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置き去りにされたアンナ
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町から歩いて1時間の場所に森の入り口がある。そこに親友サンドラと花を摘みにきていた。
その花のブーケで花嫁となると一生添い遂げられるという言い伝えがある。
完全に迷信なのだが、恋する乙女には無視することができない。花婿もその花のブーケを持った花嫁を見ると、覚悟と愛を感じてしまうので人気は衰えない。
森の中に咲くその白い花は 一度見つけた場所にまた咲くとは限らず見つけるのが至難。何をしても丸2日しか保たないので前日か当日に詰むしかない。
「サンドラ、本当にこっち?」
さらに森の中を1時間半も歩いている。薄暗くなってきたので引き返さないと森で迷うことになる。
「間違いないわ。もう少しよアンナ。ブリアックのために頑張るのよ」
私アンナとサンドラとブリアックは幼馴染だ。
私は革職人の娘、サンドラはパン屋の娘、ブリアックは町長の息子だった。
14歳の時、ブリアックに告白されて交際してきた。ついに明日婚姻式を町の教会で行う。
「あそこよ!あの洞窟の中にあるわ!向こうに青い花が咲いているでしょう?アレが目印だったの。
私は青い花を摘むから、アンナは白い花を摘んできて」
「でも…1人じゃ」
「花を摘むだけよ。少し入れば見つかるから大丈夫。
早く戻らないといけないから二手に別れましょう」
「分かったわ。摘んでくるわ」
洞窟の中でも上部に穴が空いていて、奥に進んでも外の光が届いていた。だいぶ進んだけど見当たらない。もうちょっとだけと更に奥に進むと、急激に暗くなり始めた。太陽が沈んで夕刻の明るささえ木々によって遮られ、洞窟内に届かなくなったのだろう。
足元が悪く走ることはできない。暗い中、慎重に戻り洞窟を抜けたが、もう闇の森と化していた。
「サンドラー!」
「どこなの!サンドラー!」
サンドラを呼んでも返事が無い。状況が掴めない。
迷ったり怪我をして動けないのかもしれない。
だけど暗闇の中で探す術は無かった。
夜が明け、1時間ほどサンドラを探したが見当たらなかった。
式の開始は午前10時。残り4時間しかない。
森の入り口まで1時間半以上。そこから町まで1時間。町に戻って先に町兵の詰所に寄って通報し、家に帰り水を浴びて髪を乾かしてドレスを持って教会へ…間に合うだろうか。
入り口に向かって進むも、2時間経っても着かないし、景色に違和感がある。
その内 沢に出てしまった。行きでは沢は通らなかった。引き返し岐路の案内まで戻る。根本を見ると角度を変えたかもしれない痕跡があった。もう一つの道を選ぶと入り口の立札が見えた。
助かったと思った。
靴擦れで痛くてとても歩ける状態じゃない。通りかかる馬車を待ちながら少しでも町に近付こうと歩いた。
もう太陽は真上にいた。
結局、通り掛かった馬車は汚れた私を乗せてくれなかった。平民の馬車では無かったのだ。
やっと町に着き、先ずはサンドラの捜索をしてもらおうと町兵の詰所へ行こうとしたら、名を呼ばれた。
「アンナ!!」
振り向くとお父さんがいた。
「お父さん!大変なのサ、」
バチン!!
「今まで何をしていたんだ!!」
サンドラが大変だと告げたかったのに、お父さんに頬を叩かれて地面に倒れた。
「お父さん、どうして叩くの!?
ブリアックに少し遅れるって伝えて。詰所に寄ってから家に寄って身支度を、」
「ブリアックとサンドラの婚姻式は終わった」
「え? ブリアックと私でしょう?」
「お前が式をすっぽかしたから、サンドラが代わりに花嫁になったんだ!」
「私はサンドラと誓いの花を摘みに森へ行って…ブリアックは待ってくれなかったの!?」
「町長の息子だぞ!参列者が何人いると思っているんだ!領主代理もいらしていて、花嫁がすっぽかしたから中止ですなんて言えるわけがない!サンドラが代わりに花嫁になることを申し出て婚姻式は終わったんだ!」
「そんな馬鹿な」
家に連れ戻され、外の井戸水をかけられ、着替えた後に傷の手当てをした。
そしてお父さんとお母さんに昨日からのことを説明した。
「サンドラに騙されたのだな」
「どうして行く前に相談しなかったの」
「ううっ」
「証拠が無い。サンドラは式場にいたのだから」
「もう全て終わってしまった後だから撤回はしないでしょう。この町ではもう暮らせないわ」
「ううっ」
日が暮れて家を抜け出してブリアックの家に行った。
そこは私と住むはずの新居だった。
「ブリアック!出てきて!話をさせて!」
しつこく戸を叩くとブリアックが出てきた。
「今更何の用だ」
寝巻きのズボンだけで上半身は裸だった。
「すっぽかしたんじゃないの!森に誓いの花を摘みに行って帰ってこれなくなっただけなの!」
「君は僕と婚姻したくないと言っていたそうだな」
「え?」
「愛していたけど、婚姻を無理強いする気は無かった。
僕と同じ色の瞳の子を産みたくないなら、ただ別れたいと言ってくれたら良かったんだ。町長の息子だからって君や君の家族に害をなすなんてことはしないよ」
「何のこと!?」
「ブリアック。一人じゃ寒いわ」
奥から裸にシーツを巻き付けたサンドラが近寄ってブリアックの背中に抱き付いた。
「サンドラ!貴女が私を森に置き去りにしたんじゃない!」
「止めろ。サンドラはちゃんと2人のシスターと徹夜で式の準備を手伝って、参列もしていたんだ。濡れ衣を着せて自分の罪を誤魔化そうとするな」
「酷いわ、親友だったのに。アンナがブリアックとは別の男性ともお付き合いしていたことも黙っていてあげたじゃない」
「嘘ばっかり言わないで!」
「帰ってくれ。初夜の真っ最中なんだ。邪魔するな」
バタン!
乱暴に戸が閉められた。
呆然としていると、サンドラの喘ぎ声が聞こえてきた。
「っ!!」
家に帰り着くとそのまま倒れた。
倒れた時に体を打ち付けたのか痛いし、足も痛かった。
誰かが私を覗き込んでいる気がして瞼をあけると、白い髪 白い布を纏った男が 私の頭に手を置いた。
「悔しいだろう?人間」
「……」
「一度だけ、復讐に使う力を授けよう。相手の体に触れ、心の中で願うだけでいい。必ず相手の素肌に触れるように」
「一度?私を信じなかった恋人、私を森に置き去りにして恋人を奪った親友、その親友と口裏を合わせたシスター。
複数いるのに一度?」
「一回や一人じゃない。今回の一度だ。手の平の紋が消えれば授けた能力も消える。紋があるうちに果たすといい。ただし、復讐にしか使えない。それに死ねとかそういうのは受け付けないよ。対価は人の恐怖だ。簡単に死なれたら無意味だろう?
もし相手の死を願ったら君から恐怖の対価をもらうからね。頑張って」
「待って!!」
パチン!
次の瞬間、男は消えた。
夢?
「夢じゃない」
手の平には何か絵のようなものが刻まれていた。
手の平の紋を見つめながらボーッとしていると、お母さんが部屋に入ってきた。
「アンナ、目が覚めたのね。熱も下がったみたい。良かったわ」
高熱にうなされながら3日寝込んでいたようだ。
ふと見ると、部屋の中の物は片付けられていた。
「どうしたの?これ」
「言ったでしょう。引っ越すのよ」
「本当に引っ越すの?」
「町の人達が私達を排除することにしたらしいの。誰も口をきいてくれないし、何も売ってくれないし、お父さんの店には誰もこないし、投石もあったのよ。
居辛くなるだろうなとは思っていたけど、こんな嫌がらせを受けるとは思っていなかったわ」
「そんな」
「病み上がりで悪いけど、荷馬車で町を出るわ」
「ごめんなさい。私がサンドラに騙されたばかりに」
「明日出発するわね」
「はい」
つまり今日しかない。
お母さんが、お父さんの工房の荷造り手伝いに行った隙に、着替えてフードを被り教会へ行った。
サンドラが徹夜で準備をしていたと証言した2人のシスターのうちの1人が外の花に水をやっていた。
この教会にシスターは2人しかいないから間違えようがない。
「シスター。落とし物ですよ」
「え?ありがとうございます」
渡すふりをして手を握った。
“人間が全て悪魔に見えますように”
願うと手の平は熱くなった。
シスターは私の手を振り払うと恐怖に歪んだ顔をして走り去った。
建物の中に入り もう1人のシスターに声を掛けた。
「シスター、お布施をお受け取りください」
「はい、ありがとうございます」
手を掴み願い事をした。
“人の善意に文句を口にしてしまう”
「たった小銅貨1枚をわざわざ私に届けにこないでよ。箱に入れに行きなさいよ……あれ?」
「分かりました」
そしてブリアックとサンドラの新居を訪ねた。
「また君か」
「引っ越すことにしたから、最後のお別れを言いにきたの。
サンドラはいる?借りていた物を返したいの。壊れたりしていないか確認して欲しいんだけど」
ブリアックは渋々サンドラを呼んだ。
「何?」
「町を出て行くの」
「そうなの。元気でね」
「これ、返したくて」
サンドラの手を握った。
“皮膚だけ老化が早くなりますように”
「ちょっと」
「お別れの握手くらいいいでしょう?
ブリアックも、サンドラと幸せにね」
「あ、ああ」
ブリアックの手を握った。
“勃たなくなって生殖行為ができなくなりますように”
「さようなら」
家に帰り 手の平を見ると消えていた。
私と両親は翌日 町を出発し、王都を通過して反対側の領地にある町に移り住んだ。
その後のことは知らない。
その花のブーケで花嫁となると一生添い遂げられるという言い伝えがある。
完全に迷信なのだが、恋する乙女には無視することができない。花婿もその花のブーケを持った花嫁を見ると、覚悟と愛を感じてしまうので人気は衰えない。
森の中に咲くその白い花は 一度見つけた場所にまた咲くとは限らず見つけるのが至難。何をしても丸2日しか保たないので前日か当日に詰むしかない。
「サンドラ、本当にこっち?」
さらに森の中を1時間半も歩いている。薄暗くなってきたので引き返さないと森で迷うことになる。
「間違いないわ。もう少しよアンナ。ブリアックのために頑張るのよ」
私アンナとサンドラとブリアックは幼馴染だ。
私は革職人の娘、サンドラはパン屋の娘、ブリアックは町長の息子だった。
14歳の時、ブリアックに告白されて交際してきた。ついに明日婚姻式を町の教会で行う。
「あそこよ!あの洞窟の中にあるわ!向こうに青い花が咲いているでしょう?アレが目印だったの。
私は青い花を摘むから、アンナは白い花を摘んできて」
「でも…1人じゃ」
「花を摘むだけよ。少し入れば見つかるから大丈夫。
早く戻らないといけないから二手に別れましょう」
「分かったわ。摘んでくるわ」
洞窟の中でも上部に穴が空いていて、奥に進んでも外の光が届いていた。だいぶ進んだけど見当たらない。もうちょっとだけと更に奥に進むと、急激に暗くなり始めた。太陽が沈んで夕刻の明るささえ木々によって遮られ、洞窟内に届かなくなったのだろう。
足元が悪く走ることはできない。暗い中、慎重に戻り洞窟を抜けたが、もう闇の森と化していた。
「サンドラー!」
「どこなの!サンドラー!」
サンドラを呼んでも返事が無い。状況が掴めない。
迷ったり怪我をして動けないのかもしれない。
だけど暗闇の中で探す術は無かった。
夜が明け、1時間ほどサンドラを探したが見当たらなかった。
式の開始は午前10時。残り4時間しかない。
森の入り口まで1時間半以上。そこから町まで1時間。町に戻って先に町兵の詰所に寄って通報し、家に帰り水を浴びて髪を乾かしてドレスを持って教会へ…間に合うだろうか。
入り口に向かって進むも、2時間経っても着かないし、景色に違和感がある。
その内 沢に出てしまった。行きでは沢は通らなかった。引き返し岐路の案内まで戻る。根本を見ると角度を変えたかもしれない痕跡があった。もう一つの道を選ぶと入り口の立札が見えた。
助かったと思った。
靴擦れで痛くてとても歩ける状態じゃない。通りかかる馬車を待ちながら少しでも町に近付こうと歩いた。
もう太陽は真上にいた。
結局、通り掛かった馬車は汚れた私を乗せてくれなかった。平民の馬車では無かったのだ。
やっと町に着き、先ずはサンドラの捜索をしてもらおうと町兵の詰所へ行こうとしたら、名を呼ばれた。
「アンナ!!」
振り向くとお父さんがいた。
「お父さん!大変なのサ、」
バチン!!
「今まで何をしていたんだ!!」
サンドラが大変だと告げたかったのに、お父さんに頬を叩かれて地面に倒れた。
「お父さん、どうして叩くの!?
ブリアックに少し遅れるって伝えて。詰所に寄ってから家に寄って身支度を、」
「ブリアックとサンドラの婚姻式は終わった」
「え? ブリアックと私でしょう?」
「お前が式をすっぽかしたから、サンドラが代わりに花嫁になったんだ!」
「私はサンドラと誓いの花を摘みに森へ行って…ブリアックは待ってくれなかったの!?」
「町長の息子だぞ!参列者が何人いると思っているんだ!領主代理もいらしていて、花嫁がすっぽかしたから中止ですなんて言えるわけがない!サンドラが代わりに花嫁になることを申し出て婚姻式は終わったんだ!」
「そんな馬鹿な」
家に連れ戻され、外の井戸水をかけられ、着替えた後に傷の手当てをした。
そしてお父さんとお母さんに昨日からのことを説明した。
「サンドラに騙されたのだな」
「どうして行く前に相談しなかったの」
「ううっ」
「証拠が無い。サンドラは式場にいたのだから」
「もう全て終わってしまった後だから撤回はしないでしょう。この町ではもう暮らせないわ」
「ううっ」
日が暮れて家を抜け出してブリアックの家に行った。
そこは私と住むはずの新居だった。
「ブリアック!出てきて!話をさせて!」
しつこく戸を叩くとブリアックが出てきた。
「今更何の用だ」
寝巻きのズボンだけで上半身は裸だった。
「すっぽかしたんじゃないの!森に誓いの花を摘みに行って帰ってこれなくなっただけなの!」
「君は僕と婚姻したくないと言っていたそうだな」
「え?」
「愛していたけど、婚姻を無理強いする気は無かった。
僕と同じ色の瞳の子を産みたくないなら、ただ別れたいと言ってくれたら良かったんだ。町長の息子だからって君や君の家族に害をなすなんてことはしないよ」
「何のこと!?」
「ブリアック。一人じゃ寒いわ」
奥から裸にシーツを巻き付けたサンドラが近寄ってブリアックの背中に抱き付いた。
「サンドラ!貴女が私を森に置き去りにしたんじゃない!」
「止めろ。サンドラはちゃんと2人のシスターと徹夜で式の準備を手伝って、参列もしていたんだ。濡れ衣を着せて自分の罪を誤魔化そうとするな」
「酷いわ、親友だったのに。アンナがブリアックとは別の男性ともお付き合いしていたことも黙っていてあげたじゃない」
「嘘ばっかり言わないで!」
「帰ってくれ。初夜の真っ最中なんだ。邪魔するな」
バタン!
乱暴に戸が閉められた。
呆然としていると、サンドラの喘ぎ声が聞こえてきた。
「っ!!」
家に帰り着くとそのまま倒れた。
倒れた時に体を打ち付けたのか痛いし、足も痛かった。
誰かが私を覗き込んでいる気がして瞼をあけると、白い髪 白い布を纏った男が 私の頭に手を置いた。
「悔しいだろう?人間」
「……」
「一度だけ、復讐に使う力を授けよう。相手の体に触れ、心の中で願うだけでいい。必ず相手の素肌に触れるように」
「一度?私を信じなかった恋人、私を森に置き去りにして恋人を奪った親友、その親友と口裏を合わせたシスター。
複数いるのに一度?」
「一回や一人じゃない。今回の一度だ。手の平の紋が消えれば授けた能力も消える。紋があるうちに果たすといい。ただし、復讐にしか使えない。それに死ねとかそういうのは受け付けないよ。対価は人の恐怖だ。簡単に死なれたら無意味だろう?
もし相手の死を願ったら君から恐怖の対価をもらうからね。頑張って」
「待って!!」
パチン!
次の瞬間、男は消えた。
夢?
「夢じゃない」
手の平には何か絵のようなものが刻まれていた。
手の平の紋を見つめながらボーッとしていると、お母さんが部屋に入ってきた。
「アンナ、目が覚めたのね。熱も下がったみたい。良かったわ」
高熱にうなされながら3日寝込んでいたようだ。
ふと見ると、部屋の中の物は片付けられていた。
「どうしたの?これ」
「言ったでしょう。引っ越すのよ」
「本当に引っ越すの?」
「町の人達が私達を排除することにしたらしいの。誰も口をきいてくれないし、何も売ってくれないし、お父さんの店には誰もこないし、投石もあったのよ。
居辛くなるだろうなとは思っていたけど、こんな嫌がらせを受けるとは思っていなかったわ」
「そんな」
「病み上がりで悪いけど、荷馬車で町を出るわ」
「ごめんなさい。私がサンドラに騙されたばかりに」
「明日出発するわね」
「はい」
つまり今日しかない。
お母さんが、お父さんの工房の荷造り手伝いに行った隙に、着替えてフードを被り教会へ行った。
サンドラが徹夜で準備をしていたと証言した2人のシスターのうちの1人が外の花に水をやっていた。
この教会にシスターは2人しかいないから間違えようがない。
「シスター。落とし物ですよ」
「え?ありがとうございます」
渡すふりをして手を握った。
“人間が全て悪魔に見えますように”
願うと手の平は熱くなった。
シスターは私の手を振り払うと恐怖に歪んだ顔をして走り去った。
建物の中に入り もう1人のシスターに声を掛けた。
「シスター、お布施をお受け取りください」
「はい、ありがとうございます」
手を掴み願い事をした。
“人の善意に文句を口にしてしまう”
「たった小銅貨1枚をわざわざ私に届けにこないでよ。箱に入れに行きなさいよ……あれ?」
「分かりました」
そしてブリアックとサンドラの新居を訪ねた。
「また君か」
「引っ越すことにしたから、最後のお別れを言いにきたの。
サンドラはいる?借りていた物を返したいの。壊れたりしていないか確認して欲しいんだけど」
ブリアックは渋々サンドラを呼んだ。
「何?」
「町を出て行くの」
「そうなの。元気でね」
「これ、返したくて」
サンドラの手を握った。
“皮膚だけ老化が早くなりますように”
「ちょっと」
「お別れの握手くらいいいでしょう?
ブリアックも、サンドラと幸せにね」
「あ、ああ」
ブリアックの手を握った。
“勃たなくなって生殖行為ができなくなりますように”
「さようなら」
家に帰り 手の平を見ると消えていた。
私と両親は翌日 町を出発し、王都を通過して反対側の領地にある町に移り住んだ。
その後のことは知らない。
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