7 / 72
父と継母を領地へ
しおりを挟む翌日は帳簿を見せてもらった。
こっちに保管してある契約書も見せてもらった。
「ハリソン。領地の運営は問題ないと思う?
他に危険な契約書を抱えていたりしていないかしら」
「契約書の方は分かりません。旦那様が増やしてしまいますし、弟君のカルヴィン様には止めようがございませんので」
「そうよね。うちの印章を隠しちゃいましょう。
後はお父様の外出や面会は同伴させましょう。
そして投資や何かの契約は止めてもらいましょう」
「強く言えるでしょうか」
「お父様にはこう言えばいいわ。
“アリス様が知れば侯爵家を失います”と脅してください。出発の時に、お父様には、私に断りもなく署名したら婚約解消を申し出て、二度と侯爵家に戻らないと言えば止めると思うわ。
しかし、あの2人のドレスや装飾品の金額がものすごいわね。
毎年こんな感じ?」
「はい」
「この2人にこんな無駄遣いをされるくらいなら みんなにボーナス出した方が有効的だわ」
「……」
「小さくなったドレスとかはどうしてるの?」
「お部屋をいくつか衣装保管部屋にしておりす」
「2人を昼に食堂に呼んだら閉じ込めてもらえる?
その隙に、2人の専属メイドを担当の部屋に待機させてちょうだい。全て出させて選別するわ」
「かしこまりました」
昼になり、2人が食事をしている隙に まずメイベルの部屋に行った。
「貴女達。メイベル様が選んで着る可能性のあるものをベッドに。小物はソファに。宝石はテーブルに並べてちょうだい。
出されていない物は全て不要なものとして回収します」
「奥様に叱られます」
「矛先は私よ。この整理をしないなら、4人のうち、3人を解雇するわ」
4人は慌てて準備した。
その後、隠してある物はないか他の者達で探させた。
「後から出てきた物も全て指定した場所に移してちょうだい」
「かしこまりました」
そしてメイベルを呼んでこさせた。
その間に、スーザンの部屋でもスーザンの専属メイドに同じことを命じた。
「これは一体なんなの!」
「断捨離です」
「は?」
「社交はほぼ無し。これから領地で暮らすのに不要です。このベッド、ソファ、テーブルに置かれた物の内、三分の一だけ手に取って残していいです。
宝石はもう増やしませんので、転用のきくものを選んだ方がいいですよ。
領地では質素なワンピースドレスを用意します」
「酷いわ」
「支援金の使い込みなのだから全て取り上げても構わないのですよ」
「っ!」
「10分待ちます。自分で選べるのは10分だけ。
さあ、どうぞ」
「せめて七割とか」
「時間は進んでいますからね」
「分かったわよ!」
選ばせたら、他の物は別の場所に移し、選んだ物を収納させた。
同じようにスーザンにも選ばせた。
「スーザン。豪華さで選ぶと笑われるわよ。
ちゃんと着て行く場所や会う人を考えて選ばないと」
「無理よ」
「代わりに選んであげようか?」
「っ!」
選ばせた後の売却予定の品の山を前に 溜息を吐いた。
「ねえ、ハリソン」
「同感です」
「まだ言っていないけど」
「ボーナスありがとうございます」
「……どういたしまして」
さらに翌日。父とメイベルは領地へ旅立った。御者に叔父様宛の手紙を渡したから厳しくしてくれるはず。
そして、10時頃にやってきた買取業者は唖然としていた。
「これ、全部ですか」
「ええ。袖を通していないものはこちらに。袖を通しだけど綺麗なもの、よく見なければ分からない汚れがあるもの、しっかりあるので専門的な染み抜きかリメイクが必要なもの、部品取りになりそうなもので分けてあります。全部お願いします」
「かしこまりました」
私はずっと水をガブ飲みしては涙を流してダイヤモンドに変えてきた。正直キツイ。単なる水を大量に飲むなんて。
思っていたより摂取した水が涙に変わらない。
あまり飲み過ぎると中毒になるって聞いたような。
だから根性は出さなくていい。
試しにお茶にしてみたら、お茶色の宝石になった。
今度、オレンジジュースやトマトジュースで試してみようと思う。エメラルドは青汁?スムージー?この世界にそんなものがあるのかしら。
「アリス様、ガーネット家のメイドから返事がありました。少しの時間でよければと書いてあります」
「いつ?」
「今日です」
「直ぐ支度するわ。先触れを出して」
「かしこまりました」
慌ててガーネット家に向かうと執事が対応してくれた。
「アリス・ジオニトロと申します」
「ご案内いたします」
う~ん。歓迎してませんとストレートに出してくるわね。まあ、病床に初対面の小娘がやってきたらそうなるか。
「奥様、お客様をご案内いたしました」
「通してちょうだい」
「初めまして。アリス・ジオニトロと申します」
「シルビア・ガーネットと申します。
ベッドに入ったままでよろしいかしら」
「勿論でございます。
私の連れはローリーと申します。専属メイドです」
「貴女がうちのヘナとやり取りをしたのね。
…それでご用件は何かしら」
「もの凄く大切な相談事がございます。お人払いをしてはいただけませんか」
「……どうせ余命僅かだからいいわ」
溜息を吐きながらメイドを外に出してくれた。
「単刀直入に申し上げます。
病が治ると言ったら、全て秘密を守ることができますか」
1,932
お気に入りに追加
2,674
あなたにおすすめの小説

【完結】恨んではいませんけど、助ける義理もありませんので
白草まる
恋愛
ユーディトはヒュベルトゥスに負い目があるため、最低限の扱いを受けようとも文句が言えない。
婚約しているのに満たされない関係であり、幸せな未来が待っているとは思えない関係。
我慢を続けたユーディトだが、ある日、ヒュベルトゥスが他の女性と親密そうな場面に出くわしてしまい、しかもその場でヒュベルトゥスから婚約破棄されてしまう。
詳しい事情を知らない人たちにとってはユーディトの親に非がある婚約破棄のため、悪者扱いされるのはユーディトのほうだった。

(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?
青空一夏
恋愛
エレノアは美しく気高い公爵令嬢。彼女が婚約者に選んだのは、誰もが驚く相手――冴えない平民のデラノだった。太っていて吹き出物だらけ、クラスメイトにバカにされるような彼だったが、エレノアはそんなデラノに同情し、彼を変えようと決意する。
エレノアの尽力により、デラノは見違えるほど格好良く変身し、学園の女子たちから憧れの存在となる。彼女の用意した特別な食事や、励ましの言葉に支えられ、自信をつけたデラノ。しかし、彼の心は次第に傲慢に変わっていく・・・・・・
エレノアの献身を忘れ、身分の差にあぐらをかきはじめるデラノ。そんな彼に待っていたのは・・・・・・
※異世界、ゆるふわ設定。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

【完結】無能に何か用ですか?
凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」
とある日のパーティーにて……
セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。
隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。
だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。
ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ……
主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──
※ご感想・ご意見につきましては、近況ボードをご覧いただければ幸いです。
《皆様のご愛読、誠に感謝致しますm(*_ _)m》

氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

「平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる」
ゆる
恋愛
平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる
婚約者を平民との恋のために捨てた王子が見た、輝く未来。
それは、自分を裏切ったはずの侯爵令嬢の背中だった――。
グランシェル侯爵令嬢マイラは、次期国王の弟であるラウル王子の婚約者。
将来を約束された華やかな日々が待っている――はずだった。
しかしある日、ラウルは「愛する平民の女性」と結婚するため、婚約破棄を一方的に宣言する。
婚約破棄の衝撃、社交界での嘲笑、周囲からの冷たい視線……。
一時は心が折れそうになったマイラだが、父である侯爵や信頼できる仲間たちとともに、自らの人生を切り拓いていく決意をする。
一方、ラウルは平民女性リリアとの恋を選ぶものの、周囲からの反発や王家からの追放に直面。
「息苦しい」と捨てた婚約者が、王都で輝かしい成功を収めていく様子を知り、彼が抱えるのは後悔と挫折だった。
公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】
佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。
異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。
幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。
その事実を1番隣でいつも見ていた。
一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。
25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。
これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。
何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは…
完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる