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10年後/最終話
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夫ユリウスと妻エヴリンの間には長男と長女が生まれた。そして今日、次男が産まれた。
長男シオン・セロー、9歳。
長女リアナ・セロー、6歳。
次男クリス・セロー、産まれたて。
リ「弟?妹が欲しかった」
ユ「こら、リアナ」
ユリウスが抱っこしているリアナは妹が産まれるよう祈っていた。
シ「これで僕はどちらを継ぐのか選べるのですね?」
私「まだいいのよ?縁戚から養子も取れるし」
シ「いえ。僕はランドール家の跡継ぎになります。セロー家はクリスに任せます」
ユ「嬉しさと悲しさが入り混じるな」
セロー家の長男が母親の実家を継ぎたいと言い出すのは、まるでセロー家に魅力がないと言っているように感じる。せめて迷うフリでもしてくれたら良かったのに。
だけど、気持ち良くランドール家を継ぐと言ってくれてとてもありがたい。
お父様も喜んでさらに可愛がることだろう。
お父様は孫達を溺愛しているから。
私も相変わらず可愛がられている。シオンやリオナに負けまいと争奪戦になってお母様に呆れられていた。
お父様は子供の心を掴むのが得意なのかもしれない。
セロー公爵は寂しそうだから、シオンにセロー公爵がいるときは気をつかってとお願いしている。そろそろリオナにも気をつかってもらえるだろうか。
まあ、シオンがランドール家を継ぐなら、クリスはセロー公爵に懐くように仕向けたい。
ゼイン様も3人の子持ちだ。子供達と奥様を連れて里帰りを何度かしている。
奥様はゼイン様より一つ歳上の美人だ。
ローゼは男児を一人産んだ後、避妊している。
出血も多く難産だったので、ローゼの命を優先した。次も難産だとは限らないけど、ローゼの旦那様が作りたくないと譲らない。
妾を迎えるか悩んだけど、その子が元気に育っているので現状維持になっている。
翌日、見舞いと祝いに訪れたお父様とお母様は大喜びだ。
「まあ、男の子が産まれたのね」
「はい」
「養子も検討していたが…
それで、クリスがうちに来るのか?」
「お祖父様、僕がランドール家を継ぎます」
「シオンが?…だが」
「父上は、弟が産まれたら 僕が選んでいいと仰いました。だから僕はシオン・ランドールになります」
「そうか。嬉しいよ」
「ありがとう、シオン」
お父様とお母様はシオンにメロメロだ。
孫が自らランドールを継ぎたいと申し出たのだから。
「私も…」
「こら、エヴリン。君は駄目だ」
「私は永遠にお父様の愛娘なの」
「もちろんそうだが私の最愛の妻でもあるんだぞ?」
「父上は本当に母上が大好きですね」
「そうだよ シオン。私はエヴリンが大好きなんだ」
「私もユリウスが大好きよ」
「僕もお父様とお母様みたいになれるように素敵なお嫁さんをそろそろ見つけたいです」
「シオンにも見つかるわよ。だけど忘れないで。誠実さと思いやりと相談よ。自分の気持ちを言葉にして相談という方法で相手に伝えるのよ」
「はい」
シオンには、私とゼイン様の話をしたことがある。
不安を伝えずに我慢した結果 拗れてしまったゼイン様のこと、ゼイン様の胸の支えに気付かずに悪化させてしまった私のことを。
シオン達にも シオン達の愛する人にも、あんなことが起きて欲しくない。
ユリウス様は婚約後、私が学生の間にランドール邸に来てはランドール家の仕事を父から教わっていた。
跡継ぎである私を奪い、産まれるか分からない未来の子孫にランドール家を継がせるという方法を取らせてしまう代わりに、ユリウスがランドール家のサポートもするという提案を出した。
セロー公爵より父ランドール伯爵の方が若いことが決め手だった。二人とも健康なら若い方が時間に余裕がある。子が産まれて成長するまで待てるだろうということだ。
無事に長男が手を挙げたのでホッとしている。
ちなみに、王女殿下は…
『やってくれたわね、ユリウス。この私を騙すだなんて』
昔、王女殿下の嫁入り先の選定で、極度のマザコン×シスコンを演じて縁談を回避された(つまり騙された)ことに王女殿下は気付いてしまった。お披露目パーティでゴートベル侯爵家の長男アレックスの元へ嫁いでいた王女殿下に問い詰められたのだ。
『騙しておりません。私以上にエヴリンが可愛くて、私を含めたセロー家一同がエヴリンに夢中になっただけです』
『ふん。まあいいわ。アレックスの方が好みだから』
『それは素敵な出会いをなさったようで』
『なんか腹が立つわね』
といった感じでお許しいただいた?ようで、時々遊びに来るようになった。
残念ながら子には恵まれていない。
仕方なく妾を迎えたが一人目も二人目も孕まず、問題は夫側にあることが分かり断念。
アレックス様は酷く落ち込んだ。
自分に子孫を残す能力が無いこと以上に、妻を傷付けた自分が許せなかったのだ。
妾を迎えるということは、妻の不妊を公表することにもなるからだ。自分のせいなのに長い間 妻に辛い思いをさせたことを悔いていた。
一日中テラスやバルコニーでボーッと座ってることが多くなり、領地で療養することになった。
だが、父親はこのままでは跡継指名を変えなくてはならないと考えていた。ボーッとして何もできない男にゴートベル家を渡せないからだ。別の跡継ぎを検討するなら教育のこともあるから長くは待ってやれない。
『傷付けたと悔やむのはいいとして、何故傷付けたと思っているおまえが傷付いた妻に気を遣わせるのだ?しかも王女を娶っておいて跡継指名を返上するつもりか?王女はいくつだと思っているんだ。もう後戻りなど出来ないのだぞ?
いい加減、傷付けた妻に寄り添って 夫として挽回したらどうだ。妻を笑顔にすることがおまえの薬にもなるはずだ』
そう言われて、妻と顔をあわせた。
理由を付けて向き合うことから逃げていたのだと悟ったアレックスは妻にしっかりと謝罪をした。
それ以来、二人は互いに寄り添う仲睦まじい夫婦として認知されることになった。
「ベストカップル?アレックスと君が?」
「そうよ。新聞社が取材に来たの」
遠慮のない態度でユリウスはアレックスの妻に聞き返した。
「三流記者だな。私とエヴリンは殿堂入りでもしたのか?」
「片方の溺愛だけじゃ駄目なのよ」
「そんなことは無いぞ?この間、エヴリンがケーキを食べさせてくれたのを見ただろう?」
「単に食べきれなくてユリウスの口の中に入れただけじゃないの」
「違う。あれは愛情表現だ。そうだよね?エヴリン」
「ん?…うん」
次はもっと上手くやろうとエヴリンは考えていた。
【 完結 】
長男シオン・セロー、9歳。
長女リアナ・セロー、6歳。
次男クリス・セロー、産まれたて。
リ「弟?妹が欲しかった」
ユ「こら、リアナ」
ユリウスが抱っこしているリアナは妹が産まれるよう祈っていた。
シ「これで僕はどちらを継ぐのか選べるのですね?」
私「まだいいのよ?縁戚から養子も取れるし」
シ「いえ。僕はランドール家の跡継ぎになります。セロー家はクリスに任せます」
ユ「嬉しさと悲しさが入り混じるな」
セロー家の長男が母親の実家を継ぎたいと言い出すのは、まるでセロー家に魅力がないと言っているように感じる。せめて迷うフリでもしてくれたら良かったのに。
だけど、気持ち良くランドール家を継ぐと言ってくれてとてもありがたい。
お父様も喜んでさらに可愛がることだろう。
お父様は孫達を溺愛しているから。
私も相変わらず可愛がられている。シオンやリオナに負けまいと争奪戦になってお母様に呆れられていた。
お父様は子供の心を掴むのが得意なのかもしれない。
セロー公爵は寂しそうだから、シオンにセロー公爵がいるときは気をつかってとお願いしている。そろそろリオナにも気をつかってもらえるだろうか。
まあ、シオンがランドール家を継ぐなら、クリスはセロー公爵に懐くように仕向けたい。
ゼイン様も3人の子持ちだ。子供達と奥様を連れて里帰りを何度かしている。
奥様はゼイン様より一つ歳上の美人だ。
ローゼは男児を一人産んだ後、避妊している。
出血も多く難産だったので、ローゼの命を優先した。次も難産だとは限らないけど、ローゼの旦那様が作りたくないと譲らない。
妾を迎えるか悩んだけど、その子が元気に育っているので現状維持になっている。
翌日、見舞いと祝いに訪れたお父様とお母様は大喜びだ。
「まあ、男の子が産まれたのね」
「はい」
「養子も検討していたが…
それで、クリスがうちに来るのか?」
「お祖父様、僕がランドール家を継ぎます」
「シオンが?…だが」
「父上は、弟が産まれたら 僕が選んでいいと仰いました。だから僕はシオン・ランドールになります」
「そうか。嬉しいよ」
「ありがとう、シオン」
お父様とお母様はシオンにメロメロだ。
孫が自らランドールを継ぎたいと申し出たのだから。
「私も…」
「こら、エヴリン。君は駄目だ」
「私は永遠にお父様の愛娘なの」
「もちろんそうだが私の最愛の妻でもあるんだぞ?」
「父上は本当に母上が大好きですね」
「そうだよ シオン。私はエヴリンが大好きなんだ」
「私もユリウスが大好きよ」
「僕もお父様とお母様みたいになれるように素敵なお嫁さんをそろそろ見つけたいです」
「シオンにも見つかるわよ。だけど忘れないで。誠実さと思いやりと相談よ。自分の気持ちを言葉にして相談という方法で相手に伝えるのよ」
「はい」
シオンには、私とゼイン様の話をしたことがある。
不安を伝えずに我慢した結果 拗れてしまったゼイン様のこと、ゼイン様の胸の支えに気付かずに悪化させてしまった私のことを。
シオン達にも シオン達の愛する人にも、あんなことが起きて欲しくない。
ユリウス様は婚約後、私が学生の間にランドール邸に来てはランドール家の仕事を父から教わっていた。
跡継ぎである私を奪い、産まれるか分からない未来の子孫にランドール家を継がせるという方法を取らせてしまう代わりに、ユリウスがランドール家のサポートもするという提案を出した。
セロー公爵より父ランドール伯爵の方が若いことが決め手だった。二人とも健康なら若い方が時間に余裕がある。子が産まれて成長するまで待てるだろうということだ。
無事に長男が手を挙げたのでホッとしている。
ちなみに、王女殿下は…
『やってくれたわね、ユリウス。この私を騙すだなんて』
昔、王女殿下の嫁入り先の選定で、極度のマザコン×シスコンを演じて縁談を回避された(つまり騙された)ことに王女殿下は気付いてしまった。お披露目パーティでゴートベル侯爵家の長男アレックスの元へ嫁いでいた王女殿下に問い詰められたのだ。
『騙しておりません。私以上にエヴリンが可愛くて、私を含めたセロー家一同がエヴリンに夢中になっただけです』
『ふん。まあいいわ。アレックスの方が好みだから』
『それは素敵な出会いをなさったようで』
『なんか腹が立つわね』
といった感じでお許しいただいた?ようで、時々遊びに来るようになった。
残念ながら子には恵まれていない。
仕方なく妾を迎えたが一人目も二人目も孕まず、問題は夫側にあることが分かり断念。
アレックス様は酷く落ち込んだ。
自分に子孫を残す能力が無いこと以上に、妻を傷付けた自分が許せなかったのだ。
妾を迎えるということは、妻の不妊を公表することにもなるからだ。自分のせいなのに長い間 妻に辛い思いをさせたことを悔いていた。
一日中テラスやバルコニーでボーッと座ってることが多くなり、領地で療養することになった。
だが、父親はこのままでは跡継指名を変えなくてはならないと考えていた。ボーッとして何もできない男にゴートベル家を渡せないからだ。別の跡継ぎを検討するなら教育のこともあるから長くは待ってやれない。
『傷付けたと悔やむのはいいとして、何故傷付けたと思っているおまえが傷付いた妻に気を遣わせるのだ?しかも王女を娶っておいて跡継指名を返上するつもりか?王女はいくつだと思っているんだ。もう後戻りなど出来ないのだぞ?
いい加減、傷付けた妻に寄り添って 夫として挽回したらどうだ。妻を笑顔にすることがおまえの薬にもなるはずだ』
そう言われて、妻と顔をあわせた。
理由を付けて向き合うことから逃げていたのだと悟ったアレックスは妻にしっかりと謝罪をした。
それ以来、二人は互いに寄り添う仲睦まじい夫婦として認知されることになった。
「ベストカップル?アレックスと君が?」
「そうよ。新聞社が取材に来たの」
遠慮のない態度でユリウスはアレックスの妻に聞き返した。
「三流記者だな。私とエヴリンは殿堂入りでもしたのか?」
「片方の溺愛だけじゃ駄目なのよ」
「そんなことは無いぞ?この間、エヴリンがケーキを食べさせてくれたのを見ただろう?」
「単に食べきれなくてユリウスの口の中に入れただけじゃないの」
「違う。あれは愛情表現だ。そうだよね?エヴリン」
「ん?…うん」
次はもっと上手くやろうとエヴリンは考えていた。
【 完結 】
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