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別れ
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11時。
カルヴァロス公爵家に父と一緒に来た。
父「理由は分かりました。
分かったというのはカルヴァロス公爵家の思考が分かったということであって、他意は含んでおりません。
思い付いたのはご子息で、結果的に公爵夫妻も容認したということも分かりました。
プルシア家で息子がそんなことをしたら廃嫡しますがね」
「「「………」」」
父「何故、娘でなくてはならなかったのでしょう。それに我が侯爵家は軽んじられるような存在だと思えないのですが。
まあ、選ばれたということは軽んじても構わないと思われたのでしょうが」
「「「………」」」
父「男爵家から公爵家までかなりの数ですよね。その中で成人した令嬢は少なくないと思うのですが、何がお気に召して、縁談を申し入れて冷遇して生き餌にしようと思うのでしょう」
ウ「縁を繋いでも違和感のない家門で、……問題のある令嬢をと……」
父「うちのララが問題?」
夫人「実際に会って優秀だということはわかりましたわ。
ただ、事前調査では贅沢を好まれて、学園に行っていないということでしたので、何か問題があるご令嬢で入試で落ちたのかと」
父「王都に屋敷を構える費用を考えたら、ララが欲しい物を買う程度のことは贅沢とは言いませんよ。
ララは領地と家族を愛していて離れたくないと言うので教師を雇って屋敷で勉強をさせました」
そこは嘘よ。ララは寮が嫌だっただけ。
父「手抜き調査ですな。
ではご希望通り、破談ということで。
本命のどちらかとお幸せに」
ウ「待ってください!
確かに当初はそうでした。
ですがララ嬢と過ごすうちに……好きになりました」
はあ!?
ウ「私はララ嬢と結婚したいのです。
不快な思いをさせてしまった分、大切にします」
私「いつからですか」
ウ「ララと顔を合わせてから直ぐだったと思う。気がついたら好きになっていた」
私「生き餌のままにして?」
ウ「それは……」
私「錯覚ですわ。好きな女性を生き餌のままにするわけがありませんわ」
父「未だに他の候補がいるということは交流も続けているということです。何故です?」
夫人「途中で止めてしまうのは失礼かと」
父「よく分かりませんな。好きで、結婚して欲しいと言うほど心を決めておられるのに、
何故全てをそのままに?
ララに直ぐ事実を告げて謝罪し、他の二人には心を決めたと話した上で残るか帰るか決めてもらい、残った令嬢とはララと接触をさせなかったというのなら分かります。
私や息子が出てくるまで、事実も告げず謝罪もせず、生き餌のままだなんて。誠意の欠片も無いではありませんか。
こんなことではどんな婚姻生活になるのか不安で仕方ない。とても許可などできません。
ララ、終わりでいいな?」
私「はい」
父「何の契約書も交わしていないことが幸いです。
カーラ、荷物を纏めてくれ」
カ「かしこまりました」
ウ「待ってください!
ララ、最近は仲良くしていたじゃないか。
名前も呼んでくれるようになって。
このままここで暮らしながら婚約して結婚しよう」
ラ「それってスタートラインに立っただけですよね。名前なんて本人が許可すれば誰でも呼ぶでしょう?二人のご令嬢も直ぐに呼ばせていたではありませんか。特別なことはございません。
仲良く……二人のご令嬢とも出掛けたり交流なさっていましたよね。私は最近ですけど。
全く特別ではありません。
私のことを大事にしてくれると思えないと難しいですわ。
私は公爵夫人になりたいわけではありません。無理に結婚しなくてはならないわけでもありません。政略関係もございません。
つまり人柄や気持ち次第なのにそこも駄目では無理ですわ」
ウ「ララ、大事にするから」
ラ「このままコナー公爵令嬢とモンティ侯爵令嬢と交流を続けて選んでください。
対立が嫌なら食事を交互にするなり、一旦帰してひとりずつ迎えて見極めればよろしいのです。
荷物を纏めに行きますので失礼いたします」
ウ「ララ!
お願いだ、チャンスをくれないか」
ウィリアムがララの手を取り引き止めた。
私「ウィリアム様。私は貴方と同じ人間なのですよ?悲しかったり怒ったりするのです。
同時に私の家族は、娘が、妹が、冷遇されて生き餌にするために呼ばれたと知って心を痛めています。
何故カルヴァロス邸に行かせてしまったのか自責しています。
私との縁どころか家同士の縁も踏み付けたのです。
無理を仰らないでください」
ウ「リュシアン王子殿下がいるからか」
私「どうして王子殿下が出てくるのですか」
ウ「あんなに仲良くしておいて」
私「当然仲良くしますわ。兄の上司で友人で、私を冷遇するどころか親切で、生き餌どころか大事に扱ってくださいます。
プルシア家も大事にしてかださいます。
兄のような素敵な方ですもの」
ウ「………」
ララは部屋に戻り、荷物を纏め、鯉に挨拶をした。
「癒しをありがとう」
そして公爵家のメイドに案内をさせて其々の部屋に出向いた。
「コナー公爵令嬢、私は辞退させていただきます。短い間でしたがお世話になりました」
「まあまあ、可哀想に。気を落とさないでね。元々貴女に公爵夫人は無理だったのよ。相応しいお相手が見つかることを祈っておりますわ」
「モンティ侯爵令嬢、私は辞退させていただきます。短い間でしたがお世話になりました」
「あら、そうなの?不相応にも粘ると思っておりましたのに。嫁ぎ遅れる前に連絡を下されば分家の妾になれるよう取り持って差し上げますわ」
そしてジェシカさんには、
「ありがとうございます、ジェシカさん。
平気だったのは貴女のお陰でもあるのだから泣かないで」
「ううっ……申し訳ございません。
あんな待遇を……」
「あれは公爵一家がなさった待遇でしょう?貴女はその中で良くしてくれたわ。
機会があれば遊びに来てね」
「ララ様っ!」
別れを告げて馬車に乗ったのに。
「あれ?お父様。領地はあっちですよ?
これじゃあお城に戻ってしまいます」
「戻っているからな」
「ええっ!?」
カルヴァロス公爵家に父と一緒に来た。
父「理由は分かりました。
分かったというのはカルヴァロス公爵家の思考が分かったということであって、他意は含んでおりません。
思い付いたのはご子息で、結果的に公爵夫妻も容認したということも分かりました。
プルシア家で息子がそんなことをしたら廃嫡しますがね」
「「「………」」」
父「何故、娘でなくてはならなかったのでしょう。それに我が侯爵家は軽んじられるような存在だと思えないのですが。
まあ、選ばれたということは軽んじても構わないと思われたのでしょうが」
「「「………」」」
父「男爵家から公爵家までかなりの数ですよね。その中で成人した令嬢は少なくないと思うのですが、何がお気に召して、縁談を申し入れて冷遇して生き餌にしようと思うのでしょう」
ウ「縁を繋いでも違和感のない家門で、……問題のある令嬢をと……」
父「うちのララが問題?」
夫人「実際に会って優秀だということはわかりましたわ。
ただ、事前調査では贅沢を好まれて、学園に行っていないということでしたので、何か問題があるご令嬢で入試で落ちたのかと」
父「王都に屋敷を構える費用を考えたら、ララが欲しい物を買う程度のことは贅沢とは言いませんよ。
ララは領地と家族を愛していて離れたくないと言うので教師を雇って屋敷で勉強をさせました」
そこは嘘よ。ララは寮が嫌だっただけ。
父「手抜き調査ですな。
ではご希望通り、破談ということで。
本命のどちらかとお幸せに」
ウ「待ってください!
確かに当初はそうでした。
ですがララ嬢と過ごすうちに……好きになりました」
はあ!?
ウ「私はララ嬢と結婚したいのです。
不快な思いをさせてしまった分、大切にします」
私「いつからですか」
ウ「ララと顔を合わせてから直ぐだったと思う。気がついたら好きになっていた」
私「生き餌のままにして?」
ウ「それは……」
私「錯覚ですわ。好きな女性を生き餌のままにするわけがありませんわ」
父「未だに他の候補がいるということは交流も続けているということです。何故です?」
夫人「途中で止めてしまうのは失礼かと」
父「よく分かりませんな。好きで、結婚して欲しいと言うほど心を決めておられるのに、
何故全てをそのままに?
ララに直ぐ事実を告げて謝罪し、他の二人には心を決めたと話した上で残るか帰るか決めてもらい、残った令嬢とはララと接触をさせなかったというのなら分かります。
私や息子が出てくるまで、事実も告げず謝罪もせず、生き餌のままだなんて。誠意の欠片も無いではありませんか。
こんなことではどんな婚姻生活になるのか不安で仕方ない。とても許可などできません。
ララ、終わりでいいな?」
私「はい」
父「何の契約書も交わしていないことが幸いです。
カーラ、荷物を纏めてくれ」
カ「かしこまりました」
ウ「待ってください!
ララ、最近は仲良くしていたじゃないか。
名前も呼んでくれるようになって。
このままここで暮らしながら婚約して結婚しよう」
ラ「それってスタートラインに立っただけですよね。名前なんて本人が許可すれば誰でも呼ぶでしょう?二人のご令嬢も直ぐに呼ばせていたではありませんか。特別なことはございません。
仲良く……二人のご令嬢とも出掛けたり交流なさっていましたよね。私は最近ですけど。
全く特別ではありません。
私のことを大事にしてくれると思えないと難しいですわ。
私は公爵夫人になりたいわけではありません。無理に結婚しなくてはならないわけでもありません。政略関係もございません。
つまり人柄や気持ち次第なのにそこも駄目では無理ですわ」
ウ「ララ、大事にするから」
ラ「このままコナー公爵令嬢とモンティ侯爵令嬢と交流を続けて選んでください。
対立が嫌なら食事を交互にするなり、一旦帰してひとりずつ迎えて見極めればよろしいのです。
荷物を纏めに行きますので失礼いたします」
ウ「ララ!
お願いだ、チャンスをくれないか」
ウィリアムがララの手を取り引き止めた。
私「ウィリアム様。私は貴方と同じ人間なのですよ?悲しかったり怒ったりするのです。
同時に私の家族は、娘が、妹が、冷遇されて生き餌にするために呼ばれたと知って心を痛めています。
何故カルヴァロス邸に行かせてしまったのか自責しています。
私との縁どころか家同士の縁も踏み付けたのです。
無理を仰らないでください」
ウ「リュシアン王子殿下がいるからか」
私「どうして王子殿下が出てくるのですか」
ウ「あんなに仲良くしておいて」
私「当然仲良くしますわ。兄の上司で友人で、私を冷遇するどころか親切で、生き餌どころか大事に扱ってくださいます。
プルシア家も大事にしてかださいます。
兄のような素敵な方ですもの」
ウ「………」
ララは部屋に戻り、荷物を纏め、鯉に挨拶をした。
「癒しをありがとう」
そして公爵家のメイドに案内をさせて其々の部屋に出向いた。
「コナー公爵令嬢、私は辞退させていただきます。短い間でしたがお世話になりました」
「まあまあ、可哀想に。気を落とさないでね。元々貴女に公爵夫人は無理だったのよ。相応しいお相手が見つかることを祈っておりますわ」
「モンティ侯爵令嬢、私は辞退させていただきます。短い間でしたがお世話になりました」
「あら、そうなの?不相応にも粘ると思っておりましたのに。嫁ぎ遅れる前に連絡を下されば分家の妾になれるよう取り持って差し上げますわ」
そしてジェシカさんには、
「ありがとうございます、ジェシカさん。
平気だったのは貴女のお陰でもあるのだから泣かないで」
「ううっ……申し訳ございません。
あんな待遇を……」
「あれは公爵一家がなさった待遇でしょう?貴女はその中で良くしてくれたわ。
機会があれば遊びに来てね」
「ララ様っ!」
別れを告げて馬車に乗ったのに。
「あれ?お父様。領地はあっちですよ?
これじゃあお城に戻ってしまいます」
「戻っているからな」
「ええっ!?」
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