溢れているので嫌気が刺すのでしょう。その娘がアリス嬢を妹同然…寧ろ家族以上に気に入っていて、アリス嬢は周囲からは“猛獣使い”とささやかれているのですよ」
侯爵「猛獣!?」
父「マチアスもアリス嬢を心から慕っておりますし、勉強を教えあって互いの屋敷を行き来しています。マチアスは女遊びもしませんし、アリス嬢には愛される幸せを感じてもらえるはずです」
夫人「マチアス公子はアリスのどんなところがお好きなのでしょう」
私「私を普通の人間として扱ってくれるところです。バンフィールド家の嫡男としてではなく、クラスにいる友人として付き合ってくれます。
賢くて尊敬もしております。
凛としたアリス嬢しか知りませんでしたが、先日、アリス嬢の年相応の弱さも知りました。彼女を失いたくないし、守りたいと強く願いました。
それに彼女に頭を撫でてもらうと安らぐのです」
侯爵「異論はございません。但し、アリスが純粋にマチアス公子を望むならという条件は付けさせてください」
夫人「アリスを幸せにしてください」
私「アリス嬢に承諾をもらい、全力で幸せにします」
目的を達成して王都へ戻った。
1ヶ月後には調査結果を聞くために家族4人か集まった。
「先ず、オルデン・テムスカリンについて。
奴の素行は知ってるな。詳しく調べさせたら13歳の時にメイドを孕ませて息子を産ませている。
子爵は堕胎や養子などを許さなかったようだ。
平民が済む家や金を与えて面倒を見ている。女と息子の様子を時々見るように何度か注意を受けている。
現在、オルデンは女達と縁を切り、教育係を付けて貴族の振る舞いと勉強を教わっている。どうやらアリスに本気になったようだ。今更執着を見せていて、アリスを追い回している。
次にトリシア王女の国コルシック王国では数年にかけて困窮が顕著だ。
慰謝料代わりの支援金を渡すことで解消の同意を得た。2、3ヶ月も経てば、シルヴェストル殿下との縁談を申し込むことになる。
計画ではこうだ。婚約者との交流のために我が国に訪れたトリシア王女は滞在先の王宮で、シルヴェストル殿下に一目惚れをしてしまう。
王女はマチアスとは破婚し、陛下にシルヴェストル殿下との婚姻を願い出る。
現在、アリスは婚約者持ち、シルヴェストル殿下はフリーだ。断らないだろう」
「アリスは…傷付かないかしら」
「一時的なショックはあるだろうがマチアスが立ち直らせるし、エリアーナもいるから大丈夫だ。そうだろう?」
「アリスを支えますわ」
「もう一つ、ジオニトロ家の血縁を調べさせたら、マーカス・ジオニトロ侯爵の父の弟の娘が産んだ男児で優秀な令息がいる。しかも三男だ。
ジオニトロ侯爵に会いに行こうと思う」
「私も連れて行ってください」
週末はエリアーナ姉上にアリスを任せてジオニトロ侯爵領へ向かった。私がいない間に虫が付かないか心配だが父親を味方に付けたかった。
「バンフィールド公爵、バンフィールド公爵令息。態々ジオニトロ領までお越しくださり光栄に存じます。当主のマーカスでございます。こちらは妻のメイベルと申します」
「ようこそお越しくださいました」
「歓迎をありがとう。クロヴィス・バンフィールドと申します。この子は長男のマチアスです。アリス嬢のクラスメイトであり友人です」
「アリスの…」
「まあ、アリスは元気でしょうか」
「ええ。アリス嬢は元気ですし非常に優秀です。続きは中でもよろしいでしょうか」
「失礼いたしました。どうぞ中へ」
アリスを虐げていた後妻は最初の調査とは違い落ち着いた夫人となっていた。
実子スーザンよりもアリスの心配を先に口にして、元気だと伝えるとホッとした顔をした。
明朝には出発しなくてはならない。
父上は後妻を外すことなく、既に知っている侯爵の近況を尋ねた。
侯爵「お恥ずかしいことですが、娘に叱責されて領地経営を真面目に取り組んでいるところです。隅々まで領地を巡り領民と顔を合わせました。領民に要らぬ苦労をさせてしまいました。
アリスの犠牲の上で成り立つ侯爵家を何とかせねばと思ってはおりますが、今はアリスが用立てる資金に救われています」
アリスが用立てる金!?
父「そうですか」
夫人「あのアリスとスーザンは仲良くやっているでしょうか」
私「スーザン嬢もすっかり見違えました。同じトップクラスで真面目に勉強し、王子妃教育に取り組み、アリス嬢を姉と慕いアリス嬢もスーザン嬢を守っています。スーザン嬢を虐めていた王子妃教育の夫人を一人 アリス嬢が追い出したそうです。リオネル殿下がアリス嬢を敵に回したくないと仰っていました」
夫人「私はアリスに酷いことをしたのにスーザンを守ってくれたのですね」
父「……こちらの報告書に目を通していただけますか」
父の渡したオルデンの調査報告書を読む侯爵の顔がみるみると険しくなった。
婚約して以来 オルデンのアリスへの冷遇と、素行の悪さが記された調査報告書だった。
侯爵「オルデンに隠し子がいるというのは」
父「彼によく似た息子です。記載の通り、13歳の時にメイドに手を付けました。
最近は危機感を覚えたのか、女関係の整理をして屋敷で教育を受けています」
夫人「アリスの婚約者に隠し子!?あんまりですわ!アリスは侯爵家の血族なのですよ!」
侯爵「メイベル、落ち着きなさい。
バンフィールド公爵。目的は何でしょうか」
父「縁戚にガエルという令息がおりますね?」
侯爵「はい」
父「調査結果ではガエル殿は非常に優秀な三男だとか」
侯爵「まさか」
父「バンフィールド公爵家はアリス・ジオニトロ嬢を次期公爵であるマチアスの妻に迎えたく、縁談を申し込みます」
侯爵「……」
父「オルデン・テムスカリンとの婚姻はアリス嬢にとっては屈辱であり嫌悪の毎日となるでしょう。それに彼は侯爵の器ではありません。先日もテムスカリン子爵夫人のパーティに出席した貴族達の前で相応しい振る舞いが出来ずにアリス嬢に窘められました。婚姻したらまた女遊びを始めるでしょう。
その時アリス嬢はどんな扱いを受けることか。
隠し子を理由に婚約破棄をして慰謝料をいただきましょう。これまでの支援金はバンフィールド公爵家がテムスカリン家に返します。
ガエル殿を養子にして跡を継がせ、アリス嬢がマチアスへ嫁げはバンフィールド公爵家がジオニトロ侯爵家とアリス嬢とスーザン嬢の後ろ盾となりましょう」
侯爵「公子は王女と婚約をしていたのでは?」
父「話し合いは済んでおります。解消の準備は整いました」
侯爵「アリスの気持ちは」
父「マチアスに嫁ぐよりオルデンの方がいいと?」
侯爵「そうは思いませんが、アリス自身の幸せを願っているだけです」
父「うちにはノッティング家に嫁いだエリアーナという娘がおります。ひどく気難しくて側に人を置きたがりません。バンフィールドの娘となると幼い頃から利用しようとする輩で溢れているので嫌気が刺すのでしょう。その娘がアリス嬢を妹同然…寧ろ家族以上に気に入っていて、アリス嬢は周囲からは“猛獣使い”とささやかれているのですよ」
侯爵「猛獣!?」
父「マチアスもアリス嬢を心から慕っておりますし、勉強を教えあって互いの屋敷を行き来しています。マチアスは女遊びもしませんし、アリス嬢には愛される幸せを感じてもらえるはずです」
夫人「マチアス公子はアリスのどんなところがお好きなのでしょう」
私「私を普通の人間として扱ってくれるところです。バンフィールド家の嫡男としてではなく、クラスにいる友人として付き合ってくれます。
賢くて尊敬もしております。
凛としたアリス嬢しか知りませんでしたが、先日、アリス嬢の年相応の弱さも知りました。彼女を失いたくないし、守りたいと強く願いました。
それに彼女に頭を撫でてもらうと安らぐのです」
侯爵「異論はございません。但し、アリスが純粋にマチアス公子を望むならという条件は付けさせてください」
夫人「アリスを幸せにしてください」
私「アリス嬢に承諾をもらい、全力で幸せにします」
目的を達成して王都へ戻った。
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