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眠り姫(マチアス)
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【 マチアスの視点 】
身支度を整えて朝食を摂っていると食堂の扉が開いた。
「な、何で!何で私を呼ばないのです!!
アリスのお泊まりなんて貴重な時間を知らせないなんてあんまりですわ!!」
泣きそうな顔で怒っているのはエリアーナ姉上だ。
朝に連絡が届いて急いで来たらしい。
自分だってアリスをお泊りさせているくせに。
母「アリスちゃんは昨日体調を崩したから念のために泊まってもらったの。遊びじゃないのよ」
父「そうだぞ。エリアーナがいたら休めないだろう」
姉「マチアス!」
私「アリスは私に会いに屋敷に来て、私と過ごすために滞在したのです」
姉「私の妹なんだから!」
私「なら、私は友人兼兄としてアリスの面倒をみます」
姉「バラすわよ」
私「何をですか」
姉「何歳までおねしょしていたとか、何歳まで、」
コン!
姉に向けてスプーンを投げ付けた。勿論当ててはいない。後ろの壁に当たっただけだ。
アリスがいるのに何てことを聴かせるんだ!
父「マチアス!エリアーナも!」
顔が熱い!
ア「マチアス様。おねしょをしない幼子はいませんわ。恥ずかしがることはありません。今朝、もうおねしょはしていないと証明したではありませんか」
「「「 は!? 」」」
アリス?言葉が足りない。それでは……
私「アリス!?
ち、違います!父上、母上っ!」
姉「私のアリスに魔の手が!」
母「具合が悪いレディに無体を働いて!」
父「マチアス…お前…」
私「想像とは違います!誤解です!」
姉「何の想像をさせようとしてるのよ!まさか変な趣味をアリスに!?」
私「バカ言わないでください!」
母「……」 シクシク
父「……」 怒り顔
そこでメイドが手を挙げた。
「アリスお嬢様の担当のルルです。マチアス様はアリス様の急変に備えて扉を隔てた居間のソファで就寝なさっていただけです。寝室の扉の前には私兵を2人就かせて間違いが起きないようにしておられました。純粋にアリス様を心配なさっていただけです」
侍従のウスターシュも同じ証言をして事はおさまった。
姉「心配だから今夜はノッティン邸にいらっしゃい」
私「そっちにはブレイルがいるじゃないですか」
姉「いるわよ?」
私「年頃の婚約者のいない男がいるのですから駄目です!」
姉「何を今更」
私「どうせ姉上はアリスをかまいたくて話したくて休ませてあげられないでしょう?此処にいた方がアリスは静養できます」
姉「そんなことないわ」
母「あるわね」
ア「もう大丈夫ですから」
あのとき。アリスを立たせようとしたとき。
立ち上がったアリスは魂でも抜けたように一瞬にして身体の力が抜けた。
慌ててアリスの身体を抱きとめて怪我をさせずに済んだ。
アリス?………
『アリス!! アリス!!』
人形のようになったアリスは何の反応も示さない。
メイドがアリスに触れた後、けたたましくベルを鳴らした。それは命に関わる緊急事態を知らせるベルの鳴らし方だった。
最初に駆けつけた者に“医師を呼んでください”と言い、次に駆けつけた者に“奥様を呼んでください”と言った後、私兵にアリスをベッドに運ばせるように言った。
『私が運ぶ』
『このように全身の力が抜けた者を運ぶのは難しいのです。肩に担ぐわけにもまいりません。慣れた者でないとお嬢様を落としてしまいます顔に傷を負ったり骨折でもしたら一大事です!』
仕方なく私兵に任せたが、それが私の胸中をドロドロにする。
医師が到着して告げたのは、受け入れられるものではなかった。
『残念ながら、心臓も呼吸も止まっておいでで手の施しようがございません』
『は?』
『奥様!』
母は目眩を起こしてソファに崩れ落ちた。
『そんなバカな!元気そのものだったんですよ!』
『しかし、』
毒か何かなのかと詰め寄っているとメイドがアリスを指差した。
アリスを見ると目を開けてキョロキョロとしていた。その瞬間、アリスを抱きしめていた。
『アリス!何処が痛い?苦しいところは!』
『だ、大丈夫です マチアス様』
毒でも不調でも無いという。誤診でもないという。
『だが心音も呼吸も止まって』
『眠りが深すぎて機能を最小限にしたのかもしれません』
苦笑いをしながら“駄女神の悪戯です”と答えたアリスを遠く感じた。
『アリス』
その後、母の説得もあってバンフィールド邸に泊まってもらうことになった。あんな風になったアリスが心配で側から離れられない。
湯浴みを済ませたアリスは、日頃の凛としたアリスとは違いあどけなく見えた。手も身体も華奢だった。
『マチアス様?お部屋に戻らないのですか?お休みにならないと』
『今夜は続きの居間で寝るよ。私兵もメイドも配置するから間違いも起こらないから安心してくれ』
『ふふっ マチアス様が私などにそんなことをするはずがないのは知っています。ただ、ソファでは休まらないと案じているのです』
『いいから寝なさい』
『おやすみなさい、マチアス様』
『おやすみ、アリス』
身支度を整えて朝食を摂っていると食堂の扉が開いた。
「な、何で!何で私を呼ばないのです!!
アリスのお泊まりなんて貴重な時間を知らせないなんてあんまりですわ!!」
泣きそうな顔で怒っているのはエリアーナ姉上だ。
朝に連絡が届いて急いで来たらしい。
自分だってアリスをお泊りさせているくせに。
母「アリスちゃんは昨日体調を崩したから念のために泊まってもらったの。遊びじゃないのよ」
父「そうだぞ。エリアーナがいたら休めないだろう」
姉「マチアス!」
私「アリスは私に会いに屋敷に来て、私と過ごすために滞在したのです」
姉「私の妹なんだから!」
私「なら、私は友人兼兄としてアリスの面倒をみます」
姉「バラすわよ」
私「何をですか」
姉「何歳までおねしょしていたとか、何歳まで、」
コン!
姉に向けてスプーンを投げ付けた。勿論当ててはいない。後ろの壁に当たっただけだ。
アリスがいるのに何てことを聴かせるんだ!
父「マチアス!エリアーナも!」
顔が熱い!
ア「マチアス様。おねしょをしない幼子はいませんわ。恥ずかしがることはありません。今朝、もうおねしょはしていないと証明したではありませんか」
「「「 は!? 」」」
アリス?言葉が足りない。それでは……
私「アリス!?
ち、違います!父上、母上っ!」
姉「私のアリスに魔の手が!」
母「具合が悪いレディに無体を働いて!」
父「マチアス…お前…」
私「想像とは違います!誤解です!」
姉「何の想像をさせようとしてるのよ!まさか変な趣味をアリスに!?」
私「バカ言わないでください!」
母「……」 シクシク
父「……」 怒り顔
そこでメイドが手を挙げた。
「アリスお嬢様の担当のルルです。マチアス様はアリス様の急変に備えて扉を隔てた居間のソファで就寝なさっていただけです。寝室の扉の前には私兵を2人就かせて間違いが起きないようにしておられました。純粋にアリス様を心配なさっていただけです」
侍従のウスターシュも同じ証言をして事はおさまった。
姉「心配だから今夜はノッティン邸にいらっしゃい」
私「そっちにはブレイルがいるじゃないですか」
姉「いるわよ?」
私「年頃の婚約者のいない男がいるのですから駄目です!」
姉「何を今更」
私「どうせ姉上はアリスをかまいたくて話したくて休ませてあげられないでしょう?此処にいた方がアリスは静養できます」
姉「そんなことないわ」
母「あるわね」
ア「もう大丈夫ですから」
あのとき。アリスを立たせようとしたとき。
立ち上がったアリスは魂でも抜けたように一瞬にして身体の力が抜けた。
慌ててアリスの身体を抱きとめて怪我をさせずに済んだ。
アリス?………
『アリス!! アリス!!』
人形のようになったアリスは何の反応も示さない。
メイドがアリスに触れた後、けたたましくベルを鳴らした。それは命に関わる緊急事態を知らせるベルの鳴らし方だった。
最初に駆けつけた者に“医師を呼んでください”と言い、次に駆けつけた者に“奥様を呼んでください”と言った後、私兵にアリスをベッドに運ばせるように言った。
『私が運ぶ』
『このように全身の力が抜けた者を運ぶのは難しいのです。肩に担ぐわけにもまいりません。慣れた者でないとお嬢様を落としてしまいます顔に傷を負ったり骨折でもしたら一大事です!』
仕方なく私兵に任せたが、それが私の胸中をドロドロにする。
医師が到着して告げたのは、受け入れられるものではなかった。
『残念ながら、心臓も呼吸も止まっておいでで手の施しようがございません』
『は?』
『奥様!』
母は目眩を起こしてソファに崩れ落ちた。
『そんなバカな!元気そのものだったんですよ!』
『しかし、』
毒か何かなのかと詰め寄っているとメイドがアリスを指差した。
アリスを見ると目を開けてキョロキョロとしていた。その瞬間、アリスを抱きしめていた。
『アリス!何処が痛い?苦しいところは!』
『だ、大丈夫です マチアス様』
毒でも不調でも無いという。誤診でもないという。
『だが心音も呼吸も止まって』
『眠りが深すぎて機能を最小限にしたのかもしれません』
苦笑いをしながら“駄女神の悪戯です”と答えたアリスを遠く感じた。
『アリス』
その後、母の説得もあってバンフィールド邸に泊まってもらうことになった。あんな風になったアリスが心配で側から離れられない。
湯浴みを済ませたアリスは、日頃の凛としたアリスとは違いあどけなく見えた。手も身体も華奢だった。
『マチアス様?お部屋に戻らないのですか?お休みにならないと』
『今夜は続きの居間で寝るよ。私兵もメイドも配置するから間違いも起こらないから安心してくれ』
『ふふっ マチアス様が私などにそんなことをするはずがないのは知っています。ただ、ソファでは休まらないと案じているのです』
『いいから寝なさい』
『おやすみなさい、マチアス様』
『おやすみ、アリス』
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