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潜入騎士
しおりを挟むそして放課後。リオネル殿下から説明を受けた。
「近衛騎士団に所属しておりますレイナ・テラーと申します」
「近衛騎士!?」
「そうなんだ。彼女は27歳。童顔だろう?
学校や令嬢達、時にはメイド達の中に潜入させる。
髪はカツラだ。もちろん実力も申し分ない逸材だ」
「羨ましい」
「アリス?」
「女性の憧れですわ」
「……」
「レイナが恥ずかしがってるから、そんなに見つめないでやってくれ」
27歳で学生と混じれるほどの童顔なんて、奇跡の○達祐実がこの世界にもいた!
「どうすれば、レイナ様の恩恵に預かることがでしるのでしょう」
「え!?」
「秘訣はなんですか!」
「ひ、秘訣!?」
「髪の毛を少しいただけますか」
「……」
「とにかく、彼女は王族を守るために任務に就いている。スーザンも君もいるから居た方がいい。
ベルビュー男爵令嬢がしつこく寄ってくるから危惧したんだ。今の段階では生徒間で解決するレベルだと判断された。だけどベルココス嬢の前例もあるからレイナを付けたんだよ」
「そうだったのですね」
「しかしあの令嬢には困ったものだ」
「ここは貴族学校ですから、貴族としての振る舞いができない者は処分してもいいのではありませんか?王族だからレイナ卿にお願いすることができますが、貴族は護衛をつけることはできませんよね。
例えば一度停学にして、保護者である当主に改善させてから登校させるようにして、停学を終えてから指摘された問題を再度起こせば、より長い停学にすれば出席日数が足りなくて留年もしくは退学になってしまうといった仕組みにしてもいい気がしますけど」
「確かに王族だからこの手が使えるからな。
だが、貴族の振る舞いの審査が難しいかもしれない。ベルビュー男爵令嬢の場合は“友人を作ろうと声をかけているだけだ”と主張されたら難しい」
「友人といってもお金持ちか高位貴族しか相手にしていないじゃないですか。しかも令息ばかり。
婚約者持ちが多いのですから、しつこい異性への声掛けは貴族令嬢として相応しくないと言えるのではありませんか?
ベルビュー男爵令嬢の場合は平民の学校の方が良かったかもしれませんね」
「なるほど。戻って相談してみるよ」
「あ、やっぱりいいです」
「え?」
「そこまでするのも可哀想かもしれません」
「分かった」
それやってしまうと、オルデンがシャルロットを好きになって婚約破棄をするという流れが無くなってしまうことに気が付いてしまった。
「ではごきげんよう」
屋敷に帰り、水やジュースを飲んで涙を宝石に変える。ジューサーがあればなとコップの中身を見て思う。野菜を擦り潰しながら水を混ぜたものは、宝石に変わらなかった。水分扱いじゃなくて固形物扱いらしい。
エメラルドの緑色を出すのに緑野菜ジュースが飲みたいところなのに悪戦苦闘。ライムに似た見た目の柑橘系があって、その果肉が緑色なので絞って飲んだら強い酸味の後に苦味が残るという難敵だった。
砂糖を混ぜればと思ったが、相当量の砂糖を使わないと中和しなかったので諦めた。入れている過程を見たら健康に悪そうだと感じて飲めなかった。
だから、その味を我慢して飲むのは週に一度、食前酒用の小さなグラスに一杯で精一杯。
だから緑色の宝石は少ない。
透明、赤、桃、紫、黄、緑で、濃いものもあれば薄いものもできる。
せっかくなら香り付きの宝石が生み出せれば良かったかも。
今夜も宝石を生み出した。
翌朝。今日は休みで、午前中に宝飾店のホッジンズ店長が買取に来る。
「ホッジンズ店長、1ヶ月も休んでしまってごめんなさい」
「お体の方は?」
「ほぼ元通りよ。では、確認をしてもらっていいかしら」
「お預かりいたします」
昨夜の分も渡してしまおうと持って来させた。
「あの、こちらの宝石は香りが……」
「え?」
「こちらは葡萄の香りがしますし、こちらは苺の香りがします」
昨夜の分の匂いを嗅ぐと確かにそれぞれのフルーツの香りがした。緑色は酸っぱい香りがする。
水を持って来させて洗ってみたが落ちない。
「落ちないかも」
「……」
「香り付きの宝石として少し高値で売れないかしら。若い子にはウケると思うわ」
「かしこまりました」
もしかして もう一つの授けものって このこと!?
香り付き以外に何ができるかな。暗闇で光る宝石とか?形を変えて生み出せたりしちゃう?
「他にも変わり種の宝石が手に入れられたら扱ってもらえるのかしら」
「初めてのことですので何とも。少量から始めてみるのは如何でしょう」
「そうするわ」
夜、苺ジュースを飲んで生み出したのはバラの形をした宝石だ。黄色もやってみた。乙女にウケるはずだと確信した。
もしかして、大金持ちは飛び付くかも。
そしてひとつだけ自発光のダイアモンドを生み出した。
3ヶ月後、香り付きの宝石も花や星型の宝石も直ぐに売れた。どれもハイクオリティ価格から更に2倍にしていたが店頭に出せば即完売。
だけどやりすぎた。目を付けられてしまった。
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