9 / 17
私こそが辺境伯夫人に
しおりを挟む
【 女兵士 サビーヌ 】
私は男爵家の四女。
顔は平民ならいい方だけど貴族令嬢としては並以下。
正妻と、妾一人。子は男二人、女五人。
実家の男爵家は収入が豊かではなく、貴族生活を維持するには人数が多かった。
何故こんな人数になったのか。男児が産まれるまで産んだ正妻と、未だ男児が産まれなくて娶った妾に産ませたから。
偶然、正妻と妾が同時期に男児を産んだ。
それで子作りは終わったが、男児は学園に通わせるのは必須。
学費と寮費、その他の経費が二人分。
しかも学年が同じだからお下がりという手も使えない。全ての費用が2倍だった。
デビュータントは貴族籍に入っていれば必要で、姉のお下がりが回ってきても骨格が違うので中古のドレスを買い与えられた。
新品を買ってもらえるのは下着と靴だけだった。
靴もギリギリまではいた。多少の傷みはスカートの裾で隠れるからと簡単には買ってもらえなかった。
父は、お金を支援してくれるところに娘を嫁がせたかったが、学園卒ではないし、家庭教師もついておらず、父と母が合間に教えた程度では七人の子への教育は追いつかなかった。
年齢が違えば勉強の進度も、理解力も違う。父と母
の二人(主に母一人)でそれぞれに教えていたら進みが悪いのは当然だったし、テーブルマナーやカーテシーなども母では不十分だった。
母は元平民で、作法はお祖母様から教わっていた。
母も本来は合格ラインにいない。
子供の私達も基本的な教育が行き届かず、令嬢としては所作も不合格だった。
お見合いをすると断られた。
テーブルマナーなどが合格ラインに及ばないのだろう。理由は言われなかったが、食事の時の夫人と令息の顔を見たら明らかだった。
後妻も断られた。
どんどん歳を取っていくので、仕方なく、長女は商家の妾。次女は裕福な平民の家の次男の嫁に行った。持参金のない長女と次女は肩身の狭い思いをしているのだろう。
三女を嫁がせる時こそ、お金を得たいと一生懸命だったが、今まで打診したことのある家門は、門前払いだった。
ある日、三女が嫁に行ったと言われた。
平民の家だけど、結納金を貰えたらしい。
食卓が少し豊かになり、父と母は服や靴を新調した。
夜、喉が渇いて一階へ降りると話し声が聞こえた。
『一人分の学費はなんとかできたけど、残りを急がないと来年よ』
『若い方が高く売れるし、サビーヌは近々売り払おう』
『同じ店にするの?』
『国境の店にしよう。あそこはいつも女を募集しているらしい』
そっと部屋に戻って泣いた。
三女は娼館に売られていた。
デビューしている私も直ぐに働かせることができる。
余裕がないなら男児ができるまで産ませるのではなく、養子を取るか婿養子を迎えればよかったのよ!
私はあるだけのお金を集めて、着替えなどをカバンに詰めた。大荷物になれば気付かれる。
朝に家を抜け出し、町まで歩き、馬車に乗って隣町へ。また乗り換えて別の町へ。
そしてやっと、目的地に着いた。
虐待された女性を匿ってくれる教会だった。
骨格の良さから、剣術を習い、辺境伯家の女兵士に志願した。
レイダー家は、女兵士に過度の実力を求めていない。夫人や令嬢のお世話や、お花摘みなどに着いて行くための要員だ。もちろんメイドとは違うから襲われたら剣で対抗しなくてはならない。
私は男爵家の四女。
顔は平民ならいい方だけど貴族令嬢としては並以下。
正妻と、妾一人。子は男二人、女五人。
実家の男爵家は収入が豊かではなく、貴族生活を維持するには人数が多かった。
何故こんな人数になったのか。男児が産まれるまで産んだ正妻と、未だ男児が産まれなくて娶った妾に産ませたから。
偶然、正妻と妾が同時期に男児を産んだ。
それで子作りは終わったが、男児は学園に通わせるのは必須。
学費と寮費、その他の経費が二人分。
しかも学年が同じだからお下がりという手も使えない。全ての費用が2倍だった。
デビュータントは貴族籍に入っていれば必要で、姉のお下がりが回ってきても骨格が違うので中古のドレスを買い与えられた。
新品を買ってもらえるのは下着と靴だけだった。
靴もギリギリまではいた。多少の傷みはスカートの裾で隠れるからと簡単には買ってもらえなかった。
父は、お金を支援してくれるところに娘を嫁がせたかったが、学園卒ではないし、家庭教師もついておらず、父と母が合間に教えた程度では七人の子への教育は追いつかなかった。
年齢が違えば勉強の進度も、理解力も違う。父と母
の二人(主に母一人)でそれぞれに教えていたら進みが悪いのは当然だったし、テーブルマナーやカーテシーなども母では不十分だった。
母は元平民で、作法はお祖母様から教わっていた。
母も本来は合格ラインにいない。
子供の私達も基本的な教育が行き届かず、令嬢としては所作も不合格だった。
お見合いをすると断られた。
テーブルマナーなどが合格ラインに及ばないのだろう。理由は言われなかったが、食事の時の夫人と令息の顔を見たら明らかだった。
後妻も断られた。
どんどん歳を取っていくので、仕方なく、長女は商家の妾。次女は裕福な平民の家の次男の嫁に行った。持参金のない長女と次女は肩身の狭い思いをしているのだろう。
三女を嫁がせる時こそ、お金を得たいと一生懸命だったが、今まで打診したことのある家門は、門前払いだった。
ある日、三女が嫁に行ったと言われた。
平民の家だけど、結納金を貰えたらしい。
食卓が少し豊かになり、父と母は服や靴を新調した。
夜、喉が渇いて一階へ降りると話し声が聞こえた。
『一人分の学費はなんとかできたけど、残りを急がないと来年よ』
『若い方が高く売れるし、サビーヌは近々売り払おう』
『同じ店にするの?』
『国境の店にしよう。あそこはいつも女を募集しているらしい』
そっと部屋に戻って泣いた。
三女は娼館に売られていた。
デビューしている私も直ぐに働かせることができる。
余裕がないなら男児ができるまで産ませるのではなく、養子を取るか婿養子を迎えればよかったのよ!
私はあるだけのお金を集めて、着替えなどをカバンに詰めた。大荷物になれば気付かれる。
朝に家を抜け出し、町まで歩き、馬車に乗って隣町へ。また乗り換えて別の町へ。
そしてやっと、目的地に着いた。
虐待された女性を匿ってくれる教会だった。
骨格の良さから、剣術を習い、辺境伯家の女兵士に志願した。
レイダー家は、女兵士に過度の実力を求めていない。夫人や令嬢のお世話や、お花摘みなどに着いて行くための要員だ。もちろんメイドとは違うから襲われたら剣で対抗しなくてはならない。
286
お気に入りに追加
1,932
あなたにおすすめの小説
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
【完結】政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。
本日はお日柄も良く、白い結婚おめでとうございます。
待鳥園子
恋愛
とある誤解から、白い結婚を二年続け別れてしまうはずだった夫婦。
しかし、別れる直前だったある日、夫の態度が豹変してしまう出来事が起こった。
※両片思い夫婦の誤解が解けるさまを、にやにやしながら読むだけの短編です。
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
必要ないと言われたので、元の日常に戻ります
黒木 楓
恋愛
私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。
前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。
その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。
森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。
数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。
そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる