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驚くゼイン様に続けて問い詰めた。
「私に愛してると言ったその数時間後にカレス嬢とデートに出掛けて馬車の中で交わって、翌日にはまた私に愛してると言うなんて…私のことを簡単に騙せる馬鹿だと思ったからでしょう?」
「違う!愛しているのはエヴリンだけだ!」
「あなたの愛は他の女性と食事や観劇に行くことですか」
「二度としない!だから忘れてやり直してくれ!」
「あなたみたいな人は結婚した後も浮気します」
「しない!」
「私はもうあなたに髪の毛一本触れられるのも嫌なのです。愛の言葉も聞きたくありません」
「今は冷静になれないだけだ。エヴリンは私のことが好きだっただろう?」
「それが分かっているのに傷付けたのですね」
「ゼイン殿、他の女性と何度も関係を持ったことに変わりはない。そもそもこの婚約は君が望んだことだろう。解消して好きなだけ他の女と遊べばいい」
「エヴリンと別れるつもりはありません!」
「娘は君のことを生理的に受け付けないと言っているんだ」
「伯爵…」
「エヴリン、伯爵、愚息が誤ちをおかしました。ですが一度だけチャンスをいただけませんか」
「侯爵、交わっている様を目撃してしまっては無理ですよ」
「少し時間を置いて冷静に話し合いましょう」
「時間を置いても同じだと思いますが 2週間待ってもエヴリンの解消の気持ちが変わらなければ、応じてください。応じてくださらないのであれば破棄の手続きを取ります」
「伯爵、待ってください!本当に魔がさしただけなんです!もうしません!
エヴリン、お願いだ。今まで一度も問題は無かっただろう?」
「この報告書によると、ゼイン様が誘ってカレス嬢と会うことが何度もあったようですが、それでも魔がさしたと主張なさるのですね?」
「そうだよ。彼女に対して気持ちなど無い。私はエヴリンだけを愛しているんだ」
「私はゼイン様と婚約したことを激しく後悔しています。
すっかりカレス邸に行き慣れたようですから、そのままカレス子爵家に婿入りなされはよろしいのではありませんか?」
「エヴリン、許してくれ。カレス嬢ときちんと別れるし、二度としないから」
「カレス嬢と別れようと信用できませんし、もうゼイン様に触れられたくないのです」
「今は動揺しているからそう感じるんだ。落ち着くまで触れないから。落ち着けば、またやり直せる。今まで以上に大事にするから」
「騙して裏切った側はそう思うかもしれないが、された側は傷付いているのだよ、ゼイン殿。
これ以上は意味がない。さあ、帰ろう エヴリン」
「ゼイン様、もう教室へは来ないでください」
「エヴリン!」
「申し訳ありません、なんとか愚息にチャンスを与えてください」
「エヴリン、ごめんなさいね。また話し合いましょう」
「とにかくゼイン殿を娘に近付けないでください。失礼します」
お父様は私の肩に手を回しキューレイ邸から連れ出してくれた。
「ありがとうございます、お父様」
「さあ、パメラが待っているから帰ろう」
翌朝。
「おはよう、エヴリン」
「おはよう、ローゼ」
「解消できたの?」
「2週間経って、それでも解消しないなら破棄の手続きをする予定よ」
「そっか。疲れているみたいね」
「話し合いをして帰って 夕食後は彼から貰ったものを全て集めて箱詰めにしたの。ドレスも何もかも全部。子どもの頃からだから結構な量になったわ」
「じゃあ、恋人も作れるわね」
「え?」
「婚約者がいなくなるのよ?恋愛したっていいじゃない」
「そうかなぁ」
「プラトニックな恋愛でも、ドップリ浸かった恋愛でも好きにすればいいのよ。エヴリンは婿をもらう立場なんだから。
それに、失恋を忘れるには新たな恋愛が一番だって言うじゃない」
「出会いがあったらね」
「出会いなんて探しに行くのよ。良さそうなパーティがあったら一緒に行かない?」
「一緒に?婚約者に怒られるわよ?」
「ちゃんと話してから行くわ」
授業を受けながらローゼの言ったことを考えていた。
彼の浮気を見て 常習性を知ってショックが大きかった。
現場を見てしまったこともあるし、裏切られた悲しさや騙された悔しさでいっぱいで、好きだったから辛かった。
だけど、彼の主張を聞いているうちに悲しみという感情は消えて、呆れる気持ちに変わった。
彼自身が あの主張が通じると本気で思っているところに引いた。
どうぞカレス家で引き取ってくださいという気持ちでいるのは強がりではない。
魔がさしていると言えば許されると思っているのなら、私も魔をさしてもいいのでは?
授業が終わり、帰り支度をしていた。
「エヴリン、キューレイ様よ」
「え?」
振り向くといつものように廊下から教室にいる私に向かって微笑みを向けていた。
「私が追い払ってくる」
「ローゼ、私が行くわ」
「せめて付き添わせて」
「ありがとう」
ここで追い払わないと馬車まで着いてきてしまう。
仕方なく出入口に近寄った。
「何のご用でしょう」
「2人で話したいんだ。君、外してくれないか」
「彼女は私が頼んで付き添ってもらっているのです。手短にお話ししてください」
「エヴリン、ゆっくり2人で話そう。
週末はデートをしよう。
誤解も解けて元の2人に戻れるはずだ」
「誤解? あなたの左手が彼女の胸を掴んでいたのは誤解?」
「い、いや…」
「2人がキスをしていたのも誤解?」
「それは、」
「あなたの上で腰を振っていた彼女も誤解?」
「……」
「あなた達は婚約者がいるのに観劇と食事と性交渉をしたけど、それは誤解だと言うのですか?」
「……」
「私の気持ちが戻ることはありません」
「試してみなくては分からないだろう」
「分かります。もう解消を申し入れたのですから会いに来ないでください」
「私達の婚約は昨日今日のものではない。
他の女に気持ちを寄せたのなら分かるが、ただの浮気じゃないか。どの男もやっていることだ。
こんなことで騒いでいては一生一人だぞ」
「価値観も違うのですね」
「キューレイ様、ここは2年生のフロアです。早く立ち去らないと警備を呼びますよ」
「エヴリン、また来る」
「来ないでください!」
彼が立ち去ると、2人で溜息を吐いた。
「私に愛してると言ったその数時間後にカレス嬢とデートに出掛けて馬車の中で交わって、翌日にはまた私に愛してると言うなんて…私のことを簡単に騙せる馬鹿だと思ったからでしょう?」
「違う!愛しているのはエヴリンだけだ!」
「あなたの愛は他の女性と食事や観劇に行くことですか」
「二度としない!だから忘れてやり直してくれ!」
「あなたみたいな人は結婚した後も浮気します」
「しない!」
「私はもうあなたに髪の毛一本触れられるのも嫌なのです。愛の言葉も聞きたくありません」
「今は冷静になれないだけだ。エヴリンは私のことが好きだっただろう?」
「それが分かっているのに傷付けたのですね」
「ゼイン殿、他の女性と何度も関係を持ったことに変わりはない。そもそもこの婚約は君が望んだことだろう。解消して好きなだけ他の女と遊べばいい」
「エヴリンと別れるつもりはありません!」
「娘は君のことを生理的に受け付けないと言っているんだ」
「伯爵…」
「エヴリン、伯爵、愚息が誤ちをおかしました。ですが一度だけチャンスをいただけませんか」
「侯爵、交わっている様を目撃してしまっては無理ですよ」
「少し時間を置いて冷静に話し合いましょう」
「時間を置いても同じだと思いますが 2週間待ってもエヴリンの解消の気持ちが変わらなければ、応じてください。応じてくださらないのであれば破棄の手続きを取ります」
「伯爵、待ってください!本当に魔がさしただけなんです!もうしません!
エヴリン、お願いだ。今まで一度も問題は無かっただろう?」
「この報告書によると、ゼイン様が誘ってカレス嬢と会うことが何度もあったようですが、それでも魔がさしたと主張なさるのですね?」
「そうだよ。彼女に対して気持ちなど無い。私はエヴリンだけを愛しているんだ」
「私はゼイン様と婚約したことを激しく後悔しています。
すっかりカレス邸に行き慣れたようですから、そのままカレス子爵家に婿入りなされはよろしいのではありませんか?」
「エヴリン、許してくれ。カレス嬢ときちんと別れるし、二度としないから」
「カレス嬢と別れようと信用できませんし、もうゼイン様に触れられたくないのです」
「今は動揺しているからそう感じるんだ。落ち着くまで触れないから。落ち着けば、またやり直せる。今まで以上に大事にするから」
「騙して裏切った側はそう思うかもしれないが、された側は傷付いているのだよ、ゼイン殿。
これ以上は意味がない。さあ、帰ろう エヴリン」
「ゼイン様、もう教室へは来ないでください」
「エヴリン!」
「申し訳ありません、なんとか愚息にチャンスを与えてください」
「エヴリン、ごめんなさいね。また話し合いましょう」
「とにかくゼイン殿を娘に近付けないでください。失礼します」
お父様は私の肩に手を回しキューレイ邸から連れ出してくれた。
「ありがとうございます、お父様」
「さあ、パメラが待っているから帰ろう」
翌朝。
「おはよう、エヴリン」
「おはよう、ローゼ」
「解消できたの?」
「2週間経って、それでも解消しないなら破棄の手続きをする予定よ」
「そっか。疲れているみたいね」
「話し合いをして帰って 夕食後は彼から貰ったものを全て集めて箱詰めにしたの。ドレスも何もかも全部。子どもの頃からだから結構な量になったわ」
「じゃあ、恋人も作れるわね」
「え?」
「婚約者がいなくなるのよ?恋愛したっていいじゃない」
「そうかなぁ」
「プラトニックな恋愛でも、ドップリ浸かった恋愛でも好きにすればいいのよ。エヴリンは婿をもらう立場なんだから。
それに、失恋を忘れるには新たな恋愛が一番だって言うじゃない」
「出会いがあったらね」
「出会いなんて探しに行くのよ。良さそうなパーティがあったら一緒に行かない?」
「一緒に?婚約者に怒られるわよ?」
「ちゃんと話してから行くわ」
授業を受けながらローゼの言ったことを考えていた。
彼の浮気を見て 常習性を知ってショックが大きかった。
現場を見てしまったこともあるし、裏切られた悲しさや騙された悔しさでいっぱいで、好きだったから辛かった。
だけど、彼の主張を聞いているうちに悲しみという感情は消えて、呆れる気持ちに変わった。
彼自身が あの主張が通じると本気で思っているところに引いた。
どうぞカレス家で引き取ってくださいという気持ちでいるのは強がりではない。
魔がさしていると言えば許されると思っているのなら、私も魔をさしてもいいのでは?
授業が終わり、帰り支度をしていた。
「エヴリン、キューレイ様よ」
「え?」
振り向くといつものように廊下から教室にいる私に向かって微笑みを向けていた。
「私が追い払ってくる」
「ローゼ、私が行くわ」
「せめて付き添わせて」
「ありがとう」
ここで追い払わないと馬車まで着いてきてしまう。
仕方なく出入口に近寄った。
「何のご用でしょう」
「2人で話したいんだ。君、外してくれないか」
「彼女は私が頼んで付き添ってもらっているのです。手短にお話ししてください」
「エヴリン、ゆっくり2人で話そう。
週末はデートをしよう。
誤解も解けて元の2人に戻れるはずだ」
「誤解? あなたの左手が彼女の胸を掴んでいたのは誤解?」
「い、いや…」
「2人がキスをしていたのも誤解?」
「それは、」
「あなたの上で腰を振っていた彼女も誤解?」
「……」
「あなた達は婚約者がいるのに観劇と食事と性交渉をしたけど、それは誤解だと言うのですか?」
「……」
「私の気持ちが戻ることはありません」
「試してみなくては分からないだろう」
「分かります。もう解消を申し入れたのですから会いに来ないでください」
「私達の婚約は昨日今日のものではない。
他の女に気持ちを寄せたのなら分かるが、ただの浮気じゃないか。どの男もやっていることだ。
こんなことで騒いでいては一生一人だぞ」
「価値観も違うのですね」
「キューレイ様、ここは2年生のフロアです。早く立ち去らないと警備を呼びますよ」
「エヴリン、また来る」
「来ないでください!」
彼が立ち去ると、2人で溜息を吐いた。
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