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【 第二王子リオネルの視点 】
そこは成果がありましたと答えるところなのに。
王妃「あると答えられないの?」
姉「他の授業や待遇に問題がないか未確認ですし、リオネル王子殿下が今後スーザンを時々でも見てくれるか否かはまだはっきりしておりません」
王妃「スーザン、良かったわね。姉に恵まれて」
妹「はい、王妃殿下。
私は最近まで、母と一緒に姉に酷い態度をとってきました。その私のために姉はドレスを選びアクセサリーを作り、叱咤し、味方になり、守ってくれました。
恥ずかしくて、嬉しくて、同時に怖くなりました」
王妃「怖い?」
妹「姉の想いに応えていけるのか不安です。優秀とは言えませんのでガッカリさせたらと思うと怖いのです」
姉「スーザンは恥じない生き方をするだけでいいのよ」
妹「お姉様」
王妃「分かったわ。お茶を淹れ直してちょうだい。
さあ、お菓子を召し上がれ」
姉妹「いただきます」
姉「王妃殿下、こちらのケーキを上手く食べるコツはありますか」
王妃「ええ、あるわよ」
全く掴めない。
鞭の後は母上に怯えていたはずのアリス嬢が堂々と持論を述べ、私への批判も滲ませた。
妹への慈悲を見せ、そして今はケーキの食べ方を母上に教わる大胆さ。
兄上も仮面を崩してアリス嬢を見つめている。
シ「何故母上に聞いたのかな?」
姉「それは一番のお手本でいらっしゃるからです。
作法の教師はアレですし。
せっかくですので 王妃殿下に聞いてしまうことが最良だと思いました」
妹「あっ」
ブルーベリーがスーザンの皿から飛んでいったが、アリス嬢が見事にキャッチした。
姉「ありがとう。私が好きだから気を利かせてくれたのね」
妹「ウフフっ」
そのまま食べてしまった。
母上は目を見開いているし、兄上は笑いを堪えているし。
私「スーザンと同じ年に入学するのだよね?」
姉「はい、リオネル王子殿下」
私「リオネルでいいよ」
姉「誤解を受けるといけませんので殿下と呼ばせていただきます」
私「誤解?」
姉「私は殿下の婚約者の姉というだけの立場です。
これから学園にも通うのにお 名前でお呼びすれば不快に思う方も出てくるでしょう」
私「僕がいいと言っているのに?」
姉「婚約者のいる殿方に大した関係性もなく馴々しくしてしまえば、不快に思われてしまうものです」
私「不快に思わせない関係性とは?」
姉「親族でしょうか」
シ「つまり私もかな?」
姉「はい。シリル王子殿下」
王妃「慎重なのね。リオネル、アリス嬢の意志を尊重なさい。
ところで、ガーネット家やノッティング家と懇意にしているのね」
姉「ガーネット家では、私のメイドがガーネット家の菓子職人の元に習いに行っておりまして、時々ついて行ってシルビア様とお話をさせていただいております。
ノッティング家では、偶然ドレスのお店でエリアーナ様とお会いして仲良くなりました」
王妃「菓子を習いに?」
姉「はい。私の専属メイドと話をしていた時に、子供の頃の夢がお菓子の店を開くことだったと聞いたのです。試しに作ってもらったら、平民の家庭で作ることができる菓子ではありましたが優しくて美味しいと思いました。
私が学生を終えるまではメイドを続けてもらいたいので日中の数時間、ガーネット家に行かせています」
王妃「つまり数年後には店を出せるよう援助すると?」
姉「はい。彼女は私を支えてくれた恩人ですから」
王妃「恩人?」
妹「お恥ずかしい話ですが、私の母が姉にメイドを一人しか付けなかったのです。その分一人のメイドに仕事が集中したかと」
王妃「そうだったのね」
シ「エリアーナ夫人とよく仲良くなれたね」
王妃「公爵令嬢時代から気難しいと聞いているわ」
姉「人見知りがあるといいましょうか、素直に表現できないといいましょうか。
不器用な方ですが、真っ直ぐで情に厚い方です。
コミュニケーションの取り方を掴んでしまえば、それはもう抱きしめたくなるほどの愛らしさで。
きっとジェイド様はご存知なのだと思います。相思相愛の夫妻でした」
王妃「ふふっ、そうなのね」
私「ノッティング家の長男は名前呼び?」
姉「エリアーナ様がそう呼ぶように仰いましたので。“命令よ!”と…頬を染めておられました」
エリアーナ夫人の話をするアリス嬢は優しく微笑むな。
シ「スーザン嬢や私の婚約者が良いと言えば私達を名で呼ぶのかな?」
姉「王族の婚約者はそのような許可をだせる立場にございません。つまりノーです」
シ「厳しいな」
姉「それを許してしまうと、知らぬ間に殿下の婚約者から許可をいただいた令嬢から、ある日突然“シリル様”と呼ばれるのですよ?」
シ「そうか。駄目だな」
姉「はい」
姉妹が退室した後、
シ「参ったな。事前調査が悪かったのか、上手く隠れていたのか」
王妃「そうね。勿体ないことをしたわね。今更どうこう出来ないもの」
シ「娶りたくても要の跡継ぎのようですから無理でしょう」
私「兄上? 娶るってアリス嬢をですか?」
シ「そうだよ。彼女が欲しい。
だが娶れるとしたら私が婚姻してから5年経過しないとならない。
その頃には20歳を過ぎてしまう。そこから婚約なんて、そんなに待たせることもできない」
王妃「次期国王の後ろ盾にするにはジオニトロ家では弱いから婚約者のすげ替えはできないわ」
私「なら私が」
シ「馬鹿を言うな。姉妹だぞ」
王妃「そうよ。リオネルが娶ることなど絶対にないわ」
絶対にない……
そこは成果がありましたと答えるところなのに。
王妃「あると答えられないの?」
姉「他の授業や待遇に問題がないか未確認ですし、リオネル王子殿下が今後スーザンを時々でも見てくれるか否かはまだはっきりしておりません」
王妃「スーザン、良かったわね。姉に恵まれて」
妹「はい、王妃殿下。
私は最近まで、母と一緒に姉に酷い態度をとってきました。その私のために姉はドレスを選びアクセサリーを作り、叱咤し、味方になり、守ってくれました。
恥ずかしくて、嬉しくて、同時に怖くなりました」
王妃「怖い?」
妹「姉の想いに応えていけるのか不安です。優秀とは言えませんのでガッカリさせたらと思うと怖いのです」
姉「スーザンは恥じない生き方をするだけでいいのよ」
妹「お姉様」
王妃「分かったわ。お茶を淹れ直してちょうだい。
さあ、お菓子を召し上がれ」
姉妹「いただきます」
姉「王妃殿下、こちらのケーキを上手く食べるコツはありますか」
王妃「ええ、あるわよ」
全く掴めない。
鞭の後は母上に怯えていたはずのアリス嬢が堂々と持論を述べ、私への批判も滲ませた。
妹への慈悲を見せ、そして今はケーキの食べ方を母上に教わる大胆さ。
兄上も仮面を崩してアリス嬢を見つめている。
シ「何故母上に聞いたのかな?」
姉「それは一番のお手本でいらっしゃるからです。
作法の教師はアレですし。
せっかくですので 王妃殿下に聞いてしまうことが最良だと思いました」
妹「あっ」
ブルーベリーがスーザンの皿から飛んでいったが、アリス嬢が見事にキャッチした。
姉「ありがとう。私が好きだから気を利かせてくれたのね」
妹「ウフフっ」
そのまま食べてしまった。
母上は目を見開いているし、兄上は笑いを堪えているし。
私「スーザンと同じ年に入学するのだよね?」
姉「はい、リオネル王子殿下」
私「リオネルでいいよ」
姉「誤解を受けるといけませんので殿下と呼ばせていただきます」
私「誤解?」
姉「私は殿下の婚約者の姉というだけの立場です。
これから学園にも通うのにお 名前でお呼びすれば不快に思う方も出てくるでしょう」
私「僕がいいと言っているのに?」
姉「婚約者のいる殿方に大した関係性もなく馴々しくしてしまえば、不快に思われてしまうものです」
私「不快に思わせない関係性とは?」
姉「親族でしょうか」
シ「つまり私もかな?」
姉「はい。シリル王子殿下」
王妃「慎重なのね。リオネル、アリス嬢の意志を尊重なさい。
ところで、ガーネット家やノッティング家と懇意にしているのね」
姉「ガーネット家では、私のメイドがガーネット家の菓子職人の元に習いに行っておりまして、時々ついて行ってシルビア様とお話をさせていただいております。
ノッティング家では、偶然ドレスのお店でエリアーナ様とお会いして仲良くなりました」
王妃「菓子を習いに?」
姉「はい。私の専属メイドと話をしていた時に、子供の頃の夢がお菓子の店を開くことだったと聞いたのです。試しに作ってもらったら、平民の家庭で作ることができる菓子ではありましたが優しくて美味しいと思いました。
私が学生を終えるまではメイドを続けてもらいたいので日中の数時間、ガーネット家に行かせています」
王妃「つまり数年後には店を出せるよう援助すると?」
姉「はい。彼女は私を支えてくれた恩人ですから」
王妃「恩人?」
妹「お恥ずかしい話ですが、私の母が姉にメイドを一人しか付けなかったのです。その分一人のメイドに仕事が集中したかと」
王妃「そうだったのね」
シ「エリアーナ夫人とよく仲良くなれたね」
王妃「公爵令嬢時代から気難しいと聞いているわ」
姉「人見知りがあるといいましょうか、素直に表現できないといいましょうか。
不器用な方ですが、真っ直ぐで情に厚い方です。
コミュニケーションの取り方を掴んでしまえば、それはもう抱きしめたくなるほどの愛らしさで。
きっとジェイド様はご存知なのだと思います。相思相愛の夫妻でした」
王妃「ふふっ、そうなのね」
私「ノッティング家の長男は名前呼び?」
姉「エリアーナ様がそう呼ぶように仰いましたので。“命令よ!”と…頬を染めておられました」
エリアーナ夫人の話をするアリス嬢は優しく微笑むな。
シ「スーザン嬢や私の婚約者が良いと言えば私達を名で呼ぶのかな?」
姉「王族の婚約者はそのような許可をだせる立場にございません。つまりノーです」
シ「厳しいな」
姉「それを許してしまうと、知らぬ間に殿下の婚約者から許可をいただいた令嬢から、ある日突然“シリル様”と呼ばれるのですよ?」
シ「そうか。駄目だな」
姉「はい」
姉妹が退室した後、
シ「参ったな。事前調査が悪かったのか、上手く隠れていたのか」
王妃「そうね。勿体ないことをしたわね。今更どうこう出来ないもの」
シ「娶りたくても要の跡継ぎのようですから無理でしょう」
私「兄上? 娶るってアリス嬢をですか?」
シ「そうだよ。彼女が欲しい。
だが娶れるとしたら私が婚姻してから5年経過しないとならない。
その頃には20歳を過ぎてしまう。そこから婚約なんて、そんなに待たせることもできない」
王妃「次期国王の後ろ盾にするにはジオニトロ家では弱いから婚約者のすげ替えはできないわ」
私「なら私が」
シ「馬鹿を言うな。姉妹だぞ」
王妃「そうよ。リオネルが娶ることなど絶対にないわ」
絶対にない……
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