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妹のドレス
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月曜はローリーとガーネット邸に出向き、火曜の今日は異母妹スーザンとドレスの店に出向いた。
「本当にここ?」
「そうよ。小さな店だけど大丈夫よ」
店に入り、早速採寸をして要望を伝えた。
「それじゃ地味だわ」
「仕上がったらわかるわ。
それにね、今までみたいに、レースたっぷり、リボンたっぷり、意味なく宝石くっつけていたらダサくて仕方ないわ。
貴女は洗練された令嬢にならないといけないの。いつまでも幼児が着るようなデザインでは駄目よ」
「よ、幼児」
「しかもゴテゴテしていて貴女の可愛らしさを消してしまっているじゃないの」
「本当?」
「そうよ」
とりあえず三着決めて、店内を見渡した。
「あ、アレを着てみて」
「え~」
「早く」
薄いブルーと白の落ち着いたドレスはサイズもほぼピッタリだった。
「キツくはないわね。
このサイズのドレスは他に何があるかしら」
「あちら側にございます」
他に2つ選んで合わせて、合計3着を持ち帰った。
翌日の朝。
「いいからこっちを着ていきなさい!」
「いつもの方がいい!」
「スーザン!いっそのこと、他のドレス全て捨ててもいいのよ?」
「っ! 独裁者!」
「あら、呼んだ?」
「着ればいいんでしょ!」
「アクセサリーは私のあげたものにしなさい」
「地味…」
「買取屋を呼んで、」
「わ、分かりました!」
そして夕方。
「お姉様!お姉様~!!」
バタバタバタバタ
妃教育が全く身に付いてないわね。
「お姉様!褒められた!」
「もっと具体的に」
「先生と、リオネル殿下に褒められた!」
「何て言われたの」
「先生には、“やれば出来るのに何故やらなかったのですか。今日の装いは素敵ですわ”って!
リオネル殿下には、“見違えたよ、良く似合ってる”って!手の甲にキスをしてもらえたわ!」
「良かったわね」
「……お姉様、ごめんなさい。
私、改めます」
「では一緒に頑張りましょう」
そして懐かれた。
「でね、お姉様。怒るととても怖い先生がいらっしゃるの」
「何の先生?」
「作法の先生」
「どんな感じに叱るの?」
「角度が悪いとか、どれもこれもよ。
男爵家の母親だと…とか、時には棒の様な鞭で叩かれて…」
「何処を?」
「こことかこっちとか」
膝上の腿の裏と肘下に鞭の痕があった。
「脚はドレスの上から?」
「捲って直に」
「その先生の次回の授業は?」
「明後日」
「先生の名前は?」
「ベス・ロー」
「ロー子爵夫人?」
「グスッ」
「大丈夫。明後日、一緒に行ってあげるから。
明日、リオネル王子殿下にお手紙渡せる?」
「お手紙?」
「勝手に行けないから、スーザンと一緒にお城に行ってもいいですかってお願いしないと」
「渡します」
「いい子ね。
いつもその痣はどうしているの?」
「薬を塗っています」
「分かった。今日は塗らずにそのままにして。
痛いなら痛み止めだけにして。作戦があるから」
「はい」
翌日、ガーネット伯爵家のシルビア様に聞いてみた。
「ロー子爵夫人は実のお母様が伯爵夫人で、夫人もまた作法の先生をしていたの。その後を継いだのかしら」
「他に何か聞きませんか?」
「どうしたの?」
「私の調教中の異母妹が短鞭で打たれて産みの母の身分をあれこれ言われるらしいのです」
「まあ」
「アレは私の子狐ですから、このままでは済ませません」
「具体的に何をされたの?」
「実は……」
そして、ドレス店で、
「妹のサイズで肘下が出るドレスが欲しいのです」
「これと、これと、こちらなら合うかと」
「白っぽい黄色にするわ。
これなら腰のリボンで少しキツくしたら大丈夫ね。
持って帰るわ」
「ありがとうございます」
そしてノッティング邸で。
「お姉様!助けて!」
「アリス!どうしたの!」
「妹が鞭で打たれて、」
「何ですって!子狐が!?」
「大分従順になったところで、悩みを吐いたのです。ベス・ロー子爵夫人に王子妃教育といって侮辱されたり鞭で打たれると」
「どうするの」
「明日の午前中、お時間ありますか?」
「私?」
「お姉様に作法を見ていただきたいのです。
お姉様のような貴婦人の作法を見ることができたら、変わると思いますの」
「分かったわ、連れていらっしゃい」
「ありがとうございます。頼りになるお姉様と出会えて幸運ですわ」
「こ、この程度で言い過ぎよ」真っ赤
そして翌日の午前中、ノーティング邸にスーザンを連れて行き、作法を見せてもらった。
エリアーナ様を見たスーザンは目がキラキラしていた。
「美しいですわ」
「エリアーナお姉様は素敵でしょう」
「はい、お姉様」
「お世辞はいいから やってみなさい」
照れたエリアーナ様は一通り見ると、昼食になった。
「いい?カップの熱い場所は分かっているのだから触れなければいいの。あとは持ち方のコツと根性よ。顔は微笑みを崩さないこと」
「はい」
「上私の場合は、手く食べられない菓子は連日出してもらったわ。次第に慣れるし、飽きて他のものが食べたくて頑張ったわ」
「そうしてみます」
「何を言われても顔に出しちゃダメ。相手が喜ぶだけだから。
貴女は侯爵令嬢。いくら頑張ってもロー夫人は今更貴女より上にはなれないの。
いつか王子妃になった時の仕返しを思い浮かべていればいいわ。やられたことも楽しみにかわるから」
「はいっ!」
「エリアーナお姉様、惚れ惚れしますわ」
「っ!」
昼食をご馳走になって王宮へ向かった。
「本当にここ?」
「そうよ。小さな店だけど大丈夫よ」
店に入り、早速採寸をして要望を伝えた。
「それじゃ地味だわ」
「仕上がったらわかるわ。
それにね、今までみたいに、レースたっぷり、リボンたっぷり、意味なく宝石くっつけていたらダサくて仕方ないわ。
貴女は洗練された令嬢にならないといけないの。いつまでも幼児が着るようなデザインでは駄目よ」
「よ、幼児」
「しかもゴテゴテしていて貴女の可愛らしさを消してしまっているじゃないの」
「本当?」
「そうよ」
とりあえず三着決めて、店内を見渡した。
「あ、アレを着てみて」
「え~」
「早く」
薄いブルーと白の落ち着いたドレスはサイズもほぼピッタリだった。
「キツくはないわね。
このサイズのドレスは他に何があるかしら」
「あちら側にございます」
他に2つ選んで合わせて、合計3着を持ち帰った。
翌日の朝。
「いいからこっちを着ていきなさい!」
「いつもの方がいい!」
「スーザン!いっそのこと、他のドレス全て捨ててもいいのよ?」
「っ! 独裁者!」
「あら、呼んだ?」
「着ればいいんでしょ!」
「アクセサリーは私のあげたものにしなさい」
「地味…」
「買取屋を呼んで、」
「わ、分かりました!」
そして夕方。
「お姉様!お姉様~!!」
バタバタバタバタ
妃教育が全く身に付いてないわね。
「お姉様!褒められた!」
「もっと具体的に」
「先生と、リオネル殿下に褒められた!」
「何て言われたの」
「先生には、“やれば出来るのに何故やらなかったのですか。今日の装いは素敵ですわ”って!
リオネル殿下には、“見違えたよ、良く似合ってる”って!手の甲にキスをしてもらえたわ!」
「良かったわね」
「……お姉様、ごめんなさい。
私、改めます」
「では一緒に頑張りましょう」
そして懐かれた。
「でね、お姉様。怒るととても怖い先生がいらっしゃるの」
「何の先生?」
「作法の先生」
「どんな感じに叱るの?」
「角度が悪いとか、どれもこれもよ。
男爵家の母親だと…とか、時には棒の様な鞭で叩かれて…」
「何処を?」
「こことかこっちとか」
膝上の腿の裏と肘下に鞭の痕があった。
「脚はドレスの上から?」
「捲って直に」
「その先生の次回の授業は?」
「明後日」
「先生の名前は?」
「ベス・ロー」
「ロー子爵夫人?」
「グスッ」
「大丈夫。明後日、一緒に行ってあげるから。
明日、リオネル王子殿下にお手紙渡せる?」
「お手紙?」
「勝手に行けないから、スーザンと一緒にお城に行ってもいいですかってお願いしないと」
「渡します」
「いい子ね。
いつもその痣はどうしているの?」
「薬を塗っています」
「分かった。今日は塗らずにそのままにして。
痛いなら痛み止めだけにして。作戦があるから」
「はい」
翌日、ガーネット伯爵家のシルビア様に聞いてみた。
「ロー子爵夫人は実のお母様が伯爵夫人で、夫人もまた作法の先生をしていたの。その後を継いだのかしら」
「他に何か聞きませんか?」
「どうしたの?」
「私の調教中の異母妹が短鞭で打たれて産みの母の身分をあれこれ言われるらしいのです」
「まあ」
「アレは私の子狐ですから、このままでは済ませません」
「具体的に何をされたの?」
「実は……」
そして、ドレス店で、
「妹のサイズで肘下が出るドレスが欲しいのです」
「これと、これと、こちらなら合うかと」
「白っぽい黄色にするわ。
これなら腰のリボンで少しキツくしたら大丈夫ね。
持って帰るわ」
「ありがとうございます」
そしてノッティング邸で。
「お姉様!助けて!」
「アリス!どうしたの!」
「妹が鞭で打たれて、」
「何ですって!子狐が!?」
「大分従順になったところで、悩みを吐いたのです。ベス・ロー子爵夫人に王子妃教育といって侮辱されたり鞭で打たれると」
「どうするの」
「明日の午前中、お時間ありますか?」
「私?」
「お姉様に作法を見ていただきたいのです。
お姉様のような貴婦人の作法を見ることができたら、変わると思いますの」
「分かったわ、連れていらっしゃい」
「ありがとうございます。頼りになるお姉様と出会えて幸運ですわ」
「こ、この程度で言い過ぎよ」真っ赤
そして翌日の午前中、ノーティング邸にスーザンを連れて行き、作法を見せてもらった。
エリアーナ様を見たスーザンは目がキラキラしていた。
「美しいですわ」
「エリアーナお姉様は素敵でしょう」
「はい、お姉様」
「お世辞はいいから やってみなさい」
照れたエリアーナ様は一通り見ると、昼食になった。
「いい?カップの熱い場所は分かっているのだから触れなければいいの。あとは持ち方のコツと根性よ。顔は微笑みを崩さないこと」
「はい」
「上私の場合は、手く食べられない菓子は連日出してもらったわ。次第に慣れるし、飽きて他のものが食べたくて頑張ったわ」
「そうしてみます」
「何を言われても顔に出しちゃダメ。相手が喜ぶだけだから。
貴女は侯爵令嬢。いくら頑張ってもロー夫人は今更貴女より上にはなれないの。
いつか王子妃になった時の仕返しを思い浮かべていればいいわ。やられたことも楽しみにかわるから」
「はいっ!」
「エリアーナお姉様、惚れ惚れしますわ」
「っ!」
昼食をご馳走になって王宮へ向かった。
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