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ロドルフ 4

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私は急いで王城へ戻り執務室の机を探した。
補助机に引継ぎ書とリディアーヌの筆跡の書類を見つけた。手に取るとその下には封筒があった。

“ロドルフ第一王子殿下

最初はこの婚約を嫌がっておりました。
当時はまだ6歳。泣いて嫌がりました。

婚約が結ばれて、殿下とお菓子を食べ話をして散歩をしたり同じ本を読んでいるうちに、少しずつ殿下をお慕いする様になりました。

しかし王子妃教育が始まると『わきまえなさい』と注意をされました。婚約者でも王族と私とでは慣れ親しんではならないと言われました。

教育や成長とともに殿下とは距離ができてしまったと感じました。

学園が始まり、執務のお手伝いも始まりましたが、殿下のお心は他のご令嬢方へと移って行きました。

私はクラスメイトとも気楽に話すことが許されませんでした。ひとりの女生徒を除いては。

学園で孤独を感じていました。
ふと窓の外を見ると、裏庭を通りかかると、食堂に行くと、馬車乗り場に行くと、殿下は他の令嬢方の手や腰をとっていました。

時には抱き合い、口付けをし、令嬢の馬車に乗って消えて行きました。
執務は丸投げになり、その間も殿下は令嬢方との逢瀬を繰り返しました。

殿下は婚約者の務めすら放棄して、他のご令嬢方をエスコートし、パートナーにして夜会に現れました。

私は惨めでした。エスコートもパートナーもおらず会場で両親の側で作り笑いをするしかありません。

殿下は気にも止めずご令嬢と消えていかれました。

政略結婚とはこんな目にあっても笑顔でいなくてはならないのか。そう思ったらこの先の結婚生活は絶望だとしか思えませんでした。

意を決して殿下とご令嬢の消えて行った先の部屋に突入しましたが、殿下は振り向き私を見ても何も言わずそのままご令嬢を抱き続けました。

限界でした。

泣いて両親に婚約破棄を願いましたが、陛下からは『息子にチャンスを』とだけ。

私は殿下を慕う気持ちは無くなりました。


そして直ぐ、唯一の学園での友人と関係を持ったと知ったのです。

殿下に婚約の解消をお願いした時に殿下が私に吐き捨てた言葉は、幼い頃の大事な想い出も消し去りました。

殿下の仰る通りですね。
王命を覆すには遊ばないとなりませんね。

ご命令通り王族に嫁ぐ資格を捨てましょう。
殿下も嫌いな女を娶らなくてすみます。

長い間、気が付かなくて申し訳ございません。
幼い頃の殿下が忘れられず、嫌われて疎まれていたとは思いもよらなかったのです。

どなたが本命かは分かりませんが、お好きなご令嬢を王子妃にお迎えください。
今から王子妃教育は大変ですが、殿下に愛してもらえたら乗り切れると思います。

私は数日で資格を失いますので、執務室や客室から私物は引き上げました。
間違って引き上げ忘れた物があれば捨ててください。

今までいただいた宝石だけはお返しいたします。箱に入れて侍女長に預けました。

数年間、ドレスもいただいておりませんので小さくなったものしかございません。
それらは全て他のものと一緒に寄付をしました。

半年以内に戻って王宮医の検診を受けて資格がないと証明いたします。

婚儀の準備は他のご令嬢とあげるつもりで軌道修正なさってください。


さようなら。

リディアーヌ・リュフードゥル”




リディアーヌの机の引き出しを見るが何もない。
走ってリディアーヌの客室に行くが空きの状態で引き出しやクローゼットにも何もなかった。

手紙を握りしめて父上の元に向かうも謁見中。
焦りながら終わるのを待った。

謁見が終わり父上に話し、手紙を見せた。
大きな溜息をつかれた。

「ロドルフ。なぜこんな仕打ちをしておいて初夜を迎えれば丸く収まると思ったのだ」

「妻を持つ騎士に相談をしたのです」

相談内容を話し何と言われたのかも話した。

「それは愛があり、日頃問題のない夫婦間で起きた些細な揉め事に対する方法だ。

髪型を変えたのに気が付かなかったとか、おやすみのキスを忘れたとか些細な出来事だ。

お前のように王命で成した婚約中で、溝を作り女遊びをして執務を丸投げにし、婚約者の義務も忘れ、数年まともな贈り物さえしておらず、情交の現場を見られたクズが挽回する方法ではない。

そんな男と初夜を迎えたくもないし同じ部屋の空気を吸うのも嫌であろう。

確かに王族に敬意は払わなくてはならないがリディアーヌ嬢はお前の片思いで無理矢理成した婚約者じゃないか。
何故侍女や側近のような態度をとる?

お前は会うたびに愛を囁かねばならなかった相手に嫌われるような態度をとっても構わないと思っていたのか。

…思ったようだな」

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