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自信がない

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【 ノエルの視点 】


今日も小さくて可愛くて凶暴な生き物は、無邪気に私の心を振り回す。  

「でね、アルフレッドくんのお家で飼っているうさぎがね、すっごく大っきいの」

「……」

「抱っこするのに苦労したの。
私の4分の1の重さがあってね、」

「……」

「すっごく可愛いの。いつでも会いに来ていいって子爵が仰るの」

「子爵が?」

「なんか、獰猛な番犬が初対面の私にお腹を見せたの。番犬チェリーが喜ぶからって」

「令息は婚約者がいて、彼は跡継ぎなんだよな」

「うん」

「何で名前呼びなんだ?」

「5人で呼び合おうってことになって。友達だし」

「じゃあ、私のことは“ノエル”と呼ぶしかないな」

「ノエル?」

「そう。何で くん付けだったんだ?」

「一応 公爵令息だから」

「正真正銘な。

だか、クリスティーナの未来の夫だから“ノエル”がいい」

「分かった」

そう言ってニコニコと、今度は伯爵令嬢の屋敷でのことを話し始めた。



昨日は心配になって父上に城に連れて行ってもらった。

クリスティーナがノーブルの王太子夫妻に呼ばれて前日から交流していると聞いたから。

父上が言うには、クリスティーナを第二妃として望んでいて、ファーズ侯爵に断られたがクリスティーナ次第ということで直接口説いているようだと言われた。

王族相手に何もできることは無いと言われ、せめて無理に連れて行かれないようにと様子を見に行ったら、帰国のときを迎えていた。

“体を大事にな”

“素敵な思い出を作ってちょうだい”

王太子も王太子妃も何故か私を労った。   



見送った後、順を追って会話の一部始終をクリスティーナから聞いた。

どうやら彼らは私が余命僅かで、その間の婚約思い出だと捉えたようだ。

王太子夫妻とクリスティーナは互いに違うことを言っているのに会話が成り立ち、互いが納得してしまったのだ。

今回は助かった。
その1年後はクリスティーナと私は婚姻しているからな。

しかし、なんて恐ろしいのだと思った。

こうやって誤解が進んで行くのだから。

クリスティーナにはしっかり言葉にして伝えないと駄目だと勉強になった。
分かるだろうなんて考えをしては駄目だ。

「クリスティーナ。
私はクリスティーナが大好きで愛していて、他の女に手をつけることは絶対に無い。
クリスティーナも異性と必要以上に親しくして私を悲しませないようにして欲しい」

「う……うん」

赤くなってるから、不服で言葉数が少ないんじゃないとは思うが。

「クリスティーナはどう思う?」

「ノエルが悲しいのは嫌だから、気を付ける」

「ありがとう クリスティーナ」


巨大なウサギか。
調べておこう。
ファーズ邸でも飼えば、ウサギに夢中になって屋敷に居てくれるだろう。

あとは番犬か…ウサギが喰われないか?
スプラナード邸で飼えば会いに通うかな。


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