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解れた心
グローリー邸の朝
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翌朝……というか、使用人も僅かにしか起きていない程の早朝。
「おはようございます。ノアはどこですか」
「……おはよう。まだ寝てる」
「部屋を教えてください」
「まだ寝てる」
応対したのは起こされたマクセルだ。
「それは聞きました。部屋を教えてください」
「女の寝所に乗り込むつもりか」
「女って、俺達は家族みたいなものです。ガブリエルなんか同室でしたし、俺も何回か一緒に寝てますから」
「は!?」
「主人の顔を見ないと落ち着かないんです。
宰相と一緒にしないでください」
宰相にこんな口をきいているのは城出をされたロイクだ。昨夜のうちにマクセルが城に三通手紙を出していた。
国王と宰相補佐と南の塔宛だ。
南の塔には服や靴を届けるように書いた。
その荷物を持ってきたのがロイクだった。
確かに“明日の朝 届けろ”と書いた。時間までは書かなかった。
だが、朝にも限度があるだろうと思っていた。
メイドに案内されたロイクは荷物を下ろし、装備を外し、靴を脱ぎ、ぐっすり眠るノアの隣に横になった。
「勝手に何処かに行くな、馬鹿」
騎士仲間と夜に酒を飲んで帰城して騎士団の部屋に戻ろうとしたらノアが城出したと聞いて酔いが覚めた。
南の塔を隅々まで探したが居なかった。
直ぐ、宰相の屋敷で保護されていると追加の知らせが来て安堵はしたが眠れなかった。
何のつもりでいなくなったのか、原因が分からなくて苛立ちと不安で一杯だった。
横向きで眠るノアを背後から抱き込んだ。
「ん……ロイク?」
「まだ早いから寝てろ」
しっかり抱き込まれて身動きが取れないし、まだ薄暗いから再度寝ることにした。
ノアの髪の匂いを嗅いでいるうちにロイクも寝てしまった。
完全に陽が昇り、メイドがおこしに来た。
「ノア様、おはようございます」
「ん……ロイク」
「起きてます」
「ロイク様、朝のお支度をしますので」
「俺もここで支度するからよろしくお願いします」
「え?」
「すみません。戦地ではこんな感じで共同生活でしたので追い出さなくて大丈夫です」
「かしこまりました」
「寝てたと思っていたのに」
「人が入ってきたら起きるものなんですよ」
「すごい……考えてみたら私も宿で仕事してる時は気を張って寝ていたわ」
「何で城出したんですか」
「やることが無くて退屈だったから」
「それだけですか?」
「うん 」
「どこまで行こうとしたのですか」
「前に働いていた宿は駄目だって言われたから、王都とちょっと郊外の範囲でウロウロしようかなと」
「はあ。心配させないでください」
「ふふっ」
笑い事じゃないと思いながらノアのお腹を優しくトントンし始めた。
「また寝かし付けようとしてる?」
「その方が安心だから」
「ひどい」
食堂に降りて行くとマクセルとクリスがいた。
「息子のクリストファーだ」
「ノアの隊にいるロイクです。ご子息にご挨拶申し上げます」
「!! 」
礼儀正しく挨拶をするロイクにノアが感動すると、
「どんな風に過ごして来たらこの程度でノアがこんなに感激するんだ?ロイク」
「ノア、おかしな顔をしていないで座ってください」
「ロイク卿、かっこいいですね。何だかモテそうですね」
「流石、宰相閣下のご子息。わかりますか?」
「はい、父上と違うようで似たところがある気がします」
「私とロイクがか?」
「説明が難しいのですが目からでてる?」
「目?」
「女性がうっとりします」
「あ~、分かりました。マクセルもロイクも自在に出せる色気がありますからね。
マクセルも」
「父上、モテますからね」
「やっぱりそうですよね」
「ノア、」
「クリス、今日のお忍びはどの辺に行くか考えた?」
「はい。ノアさんが王都散策したことがないと聞きましたので今日は小物を扱うお店が多い場所に行こうと思います」
「クリスは行ったことがあるの?」
「無いです」
「俺にとって王都は庭のようなものですから安心してください。案内できますので」
「ロイクも来るの?」
「目を離すと駄目だということが分かりました」
「大丈夫だから帰って。休暇中じゃない」
「じゃあ、城で大人しくしてくれますか?」
「………」
「昼間遊ばせたら夜は疲れて寝るでしょう」
「子供扱いして」
「城出なんて子供のすることですよ!」
食後は外の広い場所でロイクの訓練に付き合うことにした。
“ちょっと木を焦がしたらすみせん”と言ったら、グローリー家の氷魔法の騎士とバケツに水を用意された。
そしてマクセルが監視している。
「じゃあ、球だすから」
「一つからお願いします。氷 剣!」
「炎 球」
拳より少し小さめの炎の球がロイクに向かうが、ロイクの氷剣で蒸発してしまった。
「少し速度上げるよ~」
「お願いします」
先ほどより速度の上がった炎の球がロイクに向かうが氷剣で蒸発した。
「ずらして二つ~」
「お願いします」
ボッ、 ボッ
ジュッ、 ジュッ
1秒あけて二つ目の炎の球を出したが氷剣で蒸発した。
「おはようございます。ノアはどこですか」
「……おはよう。まだ寝てる」
「部屋を教えてください」
「まだ寝てる」
応対したのは起こされたマクセルだ。
「それは聞きました。部屋を教えてください」
「女の寝所に乗り込むつもりか」
「女って、俺達は家族みたいなものです。ガブリエルなんか同室でしたし、俺も何回か一緒に寝てますから」
「は!?」
「主人の顔を見ないと落ち着かないんです。
宰相と一緒にしないでください」
宰相にこんな口をきいているのは城出をされたロイクだ。昨夜のうちにマクセルが城に三通手紙を出していた。
国王と宰相補佐と南の塔宛だ。
南の塔には服や靴を届けるように書いた。
その荷物を持ってきたのがロイクだった。
確かに“明日の朝 届けろ”と書いた。時間までは書かなかった。
だが、朝にも限度があるだろうと思っていた。
メイドに案内されたロイクは荷物を下ろし、装備を外し、靴を脱ぎ、ぐっすり眠るノアの隣に横になった。
「勝手に何処かに行くな、馬鹿」
騎士仲間と夜に酒を飲んで帰城して騎士団の部屋に戻ろうとしたらノアが城出したと聞いて酔いが覚めた。
南の塔を隅々まで探したが居なかった。
直ぐ、宰相の屋敷で保護されていると追加の知らせが来て安堵はしたが眠れなかった。
何のつもりでいなくなったのか、原因が分からなくて苛立ちと不安で一杯だった。
横向きで眠るノアを背後から抱き込んだ。
「ん……ロイク?」
「まだ早いから寝てろ」
しっかり抱き込まれて身動きが取れないし、まだ薄暗いから再度寝ることにした。
ノアの髪の匂いを嗅いでいるうちにロイクも寝てしまった。
完全に陽が昇り、メイドがおこしに来た。
「ノア様、おはようございます」
「ん……ロイク」
「起きてます」
「ロイク様、朝のお支度をしますので」
「俺もここで支度するからよろしくお願いします」
「え?」
「すみません。戦地ではこんな感じで共同生活でしたので追い出さなくて大丈夫です」
「かしこまりました」
「寝てたと思っていたのに」
「人が入ってきたら起きるものなんですよ」
「すごい……考えてみたら私も宿で仕事してる時は気を張って寝ていたわ」
「何で城出したんですか」
「やることが無くて退屈だったから」
「それだけですか?」
「うん 」
「どこまで行こうとしたのですか」
「前に働いていた宿は駄目だって言われたから、王都とちょっと郊外の範囲でウロウロしようかなと」
「はあ。心配させないでください」
「ふふっ」
笑い事じゃないと思いながらノアのお腹を優しくトントンし始めた。
「また寝かし付けようとしてる?」
「その方が安心だから」
「ひどい」
食堂に降りて行くとマクセルとクリスがいた。
「息子のクリストファーだ」
「ノアの隊にいるロイクです。ご子息にご挨拶申し上げます」
「!! 」
礼儀正しく挨拶をするロイクにノアが感動すると、
「どんな風に過ごして来たらこの程度でノアがこんなに感激するんだ?ロイク」
「ノア、おかしな顔をしていないで座ってください」
「ロイク卿、かっこいいですね。何だかモテそうですね」
「流石、宰相閣下のご子息。わかりますか?」
「はい、父上と違うようで似たところがある気がします」
「私とロイクがか?」
「説明が難しいのですが目からでてる?」
「目?」
「女性がうっとりします」
「あ~、分かりました。マクセルもロイクも自在に出せる色気がありますからね。
マクセルも」
「父上、モテますからね」
「やっぱりそうですよね」
「ノア、」
「クリス、今日のお忍びはどの辺に行くか考えた?」
「はい。ノアさんが王都散策したことがないと聞きましたので今日は小物を扱うお店が多い場所に行こうと思います」
「クリスは行ったことがあるの?」
「無いです」
「俺にとって王都は庭のようなものですから安心してください。案内できますので」
「ロイクも来るの?」
「目を離すと駄目だということが分かりました」
「大丈夫だから帰って。休暇中じゃない」
「じゃあ、城で大人しくしてくれますか?」
「………」
「昼間遊ばせたら夜は疲れて寝るでしょう」
「子供扱いして」
「城出なんて子供のすることですよ!」
食後は外の広い場所でロイクの訓練に付き合うことにした。
“ちょっと木を焦がしたらすみせん”と言ったら、グローリー家の氷魔法の騎士とバケツに水を用意された。
そしてマクセルが監視している。
「じゃあ、球だすから」
「一つからお願いします。氷 剣!」
「炎 球」
拳より少し小さめの炎の球がロイクに向かうが、ロイクの氷剣で蒸発してしまった。
「少し速度上げるよ~」
「お願いします」
先ほどより速度の上がった炎の球がロイクに向かうが氷剣で蒸発した。
「ずらして二つ~」
「お願いします」
ボッ、 ボッ
ジュッ、 ジュッ
1秒あけて二つ目の炎の球を出したが氷剣で蒸発した。
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