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私の席は一番後ろの窓側。
隣はバンフィールド公爵家のマチアス様。前はリオネル殿下。斜め前は公爵家の三女イリアナ・ベルココス様だった。
マ「アリスちゃん、またエリアーナ姉様と帰っておいでよ」
私「マチアス様、私に“帰る”を付けるのはおかしいですよ」
マ「姉様は滅多に帰ってこないのにアリスちゃんが一緒だと羽が生えたように帰ってくるし、扱いが上手いじゃないか」
私「扱いって…可愛らしいエリアーナお姉様を愛でているだけですよ?」
マ「それだよ。普通は猛獣を愛でることは至難の業なのに、牙も爪も抜いてしまうのだから恐ろしい」
私「恐ろしくないです。猛獣と公言していたとお姉様に言いつけますよ」
イ「バンフィールド家の長女のエリアーナ様をお姉様と呼ぶなんて図々しい」
私「……」
マ「ベルココス嬢。君には関係ないだろう。
“姉”と呼ぶように命じているのはエリアーナ・ノッティング本人だ。文句があるなら言いに行けばいい。アリスちゃんに矛先を向けるな」
イ「(アリスちゃん?)」
私「……」
イ「そもそも皆様おかしいわ。彼女は子爵令息の婚約者。皆様も婚約者がいる身なのに、“アリス”、“アリスちゃん”などと」
そこにスッと現れたのは文句を言っているイリアナ様の婚約でエリアーナ様を義姉と呼ぶブレイル様だ。
ブ「アリスちゃんは頑なに家名で呼ぶと言っていたのに 当主夫妻が説得して友人や親戚のように互いに名前呼びをさせているんだ。
言わば命じているに等しい。
不服ならば各家門の当主に苦情を言いに行け」
イ「っ!」
私「あの、別にいいですよ、ブレ…ノッティング様。家名で呼びますから」
ブ「アリスちゃんはそんなことを考えなくていい。エリアーナ義姉様の妹なら私の妹でもある。文句があるなら聞こうかイリアナ嬢」
イ「っ!」
リ「そもそも、アリス嬢は子爵家に嫁ぐわけじゃない。侯爵家を継ぐために婿をとるんだ。
今現在、先代や現当主の失敗のツケをジオニトロ侯爵の代理として解決させつつ、家族や使用人の面倒を見て、懸命に当主の役割を果たしているのはアリス嬢だ。
対して君は公爵家のただの三女。当主の庇護下で不自由なく過ごしている身だし、婚姻すればブレイルの母君の実家の伯爵位を継いで伯爵夫人になろうとしている身でもある。
弁えなくてはならないのは誰だろうか」
イ「リ、リオネル殿下」
ブ「ごめんね、アリスちゃん。
こういうことが起こるから嫌だと言っていた君に名前で呼び合うようにお願いしたのは我々だ。
こんなにすぐ現れるとは思わなかった。許してくれないかな。いつも通りブレイルと呼んでくれ」
私「ブレイル様、私は大丈夫ですわ。
ベルココス嬢はブレイル様の妻になる方ですからそんなに仰ることはありませんわ」
ブ「彼女はノッティング家と縁を結ぼうとしているのにうちの意向に背くなどあってはならないんだ。これは引き下がらない。
イリアナ嬢、理解できたか?」
イ「はい、ブレイル様。
ジオニトロ嬢、申し訳ありません」
私「水に流しましょう」
その後、担任と補助員が来て学園生活や授業に関する説明や注意をした。
「学園内では学園のルールに従って過ごしてもらいます。身分を理由に逃れることはできません。
そして学園を出ればそのルールは適用されません。学園内でそのルールを逆手にとって好き勝手していい訳ではありませんよ」
ジェラートが食べたいなぁ。
「他のクラスの中に入っては行けません。
病人や怪我人がいて手当のために入らざるを得ないとき、中にいる人が怪我をしそうなときなど 未然に防ぐための緊急時と、教師が命じたときのみです。
無闇に他学年の区域に足を踏み入れてはなりません。そのようなことをすることがないように他学年と分けた配置をしていますので言い訳は聞きませんよ。
兄弟姉妹がいる場合は教室の外から声をかけましょう。基本的には前もって約束なりをして区分けラインで待ちましょう」
苺大福が食べたいなぁ。
「呼び方は学園内ではファーストネームにさんを付けます。外に出れば違いますからね」
油揚げと豆腐のお味噌……。
「アリスさん、聞いていますか?」
おにぎり……。
「アリスさん」
「(アリスちゃん)」
マチアス様に揺すられて我に返った。
「アリスさん。何を考えていたのですか?」
「……食べ物のことです。すみません」
「……さて、このクラスの各科目の一番を取った生徒の名前を発表します。
歴史、リオネルさん。
国語、スーザンさん。
外国語、シルヴェストルさん、マチアスさん。
貴族法、ブレイルさん、アリスさん。
自然学、トビーさん。
生物学、リヴウェルさん。
数学、アリスさん。
アリスさん、せっかく2科目で満点を出しているのですから、私の話もちゃんと聞いてください」
「すみません」
「具体的に何を思い浮かべていたのですか」
「外国の食べ物ですから、お分かりにならないかと」
「答えが違います」
「ジェラートやオニギリやミソシルです」
「確かに分かりませんね。
アリスさん。数学は満点で他の科目も素晴らしいのに 外国語は努力しなければなりません。
食べ物のついでに言葉も覚えましょう」
「はい、すみませんでした」
何で私だけ晒すのよ!
「何か?」
「いえ。何故か外国語になると眠くなってしまって」
「先生、私が面倒をみますから大丈夫です」
「マチアスさん、お願いしますね」
「自分で頑張ります」
「眠くなるのに?」
「くっ…」
隣はバンフィールド公爵家のマチアス様。前はリオネル殿下。斜め前は公爵家の三女イリアナ・ベルココス様だった。
マ「アリスちゃん、またエリアーナ姉様と帰っておいでよ」
私「マチアス様、私に“帰る”を付けるのはおかしいですよ」
マ「姉様は滅多に帰ってこないのにアリスちゃんが一緒だと羽が生えたように帰ってくるし、扱いが上手いじゃないか」
私「扱いって…可愛らしいエリアーナお姉様を愛でているだけですよ?」
マ「それだよ。普通は猛獣を愛でることは至難の業なのに、牙も爪も抜いてしまうのだから恐ろしい」
私「恐ろしくないです。猛獣と公言していたとお姉様に言いつけますよ」
イ「バンフィールド家の長女のエリアーナ様をお姉様と呼ぶなんて図々しい」
私「……」
マ「ベルココス嬢。君には関係ないだろう。
“姉”と呼ぶように命じているのはエリアーナ・ノッティング本人だ。文句があるなら言いに行けばいい。アリスちゃんに矛先を向けるな」
イ「(アリスちゃん?)」
私「……」
イ「そもそも皆様おかしいわ。彼女は子爵令息の婚約者。皆様も婚約者がいる身なのに、“アリス”、“アリスちゃん”などと」
そこにスッと現れたのは文句を言っているイリアナ様の婚約でエリアーナ様を義姉と呼ぶブレイル様だ。
ブ「アリスちゃんは頑なに家名で呼ぶと言っていたのに 当主夫妻が説得して友人や親戚のように互いに名前呼びをさせているんだ。
言わば命じているに等しい。
不服ならば各家門の当主に苦情を言いに行け」
イ「っ!」
私「あの、別にいいですよ、ブレ…ノッティング様。家名で呼びますから」
ブ「アリスちゃんはそんなことを考えなくていい。エリアーナ義姉様の妹なら私の妹でもある。文句があるなら聞こうかイリアナ嬢」
イ「っ!」
リ「そもそも、アリス嬢は子爵家に嫁ぐわけじゃない。侯爵家を継ぐために婿をとるんだ。
今現在、先代や現当主の失敗のツケをジオニトロ侯爵の代理として解決させつつ、家族や使用人の面倒を見て、懸命に当主の役割を果たしているのはアリス嬢だ。
対して君は公爵家のただの三女。当主の庇護下で不自由なく過ごしている身だし、婚姻すればブレイルの母君の実家の伯爵位を継いで伯爵夫人になろうとしている身でもある。
弁えなくてはならないのは誰だろうか」
イ「リ、リオネル殿下」
ブ「ごめんね、アリスちゃん。
こういうことが起こるから嫌だと言っていた君に名前で呼び合うようにお願いしたのは我々だ。
こんなにすぐ現れるとは思わなかった。許してくれないかな。いつも通りブレイルと呼んでくれ」
私「ブレイル様、私は大丈夫ですわ。
ベルココス嬢はブレイル様の妻になる方ですからそんなに仰ることはありませんわ」
ブ「彼女はノッティング家と縁を結ぼうとしているのにうちの意向に背くなどあってはならないんだ。これは引き下がらない。
イリアナ嬢、理解できたか?」
イ「はい、ブレイル様。
ジオニトロ嬢、申し訳ありません」
私「水に流しましょう」
その後、担任と補助員が来て学園生活や授業に関する説明や注意をした。
「学園内では学園のルールに従って過ごしてもらいます。身分を理由に逃れることはできません。
そして学園を出ればそのルールは適用されません。学園内でそのルールを逆手にとって好き勝手していい訳ではありませんよ」
ジェラートが食べたいなぁ。
「他のクラスの中に入っては行けません。
病人や怪我人がいて手当のために入らざるを得ないとき、中にいる人が怪我をしそうなときなど 未然に防ぐための緊急時と、教師が命じたときのみです。
無闇に他学年の区域に足を踏み入れてはなりません。そのようなことをすることがないように他学年と分けた配置をしていますので言い訳は聞きませんよ。
兄弟姉妹がいる場合は教室の外から声をかけましょう。基本的には前もって約束なりをして区分けラインで待ちましょう」
苺大福が食べたいなぁ。
「呼び方は学園内ではファーストネームにさんを付けます。外に出れば違いますからね」
油揚げと豆腐のお味噌……。
「アリスさん、聞いていますか?」
おにぎり……。
「アリスさん」
「(アリスちゃん)」
マチアス様に揺すられて我に返った。
「アリスさん。何を考えていたのですか?」
「……食べ物のことです。すみません」
「……さて、このクラスの各科目の一番を取った生徒の名前を発表します。
歴史、リオネルさん。
国語、スーザンさん。
外国語、シルヴェストルさん、マチアスさん。
貴族法、ブレイルさん、アリスさん。
自然学、トビーさん。
生物学、リヴウェルさん。
数学、アリスさん。
アリスさん、せっかく2科目で満点を出しているのですから、私の話もちゃんと聞いてください」
「すみません」
「具体的に何を思い浮かべていたのですか」
「外国の食べ物ですから、お分かりにならないかと」
「答えが違います」
「ジェラートやオニギリやミソシルです」
「確かに分かりませんね。
アリスさん。数学は満点で他の科目も素晴らしいのに 外国語は努力しなければなりません。
食べ物のついでに言葉も覚えましょう」
「はい、すみませんでした」
何で私だけ晒すのよ!
「何か?」
「いえ。何故か外国語になると眠くなってしまって」
「先生、私が面倒をみますから大丈夫です」
「マチアスさん、お願いしますね」
「自分で頑張ります」
「眠くなるのに?」
「くっ…」
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