【完結】婚約解消を言い渡された天使は、売れ残り辺境伯を落としたい

第二妃はお断り

建国記念パーティーに出席したが、余計な男が私に目を付けた。　　

「ファイエット嬢、第二妃にならないか」

私の手を取り口説いているのは王太子オスカー殿下。

「私にはとても妃は務まりません」

「第二妃は公務も緩い。其方が嫁げば寵妃となる」

「申し訳ございません」


王族への挨拶で繰り広げられたやり取りだ。

全ての挨拶が終わり、王族のファーストダンスが終わると、呼び出されたのは王族の控え室。
そこには王太子妃のユリアナ殿下が座っていた。

「座ってちょうだい」

「失礼します」

「先程の話だけど、本当にその気は無いの？」

「ございません」

「いずれ王太子殿下が即位なされば国王陛下の第二妃となるのよ？」

「興味はございませんし、私には重責過ぎます」

「王太子殿下は美男子だし。惹かれないの？」

「……」

「正直におっしゃい！」

「正直に申し上げた途端に不敬と仰いませんか」

「今、この場のことは不問にするわ」

「………す」

「大きな声で仰い！」

「好みじゃないです！」

侍女の方が扉を閉めた。

「……そうなの」

「はい」

「前の婚約者のような感じがいいの？」

「アレは父が決めてきただけです」

「どんな殿方が好みなの」

「……逞しくて、」

「後は？」

「眼差しが強くて、」

「後は？」

「生活に困っていなくて」

「て、」

「性格が良くて、」

「て、」

「お祝い事はしてくださって、」

「て、」

「優しくて、」

「て、」

「できれば甘やかしてくれそうで、」

「まだあるの？」

「恰幅の良い方が好みです」

「は？」

「プヨプヨのお腹ではいけません。張った感じが良いのです」

「……」

「妊婦さんみたいな膨らみ方は嫌です」

「……」

「王太子妃殿下？」

「ああ、ごめんなさい。ちょっと意識を飛ばしたわ。
そうなのね。それは…お歳を召した方ならいらっしゃるかもしれないわね」

「後妻や妾は父が許しません」

そこで侍女が王太子妃殿下に耳打ちをした。


「全部とは言えないけど、近い殿方がいらっしゃるわ。呼びに行かせるからお待ちなさい」

侍女が外の兵士に何かを命じていた。

「意外だわ。妖精と呼ばれる貴女が…」

「妖精ですか。初めて聞きました。天使とは聞きましたが」

「そうも呼ばれているわね。誰かに言われたの？」

「ご令嬢方が、“何が天使よ”といって、肘打ちをして通り過ぎるので」

「……苦労していたのね」

「はい。時々体には痣ができています。
流石にドレスを汚されたり、足を掛けられたりしてドレスが破れたときは、やらかした方に請求することにしております。

ドレスはけして安くないのに気軽にダメにされては堪りません。

冷たかったとか、少し熱かったとかは我慢しますが、それだけは強気で請求します」

「最近も？」

「はい。ロージーノ侯爵夫人にやられましたので、徴収しにお屋敷にお伺いしました。
何をしたのかバレて侯爵と揉めておりました」

「そうなの。

５年前の選定で貴女が婚約していなければ、積極的な候補になったはず。そうなれば未来の王妃だったわ。そうなっても断ったかしら」

「選択できるのなら辞退しました」

「そう」