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サヴァン子爵/出会い

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【 エリックの視点 】



以前ほどではないが、夜会で楽しみながら物色をしていた。

ある日 侯爵家の三女が話しかけてきた。
一時間もしないうちに休憩室へ誘われて交わった。
生娘だった。

翌日、父親と共に侯爵令嬢が屋敷に訪れて 私に責任を取れと迫った。

既成事実を作るために誘ったのだと悟った。

『侯爵。お嬢さんから誘ってきたのに責任を取れとはおかしなことです』

『娘は初めてだったんだぞ』

『純潔の乙女が初対面の私に僅か一時間でセックスに誘う事は何とも思わないのでしょうか』

『っ!』

『婚姻は信頼関係が大事です。家に他人を迎えるのですから。
自ら誘って既成事実を作って婚姻を強要するような令嬢を妻には迎えられません』

『断れば良かったじゃないか!』

『その場限りの女として抱いただけです。令嬢はそう扱われても当然と思われる振る舞いをしましたから。目撃者も数人いますが呼びましょうか?醜聞になりますが』

侯爵は悔しそうに帰っていった。


うんざりして暫く誘いに乗らなかった。

二年前、王太子夫妻の婚姻パーティに出席した。
そこには後継者となる予定の令息や婿を取る予定の令嬢が呼ばれていた。次世代の交流のためだ。

皆相手が決まっているので妻にして欲しいという声は掛けられなくて安心していた。

用を足した後、廊下の角で令嬢とぶつかり、倒れそうになった彼女を支えるように抱き寄せた。

『ごめんなさい』

『こちらこそ申し訳ありません』

『お怪我はありませんか』

『ありません。お嬢さんは?』

『ございません。失礼します』

足早に去る彼女の後ろ姿を見つめていた。

体を支えた時の手の感触が人のものではなかった。
髪は錆色なのに睫毛はプラチナブロンド。

会場に戻った後、彼女を探した。

すると王太子夫妻と仲良く会話をしていた。

近くにいた兵士に聞いてみた。

『王太子夫妻と話をなさっているご令嬢はどなたでしょう』

『王太子妃殿下のご令妹のコゼット様です』

『ありがとう』

姉の王太子妃殿下の髪と同じ色の睫毛、同じアクアマリンの瞳。そして少しぽっちゃりしているが、わざわざドレスの下に詰め物をしている。
そしてあの田舎臭いドレス。

王太子妃殿下は何も言わない。
忠告をしないほど仲が悪く見えない。
寧ろ妹を溺愛しているといった感じで愛でている。

王太子妃殿下が彼女の手を繋ぎながら話をして嬉しそうに微笑むからだ。

何か理由があるのは分かった。



その後、調査部門にコゼット嬢のことを調べさせた。

『ご報告を申し上げます。

コゼット・ブラウニー伯爵令嬢は、現在学園の二年生になったばかりです。
成績は良く、人柄も良いとの評価を得ています。

令嬢の容姿にあれこれ陰で言う者もおりますが、令嬢と幼い時に会っている貴族は、姉と同じように可愛かったと証言しております。

王太子妃殿下が溺愛する妹として知られており、妃殿下を寵妃とする王太子殿下も令嬢を可愛がっておられます。

休日は孤児に授業をしているそうです』

『婚約者がいるはずだが』

『はい。フォリー侯爵家の嫡男ダニエル殿です』

『どんな令息だ?』

『それが…他の女性達と関係を持ち、令嬢には冷たく当たっております』

『は? 王太子夫妻のお気に入りをか?』

『はい。ですが王太子夫妻やブラウニー家からフォリー家への咎めは無いようです。静観しています』

あり得ないだろう。
仲の良さは演技か?
いや、親しげに話せばいいだけで、手を握ったり頭を撫でたり抱きしめたり、額に口付けたりする必要はない。

では理由があるのだな。

『孤児に授業とは?』

『女児専用孤児院へ出向き、実用的なことを教えているそうです。
屋敷のメイドを一人か二人連れて、買い物の仕方、平民の雇用主や貴族への立ち振る舞い、ダンスやテーブルマナーなども教えております』

『読み書き計算じゃなくて?』

『メイドには別途手当を出して、子供達の講師をさせているそうです。

読み書き計算は孤児院で教えているので、孤児院を出てからのことを教えようとしているようです』

『テーブルマナーはともかく、ダンスは?』

『ある程度の年齢になるとメイドを目指したいという少女が多いようです。
せめて雇ってもらえる要素を増やそうと、教えているようです。

雇用先の屋敷で子が産まれたら、ダンスの練習相手をするかもしれませんし、テーブルマナーが身に付いていれば、セッティングや、食事中に必要なものを追加で用意する機転をきかせられます。
外出先で同席を求められた場合に雇用側に恥をかかせることもありません。

優秀な少女には一緒に出かけて外の世界を見せるそうです。
強いイメージを与えてもらった少女は寄付してもらった書籍を積極的に読み、勉強するそうです』

『ダニエル・フォリーについて調査してくれ』

『かしこまりました』



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