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家族集結
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気怠く起きるとすぐに朝食をとり、大慌てでメイドさんが全身をマッサージし始める。
「ご主人様ったら!」
「リディアーヌ様のご家族がいらっしゃるのに!」
「こんなに疲れさせて!」
「ケダモノ!」
「クマが出来てるわ!」
「リディアーヌ様、耐えられない時は眠らせてしまいますからお申し付けくださいね」
「ありがとうございます」
「リディアーヌ様のおかげで使用人全員が極上の睡眠をとって体を癒すことができております。感謝するのは私達ですわ」
「私、初めて寝坊しました」
「ベッドに入るのが毎晩楽しみで仕方ありません」
「ディオン様のおかげであって私は感謝される事はないわ」
「何を仰いますか!ドレスを増やすくらいなら私達のベッドを良いものに変えて欲しいと言って旦那様にお強請りしていただいたではありませんか」
「そうです!客室よりいいベッドですよ!?
パトリックさんが拝んでいました」
「パトリックさんは腰痛持ちですものね」
メイド達は騒ぎながら手早くマッサージを済ませて身支度をしてくれた。
「チッ」
えっ!?今誰か舌打ちした!?
「本当ね。ケダモノだわ!」
私の髪を結おうと持ち上げたメイドが舌打ちの主のようだ。
「奥様風にしようと思ったけどできないわね」
「ハーフアップにしましょう」
その後様子を見に来たディオン様にメイド達がさりげなく文句を言っていた。
どうやら首筋にキスマークや歯形があるらしい。
彼の肩にも私の歯形があるの。
バレたら私もケダモノと呼ばれるのね。
「ディオン様を叱らないで」
「まぁ!リディアーヌ様は優し過ぎますわ」
「身を隠す場所はいくらでもありますからね」
「私の実家は近くですからいつでもお連れします」
「ふふっ、ありがとう」
「も~っ、リディアーヌ様は天使様ですわ」
「女神様よ」
褒められすぎて居た堪れなくなってきた。
昼前には叔母様と一緒に家族が到着した。
「リディ!」
最初に抱きついたのはアベル兄様だ。
「俺のリディ!また可愛くなって!
聞いたぞ!可哀想に。あのクソ王子なんて小さい頃に抹殺しておけば良かったよ。
ごめんな。兄様が悪かった」
「お兄様、物騒なことは口になさらないで」
「だって、嫌がるリディに王命で婚約者にしておいて浮気三昧なんて許せるか!!」
「政略に第一王子殿下がご納得されておられないのですわ」
「リディ…あれは政略ではない」
「お兄様?」
「そうだぞ、リディアーヌ」
「お父様?」
「王子殿下が貴女を見初めたのよ。覚えていない?」
「はあ!?」
何それ…。自分で好きになって無理矢理婚約したくせに執務押し付けて冷たくして浮気三昧なわけ!?
「お話中失礼します。ここでは何ですから応接間でご挨拶をさせてください」
「これは大変失礼いたしました」
応接間に案内されお茶の用意がなされると改まってディオン様が挨拶をした。
「お久しぶりです。ご無沙汰しております」
「えっ」
知り合いなの!?
「こちらこそご無沙汰しております。リディアーヌがお世話になりまして」
「私がいて欲しいと頼み込んだのです」
「父上!何でリディアーヌを」
「アベル、このままクソ王子に嫁がせたくないだろう」
「だからって」
「公爵様、アベルはリディアーヌが大好きで…失礼をお許しください」
「承知しています。昔もハエのように追い払われましたから。
それと公爵などと呼ばずにディオンとお呼びください」
「ディオンがリディに付き纏ったからだ!」
「えっ」
昔、全員でディオン様とお会いしている!?
「リディアーヌ、忘れているかもしれないが国は違えど隣接しているから仲良くしようと互いの家族が行き来した時があったんだ。
リディアーヌもここに来たし公爵もうちに来ている」
「此処に?…公爵?」
「リディアーヌ、何も聞いていないのか?
ここはドミナシオン公爵家でディオン様は公爵だ」
「……」
「会ったのは婚約後だったわね。
うちに来ていた時に前触れなく王子殿下が訪ねて来てディオン様と喧嘩になったのよ」
「『僕の婚約者に馴々しくするな!』ってリディアーヌを引っ張ったら転んじゃってね。
ディオン様がケーキ用のナイフを持って追かけ回したの。
そこに席を外していたアベルが戻ってきてドレスが汚れて泣いているリディアーヌを見てうちの騎士から剣を奪い取ろうとしたのよ」
「親がいなければアベルは王子殿下を仕留めていただろうな。王子は子供、アベルは成人した男だ。簡単だっただろう」
「ディオン様も追いついて馬乗りになってナイフを振り上げたところで前公爵様が止めてくださったのよ」
「…処罰は」
「王子とはいえ、従属国の子供だからな。
恐怖を味わったが、約束も前触れもなく乱入してリディアーヌに怪我をさせたんだ。
お咎めなどなかったよ」
「それにアベルの事を陛下はよくご存知だったから、アベルに謝っていたわ。王子殿下を狙わないでくれって」
兄様……
「あれ? お兄様とディオン様がいない」
「話をしてくると席を外したよ」
「ディオン様…大丈夫かしら」
「大丈夫よ」
「エリザベス。世話になった」
「ベルナード兄様、私の姪でもあるのですよ。リディアーヌの事を思うのは当然です」
「リディアーヌ、目的は果たしたの?」
「はい、お母様」
「お相手はディオン様なのね」
「はい…でも後腐れのない関係です。もう少ししたら帰ります」
「まだそんな事を言っているのか」
後ろを振り向けば席を外していたディオン様と兄様が背後に立っていた。
「ディオン様……ですが」
ディオン様は私の言葉を制してお父様の方を向いた。
「リュフードゥル侯爵。リディアーヌ嬢と結婚させてください」
「ご主人様ったら!」
「リディアーヌ様のご家族がいらっしゃるのに!」
「こんなに疲れさせて!」
「ケダモノ!」
「クマが出来てるわ!」
「リディアーヌ様、耐えられない時は眠らせてしまいますからお申し付けくださいね」
「ありがとうございます」
「リディアーヌ様のおかげで使用人全員が極上の睡眠をとって体を癒すことができております。感謝するのは私達ですわ」
「私、初めて寝坊しました」
「ベッドに入るのが毎晩楽しみで仕方ありません」
「ディオン様のおかげであって私は感謝される事はないわ」
「何を仰いますか!ドレスを増やすくらいなら私達のベッドを良いものに変えて欲しいと言って旦那様にお強請りしていただいたではありませんか」
「そうです!客室よりいいベッドですよ!?
パトリックさんが拝んでいました」
「パトリックさんは腰痛持ちですものね」
メイド達は騒ぎながら手早くマッサージを済ませて身支度をしてくれた。
「チッ」
えっ!?今誰か舌打ちした!?
「本当ね。ケダモノだわ!」
私の髪を結おうと持ち上げたメイドが舌打ちの主のようだ。
「奥様風にしようと思ったけどできないわね」
「ハーフアップにしましょう」
その後様子を見に来たディオン様にメイド達がさりげなく文句を言っていた。
どうやら首筋にキスマークや歯形があるらしい。
彼の肩にも私の歯形があるの。
バレたら私もケダモノと呼ばれるのね。
「ディオン様を叱らないで」
「まぁ!リディアーヌ様は優し過ぎますわ」
「身を隠す場所はいくらでもありますからね」
「私の実家は近くですからいつでもお連れします」
「ふふっ、ありがとう」
「も~っ、リディアーヌ様は天使様ですわ」
「女神様よ」
褒められすぎて居た堪れなくなってきた。
昼前には叔母様と一緒に家族が到着した。
「リディ!」
最初に抱きついたのはアベル兄様だ。
「俺のリディ!また可愛くなって!
聞いたぞ!可哀想に。あのクソ王子なんて小さい頃に抹殺しておけば良かったよ。
ごめんな。兄様が悪かった」
「お兄様、物騒なことは口になさらないで」
「だって、嫌がるリディに王命で婚約者にしておいて浮気三昧なんて許せるか!!」
「政略に第一王子殿下がご納得されておられないのですわ」
「リディ…あれは政略ではない」
「お兄様?」
「そうだぞ、リディアーヌ」
「お父様?」
「王子殿下が貴女を見初めたのよ。覚えていない?」
「はあ!?」
何それ…。自分で好きになって無理矢理婚約したくせに執務押し付けて冷たくして浮気三昧なわけ!?
「お話中失礼します。ここでは何ですから応接間でご挨拶をさせてください」
「これは大変失礼いたしました」
応接間に案内されお茶の用意がなされると改まってディオン様が挨拶をした。
「お久しぶりです。ご無沙汰しております」
「えっ」
知り合いなの!?
「こちらこそご無沙汰しております。リディアーヌがお世話になりまして」
「私がいて欲しいと頼み込んだのです」
「父上!何でリディアーヌを」
「アベル、このままクソ王子に嫁がせたくないだろう」
「だからって」
「公爵様、アベルはリディアーヌが大好きで…失礼をお許しください」
「承知しています。昔もハエのように追い払われましたから。
それと公爵などと呼ばずにディオンとお呼びください」
「ディオンがリディに付き纏ったからだ!」
「えっ」
昔、全員でディオン様とお会いしている!?
「リディアーヌ、忘れているかもしれないが国は違えど隣接しているから仲良くしようと互いの家族が行き来した時があったんだ。
リディアーヌもここに来たし公爵もうちに来ている」
「此処に?…公爵?」
「リディアーヌ、何も聞いていないのか?
ここはドミナシオン公爵家でディオン様は公爵だ」
「……」
「会ったのは婚約後だったわね。
うちに来ていた時に前触れなく王子殿下が訪ねて来てディオン様と喧嘩になったのよ」
「『僕の婚約者に馴々しくするな!』ってリディアーヌを引っ張ったら転んじゃってね。
ディオン様がケーキ用のナイフを持って追かけ回したの。
そこに席を外していたアベルが戻ってきてドレスが汚れて泣いているリディアーヌを見てうちの騎士から剣を奪い取ろうとしたのよ」
「親がいなければアベルは王子殿下を仕留めていただろうな。王子は子供、アベルは成人した男だ。簡単だっただろう」
「ディオン様も追いついて馬乗りになってナイフを振り上げたところで前公爵様が止めてくださったのよ」
「…処罰は」
「王子とはいえ、従属国の子供だからな。
恐怖を味わったが、約束も前触れもなく乱入してリディアーヌに怪我をさせたんだ。
お咎めなどなかったよ」
「それにアベルの事を陛下はよくご存知だったから、アベルに謝っていたわ。王子殿下を狙わないでくれって」
兄様……
「あれ? お兄様とディオン様がいない」
「話をしてくると席を外したよ」
「ディオン様…大丈夫かしら」
「大丈夫よ」
「エリザベス。世話になった」
「ベルナード兄様、私の姪でもあるのですよ。リディアーヌの事を思うのは当然です」
「リディアーヌ、目的は果たしたの?」
「はい、お母様」
「お相手はディオン様なのね」
「はい…でも後腐れのない関係です。もう少ししたら帰ります」
「まだそんな事を言っているのか」
後ろを振り向けば席を外していたディオン様と兄様が背後に立っていた。
「ディオン様……ですが」
ディオン様は私の言葉を制してお父様の方を向いた。
「リュフードゥル侯爵。リディアーヌ嬢と結婚させてください」
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