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ホッジンズ店長のお店に国の調査が入ってしまった。宝石の引き取りに来る予定だったがキャンセルの知らせを受けた。様子がおかしいと店に行ったら兵士が立っていた。
事情を聞くと、連行されていつ帰ってくるか分からないという。
慌ててシルビア様を訪ねた。
容疑は違法収益。どう調達しているのか店長が白状しない限り解放はないと聞かされた。
仕方ない。
ガーネット伯爵を通して国王陛下への謁見を申し入れた。
登城すると、陛下の他にも何人か人がいた。
「偉大なる国王陛下にアリス・ジオニトロがご挨拶を申し上げます」
「ホッジンズの件で証言がしたいということだったな。申してみよ」
「これからの証言には人の生死に関わる内容になります。果汁100%のジュースと小皿をご用意いただき、お人払いをお願いします」
「ん?」
「謁見前に身体検査は受けております。私に陛下を害する能力はございません。天井もしくは壁の向こうの方にもご遠慮願います」
陛下が手を挙げると、陛下の側に立つ護衛騎士以外は退室した。
「ジュースが届くまで違う質問をしよう。
影の存在を誰から聞いた」
「小説です」
「小説?」
「小説に書いてあります。壁の向こうとか天井とか、カーテンの影とか玉座の後ろから出てきます。
本当かどうかはわかりませんが、もし聞かれているのならばと試してみました」
「王妃やシリルが同席させろと煩かったが、なかなか面白い令嬢なのだな。王子妃教育の教師を追放した件といい、実に興味深い」
私は微笑むしかなかった。
ジュースと小皿が届くと、ワゴンごと置いて行って欲しいと頼んだ。
最後の一人、護衛騎士が退室するとグラスを手に持った。
「陛下。これから見せるものは他言無用でお願いします」
「内容による」
「陛下が誰かに漏らせば私は誘拐されるか殺されるでしょう」
「……違法でなければ秘密を守ろう」
「感謝いたします。
今からジュースを飲んで涙を流し、この小皿に落とします。できれば間近で見ていただきたいのですが」
陛下が手招きをした。
近寄り、止まれの合図で止まり、ワゴンのグラスを持って9割飲み干した。
グラスを置き、小皿を取り、顎の下に置いた。
陛下は複雑な表情をしてる。
人払いをするのは早まったかと思っているかもしれない。
涙が溢れ 頬を伝い、そして
カラン
頬から落ちて皿に届くまでの間に固形化した。
陛下は音を聞き、前のめりになった。
「まだ少し出せますが、もっと近寄りますか?」
「頼む」
ワゴンごと近寄って 皿の上の宝石に触れさせた。
「信じられん…偽物でもなさそうだし、ジュースと同じ色だ」
「もう一つ出します」
カラン
「本当に涙が宝石に…」
「二つ目は香り付きです」
陛下が鼻に宝石を近付けると驚愕した。
「オレンジの香りがする」
「もう一つのジュースを飲みます」
今度は葡萄ジュースを飲んで、皿の上に涙を落とした。
カラン
「!! バラの形になってるぞ!!」
「しーっ!」
「す、すまん」
陛下が大声を出したら扉の向こうに待機している騎士が入って来ちゃうでしょう!
「今からこうなった経緯を話します」
少し話を省いて説明をした。
「つまり、一人の神様が先を見通していて、ある令嬢にリオネル達が夢中になって混乱を引き起こすのを止めさせようと其方に頼んだ対価がその涙だと?」
「はい。そうでなければあり得ません」
「……」
「ホッジンズ店長は私の涙から出来ているとは知りません。それに、私の涙は収益の報告は必要無いと法律書で確認しました」
「確かに人体から排出されたものには報告を義務付けていないし国に納める必要もないな」
「よって、ジオニトロ家の建て直しは必要不可欠です。神のご意志に歯向かうことなどできません」
「……」
「ホッジンズ店長は店で出た収益に関しては報告して決められた額を納めていませんでしたか?」
「他の貴族達の報告書に宝石に関する変動が無くて、どこかの家門が不正をしていると思ったのだ」
「混乱を招いてしまい申し訳ございません。何せ神が命令したなどと言って、うっかり頭のおかしな子だと拘束されては困りますし、本当だと分かれば誘拐されて監禁され、涙を流せと強要されてしまいます。邪魔に思った者は私を消そうとするでしょう」
「ホッジンズは釈放しよう」
「ありがとうございます。お詫びに別の品を用意しました。カーテンを閉めないと価値が分からないので閉めてもいいですか?直ぐにカーテンを開けますのでよろしいでしょうか」
「分かった」
窓に向かいカーテンを握った。
「陛下、私の右手にご注視願います」
シャッ
さっとカーテンを閉めると右手の指に装着したダイアモンドが発光し始めた。
「まさかそんな!」
シャッ
カーテンを開けて陛下に近寄り、指から指輪を抜くと陛下に渡した。
「自発光するダイアモンドは王家にしか納めません。
ただし、年に一粒。 神の目的を達成し、涙が変化しなくなるまでという制限をかけさせていただきます」
「口止め料か」
「迷惑料でございます、陛下」
「来年は花の形をしたダイアモンドが発光するのかな?」
「王妃殿下への贈り物でしたら、婚姻記念日の品となるよう納めさせていただきます」
「ではこちらも迷惑料を支払うとしよう」
ホッジンズ店長は釈放され、店のドアには王家御用達のプレートが付けられた。対外的にはこのための審査だったことになった。
事情を聞くと、連行されていつ帰ってくるか分からないという。
慌ててシルビア様を訪ねた。
容疑は違法収益。どう調達しているのか店長が白状しない限り解放はないと聞かされた。
仕方ない。
ガーネット伯爵を通して国王陛下への謁見を申し入れた。
登城すると、陛下の他にも何人か人がいた。
「偉大なる国王陛下にアリス・ジオニトロがご挨拶を申し上げます」
「ホッジンズの件で証言がしたいということだったな。申してみよ」
「これからの証言には人の生死に関わる内容になります。果汁100%のジュースと小皿をご用意いただき、お人払いをお願いします」
「ん?」
「謁見前に身体検査は受けております。私に陛下を害する能力はございません。天井もしくは壁の向こうの方にもご遠慮願います」
陛下が手を挙げると、陛下の側に立つ護衛騎士以外は退室した。
「ジュースが届くまで違う質問をしよう。
影の存在を誰から聞いた」
「小説です」
「小説?」
「小説に書いてあります。壁の向こうとか天井とか、カーテンの影とか玉座の後ろから出てきます。
本当かどうかはわかりませんが、もし聞かれているのならばと試してみました」
「王妃やシリルが同席させろと煩かったが、なかなか面白い令嬢なのだな。王子妃教育の教師を追放した件といい、実に興味深い」
私は微笑むしかなかった。
ジュースと小皿が届くと、ワゴンごと置いて行って欲しいと頼んだ。
最後の一人、護衛騎士が退室するとグラスを手に持った。
「陛下。これから見せるものは他言無用でお願いします」
「内容による」
「陛下が誰かに漏らせば私は誘拐されるか殺されるでしょう」
「……違法でなければ秘密を守ろう」
「感謝いたします。
今からジュースを飲んで涙を流し、この小皿に落とします。できれば間近で見ていただきたいのですが」
陛下が手招きをした。
近寄り、止まれの合図で止まり、ワゴンのグラスを持って9割飲み干した。
グラスを置き、小皿を取り、顎の下に置いた。
陛下は複雑な表情をしてる。
人払いをするのは早まったかと思っているかもしれない。
涙が溢れ 頬を伝い、そして
カラン
頬から落ちて皿に届くまでの間に固形化した。
陛下は音を聞き、前のめりになった。
「まだ少し出せますが、もっと近寄りますか?」
「頼む」
ワゴンごと近寄って 皿の上の宝石に触れさせた。
「信じられん…偽物でもなさそうだし、ジュースと同じ色だ」
「もう一つ出します」
カラン
「本当に涙が宝石に…」
「二つ目は香り付きです」
陛下が鼻に宝石を近付けると驚愕した。
「オレンジの香りがする」
「もう一つのジュースを飲みます」
今度は葡萄ジュースを飲んで、皿の上に涙を落とした。
カラン
「!! バラの形になってるぞ!!」
「しーっ!」
「す、すまん」
陛下が大声を出したら扉の向こうに待機している騎士が入って来ちゃうでしょう!
「今からこうなった経緯を話します」
少し話を省いて説明をした。
「つまり、一人の神様が先を見通していて、ある令嬢にリオネル達が夢中になって混乱を引き起こすのを止めさせようと其方に頼んだ対価がその涙だと?」
「はい。そうでなければあり得ません」
「……」
「ホッジンズ店長は私の涙から出来ているとは知りません。それに、私の涙は収益の報告は必要無いと法律書で確認しました」
「確かに人体から排出されたものには報告を義務付けていないし国に納める必要もないな」
「よって、ジオニトロ家の建て直しは必要不可欠です。神のご意志に歯向かうことなどできません」
「……」
「ホッジンズ店長は店で出た収益に関しては報告して決められた額を納めていませんでしたか?」
「他の貴族達の報告書に宝石に関する変動が無くて、どこかの家門が不正をしていると思ったのだ」
「混乱を招いてしまい申し訳ございません。何せ神が命令したなどと言って、うっかり頭のおかしな子だと拘束されては困りますし、本当だと分かれば誘拐されて監禁され、涙を流せと強要されてしまいます。邪魔に思った者は私を消そうとするでしょう」
「ホッジンズは釈放しよう」
「ありがとうございます。お詫びに別の品を用意しました。カーテンを閉めないと価値が分からないので閉めてもいいですか?直ぐにカーテンを開けますのでよろしいでしょうか」
「分かった」
窓に向かいカーテンを握った。
「陛下、私の右手にご注視願います」
シャッ
さっとカーテンを閉めると右手の指に装着したダイアモンドが発光し始めた。
「まさかそんな!」
シャッ
カーテンを開けて陛下に近寄り、指から指輪を抜くと陛下に渡した。
「自発光するダイアモンドは王家にしか納めません。
ただし、年に一粒。 神の目的を達成し、涙が変化しなくなるまでという制限をかけさせていただきます」
「口止め料か」
「迷惑料でございます、陛下」
「来年は花の形をしたダイアモンドが発光するのかな?」
「王妃殿下への贈り物でしたら、婚姻記念日の品となるよう納めさせていただきます」
「ではこちらも迷惑料を支払うとしよう」
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