1 / 11
冤罪をかけられたルーナ
しおりを挟む
【 ルーナの視点 】
バン!
王太子の婚約者候補として残った2人の令嬢が授業を受ける最中に乱入したのは 王太子のサリフィスだった。
「ルーナ・ヘイゼル!
お前の悪事は明らかになったぞ!」
「……」
大きな音と大声に萎縮して声が出ない。
「お前の使っている客室の鞄の中から私の指輪が見つかった!」
指輪?
次期国王に指名された証の指輪を王太子が手にしていた。
「ぞ、存じ上げません」
「カトリーナ、其方のいう通りだった」
もう一人の婚約者候補のカトリーナは王太子に満面の笑みを向けた後、私に向き直った。
「ルーナ様。最近挙動がおかしくて もしやと思っておりましたの。出来心ですわよね」
「ち、違っ」
「サリフィス様、どうか極刑だけは。
間違いを犯しましたが 彼女は宰相様のご息女。
貴族としての務めを果たさせることでどうか収めてくださいませんか」
カトリーナが跪き懇願した。
「カトリーナ様!?」
「流石はカトリーナ。私の妃に相応しい。
おい。カトリーナの慈悲深さに感謝するんだな。
極刑は止めてやる。
そうだな。お前にはオルポンス・ヴォルカンに嫁ぐことを命じる」
オルポンス・ヴォルカンって…狂乱の戦士と呼ばれて顔の4分の1以上に火傷の跡があり、醜さも合わさって誰も嫁に行きたがらず、政略結婚として婚約が決まりかけた令嬢達がことごとく失踪したり自殺未遂をしたりするという噂の!?
「国王陛下のご意見は、」
「父上の不在中は私が国王代理だ。
父上の帰りを待つ必要はない。
証拠がお前の部屋から出てきたのだから逃れられないだろう。
極刑を止めてやったんだ。ありがたいと思え。
先方に王命書を早馬で届けておいてやるからな。
おい、此奴の荷物を纏めて旅支度をしろ!ヴォルカン将軍の領地へ確実に送り届けろ!」
「違っ、私は、」
「聡明で愛らしいカトリーナ。
やっと其方を婚約者にできる」
「私の様な者がサリフィス様の妻だなんて。
とても次期王妃は務まりませんわ」
「お高くとまった可愛げのない女と比べなくていい。
飾り気のない垢抜けない女より カトリーナの様な誰よりも愛らしくて愛嬌のある女の方がいい。
妃は私を癒すことを優先し 公務などは臣下にやらせておけばいいんだ」
王太子はそう言いながら、カトリーナの腰を引き寄せて耳に唇を付けた。
手は くびれをなぞりながら臀部へと忍ばせた。
王太子とカトリーナは既に閨を共にしているのだとルーナは気付いた。
2人は共謀して、私を陥れたのだと悟った。
だって、いつも王太子殿下が指にはめている指輪を私が盗めるはずがないのだもの。
チャンスがあるのは王太子殿下の専属メイドか専属護衛、本人と寝所で王太子殿下と過ごしたカトリーナ様だけ。
王妃様ということはないと思う。私に優しく声をかけてくださっていたから。
翌早朝、馬車に乗せられて外から鍵を掛けられた。
誰の見送りもなく出発した。
ヴォルカン領は南の隣国と隣接した国境のある地だ。北の辺境よりは近い。
宿にも宿泊させてもらえず、川の水で布を濡らして体を拭くしかなかった。
一行の中に女性は一人もいなかった。
ニヤニヤと不躾な目線を送る兵士達に見張らせて水浴びなど出来なかった。
2日後、森を通り抜けている最中に巨大な熊と出会した。
「熊だ!」
ヒヒィーン!!
騎士達が熊と対峙している間に馬車が暴走してしまった。
《お父様!助けて!》
大きな衝撃を受けて意識を失った。
バン!
王太子の婚約者候補として残った2人の令嬢が授業を受ける最中に乱入したのは 王太子のサリフィスだった。
「ルーナ・ヘイゼル!
お前の悪事は明らかになったぞ!」
「……」
大きな音と大声に萎縮して声が出ない。
「お前の使っている客室の鞄の中から私の指輪が見つかった!」
指輪?
次期国王に指名された証の指輪を王太子が手にしていた。
「ぞ、存じ上げません」
「カトリーナ、其方のいう通りだった」
もう一人の婚約者候補のカトリーナは王太子に満面の笑みを向けた後、私に向き直った。
「ルーナ様。最近挙動がおかしくて もしやと思っておりましたの。出来心ですわよね」
「ち、違っ」
「サリフィス様、どうか極刑だけは。
間違いを犯しましたが 彼女は宰相様のご息女。
貴族としての務めを果たさせることでどうか収めてくださいませんか」
カトリーナが跪き懇願した。
「カトリーナ様!?」
「流石はカトリーナ。私の妃に相応しい。
おい。カトリーナの慈悲深さに感謝するんだな。
極刑は止めてやる。
そうだな。お前にはオルポンス・ヴォルカンに嫁ぐことを命じる」
オルポンス・ヴォルカンって…狂乱の戦士と呼ばれて顔の4分の1以上に火傷の跡があり、醜さも合わさって誰も嫁に行きたがらず、政略結婚として婚約が決まりかけた令嬢達がことごとく失踪したり自殺未遂をしたりするという噂の!?
「国王陛下のご意見は、」
「父上の不在中は私が国王代理だ。
父上の帰りを待つ必要はない。
証拠がお前の部屋から出てきたのだから逃れられないだろう。
極刑を止めてやったんだ。ありがたいと思え。
先方に王命書を早馬で届けておいてやるからな。
おい、此奴の荷物を纏めて旅支度をしろ!ヴォルカン将軍の領地へ確実に送り届けろ!」
「違っ、私は、」
「聡明で愛らしいカトリーナ。
やっと其方を婚約者にできる」
「私の様な者がサリフィス様の妻だなんて。
とても次期王妃は務まりませんわ」
「お高くとまった可愛げのない女と比べなくていい。
飾り気のない垢抜けない女より カトリーナの様な誰よりも愛らしくて愛嬌のある女の方がいい。
妃は私を癒すことを優先し 公務などは臣下にやらせておけばいいんだ」
王太子はそう言いながら、カトリーナの腰を引き寄せて耳に唇を付けた。
手は くびれをなぞりながら臀部へと忍ばせた。
王太子とカトリーナは既に閨を共にしているのだとルーナは気付いた。
2人は共謀して、私を陥れたのだと悟った。
だって、いつも王太子殿下が指にはめている指輪を私が盗めるはずがないのだもの。
チャンスがあるのは王太子殿下の専属メイドか専属護衛、本人と寝所で王太子殿下と過ごしたカトリーナ様だけ。
王妃様ということはないと思う。私に優しく声をかけてくださっていたから。
翌早朝、馬車に乗せられて外から鍵を掛けられた。
誰の見送りもなく出発した。
ヴォルカン領は南の隣国と隣接した国境のある地だ。北の辺境よりは近い。
宿にも宿泊させてもらえず、川の水で布を濡らして体を拭くしかなかった。
一行の中に女性は一人もいなかった。
ニヤニヤと不躾な目線を送る兵士達に見張らせて水浴びなど出来なかった。
2日後、森を通り抜けている最中に巨大な熊と出会した。
「熊だ!」
ヒヒィーン!!
騎士達が熊と対峙している間に馬車が暴走してしまった。
《お父様!助けて!》
大きな衝撃を受けて意識を失った。
357
お気に入りに追加
1,432
あなたにおすすめの小説
【完結】愛する夫の務めとは
Ringo
恋愛
アンダーソン侯爵家のひとり娘レイチェルと結婚し婿入りした第二王子セドリック。
政略結婚ながら確かな愛情を育んだふたりは仲睦まじく過ごし、跡継ぎも生まれて順風満帆。
しかし突然王家から呼び出しを受けたセドリックは“伝統”の遂行を命じられ、断れば妻子の命はないと脅され受け入れることに。
その後……
城に滞在するセドリックは妻ではない女性を何度も抱いて子種を注いでいた。
※完結予約済み
※全6話+おまけ2話
※ご都合主義の創作ファンタジー
※ヒーローがヒロイン以外と致す描写がございます
※ヒーローは変態です
※セカンドヒーロー、途中まで空気です

【完結】妻至上主義
Ringo
恋愛
歴史ある公爵家嫡男と侯爵家長女の婚約が結ばれたのは、長女が生まれたその日だった。
この物語はそんな2人が結婚するまでのお話であり、そこに行き着くまでのすったもんだのラブストーリーです。
本編11話+番外編数話
[作者よりご挨拶]
未完作品のプロットが諸事情で消滅するという事態に陥っております。
現在、自身で読み返して記憶を辿りながら再度新しくプロットを組み立て中。
お気に入り登録やしおりを挟んでくださっている方には申し訳ありませんが、必ず完結させますのでもう暫くお待ち頂ければと思います。
(╥﹏╥)
お詫びとして、短編をお楽しみいただければ幸いです。


【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました
ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。
けれどその幸せは唐突に終わる。
両親が死んでから何もかもが変わってしまった。
叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。
今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。
どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥??
もう嫌ーー

【完結】私の婚約者は妹のおさがりです
葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」
サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。
ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。
そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……?
妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。
「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」
リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。
小説家になろう様でも別名義にて連載しています。
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開

【完結・全3話】不細工だと捨てられましたが、貴方の代わりに呪いを受けていました。もう代わりは辞めます。呪いの処理はご自身で!
酒本 アズサ
恋愛
「お前のような不細工な婚約者がいるなんて恥ずかしいんだよ。今頃婚約破棄の書状がお前の家に届いているだろうさ」
年頃の男女が集められた王家主催のお茶会でそう言ったのは、幼い頃からの婚約者セザール様。
確かに私は見た目がよくない、血色は悪く、肌も髪もかさついている上、目も落ちくぼんでみっともない。
だけどこれはあの日呪われたセザール様を助けたい一心で、身代わりになる魔導具を使った結果なのに。
当時は私に申し訳なさそうにしながらも感謝していたのに、時と共に忘れてしまわれたのですね。
結局婚約破棄されてしまった私は、抱き続けていた恋心と共に身代わりの魔導具も捨てます。
当然呪いは本来の標的に向かいますからね?
日に日に本来の美しさを取り戻す私とは対照的に、セザール様は……。
恩を忘れた愚かな婚約者には同情しません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる