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君は私のもの 1
しおりを挟む【 エデン・フォセットの視点 】
幼い頃、子守りと護衛達と森に足を踏み入れた。
王都から領地に入り、屋敷まで後わずかという所で我慢出来ずに馬車を止めさせて森に入った。
用を足し終わり、戻ろうとすると声が聞こえた。
声の元に向かうと小さな天使がいた。
「んあっ」
「坊っちゃま」
「この子はどうしてここにいるの?」
「分かりません」
当たりを見渡すが誰もいない。
「捨て子かもしれませんね」
「……連れて帰る」
「保護ということですね」
「僕のものだ」
連れて帰り、父上と母上に見せた。
「まあ!可愛いわ!」
「天使だな」
「僕の」
「だがな、犯罪絡みという可能性もある」
「そうね。先ずは届け出ないとね」
「僕の!」
「こんなに愛らしい赤ちゃんは名乗り出る者が多いでしょう」
家令が懸念することは、
「親ではなくとも純粋に可愛くて欲しがる者、ある程度の歳まで育てて売る者、後は…」
「何なの」
「坊っちゃまにはご説明できない目に遭われます」
「そうだな。親だと間違いないという相手を探さないと」
「でも捨てた親に返すの?」
「僕の!」
「旦那、奥様。身体的特徴が分かるか言い当てた者がいましたら、何故森に置き去りにされたのか調査しませんか」
「そうだな」
「父上!」
「エデン。この過程は必要なんだ。
この子は親が捨てたかもしれないし、誘拐されて捨てられたのかもしれない。
逆に保護した私達が誘拐犯扱いされたら困るからな」
「……」
乳母は外に出ろと言ったけど、一緒に天使の体を確認した。
「まあ、お尻にホクロがありますね。まるで足跡みたいですね」
左の白い柔らかなお尻にネコかイヌの足跡のようなホクロがあった。
それよりも
付いていなかった。
僕にあるものが付いていない。
乳母に聞くと、
「エデン様は男の子で、この赤ちゃんは女の子ですからね。
詳しくは8年から10年後くらいにお勉強なさいますよ」
「…分かった」
天使と出会った時の気持ちとは また違う気持ちが込み上げていた。これが何を意味するのか、大きくなるに連れて確信に迫っていった。
「多いわね」
「多いな」
「文面からすると、ウチと縁続きのきっかけにしたい者も含まれるな」
「この子の不幸をエサにするなんて」
結局、ホクロの位置と形状を言い当てる者が一人も居らず、1年が経った。
この場合 拾い主が、孤児院へ渡すか引き取るか決めることができる。
もうしっかり目もあいて私達を認識して天使の微笑みを向ける女の子にメロメロだった。
“ロクサーヌ・フォセット”
養女として届け出た。
屋敷の者達には、実子として扱い、拾ったなどと漏らさないようにとキツく命じた。
「ロクサーヌ」
「にいに」
エデンと覚えさせたかったのに乳母が邪魔をした。
だけど僕はロクサーヌといつも一緒。いつも。
寝るときもロクサーヌと一緒。
天使の温もりを感じ、天使の寝顔を見て眠る。
朝は天使に蹴られていることが多いが寧ろ嬉しい。
親戚の子がうちに遊びに来ると、5歳になったロクサーヌに従兄弟達が群がる。
「可愛いな」
「ロクサーヌちゃん、お兄ちゃんが好きな物を買ってあげるよ」
「うちに遊びにおいでよ、ネコがいるよ」
「ロクサーヌちゃん、お膝の上に座る?」
ロクサーヌを抱えて部屋に立て篭もった。
そして家庭教師がついてしまい、ロクサーヌとの時間が激減した。それでロクサーヌとの添い寝は止めなかった。
皆反対したけど、何故ダメなのかロクサーヌを説得し切ることができない。
「家族なのにおかしい」
「……」
血が繋がっていないと言えない両親達は延長してくれた。だけど…
天使との添い寝は僕の変化で終了した。
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