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お披露目

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王国新聞では今回4つ大きな発表があった。


先ずは王妃と王妃の両親の処刑。
公爵と公爵令嬢への暗殺を企て実行した未遂事件。

相手がバシュレ公爵家だったため、賛否の意見など出なかった。それが当たり前だから。


ユーグ王子殿下の存在が公表された。
“婚約中に恋に落ちてしまった”と。

一つだけ嘘があったとしたら互いに婚姻前としたこと。母親の元婚家の希望だ。

留学を終えて戻ってきたことと、第一王子と認知したこと。


母を王妃として迎え入れること。
これは少し動揺があったが、バシュレ公爵が早々に支持を宣言すると、歓迎された。


セイリアン王子殿下の王位継承権の永久剥奪。
当然という空気だが、意義があるとすれば“生温い”という意見だ。

セイリアンと同級生の子を持ち、素行を良く知る貴族の親は、もっと罰を与えるべきだと、いくつも上訴状が届いた。
実際にバシュレ公爵令嬢は侯爵家に妾として下げ渡されているのが決定打でもあった。

だけどその見方が少しだけ緩和したのは、今夜のユーグ王子殿下のお披露目だった。  
 

「すごい視線」

「興味津々なんだろう」

少し経つと拍手が起こった。
振り向くとお父様とお母様だった。

まるで二人が王族みたいじゃない。拍手ソレやめようよ。


お母様が私達を見ると、

「あらあら。恋愛結婚になるのね」

「え?」

「お義母様。アナベルが受け入れてくれましたらご挨拶に伺わせていただきます」

「うふふ。ちょっと変わった子だけど大事にしてね」

「はい。大事にします」

「怪我はどうだ」

「はい、お義父様。問題ありません」

「外部から何かあれば直ぐに報告をくれ」

「はい。直ぐに」



間もなくユーグ王子殿下の紹介が成された。

先に国王陛下が新しい王妃を嬉しそうにエスコートして、王妃の紹介をした。
続いてユーグ王子殿下が紹介され、同時に王太子に指名された。

平民の様に育ったはずのユーグ殿下が王子教育の教師たちから合格を貰った証だ。

セイリアンはいつまで経っても合格をもらえていなかった。それは王子が一人だから、時が来れば指名されると気にしていなかった。

そしてそのバカは馬鹿の証明をしてしまう。

「父上!
貴族としてさえ育っていないユーグが王太子なんてあり得ません!!」

「セイリアン。ユーグの母は才女だ。当時学園でいつも上位にいた。その彼女がずっと教育してきたのだ。

お前はユーグとは違って国で一番恵まれた環境にいながら認められなかった。己を恥よ」

「っ!」


その後は貴族が挨拶をしていく。

先ずはバシュレが挨拶をした。
新王妃とユーグ殿下が最敬礼をしたことがバシュレが実権を持っていることを示した。

そして夫人が王妃と両手で握手をし、公爵がユーグ殿下と握手をした後に肩を叩いた。二人の後ろ盾がバシュレだと表したのも同じだった。

少し待つとラコルデールの番になり、侯爵夫妻の後に私達が挨拶をしようとすると、アホが出てきた。

「アナベル!」

私に掴み掛かろうとした瞬間、ルシアン様は私を背に隠し、セイリアンは宙を舞った。

「グハッ!!」

「汚い手でアナベルに触れようとするな」

ユーグ殿下が見事な背負い投げをした後、腕を捻りうつ伏せにして背中を膝で押さえつけた。

「殿下、カッコいいですね」

「だよな」

「ありがとうございました」

異母弟アホは任せろ」

「ええ。お任せします」

「また後でな」


陛下が少し動揺しつつも、ユーグ王子殿下について公表した。

「ユーグの留学先はシュペルブだ。卒業時の順位は9位。覚えておいてくれ」


後でお父様に聞いたら、シュペルブは隣国の私立学園で、周辺諸国で最難関と言われる学園らしい。

入試も難しく、授業も難しく、進級も難しく、卒業も難しい。

定員は100名。
だが、合格ラインに届かない者は合格させない。

ひとクラス20名を担任と副担任が管理する。

2年に進級できるのは半分未満。
3年に進級できるのはさらに減り、卒業できた生徒が数名という年もあるという。

授業料はかなり高額で、奨学金制度もあるが、入試から常に上位にいて、実家に財力が無いことを認められた者だけに与えられる。

ユーグ殿下の場合は、お父様がコネを使った。
入試では合格に足りなかったが、交流のあった副学園長に事前に頼んでいた。
王室の事情とユーグ殿下が平民として育ったこと。

その代わり、進級や卒業試験に忖度は加えないという条件で入学できたらしい。
教師が母親だけで取るには かなり良い試験結果だったからだ。

何故こんなに脱落者が多いのか。
それは文武両道だから。

剣術、弓術、棒術、馬術の他に、私の世界で言う柔道に似た授業もある。

座学でさえ外国語は三つ取得を求められるし、全てが高度な内容だ。例えていうなら厳しい王子教育を3年で仕上げるといった感じだろう。



出身校が発表されると、シュペルブを知る貴族達は王子教育の教師が直ぐに合格を出したことに納得した。


「アナベル。王子殿下と知り合いか?」

「あ…」

「どの程度の知り合いだ」

「ちょっと」

「ちょっとじゃないだろう」

「怖い」

「愛する女が私の知らない男と仲が良さそうなら警戒するのは当然だ」

ルシアン様にどう説明したらいいのか。

「本で読んでた人物が出てきて、この間挨拶した感じです」

「は?」

「つまり知っているけど親しくはありません」

「この間挨拶したって、何時だ」

「実家にこのネックレスを取りに行ったときです」

「お義父様は居られたのか?」

「もちろんです。父に会いに来ていたようですから」

「知っていて行ったのか」

「知りませんでした」

「……ユーグ殿下がファーストダンスにアナベルを誘ったらお仕置きだ」

「ええ!?何で」

「浮気の前触れじゃないか?」

「私がバシュレ公爵の娘だから、誘ったとしても政略的なものですよ」










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