【完結】騙された? 貴方の仰る通りにしただけですが

ユユ

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ダニエル/騙された!

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【 ダニエルの視点 】


プラチナブロンドの艶やかな髪

アクアマリンの煌めく瞳

引き締まった体に豊かな胸

これがコゼット!?


確かに髪も瞳も姉の王太子妃殿下と色が同じだ。
声もコゼットだ。首元のホクロも。

父上の手紙の内容が本当だったのだと知ったダニエルは怒りが込み上げた。

「コゼット! お前!私を騙していたな!」

「騙す?」

「髪はカツラ!前髪を鬱陶しく伸ばして瞳を隠して!デブはどうした!」

「私の婚約者になんという無礼を!」

「は? 婚約者!? 浮気していたのか!」

「はぁ」

「最初からその姿でいれば!愛人など作らなかった!」

「ダニエル様!?」

「奥方が驚いているではありませんか。言葉を選んだらどうですか」

「何故 騙した!」

「は? 

婚約してくれなきゃ死んでやると言って脅して、仕方なく承諾すると、髪を隠せ、瞳を隠せ、太れ、可愛いドレスを着るなと命じたのは貴方ですけど」

「私が!?」

父上の手紙は全部本当!? ペナルティも?

「フォリー公爵も聞いていらしたから確認なさってください」

「そんなっ」

「私は貴方の脅迫に負けて婚約して、毎日頑張って食べましたわ。なかなか太らずドレスの中に詰め物までして、態々地方からドレスを取り寄せてカツラも特注しましたのに、貴方は再会したデビュータントで私を侮辱しましたわ。

だから意地でもあの姿を続けましたの。
浮気の噂も沢山耳に入りましたから その内 婚約を止めたいと言い出すだろうと待ちましたわ。

高熱で忘れたのは可哀想だけど、だからといって貴方の言動は許されるものではありません」

「コゼット…やり直そう。
子爵夫人より公爵夫人の方がいいだろう?」

「貴方なんてお断りよ」

「寄りを戻せば父上もまた受け入れてくれる。
浮気のことは悪かった。二度としないから。
君だけを大事に愛すると約束するよ」

「結構です。婚姻1ヶ月前に貴族達の前で婚約破棄をした人なんてお断りですわ。
それに妻が妊娠してるのに呆れました」

「ううっ」

「夫人。泣くのはおよしなさい。
被害者のフリなどなさらないで。
貴女は他人の婚約者を奪った加害者じゃない。

婚約者を裏切って破棄して愛人を正妻にしようとするクズを選んだのは貴女よ。
そのクズがクズっぷりを発揮するのは想定内じゃない。

女遊びをする男は油断ならないのも変わらないわ。
そうですわよね?エリック様」

「そ、そうだな。私はコゼット一筋だ」

「トゥローペル夫妻。是非とも私に関わることなく生きてくださいね」

「コゼット…」

「コゼットと呼ばないでもらいたいですわ」



その後、妖精のように愛らしいコゼットは子爵とダンスをしていた。

私と踊ったときとは雲泥の差で、まさに妖精の舞と言いたくなるほどだった。


可愛くて純潔で胸もあると思って選んだミリアは偽物で、醜いデブだと思っていたコゼットはミリアなんか足元にも及ばない可愛く美しい顔と 白く柔らかく揺れる胸を持つ、純潔の乙女だった。

公爵位まで失った。


その夜は王都内の安宿に泊まった。
苛立ちをミリアで発散しようとしたが、ミリアが拒否した。

バシッ!

「キャアッ!」

バシッ!

「止めて!」

「妻の役目は夫の昂りを鎮めることだろう!
取り柄が無いのだからそれくらいしたらどうだ!」

バシッ! バシッ! バシッ! ……

疲れたので叩くのを止めて、ドレスの裾を捲り、コップの水をかけて挿入した。

「痛い…」

「我儘ばかり言っていないで夫を喜ばせたらどうだ!」

「痛い…」

そのまま怒りをぶつけるように乱暴に抱いて発散した。

こんなに濡れているクセに何が“痛い” だ。

あまりにも煩いのでランプを近付けるとミリアは出血し顔色は蒼白だった。

急いで医者を呼んでもらったが、

「流産です。妊娠中に無体なことを働けば子は流れますよ。特に初期は。安静にしなくてはいけない時期なのに正気ですか」


そのままミリアは入院した。

10日後、知らせを受けた男爵が駆けつけた。

「お嬢様はもう子は望めません」

医師が男爵に説明した。

その後は覚えていない。

気が付いたらベッドの上にいた。

医師の説明だと、あの後男爵は私を殴り続けたらしい。

数日後、男爵が病室に現れた。

「事情を話したら王命を取り下げてくださった。
ミリアが子を産んで血を繋ぐことができないからな。
そして離縁も受け入れられた」

「そんな、勝手に!」

「子を殺しておいて? 荷物は持ってきている。置いていくからトゥローペル家の人間に近付くな。
君はもう平民だ。治療費だけは払ったから、自由に生きていけ」

「男爵!」

私が退院する頃には、ミリアは死んでいた。
遺体を乗せて男爵は屋敷に戻ったそうだ。

公爵家に連絡をしてもらったが、他人だと言われたそうだ。行く宛がないと思っていたが兵士達が来て逮捕された。

罪状は妻と胎児を殺した罪だった。

行く宛もないので素直に認めると強制労働所に連れて行かれた。ひたすら石切をさせられた。


ある日、石切場から転落して頭を打った。

思い出した。小さな天使のようなコゼットを。
…いや、思い出した訳ではなく 妄想かもしれない。

そのまま意識が遠退いた。





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