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反撃される教育係
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“リオネル王子殿下
突然のお手紙でお願いすることをお許しください。
ご多忙と存じておりますが、明日のスーザンの礼儀作法の授業をこっそり覗いてはくださいませんか。
できれば最初から覗いていてくださると面白いものをお見せできます。
明日、スーザンと登城させていただきます。
私は堂々と保護者として授業を参観します。
見えなかったものをお見せできるはずです。
許可をいただけない場合はスーザンにそうお伝えくださいませ。
どうかご慈悲を。
姉 アリス・ジオニトロ”
【 ベス・ローの視点 】
今日もあの出来損ないを指導する日。
登城すると、部屋が変わったと案内された。
今日はどう躾けようかと考えているとスーザンが入室した。
「ロー先生、ごきげんよう。
本日は姉で当主代行のアリスを連れて参りました」
「アリス・ジオニトロと申します。
ジオニトロ侯爵家の跡継ぎで、現在は代行権を有しております。本日は参観をしに参りました」
「べ、ベス・ローと申します。
そんな話は伺っておりませんわ」
「リオネル王子殿下に許可をいただきました。
それに、王家の秘密を教える授業ではありませんから、問題ありませんわね?夫人」
「殿下が…、分かりました」
ちょっと!袖!袖が短くて痣が丸見えじゃないの!
「スーザン様、お袖のあるドレスはどうなさったのですか?」
「姉がドレスを買ってくださったので着て参りました」
「スーザン、似合っているわ」
「ありがとうございます、お姉様」
「ロー夫人、ドレスコードに引っかかりますか?
どの規定に引っかかってしまうのか見せていただけますか」
「見せる?」
「決まり事なら記載があるはずですわ。
ちゃんと確認しませんと、スーザンも私も間違いが正せませんもの」
「っ!」
そんなものないわよ!
大体、痣なんて、恥ずかしいから普通隠すでしょう!何で見せるのよ!
「いえ、先日は長袖でしたから、寒くて風邪を召されるといけないと心配になりましたの」
「優しい先生で良かったわね、スーザン」
「はい、お姉様」
「ではどうぞ」
15分くらい経った頃に小娘の姉がメイドに呼ばれて席を立った。
「ちょっと、貴女!何で姉を連れて来ているの!」
「当主代理の姉が来たいと言ったからです」
「っ!、しかもその袖!何で隠さないの!普通隠すでしょう!」
「先生に鞭で打たれた痣ですか?隠すべきものなのでしょうか」
「はぁ、ここまで馬鹿だったとは。痣なんて恥ずかしいものでしょう!みっともない」
「そうですか?」
「本当に頭の悪い子ね!母親が男爵家の出だと駄目ね」
「何でダメなのですか?」
「王子妃に相応しくないからよ!」
「でも、それは私が決めることではありませんから」
「っ! “辞退させてください”と言えば済むことでしょう!」
「私には辞退する権限がありません」
「口答えばかりして!後ろを向いて脚を出しなさい!」
「でも、そんなことをしたら…」
「早くしなさい!」
出来損ないの小娘はドレスの裾を持ち上げると前回の鞭の痕が見えた。
腕も脚も今日はよく目立つわね。
鞭を振り上げた時に手を叩く音が鳴った。
パン!パン!
振り返ると小娘の姉が立っていた。
「これはどういうことかしらロー夫人」
「なっ、」
ドアの音がしなかった。
「ノックはどうしたのです!」
「ノックが必要でしたか?ドアは閉めて行きませんでしたし、ドアの側で立っていましたが」
「えっ!?」
「答えてください。どういうことですか?」
「こ、これは躾で、」
「鞭で打たれるようなことはスーザンはしておりませんよ?この耳で聞いておりましたから」
え?聞いていた?
「何故 痣ができるのか確かめたくてドアの側におりましたの。ロー夫人は何が理由で 何の権限で暴力を振るうのですか」
「暴力だなんて」
「会話の中にも行動にも、何も要因が無かったのですが。寧ろロー夫人が侯爵令嬢で第二王子殿下の婚約者を罵っていたではありませんか。
で、罰に鞭打ち?おかしくありませんか?」
「っ!」
「貴女が負わせた痣を隠すかどうかはスーザンが決めること。貴女ではないわ。
頭が悪い、母親が男爵家の出だと駄目、辞退しろ?それが礼儀作法で雇われた者がいうセリフなの?
ロー夫人はお育ちがよろしいのね。ロー夫人のお母様も同じように礼儀作法を教えておられたとか。まさか、暴言暴力は相伝かしら?」
「侮辱なさっているのでしょうか」
「事実確認よ。
その虐待は受け継がれているのかどうか。
早く教えて。ロー夫人」
「そんなことはありませんわ」
「ならば、この暴言と暴力は貴女の独断?
それとも王家からの指示?」
私達の他に…メイドもいない。
「王家からの指示ですわ、相応しく教育するためには仕方がありませんもの。
それよりさっきから失礼な口調は……お、王子殿下!?」
突然現れたのはリオネル王子殿下だった。
いつから!?いつから聞かれていたの!?
「ロー子爵夫人。順調かい?」
良かった。いらしたばかりなのね。
「少し問題がありますが頑張ります」
「ロー夫人、挨拶をくれないか?」
「失礼いたしました。
リオネル王子殿下にご挨拶を申し上げます」
「ありがとう。だが、イマイチだな。
出来ないと鞭打ちだっけ?」
王子殿下が背面のベルトに挟んだ鞭を取り上げた。
「あ、それはっ」
「はい、ジオニトロ侯爵代理。躾けていいよ」
「感謝いたします」
「お、王子殿下?」
「ロー夫人。後ろを向いてドレスの裾を捲ってください。腿が見えるまで」
小娘が何を!
「何をっ!私は人妻ですよ!?」
「知っています。
ですが、貴女の体は最低一人の殿方には見せたのですよね?妹のスーザンは一人として見せていないのに裾を上げさせられて鞭で打たれました。妹の方が恥ずかしかったはず。
さあ、殿下は立ち会われるだけで、貴女の脚に興味はありません。裾を上げないと兵士を数名呼んで上げさせますよ」
「貴女にそんな権限は、」
「僕が与えたからあるよ。早くしてよ。僕は見ないから」
「っ!」
「もっと捲って」
捲った途端に衝撃と痛みが走った。
パチンッ!
「ギャアアアっ!」
パチンッ!
「ギャアアアっ!」
パチンッ!
「ギャアアアっ!」
突然のお手紙でお願いすることをお許しください。
ご多忙と存じておりますが、明日のスーザンの礼儀作法の授業をこっそり覗いてはくださいませんか。
できれば最初から覗いていてくださると面白いものをお見せできます。
明日、スーザンと登城させていただきます。
私は堂々と保護者として授業を参観します。
見えなかったものをお見せできるはずです。
許可をいただけない場合はスーザンにそうお伝えくださいませ。
どうかご慈悲を。
姉 アリス・ジオニトロ”
【 ベス・ローの視点 】
今日もあの出来損ないを指導する日。
登城すると、部屋が変わったと案内された。
今日はどう躾けようかと考えているとスーザンが入室した。
「ロー先生、ごきげんよう。
本日は姉で当主代行のアリスを連れて参りました」
「アリス・ジオニトロと申します。
ジオニトロ侯爵家の跡継ぎで、現在は代行権を有しております。本日は参観をしに参りました」
「べ、ベス・ローと申します。
そんな話は伺っておりませんわ」
「リオネル王子殿下に許可をいただきました。
それに、王家の秘密を教える授業ではありませんから、問題ありませんわね?夫人」
「殿下が…、分かりました」
ちょっと!袖!袖が短くて痣が丸見えじゃないの!
「スーザン様、お袖のあるドレスはどうなさったのですか?」
「姉がドレスを買ってくださったので着て参りました」
「スーザン、似合っているわ」
「ありがとうございます、お姉様」
「ロー夫人、ドレスコードに引っかかりますか?
どの規定に引っかかってしまうのか見せていただけますか」
「見せる?」
「決まり事なら記載があるはずですわ。
ちゃんと確認しませんと、スーザンも私も間違いが正せませんもの」
「っ!」
そんなものないわよ!
大体、痣なんて、恥ずかしいから普通隠すでしょう!何で見せるのよ!
「いえ、先日は長袖でしたから、寒くて風邪を召されるといけないと心配になりましたの」
「優しい先生で良かったわね、スーザン」
「はい、お姉様」
「ではどうぞ」
15分くらい経った頃に小娘の姉がメイドに呼ばれて席を立った。
「ちょっと、貴女!何で姉を連れて来ているの!」
「当主代理の姉が来たいと言ったからです」
「っ!、しかもその袖!何で隠さないの!普通隠すでしょう!」
「先生に鞭で打たれた痣ですか?隠すべきものなのでしょうか」
「はぁ、ここまで馬鹿だったとは。痣なんて恥ずかしいものでしょう!みっともない」
「そうですか?」
「本当に頭の悪い子ね!母親が男爵家の出だと駄目ね」
「何でダメなのですか?」
「王子妃に相応しくないからよ!」
「でも、それは私が決めることではありませんから」
「っ! “辞退させてください”と言えば済むことでしょう!」
「私には辞退する権限がありません」
「口答えばかりして!後ろを向いて脚を出しなさい!」
「でも、そんなことをしたら…」
「早くしなさい!」
出来損ないの小娘はドレスの裾を持ち上げると前回の鞭の痕が見えた。
腕も脚も今日はよく目立つわね。
鞭を振り上げた時に手を叩く音が鳴った。
パン!パン!
振り返ると小娘の姉が立っていた。
「これはどういうことかしらロー夫人」
「なっ、」
ドアの音がしなかった。
「ノックはどうしたのです!」
「ノックが必要でしたか?ドアは閉めて行きませんでしたし、ドアの側で立っていましたが」
「えっ!?」
「答えてください。どういうことですか?」
「こ、これは躾で、」
「鞭で打たれるようなことはスーザンはしておりませんよ?この耳で聞いておりましたから」
え?聞いていた?
「何故 痣ができるのか確かめたくてドアの側におりましたの。ロー夫人は何が理由で 何の権限で暴力を振るうのですか」
「暴力だなんて」
「会話の中にも行動にも、何も要因が無かったのですが。寧ろロー夫人が侯爵令嬢で第二王子殿下の婚約者を罵っていたではありませんか。
で、罰に鞭打ち?おかしくありませんか?」
「っ!」
「貴女が負わせた痣を隠すかどうかはスーザンが決めること。貴女ではないわ。
頭が悪い、母親が男爵家の出だと駄目、辞退しろ?それが礼儀作法で雇われた者がいうセリフなの?
ロー夫人はお育ちがよろしいのね。ロー夫人のお母様も同じように礼儀作法を教えておられたとか。まさか、暴言暴力は相伝かしら?」
「侮辱なさっているのでしょうか」
「事実確認よ。
その虐待は受け継がれているのかどうか。
早く教えて。ロー夫人」
「そんなことはありませんわ」
「ならば、この暴言と暴力は貴女の独断?
それとも王家からの指示?」
私達の他に…メイドもいない。
「王家からの指示ですわ、相応しく教育するためには仕方がありませんもの。
それよりさっきから失礼な口調は……お、王子殿下!?」
突然現れたのはリオネル王子殿下だった。
いつから!?いつから聞かれていたの!?
「ロー子爵夫人。順調かい?」
良かった。いらしたばかりなのね。
「少し問題がありますが頑張ります」
「ロー夫人、挨拶をくれないか?」
「失礼いたしました。
リオネル王子殿下にご挨拶を申し上げます」
「ありがとう。だが、イマイチだな。
出来ないと鞭打ちだっけ?」
王子殿下が背面のベルトに挟んだ鞭を取り上げた。
「あ、それはっ」
「はい、ジオニトロ侯爵代理。躾けていいよ」
「感謝いたします」
「お、王子殿下?」
「ロー夫人。後ろを向いてドレスの裾を捲ってください。腿が見えるまで」
小娘が何を!
「何をっ!私は人妻ですよ!?」
「知っています。
ですが、貴女の体は最低一人の殿方には見せたのですよね?妹のスーザンは一人として見せていないのに裾を上げさせられて鞭で打たれました。妹の方が恥ずかしかったはず。
さあ、殿下は立ち会われるだけで、貴女の脚に興味はありません。裾を上げないと兵士を数名呼んで上げさせますよ」
「貴女にそんな権限は、」
「僕が与えたからあるよ。早くしてよ。僕は見ないから」
「っ!」
「もっと捲って」
捲った途端に衝撃と痛みが走った。
パチンッ!
「ギャアアアっ!」
パチンッ!
「ギャアアアっ!」
パチンッ!
「ギャアアアっ!」
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