【完結】貴方のために涙は流しません

ユユ

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父と継母を領地へ

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翌日は帳簿を見せてもらった。
こっちに保管してある契約書も見せてもらった。

「ハリソン。領地の運営は問題ないと思う?
他に危険な契約書を抱えていたりしていないかしら」

「契約書の方は分かりません。旦那様が増やしてしまいますし、弟君のカルヴィン様には止めようがございませんので」

「そうよね。うちの印章を隠しちゃいましょう。
後はお父様の外出や面会は同伴させましょう。
そして投資や何かの契約は止めてもらいましょう」

「強く言えるでしょうか」

「お父様にはこう言えばいいわ。
“アリス様が知れば侯爵家を失います”と脅してください。出発の時に、お父様には、私に断りもなく署名したら婚約解消を申し出て、二度と侯爵家に戻らないと言えば止めると思うわ。
しかし、あの2人のドレスや装飾品の金額がものすごいわね。
毎年こんな感じ?」

「はい」

「この2人にこんな無駄遣いをされるくらいなら みんなにボーナス出した方が有効的だわ」

「……」

「小さくなったドレスとかはどうしてるの?」

「お部屋をいくつか衣装保管部屋にしておりす」

「2人を昼に食堂に呼んだら閉じ込めてもらえる?
その隙に、2人の専属メイドを担当の部屋に待機させてちょうだい。全て出させて選別するわ」

「かしこまりました」



昼になり、2人が食事をしている隙に まずメイベルの部屋に行った。

「貴女達。メイベル様が選んで着る可能性のあるものをベッドに。小物はソファに。宝石はテーブルに並べてちょうだい。
出されていない物は全て不要なものとして回収します」

「奥様に叱られます」

「矛先は私よ。この整理をしないなら、4人のうち、3人を解雇するわ」

4人は慌てて準備した。
その後、隠してある物はないか他の者達で探させた。

「後から出てきた物も全て指定した場所に移してちょうだい」

「かしこまりました」

そしてメイベルを呼んでこさせた。
その間に、スーザンの部屋でもスーザンの専属メイドに同じことを命じた。

「これは一体なんなの!」

「断捨離です」

「は?」

「社交はほぼ無し。これから領地で暮らすのに不要です。このベッド、ソファ、テーブルに置かれた物の内、三分の一だけ手に取って残していいです。
宝石はもう増やしませんので、転用のきくものを選んだ方がいいですよ。
領地では質素なワンピースドレスを用意します」

「酷いわ」

「支援金の使い込みなのだから全て取り上げても構わないのですよ」

「っ!」

「10分待ちます。自分で選べるのは10分だけ。
さあ、どうぞ」

「せめて七割とか」

「時間は進んでいますからね」

「分かったわよ!」


選ばせたら、他の物は別の場所に移し、選んだ物を収納させた。

同じようにスーザンにも選ばせた。

「スーザン。豪華さで選ぶと笑われるわよ。
ちゃんと着て行く場所や会う人を考えて選ばないと」

「無理よ」

「代わりに選んであげようか?」

「っ!」


選ばせた後の売却予定の品の山を前に 溜息を吐いた。

「ねえ、ハリソン」

「同感です」

「まだ言っていないけど」

「ボーナスありがとうございます」

「……どういたしまして」



さらに翌日。父とメイベルは領地へ旅立った。御者に叔父様宛の手紙を渡したから厳しくしてくれるはず。

そして、10時頃にやってきた買取業者は唖然としていた。

「これ、全部ですか」

「ええ。袖を通していないものはこちらに。袖を通しだけど綺麗なもの、よく見なければ分からない汚れがあるもの、しっかりあるので専門的な染み抜きかリメイクが必要なもの、部品取りになりそうなもので分けてあります。全部お願いします」

「かしこまりました」

 

私はずっと水をガブ飲みしては涙を流してダイヤモンドに変えてきた。正直キツイ。単なる水を大量に飲むなんて。
思っていたより摂取した水が涙に変わらない。
あまり飲み過ぎると中毒になるって聞いたような。
だから根性は出さなくていい。

試しにお茶にしてみたら、お茶色の宝石になった。
今度、オレンジジュースやトマトジュースで試してみようと思う。エメラルドは青汁?スムージー?この世界にそんなものがあるのかしら。


「アリス様、ガーネット家のメイドから返事がありました。少しの時間でよければと書いてあります」

「いつ?」

「今日です」

「直ぐ支度するわ。先触れを出して」

「かしこまりました」

慌ててガーネット家に向かうと執事が対応してくれた。

「アリス・ジオニトロと申します」

「ご案内いたします」


う~ん。歓迎してませんとストレートに出してくるわね。まあ、病床に初対面の小娘がやってきたらそうなるか。

「奥様、お客様をご案内いたしました」

「通してちょうだい」

「初めまして。アリス・ジオニトロと申します」

「シルビア・ガーネットと申します。
ベッドに入ったままでよろしいかしら」

「勿論でございます。
私の連れはローリーと申します。専属メイドです」

「貴女がうちのヘナとやり取りをしたのね。
…それでご用件は何かしら」

「もの凄く大切な相談事がございます。お人払いをしてはいただけませんか」

「……どうせ余命僅かだからいいわ」

溜息を吐きながらメイドを外に出してくれた。

「単刀直入に申し上げます。
病が治ると言ったら、全て秘密を守ることができますか」
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