66 / 73
揺さぶり
しおりを挟む
【 レノー王太子の視点 】
「なあ、イザーク。女はあんなに か弱いものなのか?」
「もしかしてサラが倒れたからですか?」
「細いし軽いし柔らいし」
「それは王太子妃だって同じでしょう」
「同じか?」
「閨事はあるのでしょう?」
「……確かにあいつも女の体だが、なんかサラは違うんだ。自ら守ってやらなきゃいけない気になる。
従妹だからだろうな」
「……」
「サラに母上とエリゼの分を買わされて、届けさせたけど、エリゼなんか珍しいものを見たかのように驚いているし 母上なんか熱でもあるのかなんて言うんだぞ?」
「どれだけ贈り物をしていないんですか」
「誕生日以外は全く無いな。しかも選んでないし」
「兄上!?」
「あんなもの、本人が選んで請求だけすればいいじゃないか。どうせ好みが煩いのだから」
「気持ちの問題です。だったら何故 サラの物は自ら選ぶのですか」
「サラは別だろう。母上は親だし エリゼは他人だ」
「その言葉、絶対に王太子妃に聞かせては駄目ですからね」
「事実だろう」
「他人じゃありません。妻であり家族じゃないですか」
「契約に縛られた他人だ。地位と金を与える代わりに世継ぎを産み公務をする。そうだろう?
エリゼが純粋に私を慕って婚姻したと思うのか?」
「それは…」
「子も産まれていないしな」
「……」
「つまり家族はサラだろう。まだ学生だし守ってやらないと。私が決めてやるのは普通じゃないか?
しかし、叔父上を使うところは憎たらしいが、それでも可愛いと思えてしまう。妹という存在はすごいな」
「……」
「あの反抗的な態度も 嫌がるサラも許せてしまう。
すごく楽しいんだ」
そこに兄上の侍従が、サラが目を覚ましたと聞いた。
「サラの部屋に行くぞ」
「お待ちください。姫様は就寝なさいました。王弟殿下が誰一人面会をお許しになっておりません」
「ずるいよな。いつも叔父上がサラを独り占めして」
「殿下、姫様は記憶が戻ったそうです」
「本当か!」
「だから倒れたのかもしれませんね」
「記憶が戻ったので休学になってしまった学園のことを気になさっています。王弟殿下から国王陛下に、姫様が留年になるのかどうかジュネースへ問い合わせをして欲しいと仰いました。姫様は3年生ですので、試験を受けるなりすれば卒業させてもらえるのか交渉するようです」
「留年するかもしれないんだな?」
「そのときは、3年生の新学期が始まるまで、王弟殿下の元で暮らし、学園が始まる半月前にフィオルド公爵夫妻と一緒にガードナー領に戻るそうです」
「つまり留年すればもう少し一緒に居られるのだな?
学園なんて卒業しようがしまいが どうでもいい。いっそのこと退学して ずっと此処に住めばいい。
父上も姪が可愛いだろうし、次は私が国王だ。サラ1人くらい面倒見れる」
「兄上…」
翌朝、サラが食堂に現れた。本当に大丈夫か 熱などないか確認しているだけなのに近いと言う。
心配しているだけなのに何が悪い!
サラはイザークと叔父上の間に座った。
私は正面に座りサラを見つめたが目を合わそうとしない。
何故こんなに避けるんだ!
昼に母上が呼び出していたのは知っていたが、サロンとは知らずに探してしまった。
サロンに行くと2人で食事をしていた。
もしも留年になったらと話をし出すも、母上が邪魔をし、サラが退室した。
「母上、何なのですか」
「私が言いたいわ。サラのことになると礼儀も忘れて判断力も馬鹿になるのね」
「確かにノックしませんでしたが、」
「それももちろんだけど、ずっとよ。
従兄妹だとしても駄目よ。実の兄妹だとしてもあんなにベタベタ触れたりしない。頬を合わせたときはびっくりしたわ」
「熱がないか心配だっただけです」
「エリゼにだってしたことないんじゃない?」
「エリゼとサラは違います。サラは歳下で守るべき存在です」
「そうだけど、一番はサラではなくエリゼであるべきよ」
「そうは思いません」
「教会で誓ったじゃない。貴方の正妃なのよ!?」
「エリゼは契約上の家族ですが、サラは血縁です」
「そうだけど」
「今困っているのも守られるべきなのもサラです」
「…だけど振り回すのは止めなさい」
「多少強引ですが、サラはその方が、」
「それで貴方は周りを巻き込んでいるじゃない。
宰相補佐官を使ってサラと遊びに行くスケジュールを組ませたでしょう。しかも全部貸切にして。
サラは気にしていたのよ。宰相の右腕なら陛下と国を支える存在のはずなのに、巻き込んで申し訳ないと言っていたわ」
「気にし過ぎです」
「お黙りなさい!!」
「っ!」
「ガッカリだわ。こんなことも分からないなんて。
本気で言っているなら陛下と貴方の将来について考え直さねばならないし、再教育をしなくてはならないわ」
「母上」
「そんな状態ではサラに愛想を尽かされるわよ」
「っ!」
「貴方はいくつになったの。
王太子の任命は簡単じゃないのよ。一度失ったらもう戻せないわ。イザークという選択肢があるのだから。
王太子として尊敬される行動を取りなさい。貴方の思いつきで周囲を巻き込むのは止めなさい。私の言っていることは理解出来るわね?」
「はい」
「サラに対してもそうよ。他の令嬢と同じように距離感に気を付けなさい。サラは貴方を従兄としてしか見ていないのだから」
「…はい」
サラが嫌がってる?そんなことはないはずだ。
だが母上の指摘を無視する訳にもいかず、気を付けようと思った矢先に揺さぶられた。
「ケイン様!」
「サラ?」
「迷惑をかけてごめんなさいっ」
「記憶が戻ったのだな!?」
「全部」
夕方前に到着したサットン家の元近衞騎士にサラが抱き付いたからだ。
「なあ、イザーク。女はあんなに か弱いものなのか?」
「もしかしてサラが倒れたからですか?」
「細いし軽いし柔らいし」
「それは王太子妃だって同じでしょう」
「同じか?」
「閨事はあるのでしょう?」
「……確かにあいつも女の体だが、なんかサラは違うんだ。自ら守ってやらなきゃいけない気になる。
従妹だからだろうな」
「……」
「サラに母上とエリゼの分を買わされて、届けさせたけど、エリゼなんか珍しいものを見たかのように驚いているし 母上なんか熱でもあるのかなんて言うんだぞ?」
「どれだけ贈り物をしていないんですか」
「誕生日以外は全く無いな。しかも選んでないし」
「兄上!?」
「あんなもの、本人が選んで請求だけすればいいじゃないか。どうせ好みが煩いのだから」
「気持ちの問題です。だったら何故 サラの物は自ら選ぶのですか」
「サラは別だろう。母上は親だし エリゼは他人だ」
「その言葉、絶対に王太子妃に聞かせては駄目ですからね」
「事実だろう」
「他人じゃありません。妻であり家族じゃないですか」
「契約に縛られた他人だ。地位と金を与える代わりに世継ぎを産み公務をする。そうだろう?
エリゼが純粋に私を慕って婚姻したと思うのか?」
「それは…」
「子も産まれていないしな」
「……」
「つまり家族はサラだろう。まだ学生だし守ってやらないと。私が決めてやるのは普通じゃないか?
しかし、叔父上を使うところは憎たらしいが、それでも可愛いと思えてしまう。妹という存在はすごいな」
「……」
「あの反抗的な態度も 嫌がるサラも許せてしまう。
すごく楽しいんだ」
そこに兄上の侍従が、サラが目を覚ましたと聞いた。
「サラの部屋に行くぞ」
「お待ちください。姫様は就寝なさいました。王弟殿下が誰一人面会をお許しになっておりません」
「ずるいよな。いつも叔父上がサラを独り占めして」
「殿下、姫様は記憶が戻ったそうです」
「本当か!」
「だから倒れたのかもしれませんね」
「記憶が戻ったので休学になってしまった学園のことを気になさっています。王弟殿下から国王陛下に、姫様が留年になるのかどうかジュネースへ問い合わせをして欲しいと仰いました。姫様は3年生ですので、試験を受けるなりすれば卒業させてもらえるのか交渉するようです」
「留年するかもしれないんだな?」
「そのときは、3年生の新学期が始まるまで、王弟殿下の元で暮らし、学園が始まる半月前にフィオルド公爵夫妻と一緒にガードナー領に戻るそうです」
「つまり留年すればもう少し一緒に居られるのだな?
学園なんて卒業しようがしまいが どうでもいい。いっそのこと退学して ずっと此処に住めばいい。
父上も姪が可愛いだろうし、次は私が国王だ。サラ1人くらい面倒見れる」
「兄上…」
翌朝、サラが食堂に現れた。本当に大丈夫か 熱などないか確認しているだけなのに近いと言う。
心配しているだけなのに何が悪い!
サラはイザークと叔父上の間に座った。
私は正面に座りサラを見つめたが目を合わそうとしない。
何故こんなに避けるんだ!
昼に母上が呼び出していたのは知っていたが、サロンとは知らずに探してしまった。
サロンに行くと2人で食事をしていた。
もしも留年になったらと話をし出すも、母上が邪魔をし、サラが退室した。
「母上、何なのですか」
「私が言いたいわ。サラのことになると礼儀も忘れて判断力も馬鹿になるのね」
「確かにノックしませんでしたが、」
「それももちろんだけど、ずっとよ。
従兄妹だとしても駄目よ。実の兄妹だとしてもあんなにベタベタ触れたりしない。頬を合わせたときはびっくりしたわ」
「熱がないか心配だっただけです」
「エリゼにだってしたことないんじゃない?」
「エリゼとサラは違います。サラは歳下で守るべき存在です」
「そうだけど、一番はサラではなくエリゼであるべきよ」
「そうは思いません」
「教会で誓ったじゃない。貴方の正妃なのよ!?」
「エリゼは契約上の家族ですが、サラは血縁です」
「そうだけど」
「今困っているのも守られるべきなのもサラです」
「…だけど振り回すのは止めなさい」
「多少強引ですが、サラはその方が、」
「それで貴方は周りを巻き込んでいるじゃない。
宰相補佐官を使ってサラと遊びに行くスケジュールを組ませたでしょう。しかも全部貸切にして。
サラは気にしていたのよ。宰相の右腕なら陛下と国を支える存在のはずなのに、巻き込んで申し訳ないと言っていたわ」
「気にし過ぎです」
「お黙りなさい!!」
「っ!」
「ガッカリだわ。こんなことも分からないなんて。
本気で言っているなら陛下と貴方の将来について考え直さねばならないし、再教育をしなくてはならないわ」
「母上」
「そんな状態ではサラに愛想を尽かされるわよ」
「っ!」
「貴方はいくつになったの。
王太子の任命は簡単じゃないのよ。一度失ったらもう戻せないわ。イザークという選択肢があるのだから。
王太子として尊敬される行動を取りなさい。貴方の思いつきで周囲を巻き込むのは止めなさい。私の言っていることは理解出来るわね?」
「はい」
「サラに対してもそうよ。他の令嬢と同じように距離感に気を付けなさい。サラは貴方を従兄としてしか見ていないのだから」
「…はい」
サラが嫌がってる?そんなことはないはずだ。
だが母上の指摘を無視する訳にもいかず、気を付けようと思った矢先に揺さぶられた。
「ケイン様!」
「サラ?」
「迷惑をかけてごめんなさいっ」
「記憶が戻ったのだな!?」
「全部」
夕方前に到着したサットン家の元近衞騎士にサラが抱き付いたからだ。
811
お気に入りに追加
1,633
あなたにおすすめの小説
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で夫と愛人の罠から抜け出したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる