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エストフラムへの復讐

四人目の女の失脚

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ビクトルの父である騎士団長が罪状を読み上げる。

「デティアン伯爵家は屋敷のある街と隣接した町と結託し、裕福な平民と思わしき者達を人目のつかない道で襲い金品を巻き上げ、男は殺し、女は兵士達の欲の解消にあてがっていた。

証拠の品から、余罪は少なくない。

今回確定した罪状はファヴール国王陛下、フロワ王国の伯爵令嬢、ファヴールとフロワの騎士達の誘拐、監禁、金品の強奪、夫人による伯爵令嬢への暴行及び強姦未遂の罪が確定しております」

「デティアン伯爵、何かあるか」

「陛下、不在中のことで何が何やら」

「私は、夫の愛人を捕えて懲らしめようとしただけでございます」

「私に愛人はいない!」

「この娘に聞いたのよ!どこで会ったのか何と言われたのかってね!

王宮で会って、ダンスをしたと言っていたわ!」

「馬鹿か!そちらのご令嬢はファヴール国王陛下のパートナーで、パーティに出席されてダンスを踊られておられたが私などお相手してもらえるわけがない!」

「あなたの子を妊娠してるって…」

「そんな訳があるか!妊娠が判明するのに3カ月、早くて2カ月か?
令嬢は学校へ通う為に来たばかりだ。2カ月経つか経たないかといったところだろう。

エストフラムに来てすぐ関係を持ったというのか!?
私は領地を出ていないぞ」

「私はノエリア様の護衛騎士ですが、エストフラムに来て、王都から出たのは今日が初めてです。滞在先はホテルなので面会記録があるはずです。今日迎えにこられたミシェル国王陛下しか記録がないはずです」

「だって!“既婚者と”と非難したら認めたもの!」

「発言をいいですか」

「ノエリア、申してみよ」

「私、陛下のことを聞かれていると思って返事をしたのです。陛下への贈り物を買いにミシェル様にお付き合いいただき、あの町へ行ったので、そのことを問われているのかと。

バングルに“偉大なジェイムズへ”と彫ってもらったのです。グスン」

「確かに、私も見ました。ノエリアは嬉しそうにジェイムズ国王への贈り物を一生懸命選んでいました。

押収物の中にあります。黄色い包みなので小さくてもすぐに分かると思います」

「可愛いノエリア、可哀想に。
押収物から黄色い包みの物を持ってきてくれ!」

団長が縛られた若い兵士に剣を突きつけると尋問が始まった。

「いつから勤めているんだ」

「よ、4カ月前です」

「強奪は?」

「命じられて参加しましたが、私はまだ信用がありませんので、運ぶ係です」

「殺したか?」

「いえ。隊長の許可がないので雑用のままです。女性にも手を出していません」

「仕組みは?」

「隣町から早馬が来ると人数に応じた隊を組みます。そして人目のない道で待ち伏せて襲うのです。

男は殺し、女は生かして屋敷の離れに。そして金品と馬を奪います。

金品は参加した兵士達にも配られます。
女は初日に隊長を含む上の者数名で楽しみます。その後は順番に回ってきて、回り終えたら壊れるまでヤりたい者がヤります。

執事も、側近も、侍従もです。
ただし、一年未満の使用人と、僕のような雑用兵士はヤれません。

夫人がいない時は伯爵様も加わります」

「あなた!!」

伯爵は怒る夫人から顔を背けた。

団長はもう一人の兵士に剣を突き付けた。

「今回男達を生かしたのは何故だ」

「伯爵様の部下のようでしたので、手が出せませんでした」

「で、あちらのご令嬢を伯爵の愛人だと勘違いしたのだな」

「はい。そう店主から伝達がありましたので。しかも伯爵の子を孕んでいるということでしたので。

夫人は怒り狂って屋敷の者全員に“これから使用人専用の娼婦を連れてくるから伯爵にバレないように”と仰って、兵士達と出発なさいました」

「お前は?」

「今日はクジで外れて留守番になりました」

「何年続けているんだ」

「20年以上です。先代の時にはもう始まっておりました」

その発言に国王は頭を抱えた。

「あの、陛下、この事件が有耶無耶になるようなことをご夫人が口にされたようですが」

ノエリアが火の粉を注ぐ。

「どういうことだ」

そこでミシェルの護衛騎士が発言をした。

「こちらのご夫人が、エストフラムの宰相が後ろ盾だと仰ったのです。
“デティアン伯爵家にはシュートウェル家が着いている”と」

「確かにそう叫んでおられました」

エイダンがダメ押しをした。

ジェイムズが宰相の方へ顔を向けた。

「宰相、どういうことだ」

「シュートウェル家は加担しておりませんし把握もしておりません。
彼女は父の弟の娘で、従妹にあたります。
それだけです」

「名を使われたと言うことか?」

「はい」

「団長、今すぐ宰相の屋敷に調査を入れろ。領地の方も徹底的にやってくれ。潔白を証明しなくてはならない」

「領地は王宮ここから遠いのですか」

ミシェルの問いに団長が答える。

「はい。馬車で5日程かかります」

「では、うちの騎士二人にタウンハウスの方を立ち合わせてくれ。その権利はあるはずだ」

「団長、ファヴール王国の騎士を二人お連れしろ。しっかりと見てもらってくれ」

「かしこまりました。では、失礼します」

団長は部下達を残してファヴールの騎士と部屋を去った。

同時に侍従が黄色い包みの箱を持ってきた。

「ノエリア、これか?」

「はい陛下。そのはずです。開けてください」

包みを開けると国王の名が刻まれたバングルが出てきた。

「確かに私宛の贈り物だ。ノエリア、とても嬉しいよ。私は君に何も用意していないというのに」

「私がいけなかったのです。陛下のお言葉に心浮かれて、お土産を探していたミシェル国王陛下を誘って、ジェイムズ国王陛下への贈り物を買いに行ってしまったから。

ごめんなさい。有名だと聞いてつい。
ミシェル国王陛下にもお詫び申し上げます」

「私が着いて行きたいと言ったのだ。
土産を買いたくてお忍びにしてしまった。
予定を組んだ行動だったら狙われることは無かっただろう」

「ミシェル国王にもノエリアにも非はありません。エストフラムはどうお詫びをしたらよいものか」

「私は縛られただけです。それより殴られて辱めを受けかけたのはノエリアです。
倒れた時に手足も擦りむいたことでしょう」

「隣の部屋に医師を呼べ!
何てことだ!怪我をしていたとは!」

ジェイムズは慌ててノエリアの元へ駆け寄ると膝をつき、手を取った。

「大したことはありません。陛下」

「望みはないか?何でも言ってくれ」

ノエリアはモジモジしながら答えた。

「贈り物を身に付けてくださったら嬉しいです」

「何て可愛いのだ!気が利かない私を許しておくれ。今すぐつけるからな!」

玉座に戻りバングルをつけた。

ノエリアが微笑みでジェイムズが胸の高鳴りを早めた頃に診察のため、ノエリアは部屋を出た。










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