【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました

ユユ

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その後のジュネース

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「ケイン様!」

「サラ?」

大公邸からセンティア王城に到着したお祖父様とケイン様の姿を捉えると、前にいたケイン様に走って飛び付き抱きしめた。

「迷惑をかけてごめんなさいっ」

「記憶が戻ったのだな!」

「全部」

「サラ」

「お祖父様」

今度は将軍に抱き付いた。

「ありがとう。サラのおかげで生き延びた。改めて礼を言わせてくれ」

「どういたしまして」

「おいで サラ」

「ケイン様」

今度は抱き上げてくれたのでケイン様の首に腕を回した。

「守ってやれなくてごめん」

「そんなことを言わないでください。ずっと私を探してくださったではありませんか」

「だが、」

「近衞騎士のお仕事まで辞めさせて。謝らなくてはいけないのは私の方です。ごめんなさい」

「それは儂のせいだ。サラ1人なら岸に上がれたはずだ。儂を助け 御者をしていたカムール卿を助けたからだろう。すまなかった」

パパが将軍の肩に手を置いた。

「サラ、サットン家のお二人も止めましょう。
誰も悪くないのですから。
サラは本当にサットン家で楽しく過ごしていたようだな」

「はいっ」

「将軍、サットン卿。もうすぐ食事の時間ですので先ずは客室へ案内します」

城内に入りお部屋を案内された後のケイン様とお祖父様と一緒にいろいろな話をして、夕食を食べながらお父様が提案した。

「サットン将軍、サットン卿。そろそろサットン邸に戻った方がいいと思います。何ヶ月も不在にしていてはご家族も不安でしょう。長い間 ありがとうございました」

「サラを連れて帰らねば袋叩きに遭います」

「特に妹のペーズリーは恐いですから」

「行きにあのようなことがあったのに帰りに付き添わないなんて出来ません」

「分かりました。無理だけはなさらないようにお願いします」

顔にかかる髪をケイン様が避けてくれた。

「サットン卿とサラはジュネースでそんな感じだったのか」

レノ兄様がじっと見ながら質問をした。

「ケイン様にはペーズリー様という妹がいて、私の1つ上なのですが友人なのです。それとは別でケイン様のお仕事中に助けていただいた縁がありました。弟と一緒にいられなくてサットン家にお世話になっていたのです。妹のように面倒を見てもらっています」

「仕事?サットン卿は王子の護衛騎士だったな」

「はい。お茶会の席で顔色が悪かったサラを心配なさって、ユリス殿下は護衛をしていた私に 彼女の側で見守るよう命じました」

「それは縁談を断る前なのか?サラ」

「縁談を断ったのは入学前で、お茶会はもっと後です」

「つまりジュネースの唯一の王子はサラを諦めていないということか。自分を護衛していた騎士を持ち場から外して令嬢の側に就けるなんてあり得ない。
メイドで事足りるからな」

「でもユリス殿下には婚約者ができて、」

「それは私が破談にした。何も知らずに偏った情報を元に我ら王族の血を侮辱したからな」

「パパ?……また直ぐに婚約者ができるはずです」

「サラは大公閣下のことをパパと呼ぶことにしたのだな」

「はい、お祖父様。
亡くなったガードナー侯爵がお父様ですから、閣下はパパです」

「きっと天国からサラを見守っているよ」


夕食が終わるとケイン様がパパに耳打ちをした。
頷くと、

「将軍、サットン卿、サラ。私の居間へ移ろう」

「私も一緒に、」

「レノー王太子殿下は遠慮して欲しい」

パパは私の手を引いて食堂を出た。



王弟殿下パパの居間で|お祖父様が真剣な顔をして話を始めた。

「本来なら国の…王族のことを口にするべきではないのですが、サラに関わることですのでお伝えすることにしました。
先ずはサラの気持ちを確認させてください。
サラはユリス殿下の妻になる気はあるか?即答せず、心に聞いてから答えて欲しい」

「最初の王子妃の打診の時とは違って ユリス殿下から気持ちを打ち明けられました。
ユリス殿下は良い方です。優しくしてくださいます。ですが私には恋心はありませんし野心もありません。王子妃となってもガードナー家は喜びません。寧ろ余計な煩わしさを持ち込んでしまいます。
ガードナー家と王家の確執は解消されましたし、謝罪もいただきました。それでもガードナー家を苦しめて父の寿命を縮めただろうことを無かったことになど出来ません。もっと父と過ごせたはずだという気持ちが消えません。
憎んでいる訳ではありませんが愛することはできないと思います。そんなに求めていたのなら、最初から他の令嬢にも候補として声をかけたりしないで王命になされば良かったのです。でも候補の一人としてのお声がけでした。
今回だって別の令嬢方を選考して婚約者を選んだではありませんか。つまり必ずしも私でなくても王家の時は流れるということです。
私は王子妃にはなりません」

「分かった。

では、現在起きていることを説明しましょう。
ユリス殿下の誘いでサラとサルヴィア公女がお茶を飲みながら話をしていたときに、王妃殿下が若い令嬢を連れて勝手に席に着き、邪魔をしました。
サラと公女が退席した後、ユリス殿下は令嬢方の前で王妃殿下を叱責しました。その怒りは王妃という立場を上から押さえつけるものでした。
ジュネースは王位継承順位が重要です。王妃に継承権は無く 男系男子が重要です。ユリス殿下の資質には問題無く、実質のジュネースNo.2です。その彼を怒らせてはまともな扱いはされません。
令嬢方の前でそのことを告げました。
例え国王陛下の正妃、王子の母であっても代わりのきく存在であり、国王と次期国王の自分次第だと。

その日の夜から、王妃殿下は北の塔の上階に軟禁されております。解放の条件は遠い異国の言葉を3カ国語マスターすること。そして昔怪我を負わせた夫人のレッスンを受けること。
文字も発音も全く違う言葉を覚えられず、夫人からはミスをすると短鞭で打たれるそうです。
下級メイドがつきますが、手厚いものではありません。使用できる物も粗末です。石鹸さえ低価格のものです。食事も平民レベルで王妃殿下は日々 サラに謝罪をする機会を与えて欲しいと懇願しております。

サラが出生の秘密を知ることになってしまったきっかけを作ったシヴィル公女を推薦したのは王妃殿下でした。今回センティア行きになったのも遭難したのも記憶を失くして帰国しないのも 王妃のせいだと、塔から地下牢に移してしまいました」

「ユリス殿下が王妃殿下にそんな酷いことを!?」

「国王陛下は動かないのですか」

「側妃メリンダ様が王妃代理を務めていますので問題はありません。
陛下は新たに侍女に手を付けて、妾にしました。身籠れば側妃に昇格です。

我らもこちらに来る前まで動向を注視しておりました。遭難後はを使って状況報告をもらっております。

サラが大公閣下の実子でセンティアの国王陛下の姪と判明したことで王命も使えないだろうと安心しておりましたが、もう今はユリス殿下の執着がどう影響するか分かりません」

あのユリス殿下が?






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