【完結】貴方のために涙は流しません

ユユ

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変わる婚約者

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陛下に事情をはなしてから3週間後に届いたのはオルデンに関する調査報告書だった。

「は?息子!?」

領地内の家に住まわせて子爵家が面倒を見ているらしい。

「13歳の時に!?」

メイドのビエラとの子と書いてある。
他にも関係を持った令嬢やメイドの名が記されていたが、隠し子だけで婚約破棄はできる。
陛下、ありがとうございます!



オルデンの誕生日のお祝いなど呼ばれたことがずっと無かった。去年は何故か招待状が届いたが、断った。オルデンの手紙の複写を添えて。

今年はテムスカリン子爵夫人の誕生日のお祝いに呼ばれた。これは断れないし、違う男性を伴うわけにもいかない。

仕方なく祝いの品を持ってテムスカリン邸を訪れた。

「いらっしゃい、アリス様」

「よく来てくれた」

「テムスカリン子爵、テムスカリン夫人。お招きいただきありがとうございます。
こちらはお祝いの品です。おめでとうございます」

「まあ、素敵なコームだわ」

涙で作った宝石を入れたコームを贈り物にしてみた。

「オルデン、挨拶を」

「アリス。良く来てくれた」

「ごきげんよう」

「アリス嬢は賢かったのだね。トップのクラスにいると聞いたよ。素晴らしい」

「それに見違えたわ。なんて可愛らしいのかしら」

「侯爵代理を務めておりますので、Eクラスは当然ですわ。後妻の言いなりは止めましたので好きな装いをすることにしましたの」

「まあ、メイベル様が?」

「それは大変だったのだな」

「では、私は知り合いに声をかけさせていただきます」

「アリス」

「テムス、」

「オルデンと呼んでくれ」

「……」

「頼む」

「どうかなさいましたか、オルデン様」

「一緒に回ろう」

「一人で大丈夫ですわ」

「アリス嬢、オルデンに機会をやってくれないか」

「では共通の知り合いだけ」


オルデンがエスコートしようとしたのでそれは断った。

「アリス」

「今更でしょう。デビュータントの恋人はどうしたのですか?国の主催するパーティに態々連れていたご令嬢を大事になさいませ」

「とっくに別れたよ。あの時も悪かったし ずっと悪かった」

「何故 心変わりを?子爵に注意でもされましたか?」

「アリスが変わったからだ」

「私が?」

「綺麗になった」

「外見しか追いかけられないのですね。貴方の側にいた令嬢達は綺麗だったり可愛らしい方ばかりでしたわね。そういうのに私を巻き込まないでください」

「アリス」

「別に貴方は私に恋をしているわけではないのですから、誘いの手紙も送らないでください。贈り物も要りませんし、卒業パーティもパートナーは別の方を誘ってください」

「シルヴェストル殿下か」

「はい?」

「シルヴェストル殿下に乗り換えるつもりなんだろう」

「貴方とコーレル伯爵令嬢の関係と一緒にしないでください」

「いいか。私が遊んでいたのは悪かったと思っているが、所詮は遊びでしかないんだ。アリスが私の婚約者なのは変わらない。
他の男のものになるなんて許さない」

「は?少し!?」

「なんだ。妬いていたのか。悪かった。ちゃんと可愛がるから機嫌を直せ」

なんなの この彼氏気取りは!

「まあ、ジオニトロ嬢じゃない。お元気?」

「ヘレン叔母様、お久しぶりです」

「久しぶり過ぎるわよ。それもうちの甥っ子のせいね」

「仕方ありませんわ。私と彼は利害関係でしかありませんから」

「アリス!」

「本当のことではありせんか?だから疎遠だったではありませんか」

「オルデン。ジオニトロ嬢の言う通りよ。不誠実な男はそれなりの人生しか送れないものよ」

オルデンの叔母でありながらはっきり苦言を言うこの方に好感を持っている。アリスの設定・記憶がそう言っている。それに今アリスになっている私もこの男爵夫人に好感を覚えた。
叔母様の腕に絡み付き、甘えてみよう。

「叔母様、向こうでゆっくりお話ししませんか。叔母様とは利害関係も血縁関係も無しにお近付きになりたいです」

「ふふっ。そうね、私もよ。オルデンは外してちょうだい」

「っ!」

「こんなに愛らしいジオニトロ嬢がいるのにまったく」

「叔母様、アリスと呼んでください。ただ“アリス”と」

「分かったわ、アリス」


その後はずっと叔母様と話して、パーティの最後の方でテムスカリン子爵夫人が加わった。

「本当にごめんなさいね。長男も次男も同じように育てたのにオルデンは慎みが無くて」

夫人が何かに気が付き手を挙げた。
オルデンの兄、エミリアンが反応して寄ってきた。

「アリス様、お久しぶりです」

「エミリアン様、お久しぶりです」

「叔母上、母上。少しアリス様をお借りしてもよろしいでしょうか」

「アリス様が良ければいいわよ」

「アリス様、お手をどうぞ」

「……はい」










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